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2020年6月22日月曜日

中国の太平洋進出の行方を握る小さな島国の選挙―【私の論評】日本も米台と手を携えて、キリバスなど南太平洋の島嶼国を支援すべき(゚д゚)!

中国の太平洋進出の行方を握る小さな島国の選挙

                    ニューズウィーク日本版

初めて北京を訪問したキリバスのマーマウ大統領(2020年1月6日)
<昨年、台湾と断交して中国とサプライズ国交回復をした南太平洋のキリバス。中台のどちらを取るかは今度の選挙の最大の争点だ。もし中国なら、太平洋でアメリカとぶつかる>
南太平洋に浮かぶ島国、キリバスで22日、大統領選挙が行われた。親中派の現職ターネス・マーマウと、台湾との国交回復を訴える野党候補のバヌエラ・ベリナの一騎打ちで、中国の太平洋進出に大きな影響を与える選挙として注目を集めていた。キリバスは人口11万人の小国だが、その排他的経済水域は広大だ。【クリストファー・パラ】


中国にとっては何より、キリバスの東端にあるクリスマス島に進出の足場を築けるかどうかがかかっている。クリスマス島は世界最大級のサンゴ礁の島で、面積は約400平方キロ。ほんの2000キロも北上すれば、アメリカ太平洋軍が本拠を置くハワイのホノルルがある。クリスマス島に建設中の港湾設備は表向き、観光向けとされているが、中国軍の艦艇が利用することも可能だと米軍は神経をとがらせている。

 台湾にとっては、国交回復が実現すれば非常に大きな勝利だ。キリバスは昨年、台湾と断交して中国と国交を樹立。これにより台湾を主権国家として承認している国は世界15カ国になった。 

にもかかわらず、選挙結果の重要性は中国にとって台湾以上に大きいと、ローウィー研究所(オーストラリア)のナターシャ・カサムは指摘する。結果にかかわらず、台湾と国交のある国々にとってキリバスは、「中国へのくら替えがもたらす政治的代償」の大きさを示す反面教師になっているからだとカサムは言う。 

<寝耳に水だった中国へのくら替え>

 昨年9月の台湾との断交に関する発表は、マーマウ大統領の与党関係者にとっても驚きだった。事実、キリバスのテブロロ・シト国連大使兼駐米大使(元大統領)は、国連事務総長のオフィスで台湾が国連主催の会議に出席できるよう働きかけを行っていた時にこのニュースを聞いたという。キリバスが台湾と外交関係を結んだのは2003年のこと。マーマウも2016年の大統領選挙では、台湾との関係維持を公約に掲げて当選した。



 この突然のくら替えは、キリバス国内でも評判が悪かった。抗議デモが行われ、人々は台湾の旗を掲げ、「台湾大好き、中国は大嫌い、欲しいのは平和だ」と叫んだ。民意不在の決定だとして野党指導者のティタブ・タバネは政府を批判した。

 この動きは、党首だったベリナを初めとする一部の与党議員の造反も招いた。これにより、4月の総選挙では与党はかつての安定多数を失い、過半数を下回った。

 キリバス政府関係者などへの取材からは、マーマウの決断にはいくつかの理由があったことが伺える。

 まず第1に、今世紀末には1メートルくらい上昇すると見られている海面水位の問題がある。前政権は数十年のうちに島々が水没してしまうと考えていたのに対し、マーマウ政権は海水面の上昇に合わせて島も隆起するという学説を信奉。そして貧困対策として、野心的な開発計画に乗りだしたのだ。振興の目玉はクリスマス島を中心にした観光業とマグロ漁業だ。

<航空機の購入支援を断られて断交?>

その一環として、政府は首都タラワと3200キロ東方にあるクリスマス島(および世界の国々)を結ぶ長距離旅客機2機の導入を決めた。報道によれば政府は1機目を6000万ドルで購入し、台湾に対して2機目の購入費用を援助するよう求めたという。台湾のキリバスに対する援助予算が年に1000万ドルであることを考えると無茶な要求だ。蔡英文総統は援助で相手国を釣る「小切手外交」には反対の立場を取っており、台湾はキリバスの要求に難色を示した。台湾の呉●燮外相は断交を発表した際、「マーマウは商用機を購入するために多額の財政支援を求めてきた」ので台湾は優遇金利での融資を申し出たが、キリバス側から断わられたと語った。

だがベリナはあるインタビューで、台湾はキリバス政府にこれとは異なる提案をしたと聞いたと語っている。融資というのは表向きで、返済期日が来たら台湾は援助額を上積みして返済金額を相殺するという実質的に援助に相当する内容だったという。この話の真偽は不明だ。

<台湾からの「政治献金」に懸念>

政府関係者によれば、第2の理由は台湾が野党勢力に選挙資金を提供するのではという与党指導部の懸念だ。2003~2016年にかけて、当時野党だった現与党の人々は、台湾から選挙資金の援助を受けているとして当時の与党(現在の野党)をしばしば批判していた。この「関係」が復活するのではないかと心配しているわけだ。キリバスの法律では、政治献金の出所に関する規制がない。

3番目の理由は、台湾寄りの野党によると、中国から賄賂をもらって気がついたら中国に支配されていたという数々の小国と同じパターンだ。南太平洋のソロモン諸島もそうだ。ソロモン諸島はキリバスの4日前に中国と国交を回復した。ソロモン諸島マライタ州のダニエル・スイダニ州長がオーストラリのテレビ取材班に語ったところによると、中国との国交回復を支持するなら100万ドルをくれると言われ、断ったという。だが、政府内には、賄賂を喜んで受け取った腐敗した政治家が多くいたと思うと語った。

太平洋における中国の勢力拡大を取材するため南太平洋に来ていたオーストラリアの取材班は、キリバスのタラワに着いたばかりの時、ホテルで軟禁された。撮影許可を得ていなかったからだと当局は説明したという。だが、取材班が次の飛行機で国外追放される前、キリバスの初代大統領で現在は野党議員のイエレミア・タバイと、野党指導者タバネがホテルを訪ねてきた。二人は取材班の追放を「民主主義にとっての悲劇」と呼び、中国が賄賂で国交回復の支持者を増やしていると語ったという。

<中国がアメリカに取って変わる?>

野党の大統領候補ベリナは、フォーリン・ポリシー誌のインタビューに対し、マーマウが台湾から中国に乗り換えると発表した時、議員数人が抗議した。台湾は人気があるので、乗り換えによって議席を失うことを彼らは恐れたという。その時マーマウは、「選挙資金は中国から出るから心配するな」と言った。「ショックだった」と、ベリナは言う。

政府関係者は中国の援助は数億ドル規模で、全てが贈与であって融資ではないので、返済する必要はないと言っている。返済が滞り、せっかく建設したインフラを中国に奪われてしまう「債務の罠」に陥る危険はないというのだが、詳細は明らかにされていない。マーマウは初めて北京を訪問した時、「一帯一路」に関する覚書に署名している。当時はまだ与党幹部だったベリナによれば、その際に得た資金は全て融資だったという。

<手玉に取られずに済むのか>

22日の選挙の最大の焦点は中国だ。果たして中国は、野党が主張する通り、カネと中国から連れてきた労働者でキリバスを圧倒し、自分たちのための巨大インフラを作ろうとするのだろうか。彼らと共に、新型コロナウイルスも初めて持ち込まれるのか。戦略的に重要なクリスマス島を奪おうとするのだろうか。ソロモン諸島が中国と国交回復してわずか数日後、ツラギ島を丸ごとリースしようとしたように。

あるいは、マーマウ政権が断固とした姿勢を貫いて、近くのハワイからクリスマス島まで旅行者を引き寄せるための観光インフラ建設などに限った援助、それも贈与以外は受け取らず、国を豊かにすることができるだろうか。有権者はどちらを信じるのか。

国連大使兼駐米大使のシトによれば、アメリカはキリバスに援助はしていないが、文化的にも歴史的にも人気がある。1943年に日本の占領から解放したのもアメリカだ。約40年前、イギリスの植民地だったキリバスが独立し、アメリカと友好条約を結んだ時から、アメリカ政府の同意なしには、いかなる国もキリバスに軍事施設を作ってはならないことになっている。しかしこの条約も、6カ月前の通知で破棄できるという。

キリバスの選挙は戦略的にも極めて重要だ。中国が太平洋で支配を拡大してアメリカとその同盟国に取って代わるのか否か、この小さな島国次第で決まってしまうことにもありうる。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】日本も米台と手を携えて、キリバスなど南太平洋の島嶼国を支援すべき(゚д゚)!

