- 中国の消費者物価指数が前年比0.5%の下落でパンデミック以来の最低を記録。
- 西側諸国では中国のデフレが一部のデフレを自国に「輸入」する可能性があり、これはインフレ抑制に役立つと考えられる。
- 中国のデフレは西側諸国にとって好ましい影響をもたらす可能性があり、インフレ期待に影響を与えると議論されている。
- アメリカの消費者物価指数は3.1%で、FRBの目標を上回っており、金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、注目が集まっている。
- 中国のデフレが西側諸国にとってはインフレ抑制になり得るが、アメリカでのインフレ崩壊につながる可能性もあり、債券投資家はこの状況を好ましく見るかもしれない。
だが、これは西側諸国にとっては良い知らせであり、デフレの一部を自国に「輸入」できる可能性があると、アナリストは見ている。
中国のデフレ問題は、西側諸国にとっては歓迎すべきインフレ抑制効果があるという。
中国は経済的困難が続き物価が再び下落しているが、中国政府の苦悩は西側諸国の勝利につながる可能性があるとアナリストは語っている。
これは、中国のデフレ傾向が、アメリカのような必要以上の物価上昇を抑えるかもしれないからだ。
「中国が国際貿易を通じて世界にデフレを輸出するのではないかという懸念が高まるため、中国経済が回復を示せない期間が長くなるほど、西側諸国のインフレの期待は下がる可能性が高くなる」とマッコーリー(Macquarie)のストラテジストのティエリー・ウィズマン(Thierry Wizman)は述べた。
11月、中国の消費者物価指数は前年比で0.5%下落し、パンデミック以来の最低となった。2023年初頭には物価がマイナスから再び上昇したが、回復への期待は裏切られた。
一方、世界的に見ると、同期間におけるアメリカの消費者物価指数は3.1%で、前月の3.2%から若干落ちた。
アメリカの金融市場はインフレ鈍化を歓迎しているが、依然として連邦準備制度理事会(FRB)の目標の2%を上回っている。アメリカの投資家はFRBがいつ金利引き下げを開始するかを推し測っているため、これらのインフレの数値に大きな注目が集まっている。
ウィズマンと同様に、ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のアナリストのアルバート・エドワーズ(Albert Edwards)も、中国のデフレは物価下落を自国に「輸入」したいと考える西側諸国にとって救済のサインになると見ている。
「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」
中国のデフレは、不動産セクターの崩壊、外貨の流出、パンデミック後の冴えない成長からくるものであるため、驚くものではない。
依然としてGDPの成長が健全なアメリカとは対照的だ。だが、突然の逆転は、中国のデフレをメリットではなく障害にしかねない。
「仮に(マネーサプライの弱さを反映して)アメリカのハードランディングが迫り、いずれにしてもアメリカ国内のインフレ崩壊を引き起こすなら、それは台無しになり、中国のデフレを輸入することは、歓迎されず状況を悪化させるだろう」とエドワーズは述べた。
「念のために言っておくが、債券投資家はこれを歓迎するだろう」
- 中国経済の減速により、中国国内のインフレ率が低下している。
- 中国の輸出向け製品の価格も下落している。
- 中国の景気減速は、世界的なインフレ圧力の抑制につながる可能性がある。
- 中国の景気減速は、日本など西側諸国にとってプラス要因となり得る。
- 日本政府は、来年の中国によるデフレ圧力とエネルギー・資源価格の低下に伴うデフレリスクに備えて、さらなる積極財政と金融緩和を行うべき。
中国のデフレ圧力、欧米中銀にとって朗報=PIMCO―【私の論評】中国の長期デフレにより、世界のマクロ・バランスが元に戻る可能性がでてきた(゚д゚)!
これは、8月17日の記事です。この元記事の要約を以下に掲載します。
中国のデフレ圧力 AI生成画像 |
中国のデフレ圧力が世界市場に波及する可能性があると、米大手債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は分析した。中国経済の悪化は、中国国内のインフレを緩やかにし、中国製品が供給される市場でもインフレ鈍化が進む可能性があると指摘している。
PIMCOのエコノミスト兼マネジング・ディレクター、ティファニー・ワイルディング氏は、「中国におけるデフレの持続は先進国市場に波及する可能性が高い。人民元安と在庫・売上高比率の上昇により、中国製品の海外価格が下落するからだ。先進国の中銀はこのような展開を歓迎するだろう」と述べている。また、「通常の遅れを考えると、デフレの波及は世界の消費者市場に影響を与え始めたばかりであり、今後数四半期にわたって値下げが加速する可能性が高い」としている。
中国にとって、デフレ圧力がさらに強まるリスクは今後数カ月の政府の政策にかかっている。内需拡大に向けた十分な財政刺激策はインフレを再加速させるかもしれないが、政策措置の遅れや不十分さは下降スパイラルにつながる可能性があるとした。
中国国家統計局が今月9日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりにマイナスとなった。長引く不動産不況や輸出入の減少で中国経済が減速する中、デフレ圧力が強まっているという懸念を助長する内容となった。
一方、オックスフォード・エコノミクスは16日付のメモで、中国の2023年国内総生産(GDP)成長率予測をコンセンサスを下回る5.1%に引き下げた。「デフレ、低調な貿易、ローン需要の急減、不動産セクターの麻痺がリスク選好度を低下させる」とした。
中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!
