2023年8月19日土曜日

中国恒大、再建見通せず 不動産不況が深刻化―【私の論評】なぜ恒大は最初に中国ではなく、米国で破産申請を行ったのか(゚д゚)!

 中国恒大、再建見通せず 不動産不況が深刻化


 中国不動産開発大手の中国恒大集団が、米国で破産を申請しました。資産が差し押さえられるリスクなどを減らし、債務再編に向けた債権者との協議を加速させる狙いがあります。しかし、中国では不動産不況が深刻化しており、経営再建に向けた道のりは見通せません。

 恒大は政府が融資規制を導入した影響で資金繰りが行き詰まり、2021年に実質的なデフォルト(債務不履行)に陥りました。負債総額は22年末時点で2兆4374億元(約49兆円)。この一部を占める外貨建てについては、今年3月に再編案を公表しましたが、多くの債権者が受け入れを拒んでいた。米破産法の適用申請で、今後の交渉を有利に進める考えとみられます。

 しかし、中国では景気の冷え込みを背景に、住宅販売が一段と低迷。碧桂園など恒大以外の大手デベロッパーの経営危機も相次いで表面化しています。人口減少も始まり、不動産需要はさらに落ち込むとの見方は多く、経営環境の好転は望めない状況です。

 今回の恒大の破産申請は、中国不動産市場の深刻な危機を象徴しています。中国政府は恒大の債務再編を支援していますが、その効果は不透明です。恒大の破産の影響は中国にとどまらず、世界経済にも波及する可能性があります。

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【私の論評】なぜ恒大は最初に中国ではなく、米国で破産申請を行ったのか(゚д゚)!

日本や、欧米などの先進国では、状況により一概にはいえないですが、破産手続きはまずは本国で行う事が多いと思います。しかし、恒大グループは、米国で破産申請し、中国で破産申請していません。その理由は、以下のようなものと考えられます。 

1. 中国共産党政府は恒大グループに対して大きな支配力と影響力を持っている可能性が高いです。中国で破産を申請すると、資産を失ったり、権威主義政権から処罰を受けたりするリスクがあります。米国の法制度はより公平で、財産権も保護されているため、再建のためには米国の方が安全とみられます。

2. 中国の不動産市場は基本的に政府によって支えられており、真の自由市場資本主義ではありません。国内で破産を申請して問題の規模を認めることは、共産党にとって恥辱です。米国で静かに対処し、中国で面子を保つ方がやりやすいのでしょう。

3. 米国の破産法はより寛大で、企業にセカンドチャンスを与えるように制度設計されています。中国ではより懲罰的かもしれないです。というより法律が曖昧なので、厳しい懲罰になるのか、そうではないか、予め判断がつきません。恒大は、米国の破産法の下で再建し、生き残る方が有利だと考えたのでしょう。

4. 負債、資産、投資などに関連した複雑な財務上の理由があり、中国での申請を避けつつ、米国での申請を戦略的に実行しやすくしている可能性があります。

破産申請した中国恒大集団 AI生成臥像

そもそも、中国の法制度と金融制度が不透明です。そもそも、中国の憲法は共産党の下に位置づけられており、その憲法に基づいて制定される法律は、すべてが中国共産党の下に位置づけられており、極論すると、いかなる法律も中国共産党によってその時々で恣意的に運用できることになります。

その中でも、特に破産法はまだ発展途上で不透明です。企業は中国で破産を申請した場合、何が起こるか正確にはわかりません。

中国の会計基準は緩く、企業の財務開示は限られています。企業のバランスシートや負債を正確に把握することは難しいです。そのため、負債や資産の全容が不明確となり、破産手続きは厄介なものとなります。

中国の破産案件では、政府が大きな役割を果たしています。政府は頻繁に破綻した国有企業を救済措置で支えています。また、党に恥をかかせた民間企業を罰することもあります。政治は法の支配に優先するのです。

 中国のシステムには腐敗が蔓延しています。企業は、破産を申請すれば、その資産が汚職官僚によって私利私欲のために横領されるのではないかと心配しています。米国の法律はこのような事態を防ぐのに有効です。

中国では検閲があり、メディアの自由がないため、企業の破産の詳細が一般に公開されないことが多いです。透明性の欠如はシステムに対する信頼を損なうことになます。

 さらに、複雑なシャドーバンキングシステムと企業間のつながりが、中国の倒産を厄介なものにしています。ある企業の破綻が、複雑に絡み合った他の企業にどのような影響を与えるかわからないのです。

法律や金融システムの不透明さ、政府の介入、汚職、透明性の欠如、シャドーバンキング、これらすべてが中国の倒産プロセスの不確実性を高めています。米国のシステムは、完全無欠ではないにせよ、明らかに透明性が高く、法の支配に支配されています。

破産した企業に群がる債権者達 AI生成画像

破産プロセスですら、曖昧なのですから、中国のシステムは全般的に不透明なので、経済や政府の財政の本当の状態を知ることはほとんど不可能です。

 中国の公式経済統計は信頼性が低く、政治的目的のために操作されていると広く信じられています。本当の成長率、債務水準、資産バブルなどは誰も知らないです。

中国の銀行システムは大部分が国家管理下にあります。政府は破綻した企業や地方政府を支えるために、銀行に不良債権を転嫁させることができます。このため、金融トラブルは水面下に隠されています。

中国の政府債務は巨額だと考えられますが、その詳細は不透明です。多くの債務は「帳簿外」もしくは隠されているようです。問題の規模は公式発表よりもさらに大きい可能性があります。

政府はパニックを避け、統制を維持するため、否定的な経済ニュースを一切報道しません。倒産、債務不履行、破綻の報告は検閲されます。そのため、部外者は知る由もありません。

政府が企業を管理するということは、国家の利益のために民間の資金や資産を実質的に徴用できるということです。これによって一時的に経済危機を回避することはできますが、資本の恣意的な再配分は長期的な損害をもたらすことになります。

中国の全体主義的権威主義体制は、権力と支配を何よりも重視します。経済問題が権力の掌握を脅かすのを防ぐためなら、嘘をついたり、データを操作したり、失敗した政策を二転三転させたりすることでも、何でもするでしょう。

中国経済は、公に知られているよりもはるかに深刻な状況にある可能性があります。そのシステムの不透明さと政府の情報統制の厳しさから、共産党は権力を危うくするのを避けるために、負債の規模を隠している可能性があります。

北京の支配者たちにとって、真実はかなり不愉快なものかもしれないですが、わたしたちは、中国共産党の意図を読み解き、懐疑的であり続けなければならないです。

システムの不透明性に困惑する中国人 AI生成画像

もう10年以上も前から、中国経済は崩壊するとか破綻するとかいわれてきましたが、仮にそれが本当だったとしても、中国共産党の工作により、巧みに長期間にわたり隠蔽されてきた可能性があります。

このようなことが繰り返されてきたので、中国経済は回復し再び成長するのではという幻想を多くの人が抱くようになっていたようです。しかし、そうではないことが今回の中国恒大集団による、米国での破産申請によって暴露されたともいえると思います。

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