2023年12月4日月曜日

紅海で米軍艦や商業船攻撃 中東の緊張高まる―【私の論評】海上自衛隊、フーシ派の襲撃にどう対処すべきか? ネガティブリストへの移行が喫緊の課題

紅海で米軍艦や商業船攻撃 中東の緊張高まる

まとめ
  • アメリカ軍の駆逐艦と商業船が中東の紅海で攻撃を受けた。
  • アメリカ海軍のカーニー駆逐艦と商船が5時間にわたり攻撃され、少なくとも1機の無人機が撃墜された。
  • 攻撃はイエメンの首都から始まり、イラン支援のイエメン武装組織フーシ派によるものとされ、緊張が高まっている。

米海軍駆逐艦「カーニー」

 米国防総省は3日、紅海で米海軍の駆逐艦カーニーと複数の商業船が攻撃されたと明らかにした。AP通信が報じた。相手には言及していない。カーニーは11月29日にイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域から飛来したイラン製無人機を撃墜。フーシ派は同19日にイスラエルに関係する貨物船を乗っ取るなどして緊張が高まっている。

 フーシ派は3日、警告に従わなかったため、イスラエルの船舶2隻を攻撃したと発表。「1隻目をミサイルで、2隻目を無人機でそれぞれ標的にした」としているが、カーニーへの攻撃の言及はなかった。一方、ロイター通信によると、イスラエル軍の報道官は「2隻はイスラエルと関係ない」と述べた。

 米国はイスラエルと敵対するイランや親イラン勢力がパレスチナ自治区ガザ情勢の混乱に乗じて、中東で活動する米軍部隊に揺さぶりをかけているとみて警戒。APは「イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関連した中東での一連の海上攻撃が大幅にエスカレートした可能性がある」と報じた。

【私の論評】海上自衛隊、フーシ派の襲撃にどう対処すべきか? ネガティブリストへの移行が喫緊の課題

まとめ
  • 2023年11月27日、中東のイエメン沖で民間タンカー「セントラル・パーク」号が、襲撃を受けた。
  • 海上自衛隊は、ソマリア沖の海賊対処に加え、中東海域での航行妨害などに対応するため、護衛艦1隻と対潜哨戒機2機をジブチに展開している。
  • 海上自衛隊は、フーシ派による襲撃に遭遇した場合、海賊対処行動または海上警備行動によって対処することができる。
  • 海上自衛隊は、ポジティブリスト方式で統制されており、状況に応じた柔軟な対応が難しいという問題がある。
  • 中東は日本の重要なエネルギー資源の供給地域であり、海上自衛隊の迅速かつ柔軟な対応が求められている。そのため、ネガティブリスト方式への移行は喫緊の課題。
先日もこのブログに掲載したとおり、2023年11月27日、中東のイエメン沖を航行していた民間タンカー「セントラル・パーク」号が、武装勢力による襲撃を受けました。米海軍と日本の海上自衛隊が現場に急行し、襲撃犯は逃走しましたが、米軍により身柄を拘束されました。

海上自衛隊は、ソマリア沖の海賊対処に加え、中東海域での航行妨害などに対応するため、護衛艦1隻と対潜哨戒機2機をジブチに展開しています。

中東に派遣されている海自護衛艦「あけぼの」

今後、中東海域でフーシ派による襲撃が発生した場合、海上自衛隊は「海賊対処行動」または「海上警備行動」によって対処することができます。そうして、まさしく上の記事にもあるように今回フーシ派による米駆逐艦と商船に対する攻撃があったのです。

「海賊対処行動」であれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。また、武器使用も可能です。

「海上警備行動」であれば、日本籍船や日本人が乗船する外国籍船、日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船などを保護できます。武器使用は、日本籍船に限られます。

どちらの行動を選択するかは、状況に応じて判断されます。

海上自衛隊がフーシ派による襲撃に遭遇した場合は、まずこれを海賊行為とみなして対処すべきでしょう。

フーシ派は、国際法上の海賊行為に該当する可能性が高いからです。また、海賊対処行動であれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。

