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2019年4月16日火曜日

「台湾国産潜水艦」工場の着工迫り反発強める中国―【私の論評】日本は台湾がシーパワー国になれるよう支援すべき(゚д゚)!

「台湾国産潜水艦」工場の着工迫り反発強める中国

 井上雄介 (台湾ライター)

    台湾の国産潜水艦(IDS)建造計画が着々と前進している。台湾メディアの上報は、造船大手の台湾国際造船(台船)が近くIDS専用工場の建設に着手すると伝えた。陳水扁・民進党政権時代の2002年以降、17年の紆余曲折を経た計画が、ようやく日の目を見ようとしている。

 台湾は、日増しに高まる中国の脅威を前に、現在保有する4隻の潜水艦の更新と増強にこだわり続けてきた。通常動力の潜水艦は、自衛用には理想の装備と考えられている。進撃してくる敵艦隊の攻撃のほか、戦時に予想される海上封鎖の突破にも役立つためだ。

   台湾の造船最大手、台湾国際造船は21日、第二次世界大戦期に米国で建造された海軍の
             テンチ級潜水艦「海獅(アシカ)」の延命改修が完了したと発表した。1945年の終戦
            直前に就役したディーゼル潜水艦で、73年に台湾に供与された。就役期間は世界最長。

 台湾は当初、海外からの調達を試みたが、中国政府の圧力で各国とも二の足を踏んだ。ブッシュ政権時代の米国が一時8隻の売却を承諾したが様々な理由で中断。オバマ政権時代に入ると、幾度打診してもなしのつぶてとなった。馬英九・国民党政権末期に、海軍トップが「もう待てない」と国内建造を強く進言して計画が始動した。

 16年に台湾独立志向の蔡英文・民進党政権が発足すると、計画が加速。同年中に台船が受注し、今年ようやく工場建設にこぎつけた。 

 工場の設計プランは、ドイツ、日本、韓国の技師に委託して提出させたが、最終的に日本人退職技師のものが選ばれたという。

 工場の設計は、秘密保持に重点が置かれている。人工衛星から写真撮影ができない「密閉式」の建屋となり、鋼材など材料の加工から装備の据え付け、完成後の保守まで全作業を建屋内で行う。内部の様子が見えないよう、建屋の大扉も進水時以外は閉め切りとなる。

潜水艦の自主開発に舵を切った蔡英文総統(写真中央)

 台船は潜水艦の設計を、ジブラルタルの軍事コンサルティング会社、Gavron・Limited(GL)に委託。GLは、英国の潜水艦設計専門の退職技師ら約30人を送り込んだ。武器などの装備は、欧米の専門会社15社と仮契約を結んだ。

 建造費用は1号艦が約500億台湾元(約1800億円)。うち専門工場の建設費が86億台湾元。残りの400億台湾元余りは装備とシステムの費用に充てられる。IDSは8隻建造し、工場建設や機械の購入費用が分担されるため、最終的には1隻当たり約250億台湾元に下がる見通しだ。

 もちろん中国は計画に強く反発。同国外務省は1月、いかなる国であれIDSへの関与を許さないと警告しており、今後、関連の外国企業に圧力が掛かる可能性もある。

 ただ、これまでのところ計画は順調で、厳徳発国防相はこのほど「IDS計画は一切が正常に進んでいる」と述べ、1号艦は24年の10~12月に進水する見通しを明らかにした。今後の行方に注目したい。

【私の論評】日本は台湾がシーパワー国になれるよう支援すべき(゚д゚)!

