2024年2月19日月曜日

時価総額1000兆円消失すらかすむ、中国から届いた「最悪のニュース」―【私の論評】中国の経済分野の情報統制のリスクに日本はどう備えるべきか

 時価総額1000兆円消失かすむ、中国から届いた「最悪のニュース」

まとめ

  • 中国株式市場は2021年以降、巨額の時価総額を失った
  • 中国政府が経済のネガティブ情報を取り締まろうとしている
  • 言論統制により経済の不透明性が高まっている
  • 経済運営の透明性向上が必要不可欠
  • 政府が悪いニュースも含めて情報公開できるようになることが自信の表れ


 中国株式市場は2021年以降、日本とフランスのGDP合計に匹敵する7兆ドルもの巨額な時価総額を失った。だが最も懸念されるのは、中国政府が株式市場をはじめとする経済のネガティブな情報を流布する者を取り締まろうとしている点だ。

 中国の国家安全省は「経済宣伝と世論誘導を強化」すると表明し、エコノミストやジャーナリストの論評が検閲されるなど、言論統制が強まっている。SNS上でもユーザーに対し、中国経済の悪口を言わないよう求められている。これは自国経済に自信のない政府の特徴といえる。

 中国はむしろ経済運営の透明性を高め、良いニュースと同様に悪いニュースも公表する開放性が必要だ。習近平国家主席は2012年、市場メカニズムの活用を約束したが、その後は経済のブラックボックス化が進み、コーポレートガバナンスも後退した。

 香港でも国家安全法などにより表現の自由が制限されつつある。メディア統制により経済の不透明性が高まれば、世界の投資家と中国本土の経済実態の乖離が広がることになる。

 資本流出を食い止めるには、中国が資本市場や企業の透明性を高めることが不可欠だ。習政権が自国経済に自信を取り戻し、良いニュースも悪いニュースも公表する開放性を示せるようになることが、真の自信の表れとなるはずだ。

 このニュースは元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の経済分野の情報統制のリスクに日本はどう備えるべきか

まとめ
  • 中国では厳しい検閲が行われており、株安報道を事実上禁止する事態に発展。特にGDP成長率の誇張報告に疑惑。
  • 中国の情報統制は投資家の信頼喪失、企業の不正会計や過剰報告増加、マクロリスク対応の遅れ、法の支配の毀損などの弊害をもたらしている。
  • 日本の対中対応策として、数値目標を掲げて透明性向上を求める。対中ビジネス契約に仲裁条項を設定があげられる。
  • 中国への依存分野においては、第3国多元化を進めるべき。
  • メディアは独自情報収集に注力すべきであり、民間交流で安全保障観点を意識すべき

情報統制 AI生成画

中国では、元々政府による厳しい検閲が行われていました。最近それがさらに厳しくなっただけです。2015年の株安の際、当局は大手メディアに対し「市場安定のため」として株安報道を事実上禁止した(ウォール・ストリート・ジャーナル紙報道)。また、GDP成長率を目標達成のため誇張報告しているとの疑惑が各国から出ている(米ブルッキングス研究所レポート)。これらは経済実態の歪曲です。

一方の日本では、報道の自由が憲法で保障されているものの、マクロ経済政策分析。例えば、日銀のマイナス金利政策は、リフレ派の経済学者からは評価される政策だが、一部メディアは副作用を過度に強調したと指摘される(経済アナリスト野口旭評)。記者の政策理解が不十分な報道が散見される。

望ましい経済報道とは、マクロ経済学の専門知識に基づき、政策の意義と課題を多角的に検証・分析するものです。日本の報道の自由を前提に、質を高めることが課題です。

このように、検閲が問題の中国とは対照的に、日本の報道機関は報道の自由を享受してはいますが、専門性向上が課題です。

報道の自由 AI生成画

中国の情報統制が経済発展に与える弊害について、さらにより具体的な事例を含めて解説します。

第一に、投資家が必要な情報を得られないことで信頼が失われます。中国株式市場からの資金流出額は2021年だけで1兆ドルを超えました。株安に歯止めがかからないのは、企業の実態が不透明なことが大きな要因です。投資判断に必要な財務情報や事業計画がブラックボックス化されているため、投資家は中国株への信頼を失っています。情報開示を通じた透明性の確保無くして、株式市場の安定は望めません。

第二に、企業の不正会計や過剰報告が増えます。大手デベロッパー「恒大集団(China Evergrande Group)」は3000億ドルの借入金を抱えていますが、その実態は情報非開示により長年にわたり隠されてきました。投資家に開示されるべき財務情報が歪められたことで、同社の財務リスクは表面化が遅れました。このような企業不祥事の増加は、経済全体の安定をも脅かしかねないです。

第三に、マクロリスクの把握が遅れ対応が後手に回ることになります。中国の財政赤字は公表値の約3倍との試算がありますが、この重大なリスクが表面化する前に適切な政策対応を取ることが困難になります。景気刺激策の副作用が顕在化する前に、財政再建に向けた政策転換が必要ですが、それが遅れることになりかねないです。

第四に、法の支配が損なわれることになります。上海ロックダウンにおいて、食料アクセス要求の投稿が検閲されたことは、表現の自由すら制限されている事を示しています。言論を統制するこのような状況下では、契約履行や権利保護など、公正な法の運用が期待できません。

透明性の低い情報統制体制下では、企業の不正会計やシステミックリスクも見落とされかねないです。中国が2049年までに米国のGDPを超えるという習近平政権の目標は、経済専門家からは「非現実的」との指摘が強い(米シンクタンクCNBC調査)です。むしろ情報開示による透明性向上が成長の鍵となります。

以上から、情報統制を強める中国の成長モデルはすでに行き詰っていると見るべきです。むしろ開放と透明性が必要不可欠です。

日本の対中対応 AI生成画

日本の対中対応の具体策については、以下のようなことがいえます。
  • 具体的な数値目標を掲げて強く求めるべきです。例えば、国営企業の財務諸表の透明性向上などを明確な日程計画や議題として設定すべきです。
  • 日本企業の対中ビジネスでは、契約における仲裁条項の設定を義務付けることも検討すべきです。中国企業の契約不履行リスクに備えるべきです。
  • 技術依存では、半導体や車載バッテリー等の重要分野で、サプライチェーンの過度な中国集中を避けるため、第3国多元化を進める必要があります。
  • メディア各社は、中国への取材強化による独自情報収集に注力すべきです。公式発表に依存しない報道体制を確立することが重要です。
  • 民間交流でも、中国側参加者のバックグラウンド調査を徹底する等、安全保障の観点を意識する必要があります。
このように、日本各界はそれぞれの立場から、中国の情報統制のリスクに具体的に対処すべきであると考えます。

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