前原誠司氏離党の余波、自民・国民の連携加速か…飛び出す「公明党不要論」 前原新党〝いずれ維新と合流〟の声
◇
国民民主党の前原代表代行らが離党し、新党「教育無償化を実現する会」を結成した。この新党は、日本維新の会の看板政策である「教育無償化」を掲げており、今後は維新の会に合流する可能性が高い。
まとめ
- 国民民主党の分裂は、自民党と国民民主党の連携を加速させる可能性が高い。
- 一方、公明党は国民民主党の連立入りを警戒し、自民党の非主流派と連携して揺さぶってくる可能性がある。
- 自民党内では、民間労組との関係強化を進めており、国民民主党との接近はそうした動きの上でのものと考えられる。
- こうした動きを踏まえて、自民党の一部からは「公明党不要論」まで出ている。
前原氏らの離党は、国民民主党と与党の連携を加速させる可能性がある。前原氏らは与党との協調路線に強く批判的だったため、彼らの離党で国民民主党内の与党協調派が台頭し、自民党との連携が進むと考えられる。
これに対し、公明党は国民民主党の連立入りに警戒感を強めている。公明党は、憲法改正や安全保障政策などで自民党と協力関係にあるため、国民民主党が連立入りすれば、自民党との関係が悪化する可能性がある。
自民党内では、公明党不要論も浮上している。自民党は、民間労組との関係強化を進めており、国民民主党との連携により、公明党の存在意義が薄れつつあるとの見方もある。
今後、岸田政権は国民民主党とどのような形で連携していくのか、注目される。連立協議にまで突き進めば、党内政局に大きな波紋を呼ぶことになるだろう。
【私の論評】自公連立を運命づけた「日本列島総不況」が思い起こさせる政権の安定に必要不可欠なもの
まとめ
- 自公連立は、日本列島総不況(全国的な不況)による自民党政権の不安定化を回避するため成立したといえる。
- 自民党は、国民民主党と連立することで、政権運営の安定化を図ろうとしている。
- 国民民主党の玉木代表は、マクロ経済に関するまともな認識を持っているため、連立することで、経済政策が改善する可能性がある。
- しかし、現状では、自民党の多数派によって、国民民主党の影響力は限定的である。
- 自民党も野党も、政権安定には経済安定化が必要不可欠であることを認識すべきである。
こうした動きは、自民党側からみれば次の選挙で勝ち、圧倒的に多数の議席を占め、政権運営を安定させるということが狙いでしょう。方法については、異論はあるでしょうが、多くの自民党議員はこのこと自体には反対しないでしょう。
しかし、現状のままで政権の運営を安定させるために、このような動きをするのは全く無駄になる可能性が高いです。それは、なぜ自民党が公明党と連立政権を組まなければならなくなったのかを振り返れば理解できます。これは、以前このブログにも述べたことです。
自民・公明が連立政権を組む前の年である、1998年度に日本経済は、主要な需要項目が前年を下回り、大部分の業種が減収減益に見舞われる「日本列島総不況」に陥りました。 こうした需要の低迷を背景に物価も弱含みとなり、物価の下落が企業経営の悪化や雇用の減少を招き、それがさらに景気を悪くする「デフレ・スパイラル」に陥る可能性さえ考えられ状態になり、実際その後日本はそうなりました。
「日本列島総不況」は1998年の流行語大賞を獲得した これを模したTシャツが販売された |
日本経済が、このような状態になったのは、バブル期に確かに株価や地価はうなぎ登りでしたが、一般物価の上昇はさほどでもなかったのに、日銀官僚の誤謬によって、本来実施すべきでなかった金融引締に転じ、政府も緊縮財政に舵を切るなど、マクロ経済政策が間違ってしまったせいです。
日本列島総不況とは、1997年から1999年まで続いた不況のことです。この時期は「第2次平成不況」とも呼ばれています。
日本列島総不況は、経済状況が全国的に急速かつほぼ一様に悪化し、大都市圏と地方圏の区別なく、一気に飲み込んでしまったことを指しています。
この時期は、バブル経済が崩壊(現実には、この時期の一般物価は比較的安定していたにもかかわらず、日銀が金融引き締めをしたことによる景気の悪化)した1990年代初頭からの10年間を指す「失われた10年」に含まれます。この期間はバブルの後遺症ともいえる景気後退と長期不況が続いたため、日本の経済に大打撃を与えました。
日本列島総不況とは、1997年から1999年まで続いた不況のことです。この時期は「第2次平成不況」とも呼ばれています。
日本列島総不況は、経済状況が全国的に急速かつほぼ一様に悪化し、大都市圏と地方圏の区別なく、一気に飲み込んでしまったことを指しています。
この時期は、バブル経済が崩壊(現実には、この時期の一般物価は比較的安定していたにもかかわらず、日銀が金融引き締めをしたことによる景気の悪化)した1990年代初頭からの10年間を指す「失われた10年」に含まれます。この期間はバブルの後遺症ともいえる景気後退と長期不況が続いたため、日本の経済に大打撃を与えました。
「失われた10年」の時期は次のとおりです。
第1次平成不況(バブル崩壊・複合不況):1991年から1993年までこの時期に、マスコミや政治家、識者も、この不況の原因を理解せず、現象面だけをとらえ、政府は何らの抜本的解決策も取りませんでした。金融・財政政策に問題があるとした識者はごく少数にすぎませんでした。
第2次平成不況(日本列島総不況・複合不況):1997年から1999年まで
第3次平成不況(IT不況・デフレ不況):2000年から2002年まで
1999年1月前後のコアコアCPIは3%少し超えた程度であり、CPIは最高で4%程度です。これでは、とてもバブルなどとは言えない水準てす。ロシアや米国で昨年は11%にも及んだことを思い出してください。ここで、金融緩和をしないというのならまだ理解できますが、金融引き締めに転じたというのはかなり悪手だったといえます。
