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まとめ
- インフレ目標政策では、インフレ率が2%でも4%でも社会的コストはあまり変わらない。
- 金融引き締めは、インフレ率が4%程度を超えるような状況になってから行うべきである。
- 今のマクロ経済環境では、インフレ率が4%程度を超える可能性は極めて小さい。
- マイナス金利の早期解除は、景気への悪影響や金融機関の収益悪化につながる可能性がある。
- 日銀は、来年1月の金融政策決定会合でマイナス金利の解除を検討するとみられる。
日銀植田総裁 |
インフレ目標政策では、目標の数値プラスマイナス1ポイントは許容範囲である。その上で、金融引き締めは遅れて行うべきである。
その理由は、インフレ率が2%でも4%でも社会的コストはあまり変わらないが、金融引き締めを急いだ場合、景気への悪影響、とりわけ失業率上昇の社会的コストが大きいからである。
要するに、インフレ目標が2%なら、今の金融政策を継続することで近い将来にインフレ率が4%程度を超えるような状況でなければ、金融引き締めをしてはいけない。これが基本である。
一方、日本で「金融正常化」という人は、こうしたマクロ経済環境を考えずに、今の状態が「異常」なので、できるだけ早く直すべきだ、という価値観が含まれていることに留意すべきである。
今のマクロ経済環境をみると、インフレ率が近い将来4%程度より高くなる可能性は極めて小さい。にもかかわらず、金融緩和を解除したらどうなるのか。目先は金融業界に好影響だろうが、前述したようにマクロ金融政策としてはまずい。
今回、日銀がマイナス金利の解除を見送ったのは、こうしたインフレ目標の基本に忠実に、また、政治情勢や金融機関の収益状況などを考慮したためと考えられる。
しかし、筆者は、マイナス金利を早期に解除すべきではないと考えている。
今後のマイナス金利の解除時期については、来年1月の金融政策決定会合で解除される可能性が高いとみられる。
まとめ
- 日本は、米国やEUに比較すれば、物価の上昇はさほどではない。
- コアコアCPIは、2023年には2.3%、2024年には2.0%になると予想されてい。
- このようなときには、推移を見守り、金融政策は変えるべきではない。
- 1月にマイナス金利の解除をしてしまえば、さらに物価が下がり、デフレ傾向になるだろう。
- 日銀が来年早々にゼロ金利を解除し、その後利上げして、金融引き締めに走ってしまえば、また日本はデフレにまい戻り、雇用が悪化し賃金も上がらず、再び失われた30年を繰り返すことになる。
実際、欧米では、2022年から金融引き締めを進めていますが、その結果、景気減速や失業率上昇の懸念が高まっています。
例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年から政策金利の引き上げを開始し、2023年には0.75%の大幅な利上げを実施しました。その結果、米国内では、景気減速や失業率上昇の懸念が高まっています。
実際に、住宅市場の冷え込み、消費者の購買意欲の低下、企業の投資意欲の低下が起こっています。現在はまだ顕著ではありませんが、来年はその悪影響が色濃くででくることが懸念されます。
また、2023年7月21日の金融政策決定会合で、ECBは政策金利を0.25%引き上げ、0.75%にすることを決定しました。これは、ECBが2011年以来、約12年ぶりに実施した政策金利の引き上げとなります。
023年9月8日の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ、1.00%にすることを決定しました。これは、ECBが2023年7月に0.25%引き上げを行って以来、2回連続の利上げとなります。
ただし、ECBは、今後の利上げ幅については、経済状況を慎重に判断していく方針を示しています。ECBは、ロシアのウクライナ侵攻や中国の景気減速などの不確実性により、景気後退のリスクが高まっていると懸念しています。そのため、利上げを急ぐと、景気後退を招く可能性があるため、慎重な姿勢をとっています。
ECBの利上げにより、EUでも住宅市場の冷え込み、消費者の購買意欲の低下、企業の投資意欲の低下がみられます。
なぜ“強いドイツ”は「劣化」したのか?動かぬ鉄道、学力低下、荒れる国土…かつての勇姿は見る影もなし
日本のマスコミでは、名目GDPで日本がドイツに抜かれ、3位から4位に転落する見通しとなったことなどが報じられていますが。これは、円安の影響でドルベースで目減りしたことやドイツの高い物価上昇(インフレ)が主な要因です。円安の現在、ドルベースで比較すれば、当然そのようなことになります。決してドイツの実体経済が良いということではありません。それどころか、ドイツは世界では「欧州の病人」とまで言われています。
来年は、エネルギー・資源価格の価格高騰が、沈静化し下がる傾向にあります。これは、常識的に考えても理解できます。エネルギーや資源は、多くの国々が生産しているので、資源価格が上がれは、増産するなどのことをします。そうなると、価格が安定し、落ち着くのが普通です。資源価格も同じことがいえます。
無論、中東情勢の悪化などもあり、依然として上がる要素はありますが、それでも大勢としては、下がる傾向にあります。
そのようなときに、利上げをすれば、景気が落ち込むのは明らかです。特に、長い間デフレが続いてきた日本は、元々デフレではなかった米国やEUに比較すれば、物価の上昇はさほどでもありません。以下に、日本、米国、EUのコアコアCPI(食料及びエネルギーを除いた物価指数)の推移の比較の表を掲載します。(ブログ管理人 作成)
この表をご覧いただければ、髙橋洋一氏の主張はもっともであるとご理解いただけるものと思います。米国やEUは、コアコアCPI6%、5%で利上げをしています。この水準でようやっと、利上げをしたのは、やはり経済の悪化をおもんばかったからでしょう。正しい判断です。
日本は、2022年には、2.7%に過ぎません。来年は、2.0%になることが予想されています。無論、この予想は、日銀の金融政策が現状のままだと想定したものです。このようなときには、推移を見守り、金融政策は変えるべきではありません。
1月にマイナス金利の解除をしてしまえば、さらに物価が下がり、デフレ傾向になるでしょう。そのようなことをする必要性は全くありません。早急にゼロ金利政策を排除し、利上げすべきなどと言う人は、こうした数字をみていないのではいなかと思います。
ただし、予想できない何かが起こる可能性は否定できません。しかし、その時にも、すぐにゼロ金利解除とか、利上げなどに走るべきではありません。あくまで、コアコアCPIが4%を超えるなどの事態でも無い限り、ゼロ金利解除や、利上げなどするべきでありません。
こうしたことを無視して、日銀が来年早々にゼロ金利を解除し、利上げして、金融引き締めに走ってしまえば、また日本は、デフレにまい戻り、雇用がかなり悪化し、賃金も上がらず、それに政府が増税などの緊縮路線に走れば、日本は再びデフレの底に沈み、日本人の賃金は上がることなく、また失われた30年を繰り返すことになるでしょう。そうなれば、日本の実体経済は、現状のドイツのように酷いものになるかもしれません。
そうして、デフレが亢進すれば、先日もこのブログで述べたように、今度は日本だけではなく、世界が悪影響を受けることになりかねません。
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