2023年8月2日水曜日

ノーベル賞経済学者が中国経済の問題点を指摘…「日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」―【私の論評】中共が政権を握っている限り、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはない(゚д゚)!

ノーベル賞経済学者が中国経済の問題点を指摘…「日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」

ノーベル賞経済学者 ポール・クルーグマン

 ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマンは、中国経済が大きな減速に向かっていると警鐘を鳴らしている。彼は、中国の経済パフォーマンスは、日本が1990年代に経験した経済的苦境と似ていると指摘している。

 日本経済が低迷した原因は、少子高齢化による労働人口の減少、アンバランスな経済構造、そしてパンデミックによる需要の低迷などだ。中国経済もこれらの問題を抱えている。

 特に、中国の労働人口は急速に減少している。中国政府のデータによると、前四半期の若年層の失業率は21%と過去最悪を記録した。このため、中国経済への投資は低迷し、債務残高が増加している。

 また、中国経済はアンバランスな経済構造にも苦しんでいる。製造業は5月に縮小し、中国経済の約5分の1を占める不動産も停滞している。

 こうした要因から、中国の将来について警鐘を鳴らしている専門家は少なくない。とりわけ、「中所得国の罠」に陥る可能性があるとクルーグマンは指摘している。これは新興国に見られる現象で、ある時点まで経済が急成長し、その後、停滞するというものだ。

 中国が景気減速に向かうとすれば、興味深いのは、日本の「社会的結束力」を再現できるかどうかだ。これは大衆の苦しみや社会的不安定を伴わずに低成長を管理する能力でだ。中国がこのように不安定な権威主義政権のもとで、これをやり遂げることができるという兆候はあるのだろうか。

 クルーグマンは2023年7月25日に公開されたニューヨーク・タイムズへの寄稿文にこう記している。

 「中国は最近失速しているように見えることから、将来的に日本のような道を歩むのではないかと言う人もいる。それに対する私の答えは『おそらくそうはならない。中国はもっと悪くなるだろう』だ」

 他の専門家たちは、中国経済の回復がいまだ期待外れであることから、中国経済が危機に瀕していると警告している。あるシンクタンクによると、需要が低迷を続ける中、中国の再開に向けての取り組みは「失敗する運命にある」とし、また別の専門家は再開の試みを「見せかけ」と評している。

 中国経済の行方は不透明だが、世界経済に大きな影響を与える可能性は十分にある。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい人は元記事をご覧ください。

【私の論評】中共が政権を握っている限り、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはない(゚д゚)!

昨日このブログでは、独立した金融政策が実施できない中国は、すでにバランスシート不況に陥ったか近日中に陥る可能性を指摘しました。そうして、一度パランスシート不況に陥ると、独立した金融政策ができないがゆえに、かなり長期にわたって不況から立ち直るのは難しいだろうと指摘しました。

中国のパランスシート不況 AI生成画像

こうしたことになれば、クルーグマン氏が指摘するように、「中所得国の罠」に陥り、長期間不況から脱することがでないどころか、過去の日本よりももっと悪くなることになりそうです。

過去の日本では、クルーグマン指摘した状況を克服するために、積極財政、金融緩和策をして不況から抜け出せばよかったものを、官僚の誤謬により、緊縮財政、金融引締を行い、平成年間のほとんどが超インフレ・超円高であったのが、安倍政権が成立してから、金融緩和に転じました。

積極財政に関しては、安倍政権下ですら、二度の消費税増税を行い、受給ギャップを埋めることができなかったのですが、安倍・菅政権合計で100兆円の補正予算を増税なしで組み、コロナ対策を実施したこと、他国が利上げなどの金融引締をするなか、日本は金融緩和を続けたため、円安傾向が続き輸出産業が好調で経済の回復の兆しがみえるようになりました。

しかし、独立した金融政策ができない中国では、日本のようなことはできません。そうなる、今後中国経済は過去の日本よりもさらに悪くなるのは間違いなさそうです。

中所得国の罠 AI生成画像

ちなみに「中所得国の罠」についても、このブログでは何度か言及しています。これは開発経済学で言われていることです。

中所得国の罠とは、開発途上国が一定程度の経済発展を遂げた後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称です。

中所得国の罠は、いくつかの原因が考えられます。

労働コストの上昇:中所得国になると、労働コストが上昇します。これにより、低賃金労働力に依存した製造業が競争力を失い、経済成長が鈍化する可能性があります。
技術革新の遅れ:中所得国になると、技術革新が遅れる傾向があります。これは、研究開発への投資が減少したり、優秀な人材が流出したりすることが原因です。
インフラの未整備:中所得国になると、インフラが未整備になっていることがあります。これは、経済成長に必要な条件が整っていないことを意味し、経済成長の妨げとなります。

中所得国の罠一万ドル(≒100万円)の壁ということがいわれています。これは、一人当たりGDPが1万ドルに達した国が、中所得国の罠に陥りやすいという考え方です。これは、1万ドルの壁を超えた国は、低賃金労働力に依存した製造業が競争力を失い、技術革新が遅れ、インフラが未整備になるなどの問題に直面する可能性があるためです。

現在の中国は一人あたりのGDPが一万ドルを若干超えたくらいの状況です。ほとんどの途上国が一人あたりのGDPが1万ドルを若干超えたくらいのところで、成長がとまり、一万ドル前後に踏みとどまっています。

中所得国の罠は、非常に厳しいものであり、数少ない先進国以外ではほとんどの途上国が結局この壁を乗り越えられていません。唯一乗り越えて先進国の仲間入りをしたのは、かつての日本です。その逆に先進国から、発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。その他例外も若干ありますが、産油国などのかなりの特殊事情によるものです。その理由は、中所得国の罠を回避するためには、長期的な視点と、多くの資金が必要となるからです。

また、中所得国の罠を回避するためには、政府と民間企業等が協力して取り組む必要がありますが、途上国では、政府と民間企業が協力して取り組むことが難しい事が多いです。それは、中国も例外ではありません。現在の中国は、民間企業の行動を規制しています。

習近平

中国がいわゆる「中所得の罠」を回避するためには、個人の力を解き放ち、政府の規制を減らし、自由で公正な貿易に市場を開放する必要があります。そのためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠です。それができれば、少なくとも台湾と同程度の経済(一人あたりのGDPは約3万ドル)になるかもしれません。そうなれば、中国のGDPは国単位では、確実に米国を超えることになります。しかし、中共が政権を握っている限りそれは不可能であり、今後中国が真の経済的潜在力を発揮することはないでしょう。

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