6月5日付の産経新聞電子版に共同通信の小さな記事が載っていました。文字数にして200字ほどですから、紙面ではベタ記事でした。だが、とても重要なことを伝えていました。

ポイントは2つある。1つは、国務省が6月4日に「新型コロナウイルス感染症対策を巡り、台湾と連携し太平洋島しょ国への支援を強化すると発表した」こと。2つ目は、この太平洋島嶼国家への支援強化が、国務省と台湾の外交部がテレビ会議で意見交換したことを踏まえて発表されたことです。
◆米、感染対策で台湾と連携 太平洋島しょ国を支援
【産経新聞電子版:2020年6月5日】 
米国務省は4日、新型コロナウイルス感染症対策を巡り、台湾と連携し太平洋島しょ国への支援を強化すると発表した。中国が国際社会で台湾の孤立化を図る中、米国は感染対策支援の連携を通じ、台湾外交を支える狙いがあるとみられる。 
国務省によると、3日に同省や疾病対策センター(CDC)など米国の関係機関、台湾の外交部(外務省)などによるテレビ会議を開催。新型コロナを巡る太平洋島しょ国への支援強化に向けて意見交換した。(共同)
冒頭の記事にもあるように、台湾は蔡英文政権発足時の2016年5月には、ソロモン諸島、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの6つの太平洋島嶼国家と国交を保っていました。ところが、中国が自国の勢力圏に取り込もうとして2019年9月にソロモン諸島とキリバス共和国を台湾と断交させ、残るはマーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの4カ国となっています。

中国は、2017年6月にはパナマ共和国、2018年4月にはドミニカ共和国、同年8月にはエルサルバドル共和国という中米3カ国と台湾の国交を断絶させています。

米国の裏庭とも呼ばれるこの3カ国との断交は、台湾よりも米国が危機感を募らせ、国務省は2018年9月にドミニカ共和国、エルサルバドル共和国、パナマ共和国に駐在の大使(パナマは代理大使)を召還するという事態にまでなりました。香港に国家安全法導入を決定したのと同様、先に手を出したのは中国です。

その結果、米国連邦議会は下院も上院も全会一致で、台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更などの措置をとる権限を国務省に与える内容の「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ2019年法」を可決し、2020年3月26日にトランプ大統領が署名して成立しています。

ちなみに、法律の略称は「台北法(TAIPEI Act)」と言い、法律の名称「Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative Act」の頭文字から命名されています。

米国はこの法案が上院に提出された2019年5月以降、次々と太平洋島嶼国家への支援を強化し始めました。

トランプ大統領は2019年5月にパラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦の3か国の大統領をホワイトハウスに招いて会談。国防総省が2019年6月1日に発表した「2019年インド太平洋戦略報告書」では、台湾を「国家(country)」と表記し、「インド太平洋地域の民主主義の社会がある地域に、シンガポール、台湾、ニュージーランド、モンゴルは信頼でき、有能で、米国の自然なパートナーである」と記すとともに、太平洋島嶼国家との連携強化が記れました。

トランプ米大統領と蔡英文台湾総統

実は日本も近年は太平洋島嶼国家との関係強化をはかっていて、2019年8月に河野太郎 氏が外務大臣として初めてパラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦の3ヵ国を訪問しています。

フィジー共和国の南太平洋大学で「我々『太平洋人』の AOI(碧い)未来のための3つの取組」と題して講演し、近年、自由で開かれたインド太平洋のビジョンのために太平洋島嶼国が重要な役割を果たすことがますます明白になって来ていると指摘し、日本が太平洋島嶼国に対するコミットメント強化を決定したと表明しています。

河野外務大臣は、防衛大臣に就任してからも太平洋諸島国家との関係強化をはかろうと、今年の4月上旬、軍隊を有するパプアニューギニア、フィジー、トンガの国防大臣や米・豪・英・仏など太平洋島嶼国と関係の深い国の実務者を東京に招き、安全保障上の課題に関する意見交換を行う「日・太平洋島嶼国国防大臣会合」を初めて主催する予定でした。

河野外務大臣(当時)

あいにく武漢肺炎の影響で延期せざるをえなかったのですが、この会合は島嶼国で影響力拡大を狙う中国を牽制することにありました。そこで、習近平・中国国家主席が来日する予定だった4月7日の直前、4月5日にメイン会議を行い、4日に来日した国防大臣とバイ会談や夕食会を開き、6日にも会議などを予定していたといいます。

中国が第一列島線(日本列島~台湾~フィリピン)を突破して西太平洋へ進出しようと狙っている現在、太平洋島嶼国家は、日本が提唱し、米国が戦略として取り入れた「自由で開かれたインド太平洋戦略」にとって重要な国々です。

その意味で、米国の国務省が台湾の外交部とテレビ会議を開いて直接意見を交換しながら、太平洋島嶼国家へ武漢肺炎対策の支援を決めたことは大きな前進だと考えられる。小さな記事だが重要だと述べた理由です。

ちなみに、台湾は4月半ば、国交国のマーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの4カ国へマスクを2万枚ずつ計8万枚と額式体温計なども提供し、台湾の能力が許す範囲内で支援していくと発表しています。

翻って、実は日本の外務省も太平洋島嶼国家への支援は「島サミット」開催などを通じて強化しています。米国と台湾とともに日米台の枠組みで太平洋島嶼国家への今回の支援に加わってもよいはずです。今後の推移を注視していますが、残念ながら出遅れた感は否めないです。

キリバスなどの南太平洋の国々は、小さな島嶼国が多く、現在の日本人にはあまり馴染みがありません。しかし、この地域は大東亜戦争時代には、日米両軍が多数の犠牲を出しながら、戦ったところです。その後に、現在の国際秩序が形成されました。

そのような歴史を持つ島々が新たな国際秩序を自分に都合の良いように作り変えようとする中国に、飲み込まれるのを黙って見ているわけには行きません。日本も、米台と手を携えて、これらの国々に対して支援をして、中国の魔の手から守るべきです。

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2020年4月12日日曜日

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ―【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ

マスク姿の習近平

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)はさらに加速しており、米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、死者が10日、世界全体で10万人を超えた。2日に5万人を上回って約1週間で倍増したかたちだ。日本でも同日、新たに過去最多となる634人の感染者が確認された。累計は6159人。無症状でも他人に感染させるリスクが指摘されるなか、日本だけでなく世界各国で「マスク不足」が深刻化しており、強奪・盗難事件まで発生している。前代未聞の「マスク戦争」を引き起こした戦犯は一体誰なのか。国際投資アナリストの大原浩氏が緊急寄稿で解き明かす。


日本政府が、「1世帯あたり2枚」の布マスクを郵送すると発表したことに対して、「アベガ-」などを中心に激しい反発が起こった。「アベノマスク」などという言葉も登場したようだ。

 これについては、中身のないウソを国民に広げるためにプロパガンダが洗練されているファシズム国家や共産主義国家と違って、日本人の伝統的考えである「良い仕事をすればみんな分かってくれる」という政府・官僚の広報対策の不備が責められるのは、ある意味仕方がない。しかし、この「布マスク2枚」は国家の全体戦略のあくまで一部だということを考えるべきであろう。

 現在有事にある日本国民は、ジョン・F・ケネディ大統領の「国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」という名言を思い出すべきだ。

 特に悲しいのは、日本人同士がいがみ合うことである。

マスク不足の原因として、転売屋やドラッグストアに行列する高齢者などがやり玉にあげられる。それが事実である部分もあるが、根本的原因は「中国」または「中国依存」にある。


 新型コロナウイルスの感染が拡大する前、日本のマスクの年間生産・輸入量は約55億枚だったが、そのうち約44億枚が輸入品(=ほとんど中国製)で、国内の生産量は約11億枚しかなかった。つまり国産比率が20%程度なので、(輸入が止まって)国産だけで過去の需要を満たそうと思えば、これまでの5倍を生産しなければならない。政府の要請で国内各社が増産しても、5倍というのは厳しいハードルだ。

 しかも、現在はほとんどの国民がマスクを使用しているので、全国民の8割程度の1億人が毎日マスクを使用すれば、年間では365億枚と過去の需要の約7倍にも膨らみ、到底調達できない。

 だから、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化するなか、日本政府が(病院などに医療用マスクを回すために)再使用が可能な布マスクを国民に送付して、有効利用を要請するのは理にかなっているのだ。

 気になるのは、過去44億枚あった輸入品の行方である。AFP通信(7日)などは「中国は医療用物資の輸出を制限しているのか」などと報じている。

 検証可能な数字はないのだが、現在の中国からの輸入は週に1000万枚程度ともいわれるから、単純計算で年間5億枚程度で、過去の輸入量から比べれば雀(すずめ)の涙だ。

 しかも、そのようにして事実上日本企業=日本国民から奪ったマスクを、中国側がマスク不足に苦しんでいる各国にもったいぶって売りつけるという政治利用を行っているとすれば許しがたいことである。

 例えば、フランスには、マスク10億枚の供給と引き換えに、第5世代(5G)移動通信システムについて、中国の華為技術(ファーウェイ)の導入を求めたと伝えられた(=中国側は否定)。

 日本国民が怒りをぶつけるべき相手は、初期に日本からのマスクの寄贈を受けたにも関わらず(=そもそも、寄贈には問題があったが)、恩をあだで返す(人の足元を見る)中国共産党だとしか思えない。

