2023年8月16日水曜日

植田日銀の〝アベノミクス殺し〟 大きな波紋を招いた「長短金利操作修正」 金利引き上げ喜ぶ一部のマスコミや官僚たち―【私の論評】日銀は現金融システムを護るのではなく、日本の金融システムが誰にとっても有益な形で進化する方向を模索せよ(゚д゚)!

植田日銀の〝アベノミクス殺し〟 大きな波紋を招いた「長短金利操作修正」 金利引き上げ喜ぶ一部のマスコミや官僚たち

まとめ

日本銀行の金融政策の枠組みを修正したことは、国内外に大きな波紋を呼びました。金利引き上げは、企業の設備投資や住宅購入を抑制し、経済成長を鈍化させる恐れがあります。また、物価上昇を抑制する効果も期待されていますが、インフレ期待が低下し、消費を冷え込ませるリスクもあります。

日本銀行

 日本銀行が金融政策の枠組みを修正したことは国内外に大きな波紋を呼んだ。

 日本銀行は7月の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の枠組みを修正しました。YCCとは、短期金利をマイナスに誘導し、10年物国債金利をゼロ金利の上下0.5%に誘導する金融政策だ。

 今回の修正では、長期金利の上限が1%まで達することを認め、事実上の金融引き締めとなりました。これにより、企業向けの貸出金利や住宅ローンの金利が高くなることが予想される。

 金利引き上げで喜ぶのは、預貸金利差でもうける銀行や、取引が活発化する債券ディーラーぐらいた。

 金利引き上げは、企業の設備投資や住宅購入を抑制し、経済成長を鈍化させる恐れがある。また、物価上昇を抑制する効果も期待されていますが、インフレ期待が低下し、消費を冷え込ませるリスクもある。

 YCC修正には、緊縮政策を喜ぶ勢力への特別サービスもあった。

 YCC修正の情報が、事前にマスコミに出回ったのです。これを「日銀リーク問題」という。

 日銀リーク問題は、アベノミクスの黒田総裁体制以前から頻繁に発生していました。しかし、今回のYCC修正では、リークの内容が非常に具体的で、事前のリークによるインサイダー取引の疑いが持たれている。

 日銀リーク問題は、日銀の信頼性を大きく損ねる。

 日銀は、金融政策の独立性を守ることが重要です。しかし、今回のYCC修正では、事前のリークにより、日銀の独立性が疑問視されています。

 YCCの修正は、事実上、YCCの「形骸化」をもたらした。

 YCCは、金融緩和の柱の一つだ。しかし、今回のYCC修正により、長期金利の上限が1%まで達することが認められた。これは、YCCが事実上、形骸化されたことを意味する。

 問題はまだある。

 日銀には「リフレ派」と言われた委員がいる。安倍晋三・菅義偉政権で任命された人たちだ。だがいずれも今回のYCC修正に賛同している。むしろリフレ派ではない中村豊明委員が企業への悪影響を懸念して反対したのは立派だ。中村委員よりも決断力と識見で劣る日銀内リフレ派が、植田日銀の緩和終了を止める力があるのか心もとない。

■田中秀臣

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日銀は現金融システムを護るのではなく、日本の金融システムが誰にとっても有益な形で進化する方向を模索せよ(゚д゚)!

植田日銀総裁

現在の植田日銀総裁は、金融システム重視派(平たく言うと銀行などの金融機関の味方)です。これは、総裁の日頃の発言から間違いないと思います。

その根拠となる発言として、以下のようなものが挙げられます。
  • 2023年2月25日の参議院財政金融委員会で、「金融システムの安定は金融政策の最も重要な目標の一つである」と述べました。
  • 2023年3月8日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、「金融システムの安定は、経済成長と物価安定の両面で重要である」と述べました。
  • 2023年4月22日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、「金融システムの安定は、金融政策の独立性と公信力を維持するためにも重要である」と述べました。
これらの発言から、植田総裁は金融システムの安定を重視し、金融政策を金融システムの安定に役立てることを考えていることがうかがえます。


岩田規久男氏は、日銀副総裁だった2013年8月2日に日本経済新聞のインタビューで、「日銀の金融政策は金融機関のためではなく、国民経済のためにある」と発言しました。この発言は、当時の日本経済が低迷し、日銀が金融緩和を実施していた時期に行われたものです。岩田氏は、金融緩和は物価上昇を促進し、国民経済を活性化させるために必要だと主張しました。

以下は、岩田氏の発言の引用です。

「日銀の金融政策は金融機関のためではなく、国民経済のためにある。金融機関が利益を上げることは重要だが、それよりも国民経済を成長させることが重要だ」

 岩田氏の発言は、日銀の金融政策の目的について、金融機関の利益ではなく、国民経済の成長を重視すべきだと主張したものでした。この発言は、当時の日本経済の状況を反映したものであり、日銀の金融政策の方向性を示すものでした。

いかなる国の中央銀行も、金融機関のためではなく、国民経済のためにあるべきです。この意見を支持する資料をいくつか紹介します。

 イングランド銀行のミッション・ステートメントは、「通貨と金融の安定を維持することにより、イギリス国民の利益を促進する」であります。

 連邦準備制度理事会(FRB)のそれは、「米国金融システムの安定性、効率性、競争力を促進し、米国経済に安全で柔軟かつ安定した通貨・金融システムを提供すること 」である。