これは、7月18日の記事です。こちらも元記事を要約したものを以下に掲載します。
FRBパウエル議長 |
中国経済は2023年に予想以上に減速しており、成長予測は引き下げられ、インフレ率は低下している。
中国の景気減速は世界経済と市場に悪影響を及ぼしている。一次産品の価格は下落しており、商品の需要は減少している。現状では、世界的にインフレの軌道修正が課題となっている。
中国経済の減速は、米国連邦準備制度理事会(FRB)にとって救いとなっている。中国の景気減速は、FRBに対する積極的な利上げ継続への圧力を軽減している。
中国ではデフレの兆候が見られ、消費者物価と生産者物価が多くの分野で下落している。中国の内需は著しく減速している。中国の輸出に対する外需も急減した。
中国の景気減速は、今年の力強い中国の成長を期待していた米国および世界経済にとって悪いニュースである。
中国は依然として金融政策と財政政策を通じて経済を刺激する可能性がある。しかし、中国は債務水準の削減と通貨安の回避に努めるため、大規模な景気刺激策の実施を躊躇する可能性がある。
今のところ、中国経済の減速により、米国を含む世界全体のインフレ圧力が低下している。しかし、中国の政策担当者が成長刺激を決定すれば、状況は変わる可能性がある。
中国の「中国のデフレ問題は、西側諸国にとって歓迎すべきインフレ抑制になり得る」のは十分にあり得る話です。
このところ世界はかなりのインフレに悩まされてきました。エネルギー・資源価格が、高騰しかなりのインフレが続いていました。未だデフレ気味の日本では考えられないほどの物価の上昇が続いてました。
エネルギー資源価格は、過去の経緯からいっても、常識的に考えても、いつまでも上昇し続けることはありません。価格が高騰すれば、多くの地域で、増産などがはじまり、価格はいずれ安定します。
ただ、エネルギーや資源などを増産するにしても、すぐにはできません、1年から数年は要します。そのため、増産までには一定のタイムラグがあるので、一時的に高くなるのです。
来年は、エネルギー・資源価格の高止まり状況は終わり、今度は低くなっていくことでしょう。それに加えて、中国のデフレにより、今度は全世界的なインフレ傾向は収まることになるでしょう。
日本においては、エネルギー・資源価格高騰のため、物価が上がっていましたが、それがおさまり、さらに中国によるデフレ圧力が加わり、デフレ傾向がまた顕著になる可能性があります。
これを考えると、日銀が昨日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和政策の維持を決めたのは正解でした。
日銀植田総裁(左)と岸田首相 |
もし、利上げなとが決定されていたら、来年はさらにデフレが亢進したことでしょう。例年だとこの時期には、日銀が金融政策を変えるということはありません。なぜなら、来年度予算編成をしつつある今の時期に、日銀が金融政策を変えると予算編成の前提が狂ってしまい、編成作業をやり直さなければならなくなるからです。
ですから、余程のことがない限り変えないのが普通です。しかし、現在政治資金の不記載問題で、政局が揺れている現在、岸田政権はレームダック化しつつあり、この時期に日銀官僚等の思惑で、ゼロ金利政策をやめて金融引き締めに踏み切ってしまえと考える可能性もあったのですが、それは回避されました。
本当に良かったです。もし、利上げに踏み切ってしまえば、日本だけでなく世界に悪影響を及ぼし、リーマンショックよりもはるかに甚大だ悪影響を国内外に及ぼす可能性については、最近このブロクで指摘したばかりです。
リーマン・ブラザーズが入居していたビル |
さて、来年はエネルギー・資源価格は下がり、中国のデフレ圧力が強まる可能性があります。現在政治資金の問題で、政局は揺れていますが、来年は日本ではデフレが深化する恐れがあります。今後政局がどのように揺れたにしても、国民のことを考えれば、政府は積極財政を、日銀は金融緩和を継続するだけではなく、量的にも質的にも、緩和政策を強化すべきです。
政局がどんなに揺れたとしても、政府・日銀が正しい政策をすれば、政府の信任も高まることになります。岸田政権はそのことをしっかり認識して、政権運営を実行すべきです。
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