 輸入依存で危険なのはマスクだけではない。

 在宅医療現場で使用されている人工呼吸器の約98%が輸入製品である。その他の医療製品も輸入比率がかなり高い。世界中で医療製品の取り合いが起こっており、この状況は非常に危険だ。

 食糧調達にも暗雲が立ち込めている。日本農業新聞によれば、4月3日時点でロシア、カンボジア、カザフスタンなど11の食糧輸出国が、自国への供給を優先する輸出規制を行っている。

 世界の穀物供給センターである米国でも状況は厳しい。新型コロナウイルス感染症の広がりによる国境封鎖・都市封鎖などによって外国人を始めとする労働者の確保が難しくなっているほか、配送トラック・配送センターの業務にも大きな支障が出ている。

 新型コロナウイルス感染は早く終息してほしい。もしそれが実現されなければ、われわれはまさに「戦時」の中で暮らさなければならないのだ。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

中国への過度の依存について、政府も手を拱いているわけではありません。これに対応スべく安倍総理は行動を開始しています。

日本政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で製造業のサプライチェーンの分断を受け、中国などから生産拠点を国内や第三国に移転するための支援を表明しました。米上院議員らはこの報道を受けて、米国もこの動きに追従すべきだと発言しました。脱中国依存の流れの始まりとしています。

この移転支援策は、4月7日に発表された緊急経済対策の一つとして盛り込まれました。総額は2435億円で、国内回帰分が2200億円、残り235億円が第三国への移転分として用意されます。

安倍首相は3月5日、官邸で開かれた未来投資会議でこの支援策について、次のように述べています。「中国などから日本への製品供給の減少による我が国のサプライチェーンへの影響が懸念される中で、一国への依存度が高い製品で付加価値の高いものは、我が国への生産拠点の回帰を図る。そうでないものも、一国に依存せず、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国などへの生産拠点の多元化を図る」


マスクがなくなったということで、マスクに関しては中国に依存していることが、多くの人に知られるようにはなりました。しかし、日本がどの程度中国に依存しているのかも明らかにしておく必要があります。

中国の主要な輸出先(2017年)は、1位米国、2位香港、3位日本、4位韓国の順。トップ4の顔触れは、20年前の1997年と全く同じです。ただ、日本は低下しており、輸出先としてのシェア(同)は6%と10年間で3分の1に低下しました。

急浮上したのが5位ベトナムです。同国への輸出額は過去20年間で約70倍、同10年間で6倍に急増、中国の対世界輸出額が各々13倍、2倍だったのに比べ大きな伸びを記録しました。この結果、ベトナムは中国の輸出先として10年前(2007年)の22位から急上昇しました。

世界貿易に占める中国の中国のシェア
上のグラフからすると、中国の対日輸出・輸入のしエアは年々減っていたことがわかります。この流れを加速することは、十分できそうです。米国もドイツも低下傾向です。

さらに、GDPに占める貿易の割合は、日本は29.3%、米国は20.56%です。韓国は、70.31%です。日本や、米国は元々貿易依存度が低いので、中国依存をやめることは比較的簡単です。とはいいながら、コロナ禍においては、マスクなどが品薄になるわけですから、早急にすすめるべきでしょう。

米国においては、ジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)米上院議員は4月9日、日本政府が中国市場から撤退する企業を支援するとの報道をリツイートして、「米国も同じことをすべきだ」(1万8千いいね)と主張しました。トム・コットン(Tom Cotton)上院議員もまた、同記事を共有して「今後、世界でもっと中国に反旗を翻す動きが出てくるだろう」(3万5千いいね)とコメントしました。

中共ウイルス(武漢肺炎)の大流行は経済に大きな打撃を与え、多国籍企業は全体主義体制下にある中国市場からの撤退の動きが強まっています。調査会社によると、米国人の7割以上が米国のビジネスの中国市場撤退を予想しています。米国の上院議員は、米国も日本を見習って、米国のビジネスマンの復帰を支援するための資金を配分すべきだと考えています。

グローバル製造業コンサルティング会社・カーニー(Kearney)が4月7日に発表した第7回目の年次「回帰指数」(Reshoring Index)によると、2019年の米国国内製造業のシェアは、中国を含むアジア14カ国の生産品のシェアを大幅に上回りました。中国からの輸入が減り、自国生産品の流通が増加したことを示しています。

回帰指数は、アジア14カ国からの輸入品と、米国製品の変化を調査しています。 中国、台湾、香港、マレーシア、インド、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、カンボジアの14カ国を含めます。

報告書を作成したパトリック・バン・デン・ボッシェ氏は、回帰指数の高まりについて次のように分析しました。米国の生産者は30年前、国内のコスト高を理由に生産と製造、調達を中国に移したましたが、米中貿易戦によって高関税のリスクにさらされています。また、中共ウイルス(COVID-19)の流行が非常事態宣言を招く危機的な状況にあるなか、米国企業は予測不能な経済ショックに対応できるかどうかを考慮しています。

カーニーの年次報告書は、中国発のウイルス肺炎の蔓延により、海外企業の中国生産活動や貿易の縮小、撤退が加速しており、パンデミック前の状態に戻る可能性は低いと指摘しています。また、パンデミックの影響で大きな打撃を受けた企業は、リスクを分散し、中国市場への依存から脱出するために「購買戦略とサプライチェーンを真剣に考え直すことになる」と書いています。

中国は世界の自動車部品、玩具、電子製品だけでなく、ペニシリン、抗生物質、鎮痛剤、手術用マスク、医療機器など多くの医薬品や医療品も生産しています。

ドナルド・トランプ大統領の貿易顧問ピーター・ナバロ(Peter Navarro)氏は2月、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、今回のウイルス蔓延の発生は米国が中国やその他の国からの医薬品や医療品の輸入への依存度を減らすための「警鐘」(wake-up call)であると語りました。

企業活動においても、物品の購入先が一箇所の会社に集中していれば、その会社が業績不審になったり、倒産した場合はもろに影響を被ることになります。分散するか、企業にとって必要不可欠なものは、内製化も検討すべきです。

国と国との関係も同じことです。中国一国に依存しすぎると、これからも何が起こるかわかりません。早急に改めるべきです。ただ、そうはいっても、中国に進出している企業がそれを実行するつもりがなければ、それは実現できません。

中国政府としては産業の高度化を進めるためにも日本企業にもっと来てもらいたいという意向は非常に強いでしょうから、日本政府の補助金に対して、「中国政府もAI(人工知能)や5Gなどハイテク分野において日本企業に補助金を出し、中国にとどまるようインセンティブを付けることも想定されます。

そうなると、対中国冷戦を挑んでいる米国は、そのような日本企業に対して直接制裁を加えるようになるかもしれません。いずれの企業にとっても、対中国依存は危険であると自覚すべきです。

そんなことはないだろうと、高をくくっている企業もあるかもしれませんが、予めコロナ禍も予想できなかったように、コロナ禍後の世界も何が起こるかは全く予想できません。とはいいながら、世界秩序は大きく変わるのは間違いないです。リスクはなるべく減らしておくべきです。

【関連記事】

2019年4月24日水曜日

孤立する金正恩氏 中国すら制裁履行で…“プーチン頼み”も失敗か 専門家「露、大して支援はしないだろう」 ―【私の論評】ロシアは、朝鮮半島の現状維持を崩すような北朝鮮支援はしないしできない(゚д゚)!


ロシア・ハサン駅に到着した正恩氏=24日(ロシア極東沿海地方政府のホームページから)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は24日、特別列車で国境を越え、ロシア極東を訪問した。国境に接するハサン駅での歓迎式典出席後、ウラジオストクに向かった。25日にウラジーミル・プーチン大統領との初の首脳会談に臨む。2月の米朝首脳会談決裂後、最大の支援国だった中国すら国際制裁を順守する姿勢を見せるなか、正恩氏にはロシアから経済的支援を引き出す狙いがあるとみられる。ただ、専門家からは厳しい見方が出ている。

 「ロシアの地を訪れることができてうれしい。これは最初の一歩にすぎない」

 正恩氏は24日午前、ハサン駅に到着した際、こう語った。ロシアのコズロフ極東・北極圏発展相らが迎えた。

 北朝鮮の最高指導者の訪露は、金正日(キム・ジョンイル)総書記による2011年8月以来、約8年ぶりで、正恩体制では初めて。

 ロシアメディアなどによると、露朝首脳会談は25日、ウラジオストク南部のルースキー島の極東連邦大学で行われる。

 北朝鮮は、ベトナムの首都ハノイで2月末に行われた米朝首脳会談が物別れに終わった後、「対話路線」から「瀬戸際外交」に戻ったような動きを見せている。

 米国には、マイク・ポンペオ国務長官を対北交渉から外すよう要求し、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を「愚か者」と罵った。韓国には、正恩氏自らが演説で「差し出がましい」と非難した。

 ただ、国際社会による対北朝鮮制裁は厳格に維持されている。

 国連安全保障理事会の制裁対象である北朝鮮の海外出稼ぎ労働者について、中国やロシアが自国で働く労働者の半数超を北朝鮮に送還したことが3月に判明した。

 韓国紙、東亜日報(日本語版)は3月28日、中国による北朝鮮労働者送還を報じた記事で、「ある消息筋によると、北朝鮮は中国の制裁履行に不満を示したという」と指摘した。

 孤立化の気配すら漂う北朝鮮だが、ロシアへの接近で経済的支援を引き出すことができるのか。

 福井県立大学の島田洋一教授は「ロシアは最近、ベネズエラに軍事顧問団を送るなど『米国が嫌がることを何でもする』という感じだ。今回の首脳会談も、米国への牽制(けんせい)になるとみているのではないか。ただ、ロシアの財政状況が厳しいことを考えても、身銭を切るような支援は大してしないだろう」と語った。

【私の論評】露は、朝鮮半島の現状維持を崩すような北朝鮮支援はしないしできない(゚д゚)!