その後は、物価の下落が続き、日本は長いデフレに入ることになります。
経済の悪化は自民党にも相当影を落とし、支持率が低迷し連立しないと過半数を取れないような状況になってしまったのです。
この時代に、日本がまともな財政・金融政策をとっていれば、経済が落ち込むこともなく、自民党の支持率もあまり落ちることかなく、連立など組まなかったかもしれません。それは、高度成長期に自民が連立を組む必要などないどころか、思いもしなかったことでもはっきりしていると思います。
実は、経済は政権維持のために重要なファクターなのです。それは当たり前です。多くの有権者にとって、天下国家の話より、まずは自分たちの生活が安定することが最優先課題です。自分の生活が安定した後に、天下国家の話になります。それに気づいたからこそ、安倍首相は第二次政権においてはアベノミックスを打ち出し、長期政権を築くことができたのです。
安倍首相 |
安倍政権は結果として三党合意、財務省などに阻まれ、二度消費税増税をしなければならない状況に追い込まれました。それでも金融緩和は継続されこともあり、雇用は急速に改善され続けたからこそ、長期政権になったことは否めないと思います。
安倍政権は、デフレ脱却と経済成長を掲げ、国民の支持を集めました。コロナ禍においても、安倍・菅両政権で合計100兆円の補正予算を組み、経済対策を実行しました。これにより、他国にみられたような、コロナ禍中の失業率のかかなりのたかまりは日本においてはみられませんでした。
自民党は、政権を安定させるためにも、経済再生に全力を尽くす必要があります。そのためには、財政出動と金融緩和を組み合わせた積極的な経済対策を実施し、インフレ対策や物価高対策にも取り組むことが求められます。
野党も、経済再生に向けた具体的な政策を示すことで、国民の支持を獲得する必要があります。そのためには、政権交代後の経済政策を具体的に示すとともに、自民党の経済政策の課題を明確に批判する必要があります。
いずれにしても、まずは経済が安定しないと、政治の安定も望めないという点は、自民党も野党も共通認識として持つべきです。
国民民主党の玉木代表は、マクロ経済に関してまともな認識を持たれているようです。玉木代表は、2023年9月2日に行われた立憲民主党との合同会見において、インフレ対策について「財政出動と金融緩和の両輪を組み合わせて、経済全体を下支えすることが重要だ」と述べました。これは、インフレ対策において、財政出動による需要創出と金融緩和による資金供給の両方を組み合わせることが重要であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。
また、2023年10月21日に行われた日本経済新聞のインタビューにおいて、「経済成長のためには、民間投資を促進することが重要だ」と述べました。これは、経済成長の原動力は民間投資であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。
2023年11月11日に行われた自民党との会談において、「財政再建のためには、歳出削減と税収増の両方が必要だ」と述べました。これは、財政再建には、歳出削減による支出抑制と税収増による収入増の両方が必要であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。
これらのエビデンスから、玉木代表はマクロ経済に関する基本的な知識と理解を有しており、マクロ経済政策に関するまともな判断ができると考えられます。
こうしたことから、国民民主党と自民党が連立することは、自民党にとっては経済面では良い影響を及ぼすものと考えられます。
ただ、国民民主党が自民と連立すれば、確かに与党内で経済政策に対して、一定の影響力を及ぼすことはできるものの、現状では、多勢に無勢でまともなマクロ経済対策が実施される状況ではないようで。
この状況では、大きな政治的な動きがあったにしても、結局雲散霧消してしまう可能性が高いでしょう。それは、過去の不況時の政治的な動をみればわかります。
経済が安定しない状況では、国民の生活や将来に対する不安が募り、政治に対する関心も低下します。そのため、政治的な動きは、短期的に盛り上がることはあっても、中長期的には支持を獲得することが難しくなります。安倍政権は、デフレ脱却と経済成長を掲げ、国民の支持を集めました。コロナ禍においても、安倍・菅両政権で合計100兆円の補正予算を組み、経済対策を実行しました。これにより、他国にみられたような、コロナ禍中の失業率のかかなりのたかまりは日本においてはみられませんでした。
自民党は、政権を安定させるためにも、経済再生に全力を尽くす必要があります。そのためには、財政出動と金融緩和を組み合わせた積極的な経済対策を実施し、インフレ対策や物価高対策にも取り組むことが求められます。
野党も、経済再生に向けた具体的な政策を示すことで、国民の支持を獲得する必要があります。そのためには、政権交代後の経済政策を具体的に示すとともに、自民党の経済政策の課題を明確に批判する必要があります。
いずれにしても、まずは経済が安定しないと、政治の安定も望めないという点は、自民党も野党も共通認識として持つべきです。
【関連記事】
補正予算案「真水」は10兆円程度か あまりにひどい〝低い税収見積もり〟のカラクリ 国債はもっと減額できるはずだ―【私の論評】マスコミの偽りと保守の課題:岸田政権の減税案に隠された真実と救国シンクタンクの警告
0 件のコメント:
コメントを投稿