まとめ
- フーシ派による船舶攻撃のリスクが高まり、エネルギー企業やコンテナ船が紅海の運航を回避。
- 原油相場と欧州の天然ガス価格が上昇。
- 紅海はスエズ運河につながる重要航路で、喜望峰経由だと時間とコストがかかるため、供給網に影響。
- フーシ派はイランの支援を受けており、米国は友好国と共同で対応する方針。
BPのタンカー |
英BP(ブログ管理人注:国際石油資本、いわゆる「スーパーメジャー」と総称される6社の内の1社)は、イエメンのフーシ派による船舶攻撃のリスクを理由に、紅海の通航を回避すると発表した。これにより、中東から欧州に向かう原油タンカーや液化天然ガス(LNG)船は、スエズ運河を避けてアフリカ大陸の喜望峰経由の運航を余儀なくされる見込みで、原油相場と欧州の天然ガス価格の上昇圧力につながった。
コンテナ船にも影響が広がっており、欧州の海運会社や台湾の長栄海運などが紅海の運航を回避している。紅海はスエズ運河につながっており、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路である。喜望峰経由の運航は時間とコストがかかるため、供給網(サプライチェーン)に大きな影響を与える。
フーシ派はイエメンの武装組織でイランの支援を受けている。イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの侵攻を受け、反発したフーシ派は、イスラエルと同国に近い船舶を攻撃している。
米国は、フーシ派に対応するため、友好国と共同で行動する方針を表明した。
この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。
【私の論評】スエズ運河の安全を脅かすフーシ派、日本はタスクフォースに参加し貢献すべき
まとめ
- スエズ運河は、物流の中心地であり、この付近での船舶攻撃は世界経済に深刻な影響を及ぼす
- スエズ運河通過料がエジプト経済にとって重要であり、減少は大きな打撃を与える
- 船舶攻撃を阻止するための米国手動のタスクフォースの設立に向けた動きがある
- タスクフォースの目的は、船舶護衛、情報収集・共有、脅威の抑止
- 日本にとっては、これに参加することで経済的利益の保護、国際的信頼の確立、自衛隊の能力向上が期待できる
スエズ運河は、年間2万隻以上の船舶が通過する、世界でも最も重要な海上交通路の一つです。欧州とアジアを結ぶ最短ルートであり、アフリカ南端の喜望峰を回る場合よりも、距離が約1万2千キロも短縮されます。
今回の攻撃により、原油や天然ガス、穀物、工業製品など、さまざまな物資の輸送に遅延や混乱が生じる可能性があります。特に、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸送は、世界のエネルギー供給網に大きな影響を与える可能性があります。
また、スエズ運河の安全が脅かされる事態は、世界の経済・政治にも影響を及ぼす可能性があります。
すでに米国主導で、船舶護衛のための国際船団のタスクフォースを作る動きがあります。
このタスクフォースの目的は、紅海・アデン湾におけるフーシ派による船舶攻撃を阻止することです。紅海は、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路であり、フーシ派の攻撃が続くと、原油相場や天然ガス価格の上昇、サプライチェーンの混乱などの経済的影響が懸念されます。
これには、すでにNATOの6か国以上がコミットしたと報道されています。具体的には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニア、トルコ、イスラエルなどが参加する見込みです。
日本も、この地域の海運に依存していることから、タスクフォースに参加する意向を表明しています。しかし、フーシ派はイランの支援を受けており、攻撃にはミサイルやドローンなどの高性能な武器が用いられているため、日本は武器使用の基準など、法的問題を整理する必要があります。
自衛隊は、特に米軍と並び哨戒能力が高く、ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、タスクフォースに参加し役割を担える能力を有しています。しかし、自衛隊は専守防衛の原則に基づいて運用されており、海外で武力行使を行うには、国際法上の正当防衛や他国からの要請などの要件を満たす必要があります。
タスクフォースの活動は、主に以下の3つに分けられます。
情報収集・共有は、フーシ派の活動を把握し、攻撃を未然に防ぐために重要です。衛星や無人機などの情報収集手段を活用して、フーシ派の活動を監視します。
脅威の抑止は、フーシ派に攻撃を思いとどまらせるために行われます。タスクフォースの存在をアピールすることで、フーシ派の士気を低下させ、攻撃を抑止する効果が期待されます。
日本のタスクフォースへの参加は、以下の3つの意義があると考えられられます。
日本には憲法上、法律上の様々な括りがあって、こうしたことに対処するは他国と比較すると難しいですが、フーシ派を海賊とみなし、「海賊対処行動」を行うのであれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。また、武器使用も可能です。ただ、それにしても、他国よりは難しいことは否めません。これについては、以前このブログにも述べたことがあります。興味のある方は、この記事もご覧になってください。