以前このブログで朝鮮半島情勢の根幹にあるのは、現状維持(Status quo)であることを述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。

北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、現状の朝鮮半島の状況がまさしく現状維持(Status quo)であることを述べた部分を以下に引用します。
北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。 
この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。

だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。 
ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。

ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。 
では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。
米国の立場を掲載した部分を以下に引用します。
米国・中・露とも現状維持を望んでいるのです。韓国は中国に従属しようとしてるのですが、韓国は中国と直接国境を接しておらず、北朝鮮をはさんで接しています。そうして、北朝鮮は中国の干渉を嫌っています。そのため、韓国は米国にとってあてにはならないのですが、かといって完璧に中国に従属しているわけでもなく、その意味では韓国自体が安全保障上の空き地のような状態になっています。 
この状況は米国にとって決して悪い状態ではないです。この状況が長く続いても、米国が失うものは何もありません。最悪の自体は、中国が朝鮮半島全体を自らの覇権の及ぶ地域にすることです。これは、米国にとっても我が国にとっても最悪です。
 このような最中に、韓国だけが南北統一など、現状を変更する動きをみせたため、米国はおろか、中国・露も韓国に対して良い顔はできないわけです。北朝鮮の金正恩も現状維持を旨としています。文在寅に良い顔をしていたのは、単に制裁のがれをするためです。そのために、文を利用しただけです。

南北首脳会談を前に文とてをつなぎ軍事境界線を越えた金

韓国の文在寅は朝鮮半島情勢をリードしているつもりだったのでしょうが、結局一人芝居を演じただけでした。

最近北が、ミサイル発射実験を匂わせつつ、結局「新型戦術誘導兵器」の実験をしたという発表があっただけでした。

「新型戦術誘導兵器」の詳細は不明ですが、金委員長は昨年11月中旬、国防科学院の実験場を訪れ、「新たに開発した尖端戦術兵器の試験を指導していた」(朝鮮中央通信)ことから国防科学院で研究、開発されていた兵器であることは間違いないようです。

この時の視察でも軍事関係者では李炳哲第一副部長と朴正天砲兵司令官だけが付き添っていたことから、今回テストされた兵器はロケット戦略軍(司令官:金洛謙・陸軍大将)が使用する弾道ミサイルではなく、砲兵部隊が局地的に使用する対空砲や誘導ミサイル、もしくは攻撃用兵器の可能性が高いです。弾道ミサイルでなければ、国連決議に反せず、安保理の制裁対象ともなりません。

金正恩も、米国・中・露とも現状維持を旨としていることは理解しているのでしょう。だからこそ、現状維持を破るような以前のような、核ミサイルの頻繁な発射には踏み切れなかったのでしょう。

ただし、制裁は徐々に効きつつあり、ロシアに訪問したのは、ほんの一部でも良いので、制裁を緩和して欲しいという意向があったからでしょう。

金正恩とプーチン

ロシアも現状維持を望んでいますから、現状維持を崩すような大規模な支援はしないでしょう。ブログ冒頭の記事では、福井県立大学の島田洋一教授が「ロシアの財政状況が厳しいことを考えても、身銭を切るような支援は大してしないだろう」としています。

私は仮に、ロシアの財政状況が良かったとしても、ロシアは現状維持を崩すような規模の援助はするつもりもないし、できないと思います。

現状のロシアのGDPは韓国を多少下回る程度で、韓国のGDPは東京都と同程度です。ロシアは、旧ソ連の核兵器や軍事技術を引き継いでいるということで、決して侮ることはできませんが、それにしても東京都程度のGDPではもともとできることは限られています。

ロシアは、現状維持を崩すような北朝鮮支援は絶対にしませんし、できないでしょう。

そんなことは、最初からわかっていることなのに、それでも金正恩はロシアに赴かなけば、ならなかったのです。これ事態が制裁がかなり効いていることの証です。金正恩は、自分自自身も、朝鮮半島の現状を維持することを望んでおり、米国はもとより、周辺諸国とも事を構えるつもりはないことをプーチン大統領に伝えることで、制裁がさらに強化されることを防ぐ狙いがあるものと思われます。

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2019年4月16日火曜日

「台湾国産潜水艦」工場の着工迫り反発強める中国―【私の論評】日本は台湾がシーパワー国になれるよう支援すべき(゚д゚)!

「台湾国産潜水艦」工場の着工迫り反発強める中国

 井上雄介 (台湾ライター)

    台湾の国産潜水艦(IDS)建造計画が着々と前進している。台湾メディアの上報は、造船大手の台湾国際造船(台船)が近くIDS専用工場の建設に着手すると伝えた。陳水扁・民進党政権時代の2002年以降、17年の紆余曲折を経た計画が、ようやく日の目を見ようとしている。

 台湾は、日増しに高まる中国の脅威を前に、現在保有する4隻の潜水艦の更新と増強にこだわり続けてきた。通常動力の潜水艦は、自衛用には理想の装備と考えられている。進撃してくる敵艦隊の攻撃のほか、戦時に予想される海上封鎖の突破にも役立つためだ。

   台湾の造船最大手、台湾国際造船は21日、第二次世界大戦期に米国で建造された海軍の
             テンチ級潜水艦「海獅(アシカ)」の延命改修が完了したと発表した。1945年の終戦
            直前に就役したディーゼル潜水艦で、73年に台湾に供与された。就役期間は世界最長。

 台湾は当初、海外からの調達を試みたが、中国政府の圧力で各国とも二の足を踏んだ。ブッシュ政権時代の米国が一時8隻の売却を承諾したが様々な理由で中断。オバマ政権時代に入ると、幾度打診してもなしのつぶてとなった。馬英九・国民党政権末期に、海軍トップが「もう待てない」と国内建造を強く進言して計画が始動した。

 16年に台湾独立志向の蔡英文・民進党政権が発足すると、計画が加速。同年中に台船が受注し、今年ようやく工場建設にこぎつけた。 

 工場の設計プランは、ドイツ、日本、韓国の技師に委託して提出させたが、最終的に日本人退職技師のものが選ばれたという。

 工場の設計は、秘密保持に重点が置かれている。人工衛星から写真撮影ができない「密閉式」の建屋となり、鋼材など材料の加工から装備の据え付け、完成後の保守まで全作業を建屋内で行う。内部の様子が見えないよう、建屋の大扉も進水時以外は閉め切りとなる。

潜水艦の自主開発に舵を切った蔡英文総統(写真中央)

 台船は潜水艦の設計を、ジブラルタルの軍事コンサルティング会社、Gavron・Limited(GL)に委託。GLは、英国の潜水艦設計専門の退職技師ら約30人を送り込んだ。武器などの装備は、欧米の専門会社15社と仮契約を結んだ。

 建造費用は1号艦が約500億台湾元(約1800億円)。うち専門工場の建設費が86億台湾元。残りの400億台湾元余りは装備とシステムの費用に充てられる。IDSは8隻建造し、工場建設や機械の購入費用が分担されるため、最終的には1隻当たり約250億台湾元に下がる見通しだ。

 もちろん中国は計画に強く反発。同国外務省は1月、いかなる国であれIDSへの関与を許さないと警告しており、今後、関連の外国企業に圧力が掛かる可能性もある。

 ただ、これまでのところ計画は順調で、厳徳発国防相はこのほど「IDS計画は一切が正常に進んでいる」と述べ、1号艦は24年の10~12月に進水する見通しを明らかにした。今後の行方に注目したい。

【私の論評】日本は台湾がシーパワー国になれるよう支援すべき(゚д゚)!

