2023年12月18日月曜日

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」―【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

レームダック化が止まらない岸田首相に「日銀」が仕掛ける「ステルス引き締め」

まとめ
  • 岸田内閣に対する国民の支持率は歴史的に低く、政権の安定を脅かす可能性がある。
  • 安倍首相関連の閣僚を交代させ、林氏を起用しても、岸田内閣の支持率は改善しなかった。
  • 岸田氏の「自我の目覚め」による減税計画は財務省と衝突しており、検察は岸田氏をさらに弱体化させるために安倍派をターゲットにしている可能性がある。
  • 日銀は、岸田政権の苦境を、政治的干渉を受けずに金融政策を調整する好機と見ている。
  • 日銀はこの好機に、技術的にはマイナス金利政策を維持しながらも、金利を微妙に引き上げる「ステルス引き締め」をする可能性がある。

 岸田文雄首相は、安倍晋三前首相の政策に沿った4人の閣僚を交代させたが、内閣支持率の低迷は続いている。内閣改造の前後に行われた最近の世論調査では、内閣支持率は2012年に自民党が政権に返り咲いて以来最低の水準となった。

岸田首相

 この支持率の低さは、野党が強ければ政権交代の可能性を高める。検察庁と密接な関係にある財務省は、岸田首相の最近の減税重視の姿勢をよく思っておらず、安倍一派排除の動きを支持しているとされる。

 日本銀行(BOJ)も岸田政権のレームダック化を歓迎しているようだ。日銀の上田和男総裁は、金融政策の運営は今後数カ月でより難しくなると表明している。インフレターゲットが金融政策変更の指針であることに変わりはないが、現在の経済状況は変更を正当化するものではない。

 上田総裁は、雇用志向よりも金融機関志向の金融政策を好むことで知られている。短期マイナス金利と長期ゼロ金利からなる日銀のイールドカーブ・コントロール政策は精査されており、短期マイナス金利の解除の可能性は金融政策の「ステルス引き締め」となる可能性がある。

 現在、政治とメディアが政治資金問題に焦点を当てているため、金融政策から注意がそれている。岸田内閣が政治的課題に直面しているため、政策がアベノミクスとは逆の方向に傾く可能性があると推測されている。12月と1月に開かれる日銀の政策決定会合で、金融政策の方向性が変わるかどうかが見極められるだろう。

 「ステルス引き締め」に関しては、デフレ完全脱却のチャンスとでも官邸に説明すれば、官邸は何も言わないだろう。  

 短期のマイナス金利の変更は、超テクニカルなので、ステルスでやることもできる。今の日銀当座預金について、三層に分かれるが、一層の金利は0.1%、二層目はゼロ金利、三層目がマイナス0.1%。そこで、三層の分け方を微妙に変更すれば形式的にはマイナス金利は維持だが、実質的に金融引き締めというように「ステルス引き締め」が可能だ。 

 しかも、今メディアや世論は政治資金問題に染まっている。来年の通常国会開催までに、誰が検察に事情聴取され誰が立件されるかというのが延々と報じられることになるだろうから、金融政策への関心は若干薄れている。

 財政政策でも金融政策でも、逆アベノミクスになるような政策がでてくるかしれない。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】リーマン・ショックから15年後:日本銀行の政策修正が世界経済に及ぼす影響とは?

まとめ
  • 15年前のリーマン・ショックは「ブラック・スワン」と呼ばれる困難な出来事だった。
  • リーマン・ショック前にも危機の兆候があり、各国で金融機関の問題が発生していた。
  • 現在、日本銀行の政策修正についての議論が起きており、ゼロ金利政策の解除は慎重を要する。
  • 日本の政策変更が世界経済に波及する可能性があり、米国や中国の影響も大きい。
  • 日本が利上げを行い、それが世界経済に及ぼす影響が大きければ、日本ではリーマン・ショックを上回る災厄が起こる可能性がある。

リーマン・ブラザーズ本社があったタイムズスクエアビル

 2008年のリーマン・ショックから15年が経過しました。当時の金融危機は、確率論や従来の知識や経験に基づいて予測することが困難な極端な出来事である「ブラック・ スワン」と呼ばれました。

 日本銀行が本格的な利上げを実施すれば、次に起こる災厄はリーマン・ショックよりもはるかに大きくなる可能性があります。それは、日本のみならず、全世界的なものになるでしょう。なぜなら、グローバルな金融(マネー)がリーマン・ショック時よりもはるかに膨張しているためです。

 リーマン・ショック以前にも、危機の兆候はありました。2007年8月には、フランスの大手金融機関BNPパリバが投資ファンドの償還を停止すると発表した「パリバショック」が起きました。

 2009年には、スイスの金融大手クレディ・スイスが金融取引で巨額の損失を出した。同社は、今年8月にニューヨークの裁判所に Chapter 15 破産保護を申請しました。

 今年3月には、米国のシリコンバレー銀行が崩壊しました。ソーシャルネットワーキング時代の株高が電子ネットワークを介して「数秒のうちに」広がり、金融当局を慌てさせました。

 また、ロシアのウクライナ侵攻は依然として続いており、イスラエルとパレスチナの戦闘も10月に始まって以降、収まる気配を見せません。

 リーマン・ショック時、世界各国の中央銀行は経済を「支えるために」余剰資金を供給しました。当時の日銀は、それをしなかったため、日本はリーマンショックの震源地でないにもかかわらず、日本は申告なデフレと超円高に悩まされました。しかし、現在のインフレの時代には、その余剰流動性を維持することがますます困難になっています。

 米国の利上げは、債券価格の下落を通じて、先述のシリコンバレー銀行やその他の破綻に大きな影響を与えました。

 日本でも、金融緩和政策の修正を求める声が上がり始めています。しかし、現状では「ゼロ金利」の解除には、痛みを伴うのは確実です。なぜなら、現在の日本はデフレから抜けきっておらず、消費は相変わらず低迷しているからです。

 日本銀行がゼロ金利政策を解除すれば、米国や中国などにも影響が及びます。米国や中国のバブルは、日本では想像もできないほど膨らんでおり、それが崩壊すれば、被害は計り知れないです。

日銀植田総裁(左)と岸田総理

 日銀が「ステルス引き締め」により、引き締めに転じ、来年利上げに転ずることになれば、今度は日本が震源地となり、それが米中等にも波及し、世界経済が低迷することになるでしょう。

 そうなると、円高になり、日本の輸出企業も悪影響うけ、しかも国内消費はさらに低迷し経済は低迷し、そうして他国が利下げに走るなか、日銀が利上げを継続し、さらに財務省が緊縮に走れば、そのときリーマン・ショックをはるかに上回る災厄が日本を襲うことになるでしょう。

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