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今回の攻撃により、原油や天然ガス、穀物、工業製品など、さまざまな物資の輸送に遅延や混乱が生じる可能性があります。特に、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸送は、世界のエネルギー供給網に大きな影響を与える可能性があります。
また、スエズ運河の安全が脅かされる事態は、世界の経済・政治にも影響を及ぼす可能性があります。
すでに米国主導で、船舶護衛のための国際船団のタスクフォースを作る動きがあります。
このタスクフォースの目的は、紅海・アデン湾におけるフーシ派による船舶攻撃を阻止することです。紅海は、欧州と中東・アジアを結ぶ重要な航路であり、フーシ派の攻撃が続くと、原油相場や天然ガス価格の上昇、サプライチェーンの混乱などの経済的影響が懸念されます。
これには、すでにNATOの6か国以上がコミットしたと報道されています。具体的には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、ブルガリア、ルーマニア、トルコ、イスラエルなどが参加する見込みです。
日本も、この地域の海運に依存していることから、タスクフォースに参加する意向を表明しています。しかし、フーシ派はイランの支援を受けており、攻撃にはミサイルやドローンなどの高性能な武器が用いられているため、日本は武器使用の基準など、法的問題を整理する必要があります。
自衛隊は、特に米軍と並び哨戒能力が高く、ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、タスクフォースに参加し役割を担える能力を有しています。しかし、自衛隊は専守防衛の原則に基づいて運用されており、海外で武力行使を行うには、国際法上の正当防衛や他国からの要請などの要件を満たす必要があります。
八戸からソマリア沖の海賊対策に向かうP3C哨戒機 |
タスクフォースの活動は、主に以下の3つに分けられます。
- 船舶の護衛
- 情報収集・共有
- 脅威の抑止
情報収集・共有は、フーシ派の活動を把握し、攻撃を未然に防ぐために重要です。衛星や無人機などの情報収集手段を活用して、フーシ派の活動を監視します。
脅威の抑止は、フーシ派に攻撃を思いとどまらせるために行われます。タスクフォースの存在をアピールすることで、フーシ派の士気を低下させ、攻撃を抑止する効果が期待されます。
日本のタスクフォースへの参加は、以下の3つの意義があると考えられられます。
- 経済的利益の保護
- 国際社会の信頼の獲得
- 自衛隊の能力向上
国際社会の信頼の獲得も、日本のタスクフォースへの参加の意義の一つです。フーシ派の攻撃は、国際社会の秩序を脅かすものであり、日本は国際社会の一員として、その抑止に貢献することが求められています。これへの参加は、日本の国際社会における役割を示すものであり、国際社会の信頼を獲得することにつながります。
自衛隊の能力向上も、日本のこれへの参加の意義の一つです。ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、自衛隊はこれに参加することで、国際平和協力の能力を向上させることができます。また、フーシ派による攻撃という新たな脅威への対応力を高めることにもつながります。
自衛隊の能力向上も、日本のこれへの参加の意義の一つです。ソマリア沖の海賊対策などで培った経験を活かして、自衛隊はこれに参加することで、国際平和協力の能力を向上させることができます。また、フーシ派による攻撃という新たな脅威への対応力を高めることにもつながります。
日本はこのタスクフォースに積極的に参加することで、日本はフーシ派を含む地域の海賊等に対し、海洋安全保障に対する脅威を容認せず、米国の同盟国と協力してそのような行動を抑止するという明確なメッセージを発信すことができます。
海自の潜水艦「しょうりゅう」と護衛艦「いかづち」 |
また、ガザでの戦闘のさなかに、イスラエル船籍を含むタンカーをタスクフォースが協同で守ることは、象徴的な意味合いもあります。
これはイスラエルの自衛権を支持するという重要なメッセージを送ることにもなります。フーシ派とハマスとは、隣国を支配しようとするシーア派とスンニ派の過激派であり、イランの支援を受けています。
フーシ派を阻止することで、イランを牽制、イスラエルを支援することで、ハマスの牽制につながります。これはタスクフォースの参加国にとって互いにWin-Winの関係であり、タスクフォースの共同行動は軍事的にも外交的にも妙手になることでしょう。
日本は、このタスクフォースに参加し大きな役割を担えば、世界に向かって日本の強固な意思を伝えることになり、中・露・北に対する大きな牽制となり、日本の安全保障を強化することになります。
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