昨今の台中関係を考えますと、潜水艦は台湾の中国に対する抑止力を高めるための大きなカギとなるのは明らかです。航空戦力は既に圧倒的に中国側が有利であり、中国から台湾への攻撃があった場合、単純に両国間の戦力差を比較すると台湾は2、3日で制空権を失うと言われています。

これに関しては台湾の中国に対する、「A2AD(接近阻止・領域拒否)」的な能力の向上が重要ですが、実現には新鋭の潜水艦が不可欠です。しかし、現在台湾が保有する4隻の潜水艦(2隻は米国製、2隻はオランダ製)は、老朽化が進んでいます。これに対し、中国は約60隻もの潜水艦を保有しています。

2001年に米国のブッシュ(子)政権は、台湾に8隻のディーゼル推進式潜水艦の売却を決めたものの、結局、実現していません。そこで蔡英文政権は米国からの購入を断念し、自主建造に方向転換、2026年までに1隻目を就役させることを目指しています。

台湾の王定宇・立法院議員は、台湾の海中戦闘能力向上のための防衛計画は10年前に始まっていて然るべきものであり、潜水艦建造は既に予定より20年遅れている、と強い懸念を示しています(昨年4月9日付、台北タイムズ)。また、船体は自主建造できるにせよ、エンジン・武器システム・騒音低減技術等は海外から導入する必要があります。

王定宇・立法院議員

状況を俯瞰すると、米国から台湾に潜水艦技術が供与されることが望まれるところです。この点、昨年4月9日、台湾国防部は、台湾の潜水艦自主建造計画を支援するために米企業が台湾側と商談をすることを米政府が許可したと明らかにしていました。

台湾の経済団体「台湾国防産業発展協会」は、5月10日に台湾南部の高雄市で「台米国防産業フォーラム」を開催し、米国の軍事企業と技術協力について議論しました。

同フォーラムでは、艦船の製造、宇宙空間・サイバースペースの安全に重点が置かれ、米台間でハード・ソフト両面での協力が推進されました。米国からロッキード・マーチン社など15社以上が参加しました。これを機に、潜水艦技術の輸出についても商談が進む可能性もあります。

ただ、商談が成立したとしても、実際に輸出されるには米政府の許可が必要となります。この点は不透明な要因ですが、最近の米国の潮流は台湾への武器供与に積極的になっています。

台米国防産業フォーラムに出席する在日米陸軍元司令官のワーシンスキー氏

2016年7月、米議会では、台湾関係法と「6つの保証」(1982年にレーガン大統領が発表)を米台関係の基礎とすることを再確認する両院一致決議が採択されています。台湾関係法は、台湾防衛のために米国製の武器を供与することを定めています。

「6つの保証」の内容は、1.台湾への武器売却の終了時期は合意されていない、2.台湾と中国の間で米国が仲介することはない、3.台湾に中国と交渉するよう圧力をかけることはない、4.台湾の主権に関する立場を変更することはない、5.台湾関係法の規定を変更することはない、6.台湾への武器売却決定に当たり事前に中国と協議することはない、となっています。

トランプ政権は、昨年6月、14億ドル相当の武器を台湾に売却すると議会に通知し、同12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、台湾関係法に基づく台湾への武器供与が明記されなどしています。

台湾は、日本の潜水艦技術にも強い関心を持っていると言われています。日本の潜水艦技術は世界でもトップクラスであり、特に騒音軽減技術が優秀です。台湾が最新鋭の潜水艦を導入することは、日本の安全保障にとっても当然プラスになります。

これを機会に、日本は、台湾がいずれ強力なシーパワー国に成長できるように支援すべきです。無論これには、数十年の年月を要するでしょう。軍事技術だけではなく、かなりのコストを要するため、経済的にも発展しなければ、シーパワー国にはなれません。

ソ連とその後継のロシアは、結局シーパワー国にはなれませんでした。中国は、最近海洋進出を強化していますが、未だシーパワー国にはなれていません。経済力だけでもなれないのです。韓国もなれないでしょう。

トランプ大統領は韓国にはほとんど興味がないようですし、日本としてはもう昨年で韓国を相手にしても時間と労力の無駄であることがはっきりしました。

日本としては、韓国の異常ぶりを国際社会に晒し続けるにしても、もう韓国には一切深入りせず、台湾を支援すべきです。そのほうが、はるかに費用対効果が大きいです。今年は、日米両国とも韓国から台湾に軸足を移す年になるでしょう。そのほうが日米としては、対中封じ込めに余程効果を期待できます。

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2019年3月12日火曜日

迫りくる台湾をめぐる米中危機―【私の論評】日本を軽視する韓国に対して制裁が俎上に登っている現在、日本は台湾に対する支援を厚くすべき(゚д゚)!

迫りくる台湾をめぐる米中危機

岡崎研究所

台湾をめぐる米中の対立は、本欄でも何度も指摘してきた通り、高まる一方である。こうした事態に懸念を示す、最近の論説、社説の中から、米外交問題評議会のリチャード・ハースによる2月15日付け論説を中心にご紹介する。同論説の要旨は、以下の通り。


 米中外交は、米国は「中国は一つであり台湾は中国の一部であるという中国の立場」を認識する(acknowledge)とする、3つのコミュニケ(1972年、1978年、1982年)を基礎としている。1979年の台湾関係法には、米国の台湾へのコミットメントが明記されている。3つのコミュニケと台湾関係法が相まって、米国の「一つの中国政策」の基礎をなしている。

 この構造は、勝利の方程式となってきた。中国は世界第二の経済大国にまで発展し、台湾も経済発展と民主化を遂げた。米国は、地域の安定、中台双方との緊密な経済関係により利益を得ている。

 問題は、時間が尽きつつあるのではないかということだ。長年、米国の政策立案者は、台湾が独立その他、中国に受け入れられないことをしないか、懸念してきた。台湾の指導者は理解しているように見える。ただ、彼らは「一国二制度」による統一を拒否している。

 しかし、今や、安定は米中双方により危機にさらされている。中国経済の鈍化は習近平を脆弱な立場に置き得る。習が、国民の目を経済成長の鈍化から逸らすために外交政策、とりわけ台湾問題を使うことが懸念される。習は今年1月、台湾併合を目指す考えを繰り返し、そのために武力行使を排除しないと述べた。

 米国も、過去40年間機能し続けた外交的枠組みを守らないようになってきている。ジョン・ボルトン安全保障担当補佐官は、就任前、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「一つの中国政策を見直す時だ」とする論説を寄稿している。トランプも、米大統領(あるいは同当選者)として、1979年以来初めて台湾の総統と直接話をした。

 最近、5人の共和党上院議員が、ナンシー・ペロシ下院議長に、蔡英文総統を米議会に招くよう求める書簡を送った。そんなことをすれば、米台間の非公式の関係と矛盾し、中国の強い反応を招く。

 政府内外の多くの米国人が中国に強いメッセージを送ることを望み、そうすることで失われるものはほとんどない、と信じている。

 この計算が正しいかどうか、全く明確ではない。中国の経済制裁、軍事力行使が行われるような危機が起これば、2300万の台湾人の自治、安全、経済的繁栄が危機に瀕する。中国にとり、台湾危機は米国および多くの近隣諸国との関係を破壊し、中国経済にダメージを与えるだろう。

 危機により、米国は台湾への支援を求められ、それは新冷戦あるいは中国との紛争に繋がり得る。といって、台湾の自助努力に全て任せるという判断は、米国の信用を損ね、日本の核武装、日米同盟の再考に繋がりかねない。

 関係者全てにとり、リスクが高くなっている。相手にとって受け入れられないような象徴的な一歩を避けるのが最善だ。現状維持には欠点があるが、一方的な行動、きちんとした解決策の伴わない状況打破の企てよりは、はるかにマシである。

出典:Richard N. Haass,‘The Looming Taiwan Crisis’(Project Syndicate, February 15, 2019)
https://www.project-syndicate.org/commentary/looming-taiwan-crisis-over-one-china-policy-by-richard-n--haass-2019-02

 上記論説でハースが言っていることは、3つのコミュニケと台湾関係法に基づく「一つの中国政策」が40年間機能してきたのだから、今後ともそれに従って各当事者が自制すべきである、ということである。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、2月19日付け社説‘Taiwan tensions call for restraint from big powers’において、米国による台湾への武器売却、米海軍艦艇による台湾海峡の通過、台湾への武器売却の継続と当局者の交流を求める「アジア再保証イニシアティヴ法」など一連の米国の動きを「中国は刺激的だと見ている」とする一方、中国の台湾併合への熱意はこれまでになく高まっている、として各当事者に自制を呼びかけている。

 自制は重要だが、米国の「一つの中国政策」の枠組みが今後も有効であるのかは、検討を要する。中国が台湾を併合する意思は一貫しているが、今や、中国は軍事大国であり、台湾併合のために武力行使を排除しない、と明言している。米中双方が危機を作り出しているというが、やはり中国の責任が重いのではないか。米国が強い態度をとり中国を抑止することの方が「現状維持」に資すると思われる。米国の最近の対中強硬姿勢は止むを得ないと言うべきであろう。上記フィナンシャル・タイムズ社説が挙げているような、米国による台湾支援強化の措置は、ますます強化されると考えられる。ちょうど、2月下旬にも米海軍の艦艇が台湾海峡を通過したばかりである。

 蔡英文の米議会への招聘については、ワシントン・ポスト紙のジョン・ポンフレット元北京支局長が2月18日付の論説‘China’s Xi Jinping is growing impatient with Taiwan, adding to tensions with U.S.’で、中国を怒らせるとする専門家の見解と、それほどでもないとする専門家の見解を紹介している。

 米国の対応で、むしろ最も心配すべき点は、トランプ大統領が、台湾問題が米中の間でカードとなり得ると解釈され得るような発言をしてしまうことであろう。トランプは、そういう不用意な発言をする傾向があるので、注意を要する。

【私の論評】日本を軽視する韓国に対して制裁が俎上に登っている現在、日本は台湾に対する支援を厚くすべき(゚д゚)!