昨今の台中関係を考えますと、潜水艦は台湾の中国に対する抑止力を高めるための大きなカギとなるのは明らかです。航空戦力は既に圧倒的に中国側が有利であり、中国から台湾への攻撃があった場合、単純に両国間の戦力差を比較すると台湾は2、3日で制空権を失うと言われています。

これに関しては台湾の中国に対する、「A2AD(接近阻止・領域拒否)」的な能力の向上が重要ですが、実現には新鋭の潜水艦が不可欠です。しかし、現在台湾が保有する4隻の潜水艦(2隻は米国製、2隻はオランダ製)は、老朽化が進んでいます。これに対し、中国は約60隻もの潜水艦を保有しています。

2001年に米国のブッシュ(子)政権は、台湾に8隻のディーゼル推進式潜水艦の売却を決めたものの、結局、実現していません。そこで蔡英文政権は米国からの購入を断念し、自主建造に方向転換、2026年までに1隻目を就役させることを目指しています。

台湾の王定宇・立法院議員は、台湾の海中戦闘能力向上のための防衛計画は10年前に始まっていて然るべきものであり、潜水艦建造は既に予定より20年遅れている、と強い懸念を示しています(昨年4月9日付、台北タイムズ)。また、船体は自主建造できるにせよ、エンジン・武器システム・騒音低減技術等は海外から導入する必要があります。

王定宇・立法院議員

状況を俯瞰すると、米国から台湾に潜水艦技術が供与されることが望まれるところです。この点、昨年4月9日、台湾国防部は、台湾の潜水艦自主建造計画を支援するために米企業が台湾側と商談をすることを米政府が許可したと明らかにしていました。

台湾の経済団体「台湾国防産業発展協会」は、5月10日に台湾南部の高雄市で「台米国防産業フォーラム」を開催し、米国の軍事企業と技術協力について議論しました。

同フォーラムでは、艦船の製造、宇宙空間・サイバースペースの安全に重点が置かれ、米台間でハード・ソフト両面での協力が推進されました。米国からロッキード・マーチン社など15社以上が参加しました。これを機に、潜水艦技術の輸出についても商談が進む可能性もあります。

ただ、商談が成立したとしても、実際に輸出されるには米政府の許可が必要となります。この点は不透明な要因ですが、最近の米国の潮流は台湾への武器供与に積極的になっています。

台米国防産業フォーラムに出席する在日米陸軍元司令官のワーシンスキー氏

2016年7月、米議会では、台湾関係法と「6つの保証」(1982年にレーガン大統領が発表)を米台関係の基礎とすることを再確認する両院一致決議が採択されています。台湾関係法は、台湾防衛のために米国製の武器を供与することを定めています。

「6つの保証」の内容は、1.台湾への武器売却の終了時期は合意されていない、2.台湾と中国の間で米国が仲介することはない、3.台湾に中国と交渉するよう圧力をかけることはない、4.台湾の主権に関する立場を変更することはない、5.台湾関係法の規定を変更することはない、6.台湾への武器売却決定に当たり事前に中国と協議することはない、となっています。

トランプ政権は、昨年6月、14億ドル相当の武器を台湾に売却すると議会に通知し、同12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、台湾関係法に基づく台湾への武器供与が明記されなどしています。

台湾は、日本の潜水艦技術にも強い関心を持っていると言われています。日本の潜水艦技術は世界でもトップクラスであり、特に騒音軽減技術が優秀です。台湾が最新鋭の潜水艦を導入することは、日本の安全保障にとっても当然プラスになります。

これを機会に、日本は、台湾がいずれ強力なシーパワー国に成長できるように支援すべきです。無論これには、数十年の年月を要するでしょう。軍事技術だけではなく、かなりのコストを要するため、経済的にも発展しなければ、シーパワー国にはなれません。

ソ連とその後継のロシアは、結局シーパワー国にはなれませんでした。中国は、最近海洋進出を強化していますが、未だシーパワー国にはなれていません。経済力だけでもなれないのです。韓国もなれないでしょう。

トランプ大統領は韓国にはほとんど興味がないようですし、日本としてはもう昨年で韓国を相手にしても時間と労力の無駄であることがはっきりしました。

日本としては、韓国の異常ぶりを国際社会に晒し続けるにしても、もう韓国には一切深入りせず、台湾を支援すべきです。そのほうが、はるかに費用対効果が大きいです。今年は、日米両国とも韓国から台湾に軸足を移す年になるでしょう。そのほうが日米としては、対中封じ込めに余程効果を期待できます。

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