 欧州中央銀行のそれは、「ユーロ圏の物価の安定を維持すること 」である。 これらの使命声明はいずれも、金融機関の利益だけでなく、経済の安定と成長を促進する上での中央銀行の重要性を強調しています。

 加えて、金融機関よりもむしろ国民経済に焦点を当てた中央銀行の方が、経済成長を促進する上で効果的であることを示唆する学術研究も増えています。例えば、国際通貨基金(IMF)の研究によれば、「独立性が高く、物価の安定を促進する明確な任務を持つ中央銀行は、インフレ率が低く、経済成長率が高い傾向にある」といいます。

もちろん、中央銀行の政策に万能の解決策はないです。中央銀行の具体的な目標や目的は、その国の経済状況によって異なります。しかし私は、すべての中央銀行は金融機関の利益よりもむしろ、国民経済に主眼を置くべきだと考えます。これが、中央銀行がすべての国民の利益のために経済成長と安定を促進できるようにする最善の方法です。

日銀が国民よりも金融機関の法律を重視するような政策をとれば、いずれ国民から多くの反発が出るでしょう。なぜなら、日銀は自分たちの利益のために動いているのではなく、むしろ金融機関の利益のために動いていると人々が感じるからです。その結果、日銀や日本の金融システム全体に対する信頼が失われる可能性があります。

さらに、アップルバンクのような機関が日本に誕生すれば、銀行システムの淘汰が進む可能性もあります。なぜなら、アップルバンクは顧客により良い金利やサービスを提供することができるため、従来の銀行は競争を強いられることになるからです。その結果、一部の銀行が廃業したり、他の銀行との合併を余儀なくされたりする可能性があります。

アップル・バンク

日本にアップルバンクのような機関ができることで、人々の銀行に対する考え方が変わる可能性があります。人々は、オンラインバンクやモバイルバンクなど、従来とは異なる銀行を利用することに関心を持つようになるかもしれないです。その結果、伝統的な銀行の利用が減少し、金融システムに様々な影響を及ぼす可能性があります。

銀行システムの淘汰は、銀行セクターの競争低下にもつながる可能性があります。その結果、消費者にとっては手数料の上昇や金利の低下につながる可能性があります。

日本銀行に対する信頼の喪失は、日本銀行が金融政策を効果的に実施することを困難にする可能性があります。これは日本経済に悪影響を及ぼす可能性があります。

アップルバンクは、わかりやすい事例の一つとてあげただけであり、これに限らずフィンテックが進むにつれ、旧態依然とした銀行は淘汰される可能性が高いです。なぜなら、フィンテック企業は伝統的な銀行に対して、以下のような多くのメリットを提供できるからです。

手数料が安い:フィンテック企業は伝統的な銀行のような諸経費を持たないため、顧客に低手数料を提供することができます。

顧客サービスの向上: フィンテック企業はレガシー・システムやプロセスに煩わされることがないため、より優れた顧客サービスを提供することができます。

より便利なサービス: Fintech企業は、オンライン・バンキングやモバイル・バンキングなど、従来型の銀行が採用するのが遅れがちな、より便利なサービスを提供することができます。

こうした利点の結果、フィンテック企業は急速に市場シェアを拡大しています。実際、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの最近の調査によると、フィンテックは2030年までに従来の銀行の収益の最大40%を代替する可能性があるといいます。

フィンテック企業は革新を続け、顧客により良い新しいサービスを提供しているため、この傾向は今後も続くでしょう。その結果、状況の変化に適応しない伝統的な銀行は、存亡の危機にさらされることになるだろう。

全体として、フィンテックの台頭は銀行セクターに大きな影響を与える破壊的な力です。伝統的な銀行は状況の変化に適応しなければ、淘汰されるリスクを負うことになりそうです。

日銀が旧来の金融システムを維持しようとすれば、世論の大きな反発を受けるだけでなく、日本の金融システムは諸外国に比べて柔軟性を欠くようになり、日銀や旧来の銀行などの金融機関が金融システムの足を引っ張るようになるかもしれないです。

以下は、フィンテックの台頭に適応するために日銀が取りうる具体的な措置です。

フィンテックの進展 AI生成画像

研究開発への投資: 日本銀行は、フィンテックの革新という点で時代の先端を行くために、研究開発に投資することができます。これには、ブロックチェーンや人工知能など、金融システムの効率性と安全性を向上させるために利用できる新技術の開発が含まれます。

フィンテック企業と提携する: 日本銀行はフィンテック企業と提携し、知識や専門性を共有することができます。これは、日銀が最新のフィンテックの動向を理解し、消費者のニーズを満たす新しい商品やサービスを開発するのに役立つでしょう。

フィンテック企業を公正に規制する: 日本銀行は、フィンテック企業が伝統的な銀行と公平に競争できるよう、公正な規制を確保する必要があります。これは、日本の金融システムがグローバル経済において競争力を維持することにつながります

日銀はこうした措置を講じることで、フィンテックの台頭に直面しても、日本の金融システムが関連性と競争力を維持できるよう支援できます。

日銀と銀行を監視するだけでなく、世論が正しい方向に導かれるよう、今、世論を形成する必要があります。フィンテックの利点と金融セクターの変革の必要性について、国民に啓蒙する必要があります。また、日銀や銀行の行動に対する責任を追及する必要があります。これらのことを実行すれば、日本の金融システムが誰にとっても有益な形で進化することを確実にすることができるでしょう。

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