中国政府の指導者たちは建国以来約70年にわたり、台湾の統一を将来達成すべき課題として扱ってきました。ところが台湾政府は中国共産党の支配下に入ることにまったく関心を示していません。

2016年に独立志向の民進党から出馬した蔡が総統選挙で当選して以来、中国の台湾に対する敵対的な姿勢は強まっています。中国はこれまで、中台統一のための武力行使を放棄したことは一度もありません。

台湾周辺での中国の軍事演習により武力行使への懸念は高まっています。ところがロンドン大学東洋アフリカ学院中国研究所のスティーブ・ツァン所長は、アメリカの介入を避けるためにトランプ政権との交渉が行われない限り、人民解放軍が台湾に軍事攻撃を仕掛けることはないだろうと述べました。

ロンドン大学東洋アフリカ学院中国研究所のスティーブ・ツァン所長

「あと5年ぐらいは、(アメリカの反対を押し切ってまで)台湾に武力行使する力は中国にはないだろう。もしやれば、侵略の過程で前線と先進的な装備、軍隊の大半を失いかねない」

中国がいくら武力を用いて、台湾を統一するといきまいてみても、現実はこのとおりだと思います。

当面中国は軍事力以外の方法を用いて、台湾を統一する道に走ることになるでしょう。おそらく、それは香港を統一したときのような方式になるでしょう。

最近、中台統一を受け入れたら、あなた方は10の特権を享受できると、中国軍高官がラジオを通じて台湾の人々に呼びかけました。

台湾メディアによると、この放送は中国人民解放軍の台湾向けラジオ局「海峡の声」が流したものです。中国軍の王衛星少将は、1949年に国共内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて政権を樹立して以来、台湾人民は「真実を知る権利を剥奪されてきた」と述べ、その理由を5つ挙げました。

王衛星少将

王によると、台湾の人々は「1国2制度」を正しく理解していない。その理由は「第1に台湾当局による長期にわたる反共教育、第2に台湾独立派の分離主義イデオロギーの悪影響、第3に再統一に対する警戒感、あらゆる再統一プランを積極的に回避もしくは拒絶する姿勢、第4に一部メディアの誤った報道、第5に1国2制度に関する情報提供が不十分で、人々がこの制度をきちんと理解していないこと」だという。

その上で王は、台湾の人々が台湾海峡の向こうの本土の後ろ盾を得れば、10の特権を享受できると述べました。

第1に、中国政府の指導下で自治政府を維持できる。王によれば、一案として台湾を中国の「特別行政区」に指定し、その行政府が「台湾の基本法(憲法)」に基づいて統治を行う方式も可能で、その場合中国共産党なり人民解放軍の幹部が台湾に常駐することはないといいます。

第2に、台湾の代表が本土の政治に参加することは歓迎される一方で、「1つの国」という概念に抵触しない限り、台湾は独自の法律を制定できる。立法のみならず、第3第4の特権として、行政と司法の独立も認められるそうです。

第5に、外交の権限は最終的には中央政府に帰するのですが、台湾当局は「台北」もしくは「中国の台湾特区」として、外国政府と独自に交渉を行えるとしていす。第6に、人民解放軍と共に国防の任に当たるという条件で、台湾は独自の軍隊を持てるとしています。

第7に、台湾の企業や住民は中央政府に対する納税義務を免除され、しかも要請があれば、中央政府は台湾に補助金を支給するとしています。第8に、台湾当局は独自通貨を発行でき、その通貨には人民元とは独立した為替レートが適用され、台湾は独自の外貨準備を保有できるそうです。第9に、台湾当局は独自の通商政策を実施し、外国と貿易協定を締結できる。

そして最後に、「平和的な再統一」が実現すれば、台湾当局は独自にパスポートを発行でき、私有財産制や宗教の自由など台湾の人々がいま享受している権利や制度は完全に守られると、王は保証しました。

王衛星少将のソフトな呼びかけがある一方で、中国人民解放軍軍事科学院の元副院長で、同軍中将の何雷(He Lei)氏は9日、中国が武力行使による台湾併合を余儀なくされた場合、台湾の独立支持派は「戦争犯罪人」と見なされると警告しました。

「1国2制度」は、かつての中国の指導者・鄧小平が提唱した方式で、1997年に旧ポルトガル領のマカオ、1999年に旧英領の香港がこの方式で中国に返還されました。この2つの特別行政区は建前上は一定の経済的・政治的な自治を認められているものの、最終的には中央政府の決定に従わなければならなりません。香港では中国による言論弾圧が強まっており、もはや「乗っ取られた」も同然です。

共産主義中国の「建国の父」毛沢東が1979年に「台湾同胞に告げる書」を発表してから40周年に当たる今年、習近平国家主席は年初に1国2制度の適用などの台湾政策を発表。中台統一の実現は「責務であり、必然である」と述べて、必要ならば軍事行動も辞さない姿勢を見せました。

現在、台湾と正式に国交を結んでいる国は十数カ国にすぎないです。毛が中台統一を呼びかけた1979年には米中国交正常化が実現、アメリカは台湾と断交しました。ところが米国による台湾への軍事的な支援など非公式な関係は続き、中国は緊張高まる台湾海峡で実弾演習を行うなど軍事演習を強化しています。

蔡英文総統は先月末、日本メディアの取材に応じ、安全保障問題などについて日本政府と対話したいとする意向を表明しました。これについて国立政治大国際関係研究センターの研究員、蔡増家氏は、蔡総統には台湾と米国が安全保障面において連携関係にあることを日本に伝え、台湾は日本とも米国と同様の連携関係を築けると示唆する意図があったと分析しています。

国立政治大国際関係研究センターの研究員、蔡増家氏

蔡増家氏は、蔡総統の発言には主に3つの意図があると分析。第1に、安倍晋三首相が太平洋からインド洋にわたる地域で安全保障や経済成長の協力を目指して掲げる「インド太平洋戦略」への参加に向けた意思表示だといいます。蔡増家氏は日本が台湾にとって重要な隣国であり、共に中国の脅威に晒されていることに言及した上で、安全保障面において台日間の情報共有は非常に重要となると説明しました。

第2は、日本と中国の関係が改善に向かっていることに関連しており、台湾と民主主義の価値観を共有する日本が、中国と接近する一方で台湾との関係を犠牲にしないよう訴える目的が蔡総統にあったとみられるといいます。

第3は、蔡増家氏によれば、インタビュー直前の先月25日に米軍艦による今年2度目の台湾海峡航行があったことに触れ、このタイミングでの日本への対話要請は、台湾と米国と日本が民主主義の価値観を共有していることを前提に、日本とも米国と同様の安全保障面における連携強化を進めたいという宣言とも取れると述べました。

台日間の安保対話が実現する可能性について、蔡増家氏は軍事面での協力や共同訓練の実施などについては現段階では困難だとし、情報共有に関する連携なら実現する可能性は比較的高いとの考えを示しました。

蔡総統のインタビューは、2日付の産経新聞朝刊に掲載されました。同紙によれば、蔡総統が日本と直接対話する意向を明らかにしたのは初めてで、強まる中国からの脅威を念頭にしています。蔡総統は同日、インタビューの要点をツイッターに日本語で投稿し、中国が唱える「一国二制度」を拒否する姿勢やサイバー攻撃に関する日本との対話を望む考えなどを発信しました。

このインタビューにおいて蔡総裁が、安全保障・サイバー分野での直接対話を日本政府に要請したことについて、国際政治学者で政策研究大学院大学長の田中明彦氏が7日、日本側は中国への配慮などで準備ができていないとの考えを示しました。

政策研究大学院大学長の田中明彦氏

同日東京都内であったフォーリン・プレスセンター(FPCJ)主催のシンポジウムに出席した際、中央社の記者から日台安保対話に関する質問を受けて答えました。

田中氏は、現時点での日台ハイレベル、当局間対話の開催は「不可能」としつつも、サイバーセキュリティーなどの分野では、実務者協議だけで効果を上げることができるとの見解を示しました。

蔡総統の安保対話要請を巡っては、日本の河野太郎外相が8日の記者会見で、日台関係は「非政府間の実務関係を維持していくというので一貫している。この立場に基づいて適切に対応してまいりたい」と述べました。

日本を軽視する韓国に対する制裁が俎上に登っている今日、日本としては台湾に対して安全保障に関する話あいを行うのは無論のこと、様々な方面で支援を厚くする方針でのぞむべきと思います。

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2019年2月18日月曜日

「台湾は中国からの武力行使にどう対処するか」古くて常に新しい問題―【私の論評】日本には、中、露、韓は放置し、台湾を支援すべき時がやってきた(゚д゚)!