ただし、海賊行為とみなすかどうかは、国際法の解釈次第です。今後、海上自衛隊がフーシ派による襲撃に遭遇した際には、慎重な判断が求められるでしょう。

さらに自衛隊は他国の軍隊と異なり、ネガティブリストではなくポジティブリストで動かなければならいないという制約があります。

いわゆるルールには、ポジティブリスト方式とネガティブリスト方式の両タイプがあります。一般的に、警察はやっていいことだけを規定するポジティブリスト型であるのに対し、軍隊の権限規定は「原則無制限」であり、やってはならないことだけ規定するネガティブリスト型です。

有事にあっては、予測しがたいすべての事態に法令を整備することは不可能という認識が根底にあります。しかしながら、自衛隊はポジティブリストで統制されており、2009 年3 月に北朝鮮がミサイル打ち上げを予告した際、当時の浜田防衛相が初めて「破壊措置命令」を発令しましたが、これは命令がなければミサイルを撃墜できないポジティブリストの特徴を端的に表しています。

国防上は臨機応変に対応するために早急にネガティブリストへ移行することが望まれます。一刻の猶予もありません。

ネガティブリストは、やってはいけないことをリスト化する

例えば、フーシ派による襲撃のような事態の場合、海上自衛隊は、これを海賊行為とみなして海賊対処行動をとることができます。しかし、これが海賊行為に該当するかどうかは、国際法の解釈次第であり、必ずしも明確とは言えません。

もし、ポジティブリスト制限が撤廃され、自衛隊がネガティブリスト制限による行動制限以外の行動を許されるようになった場合、このような状況でも、海上自衛隊は、自衛隊法の解釈に縛られることなく、状況に応じた適切な判断と対応を行うことができるようになります。

厳格な交戦規定やポジティブリストに過度に依存することが、軍事的な効果を妨げ、紛争を拡大させた事例があります。以下はその例です。
  • 1979年のイラン人質事件では、米国の救出作戦が遅れと混乱、そしてワシントンの微細な管理に悩まされ失敗しました。指揮官により多くの自主性を与えることが成功につながったかもしれません。
  • 1993年のモガディシュの戦い(後に「ブラックホーク・ダウン」として映画化された戦い)では、厳格な交戦規定により米軍は要請された支援を受けられませんでした。規則を柔軟にしていれば、米軍の死傷者を減らすことができたかもしれません。
  • 2016年のブリュッセル爆弾テロ事件では、ベルギーの治安部隊がテロリストの隠れ家への突入を妨げる法律によって批判されました。もっと慎重な行動があれば、テロを阻止できたかもしれません。
  • 1995年のスレブレニツァ大虐殺では、オランダの平和維持軍は厳格な国連の規則により、8,000人のボスニア人虐殺を防げませんでした。柔軟な武力行使があれば、命を救うことができたかもしれません。
  • 2004年のベスラン学校包囲事件では、ロシア軍の戦術が混乱し、300人以上の人質が死亡しました。現場での統制と慎重さが高まれば、より良い結果が得られたかもしれません。
  • イラク/アフガニスタンにおける米軍は、テロリストとの交戦を制限する厳格な規則によって影響を受けました。過度な法整備は効果と士気を低下させました。

映画「ブラックホーク・ダウン」より

軍の行き過ぎた行為には問題がありますが、一般的に、厳格な規則は軍の行動を制限し、混乱と遅延を招き、敵を増長させ、作戦の有効性を損ないます。ある程度の制限と監視は必要ですが、軍の司令官は任務を遂行するために信頼と裁量を必要とします。

テロリストとの交渉や戦術部隊による攻撃など、ポジティブ・リストではなくネガティブなリストの使用が、国防とテロ対策に最も効果的であることを歴史は示しています。ただし、軍事的自由度が高まれば高まるほど、適切な判断と自制に対する責任も増します。

中東は、日本にとって重要なエネルギー資源の供給地域であり、また、日本の安全保障にとっても重要な地域です。そのため、中東で活動する海上自衛隊は、迅速かつ柔軟な対応が求められます。ネガティブリストへの移行はまさに喫緊の課題といえます。国会などで議論や審議を迅速にすすめていただきたいです。

LGBT理解増進法案には大反対ですが、この法律は迅速に制定されました。この迅速さを見習いネガティブリスト方式への移行を迅速にすすめていただきたいものです。


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