まとめ
- 台湾の記者が中国共産党からの指示で偽の世論調査記事を報じ、総統選挙に介入した疑いが強まった。
- 記者は実際の調査を行わず、支持率を捏造した。
- 検察は中国当局からの指示を受けて特定候補者の選挙結果を操作した疑いを調査している。
- 台湾の情報機関は中国からの干渉に警戒し、資金流入にも注視している。
- この事件は台湾政府の中国からの情報操作への警戒を高め、選挙の信頼性を強調している。
この記者は、2023年10月以降、台湾北部、中部、南部で、それぞれ300人以上の有権者を対象とした世論調査の結果だとする記事を報じていました。しかし、実際には調査は行われず、候補者の支持率などをねつ造していたということです。
検察は、この記者が中国・福建省の共産党委員会の当局者から指示を受け、特定の候補者を当選または落選させる意図で、うその情報を流布した疑いが強まったとしています。
台湾の情報機関である国家安全局のトップは、11月、台湾の世論調査機関の専門家や責任者が中国当局の招待で現地を訪問した事例があると明らかにしていました。また、こうした機関に中国から資金が流れていないかどうか注視していることも明らかにしていました。
今回の事件は、中国が台湾の選挙に介入する新たな手段として、偽の世論調査を活用しようとした可能性があると指摘されています。
- 台湾の次期総統選挙は、統一の是非ではなく、経済や社会政策などを中心に争われる。
- 台湾の経済は、中国依存の課題を抱えているが、マクロ経済政策はコントロール可能の状態にあり、それが中国が台湾につけ込む隙を与えていない。
- 与党・民主進歩党(民進党)からは、蔡英文総統の後継として路線を引き継ぐ頼清徳氏
- 最大野党・国民党からは侯友宜氏(新北市長)
- 第3政党「台湾民衆党」からは柯文哲氏(党主席)
最新の世論調査では、頼清徳氏が36.5%、柯文哲氏が29.1%、侯友宜氏が20.4%の支持率を得ています。これらの数値は選挙戦が進行するにつれて変動する可能性があります。選挙の争点は統一の是非ではなく、むしろ経済や社会政策などにあり、台湾の約4割を占める無党派層の支持の獲得が勝敗を分けると考えられています。
社会問題
- 台湾の経済は、製造業を中心に上昇の一途を辿っています。特に半導体産業が世界一の強みとなっています。しかし、台湾経済の最重要な問題は、中国依存です。台湾と中国は政治的な関係がよくありません。もし何かあれば、中国から経済的な制裁を受けることもあります。
- 台湾の経済成長率はおよそ3%前後を推移しています。しかし、市民の間では不満が高まっているようです。
- 台湾と中国の関係は、近年緊張が高まっています。中国の習近平国家主席は台湾「統一」は「必ず果たさなくてはならない」とし、そのための武力行使の可能性を排除していません。
- 台湾の国防部は中国との関係はこの40年間で最悪だとしています。台湾は自衛できるのかという問題もあります。
台湾の債務残高については、現時点では深刻な問題はないといえます。債務残高対GDP比は2022年12月現在、約29.7%で、国際平均の約60%や自主規制の50%を大幅に下回っています。
中央政府の債務が 債務総額の大部分を占め、2022年にはGDPの約26%です。
政府と中央銀行を含む 統合政府の債務総額はGDPの40%に近い可能性があると考えられています。
台湾の全体的な債務状況は短期的に管理可能です。
CBT(台湾中央銀行)はインフレ上昇に対抗するため、2022年3月から政策金利を徐々に引き上げてきました。しかし、2023年3月以降はインフレと経済成長鈍化への懸念のバランスを取りながら、政策金利を据え置いています。
台湾中央銀行 |
インフレ率は2023年初頭に約3.6%でピークに達しましたが、それでも他国と比較すれば、元々低い水準です。6月には約2%まで徐々に冷え込んでおり、今後も低下すると予想されます。失業率は3.5%前後と引き続き低い状況にあります。台湾の金融政策も特に問題はなく、今後何か起こったにしても、コントロール可能の状態にあるといえます。
台湾政府のマクロ経済政策がコントロール可能ということは、重要です。マクロ経済に大きな問題、特に大きな債務問題などがあると、中国はここにつけ込む隙を見出すでしょう。
これは、非常に重要なことで、戦後日本が高度成長をはじめた頃から、日本ではそれまで色濃かったソ連の影響がなくなったとされています。経済が不安定だと、それを不満に感じる人が増え、それが敵対勢力などに利用されやすくなります。これは、世界中で普通にみられる現象です。
しかし、台湾の現状は経済的にはあまり問題はなく、それが中国につけ込む隙を与えにくいようにしています。それどころか、現在の大陸中国の経済はコントロール不能の状態に入りつつあります。だからこそ、上の記事のように中国が台湾でフェイクニュースを流そうとするのでしょう。
フェイクニュースの見極め方(クリックすると拡大します) |
経済が悪くなれば、中国やロシアなどにつけ込む隙を与えてしまうというのは、無論日本も例外ではありません。現在の日本は、政治資金不記載問題で揺れていますが、不明瞭な慣行は正すべきですが、これ一色になり、経済がなおざりにされてしまえば、経済が悪化して、中国やロシアにつけ込む隙を与えかねません。
そのようなことにならないように、有権者は政府を監視し、政治家は、政局などに惑わされたり扇動されたりして道を誤らないようにしていただきたいものです。
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