「台湾は中国からの武力行使にどう対処するか」古くて常に新しい問題

岡崎研究所

 1月2日に中国の習近平国家主席は、台湾政策に関する包括的な演説を行い、「一国二制度による台湾統一」を打ち出すとともに、いざとなれば「武力行使を排除せず」との姿勢を明確にした。今のところ、中国が台湾に対し、直接武力侵攻を行う可能性は決して高いわけではないが、ここ20年間で中国と台湾の軍事バランスは大きく中国の側に傾斜した。軍事費だけとってみても、1996年には辛うじて台湾の2倍だったのが、今や15倍になっている。


台湾海岸にて。台湾への日本人観光客が増えている。特に修学旅行で行くケースが急増。

 台湾においては、中国からの武力行使の可能性に備え、いかに対処するかは古くて常に新しい問題である。一つの有力な戦略として「ヤマアラシ戦略」がある。これは、大型の戦闘機や軍艦ではなく、安価で機動力の高い小型兵器(自動制御機雷、武装ドローン、ミサイル等)により、接近してくる中国軍を沿岸部で疲弊させることを目指すものである。米国による勧奨もあり、台湾は2017年に「ヤマアラシ戦略」を含む包括的な防衛構想を打ち出している。

 他方、最新の大型兵器の保有にも意味がある。戦車、大型艦船、戦闘機は、それ自体が抑止力として働き得る。台湾人の士気を高める効果も期待できる。しかし、こうした大掛かりな武器は費用がかかる。例えば、潜水艦は、国産であっても1隻10億ドル以上するが、台湾の国防費は年110億ドルである。徴兵制から志願兵制に移行中の台湾軍は、人件費の高騰にも悩まされている。その結果、兵士は削減され、1996年と比べると15万人以上も減り、現在は21万5千人である。

 結局、台湾の防衛のカギとなるのは、台湾関係法を持つ米国と台湾との安全保障上の特別な関係ということになる。米国の潜水艦8隻により中国の水陸両用艦隊の40%を戦争開始から1週間で撃沈できるというシミュレーション結果もある

 台湾関係法に基づき、米国は台湾に防禦用の武器を売却することにコミットしている。同法に加え、昨年、トランプ政権下において、米国議会は、ほぼ全会一致で「台湾旅行法」(米台高官の交流を勧奨)、「国防授権法」(台湾の防衛力強化にコミット)を可決した。

 今後の米国の台湾に対する武器輸出が、これまでより航続距離の長い攻撃用戦闘機などを含むようになるのか、米国の軍事演習やリムパック軍事演習に台湾が参加できるようになるのか、米国の軍艦が台湾の港を使用するようになるのか、米国の海兵隊員が台湾に駐留するようになるか、というような諸点が今後の注目点となろう。

 今や、毎年3500人から4000人の米国防省関係者が台湾を訪問し、2010年以降の米国の台湾への武器売却の総額は150憶ドルを超えたという。これらのことは、米国の台湾の安全保障へのコミットメントが、着実に深まりつつあることを示している。

 なお、1月2日の習近平の演説に対し、蔡英文は直ちに「一国二制度」の受け入れを断固拒否するとともに、台湾にとって「防衛力の構築が重要政策のなかでも最優先だ」と強調した。そして、同時に「台湾の防衛力強化に協力してくれるすべての国と協力したい」と述べ、米国だけではなく、日本を含むすべての国々との安全保障協力にも期待感を表明した。この蔡英文のスピーチが特に日本の名前を挙げている点は注目を要することである。台湾の現役の指導者が、安全保障関係で日本の協力に期待する、との趣旨の発言を行ったのは、恐らく今回が初めてであろう。日本にとっては、これまでの防衛関係者同士の交流、意見交換等に加え、台湾の安全保障のために何をすべきか、何ができるか等について、台湾、米国の関係者らとよく擦り合わせ検討すべき段階に来ていると思われる。
【私の論評】日本には、中、露、韓は放置し、台湾を支援すべき時がやってきた(゚д゚)!
馮世寛前国防部長(左)

台湾で昨年5月に発足した政府系シンクタンク「国防安全研究院」は12月13日までに、中国軍が進める組織改革について「国土防衛型から外向進攻型への転換を意図している」と指摘し、台湾海峡や東シナ海、南シナ海の周辺諸国にとって「深刻な脅威」になると警告しました。

同研究院は中国や地域情勢の専門研究を目的に発足、馮世寛前国防部長(国防相)がトップを務めています。今回は「中国共産党の政治と軍事」「インド太平洋地域の安全情勢」「国防科学技術産業」に関する三つの報告をまとめました。

陸海空軍の統合作戦指揮化を柱とする中国軍の改革について、海外での国家利益の確保、軍事技術の向上、習近平国家主席の絶対的指導力確立などの思惑があると指摘。軍改革は2020年までの完成をめどにしており、それまでは軍隊の調整期にあるため台湾海峡で大規模な危機が起きる可能性は低いと分析としています。

さて、今日本が真っ先にすることは「台湾と事実上の『同盟』をいかに結ぶか」です。

日本の保守派からは、20年以上も前から「台湾との連帯の重要性」が諭されてましたが、一向に「世論」は盛り上がりませんでした。その理由は、メディアが台湾に目を向けず、ひたすら「日中・日韓」との友好・連携ばかりを言い立ててきたからですが、今、日本政府が「台湾との連携」を言い出したとしても「反対」を叫ぶ国民はごく少数に違いないです。

すでに多くの日本国民が「台湾こそが日本にとって最も大事な『友人』だ」と認識しています。特に、東日本大震災後(3・11)の台湾国民からの熱い支援は、多くの日本人の胸に刻まれています。3・11のとき、世界最大の支援をしてくれたのは台湾でした。マスコミで報じられた以外にも民間レベルで、国家レベルに匹敵する支援が行われました。

3.11の時に最大の支援をしてくれたのは他ならぬ台湾だった

高名な画家は自分の個展を開き、その売上金をそっくり岩手県の病院再建に寄付しました。日本と台湾を結ぶ航空会社と言えば、中華航空が真っ先に浮かびますが、今は台湾民族資本の「長栄」(エヴァ・エア)の便数が一番多いです。3・11の折には、長栄の長栄発会長は個人で20億円をカンパしています。

その機体には「キティちゃん」が描かれ、機内食用のプラスチック製ナイフやフォークもキティちゃんでそろえるほど日本大好きなのです。

キティちゃんが描かれた長栄航空の機体

台湾の人たちが大切にする価値観は「親切」「誠実」「清潔」「勤労」「公に尽くす」などで、こうした価値観を台湾の人々は「日本精神」、台湾語で「リップンチェンシン」と常に口にします。神奈川・座間の海軍工廠に徴用で来日した台湾少年工は、補償を要求するどころか、感謝の意を表すため高齢となってまで家族ともに来日しています。

そこへ行くと韓国は、台湾とは反対に日本に対して徹頭徹尾「怨恨」しかありません。加えて「解決済みの賠償問題を蒸し返し=たかり」「経済失政を日本にツケ回し=失業大学生を日本企業に輸出」する有様です。「徴用工判決」で痛めつけている日本企業に、韓国の「就職難民」を雇ってくれと言っているのだから、呆れてもモノも言えない。さらには、最近では自衛隊の哨戒機にレーダー照射をするという、とんでもないことをしでかしました。

「怨恨」は単なる憎悪感情ではありません。心理学者によると、「強者に対する弱者の憎悪や復讐衝動などの感情が内向的に屈折している状態」といいます。こんな国と仲良くなどと、たわけたことを言っている場合ではないです。今、日本が極東アジアで組むべき相手は台湾しかないです。

ブログ冒頭の記事にもあった、米国が昨年3月に成立させた『台湾旅行法』と同じ法律を成立させるべきです。同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官を含む米政府当局者全員が台湾に渡航し、台湾側の同等役職者と会談することや台湾高官が米国に入国し国防総省や国務省の当局者と会談することを定めた法律です。

