2023年12月17日日曜日

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一―【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

 日本の解き方

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一

まとめ
  • 中国軍の元副院長が共同通信のインタビューで、戦争は望まないが恐れないと述べ、日本へのメッセージを送った。
  • 日本は感情的ではなく国際法を考慮し、外交において中国に適切なメッセージを送るべきだと指摘されている。
  • 中国の台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性を示唆し、日本の安全保障に影響を与える可能性があると主張されている。
  • 中国の南シナ海での行動と国際法への無視が強調され、日本は中国の力による現状変更に強い姿勢を示すべきだとされている。
  • 日本は中国の核心的利益とされる台湾と尖閣の問題に注意を払い、万一日本有事が発生した場合には断固たる対抗措置を取るべきだと強調されている。

軍事科学院の何雷・元副院長(中将)

 中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)が共同通信のインタビューで、「戦争は望まないが恐れない」と述べ、日本向けのメッセージを送った。

 この発言を感情的に受け止めず、国際法を考慮しつつ、外交において中国に適切なメッセージを送る必要がある。彼らの台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性があり、中国の動きが日本の安全保障に影響を及ぼす可能性がある。

 さらに、中国の南シナ海での行動とその国際法を無視しており、日本は中国の力による現状変更に対して強い姿勢を示すべきだ。中国は「核心的利益」として台湾と尖閣を掲げており、その行動が極東アジアの安全保障に深刻な影響を与える可能性がある。

 南シナ海での中国とフィリピンの対立も注目され、国際仲裁裁判所の判断を無視する中国の姿勢が国際社会における危険性を浮き彫りにしている。

 日本は中国の力による現状変更を望まず、万が一日本有事が発生した場合には、断固たる対抗措置を取るという強い立場を国内外で示すべきだ。

【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

まとめ
  • 中国の対潜水艦戦能力は日米に劣るため、中国の台湾・尖閣への軍事侵攻の可能性は低い。
  • ASWにおけるハード面とソフト面の両方が重要であり、経験とノウハウの積み重ねが必要であり、中国は未だハード・ソフトとも日米に及ばない。
  • よって中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)の「戦争は望まないが恐れない」情報戦の一環と考えられる。
  • 日本は中国の軍事力に対し強く反論し、防衛を強化し、強い態度で臨まなければならない。
  • 弱腰な姿勢は侵略と不安定を招くだけであり日本の意思と抑止力が安全保障に重要である。
尖閣諸島

 私は、中国は対潜水艦戦(ASW)で日米にかなり劣っているため、現実には中国が尖閣や台湾への軍事侵攻をする可能性は低いと思っています。
 
 ただ、こういうことを言うと、中国のASWも相当進んできているから、そうとは言えないと主張する人が必ずでてきます。
 
 しかし、こういう人たちは大事なことを忘れていると思います。それはASWにはハード面も重要ですが、ソフト面も重要であるということです。
 
 借りに、中国海軍が、日米なみにASWのハード面を整えたとしても、すぐにはASWが日米並にはならないということです。ASWはそれだけでは強化できず、長年の経験とノウハウの積み重ねが必要だからです。ましてや、中国海軍のASW関連のハードは、未だに日米に比較して遅れています。
 
 これは、たとえば脳外科手術において、様々な最新のハードを導入したとしても、長年の経験やノウハウがないと、満足な手術ができないのと同じです。ハード面を整備したからといって、すぐに高度な手術ができるわけではないのです。優れた脳外科医のノウハウや経験必要不可欠なのです。

現代の脳外科手術には様々なハードが利用されるが、ハードが揃ったからといって優れた手術ができるわけではない

これと同じような、発言をする自衛隊幹部の人もいますが、このような発言をするためか、その方は、「おかげで自分は地上波テレビには出られない」と語っておられました。しかし、これが現実なのです。この現実を突きつけられるのを嫌がる人がマスコミには多いようです。
 
 米国では確か昨年台湾有事のシミレーションが行われたと記憶していますが、台湾有事になれば、日米は相当損害を受けるものの、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。

それは、中国のASWが劣っているためと思います。日米海軍と中国海軍が真正面から戦えば、中国海軍は崩壊します。ただ中国側は、当然のことながらミサィルを発射して日米を攻撃することになるでしょう。

だから日米も被害を受けることになるのです。しかし、海戦において日米が負けることはなく、よって台湾侵攻はかなり難しいのです。この事実をふまえると、何雷・元副院長(中将)の発言は情報戦の一環であると思われます。

私は日本は、この将軍の恐喝を真に受けるべきではないと思います。これは、中国を強く見せるためのプロパガンダであり、実際には日米同盟に比べれば、中国の軍事力、特に海軍力ははるかに弱いです。日本は防衛を強化し、米国と緊密に協力し、中国のハッタリや挑発があればいつでもこれに強く反論すべきです。

もし日本が中国の侵略に対して強い態度で臨まなければ、悲惨なことになるでしょう。宥和政策は、中国共産党のような専制政権には決して通用しません。日本が弱さを見せれば、中国はそれを利用するでしょう。

尖閣諸島をめぐる挑発行為をより大胆にし、日本の決意を試すために行動をエスカレートさせるでしょう。毅然とした対応がなければ、中国はますますみずからの軍事的限界を押し広げることになるでしょう。これは最終的に、日本が引き下がると信じて中国が仕掛ける直接的な軍事衝突につながりかねなです。

尖閣諸島沖を航行する中国海警局の鑑定と、海保の艦艇

国内的には、強い態度に出なければ、日本の安全保障と独立性が損なわれることになります。国民は危険を感じ、政府は国民の信頼を失うことになるでしょう。

また、同盟国から日本の自衛の意志を疑われ、海外での日本の立場を損なうことになるでしょう。国際的には、米国のような同盟国との関係を損なう一方で、中国や北朝鮮のような敵対国を増長させることになるでしょう。

地域のパワーバランスに危険な変化をもたらす可能性もあります。日本が自国を守るために立ち上がる姿勢をみせなければ、米国が自国の利益を危険にさらしてまで日本を守らなければならないのだろうかという疑問を生じさせるでしょう。

日本の弱腰と宥和は侵略と不安定を招くだけです。日本は領土、主権、国益を断固として守らなければならないです。それを怠れば、日本とインド太平洋地域の同盟国にとって、より大きな混乱と不安を招く危険性があります。

中国のような覇権主義・権威主義国家は、日本の意思が弱いと思ったり、断固とした行動に消極的だと思えば、その隙につけ込むでしょう。日本の安全保障は、意思の強さと抑止力にかかっているのです。

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