米国は中国との国交樹立以降、台湾とのこうした交流を自粛してきましたが、これをトランプ大統領は反故にしました。ラブコールを送る友人に日本も応えるべきです。

台湾に対する支援は、覇権主義の中国、「怨恨」感情を露わにする韓国や、強欲ロシアとの北方領土返還交渉にカネを使うより費用対効果は高いはずです。

日本政府は、過去40年にもわたり合計3兆円も、中国への途上国援助(ODA)をしてきましたが、今年度を最後に終了します。

北方領土に関しては、昨日のこのブログにも掲載したように、米国の対中制裁が継続されれば、中国が弱体化し、そうなれば現在は影を潜めた中露対立が高まることになり、それでロシアは疲弊することになり、その時がまさに交渉のベストタイミングです。今はベストではありません。

本当は、ベストタイミングは以前もありました。それは、無論ソ連崩壊のときです。あのときに、日本が強力にロシアと交渉すれば、あの時点で北方領土が戻ってきた可能性は十分にありました。

中露対立が高まった場合には、その機を逃さず日本はロシアに対して強力な交渉をすべきです。

現在は、交渉の時ではないです。将来を見越して、ロシアに経済援助するなどのことは絶対にすべきではありません。

日本は、ここしばらく、中露対立が高まるまでは、中国、韓国、ロシアなどへの支援はせずに、台湾に対して支援すべきです。それが、日本の将来を左右することになります。

台湾への支援もいろいろあります。まずはTPPに加入してもらうべきです。さらに、軍事的にも、技術的にも様々な支援を行っていくべきです。ただし、台湾にも大陸中国に親和的な勢力もあるので、それらを利することによって大陸中国を間接的に利するようなことだけは、避けながら、細心の注意をしながら支援すべきです。

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2016年7月6日水曜日

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?―【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?

歴史を修正して反日姿勢を崩さない朴槿恵大統領

韓国政府から、日本と緊急時に通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開を望む声が強まっている。英国の欧州連合(EU)離脱決定や中国経済失速などの要因でウォン暴落や外貨流出の懸念があるためだ。ただ、朴槿恵(パク・クネ)政権の反日姿勢で協定が終了した経緯もあり、その身勝手さにあきれる声も聞かれる。

今月1日に駐日大使に就任した李俊揆(イ・ジュンギュ)氏は2日付の日本経済新聞のインタビューで、日本との通貨スワップ再開について「危機はいつ誰に訪れるかわからず、通貨スワップは危機対応として互いに役立つ」として望ましいとの姿勢を示したという。

韓国は中国と最大の通貨スワップ協定を結んでいるが、調達できるのは人民元だ。一方、2001年に締結した日韓通貨スワップは、韓国はウォンを日本に渡し、米ドルと日本円を受け取ることができるものだった。

11年には700億ドル(約7兆1960億円)の規模に拡大したが、反日姿勢を強めた朴政権側から「協定延長は不要」との声が出て、昨年2月に打ち切られた。

その後も韓国で経済不安が発生するたびに、韓国側の政財界やメディアからスワップ再開話が浮上していた。今年6月には英国民投票で離脱派が勝利したことでウォンや人民元など新興国の通貨が軒並み売られたことから、崔相穆(チェ・サンモク)企画財政部次官が日本や米国との通貨スワップ再開に言及した。

韓国内では、外貨準備高が今年5月末時点で3709億ドル(約38兆880億円)にのぼるため、通貨安や資本流出にも対応可能との論調もある。また、円高とウォン安が進むことは、日本と競合する韓国の輸出産業にとっては有利だ。

ただ、ウォンの対ドルや対円レートは英国民投票直後の急変からいったん落ち着いたが、韓国への影響が大きい中国の人民元も下落が続いているうえ、今後の米国の追加利上げ観測もあることから先行きは予断を許さない。

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は、「米国に為替操作国と認定される恐れがあるため、韓国は介入に頼れなくなり、通貨スワップ再開の動きが出てきている。ただ、日本にとっては韓国とのスワップを再開するメリットは小さく、事実上は韓国救済になることを韓国政府はわきまえるべきだろう」と指摘している。

【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国経済は、このままだと低迷しいずれ過去日本のように「失われた20年」に突入するのは必定です。そのような国を通貨スワップで救済しても無意味です。

現在、韓国では、過去の1990年代後半からの20年に及ぶ経済停滞( 失われた20年)を警戒する論調が盛んになっています。そうして、韓国の政策当事者や経済学者、エコノミストたち主流派の意見は、韓国経済低迷の主因を「構造的要因」に求めているのが一般的です。

日本の小泉純一郎政権発足間もない頃に標語になっていた「構造改革なくして景気回復なし」と同じ議論です。しかし、小泉政権のときもそうでしたが、韓国経済の低迷もまた、「構造問題説」でとらえるのは間違いです。

日本では90年代から経済成長率が低迷し、失業率が高止まりし、低インフレからデフレへの長期継続といった現象が観測されていました。この原因は、消費や投資など総需要不足であることは全く疑いがありませんでした。ところが、当時の政府はもとより、マスコミや経済学者まで経済の無駄をなくせというばかりで、やるべきであった金融緩和など一切せず、何かといえば構造改革一本槍ということが続けられました。

小泉内閣時代の自民党のポスター
この状況を解消するべく方向転換をしたのが、第2次安倍晋三政権のアベノミクスでした。その中でも、異次元の金融緩和とも呼ばれた、大規模な金融緩和が功を奏しました。しかし、本来積極財政を行うべき、財務省が緊縮財政の手法である消費税増税に拘りつづけ、8%増税が実施され、GDPは伸びませんでした。

しかし、雇用のほうは改善し、それこそ数十年ぶりの回復をみました。そうして、今年は消費税10%への増税はまた、延期されました。

日本はなぜ、20年近くにも及ぶほど正しい経済政策を取れなかったのでしょうか。簡単にいうと、それは財務省は積極財政をすべきときに緊縮財政を行い続け、日本銀行は、金融緩和をすべきときに、金融引き締めを行いつづけたからです。

日銀は、金融政策の間違いを、財務省は財政政策の間違いを頑として認めず、あろうことか、それを政治家やマスコミ、多くの経済学者までもがそれを許容してきたからです。

すでに2014年あたりから、韓国の経済指標は日本の失われた20年の時代と同じような兆候

同じようなことが今の韓国経済にもあてはまります。問題の本質は、総需要不足であり、構造改革は問題解決になり得ないどころか、解決を遅らせるだけで、「害」をもたらす政策以外の何ものでもありません。

韓国銀行(日本の日銀にあたる韓国の中央銀行)は度重なる金利低下を実施しています。しかし、韓国銀行は金融緩和をせずにこれを実施しているので、為替レート市場では一貫してウォン高が進行しています。これが韓国の代表的な企業の国際競争力を著しく低下させていることには疑いの余地はありません。

では、なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのでしょうか。田中秀臣氏などのリフレ派かみると、韓国政府や韓国銀行は、大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減することを恐れているとみなしているようです。

そうなると、海外の投資家たちは韓国市場から投資を引き揚げ、株価なども大幅に下落してしまうことを恐れているというのです。しかし、私はそれだけが原因では無いと思います。

元々、韓国の個人消費は、GDPの50%程度しかなく、これはかなり低い水準です。日本などの先進国では、これが60%台であるのが普通です。米国では、これが70%にも及びます。日本は失われた20年でデフレ・スパイラルどん底に沈んでいるときですら、60%近くを維持していました。

極端なグローバル化で歪な韓国経済
どうしてそのような構造になったのかといえば、極端なグローバル化を進めた結果です。しかし、韓国政府は低い個人消費を伸ばそうという意識はないようです。だからこそ、金融緩和などには、無関心なのでしょう。

しかし、現状をそのまま放置しておけば、過去の日本の失われた20年のように、韓国経済は長期停滞に埋没していくのは必定です。これを打開するためには、個人消費を伸ばす政策を採用すべきです。それを実行するには、金融緩和は不可欠です。

そうして、構造改革をするというのなら、何をさておいても、内需を拡大することを優先すべきです。そのためには、金融緩和、積極財政は欠かせません。

日本には、韓国が大胆な金融緩和を行えないのは、日韓スワップ協定などで潤沢なドル資金を韓国に融通する枠組みに欠けているからだ、と指摘する人もいます。確かに、その側面はあるかもしれません。しかし、これよりよりもはるかに深刻なのは、朴政権と韓国銀行に蔓延している間違った構造改革政策です。

このようなニュースがまた、報道されるかもしれない。日韓スワップ協定は、
事実上の韓国への支援、ただし支援しても何の効果も期待できない
日韓スワップ協定による、潤沢なドル資金がなかったにしても、ウォンは韓国の貨幣なのですから、韓国銀行はウォンを増刷することができます。であれば、韓国内で金融緩和はできるはずです。それを実行すれば、日韓スワップ協定を再開しなくても、韓国は自力でも何とか困難を回避できるはずです。

しかし、これを実行せずに、昔の日本のように「構造改革ありき」などとしていれば、韓国も「失われた20年」に見舞われるのは確実です。そうして、これは日韓スワップ協定を再開したとしても、そもそも政策が間違っているのですから、改善されることはあり得まず、無意味です。

それにしても、韓国はどうして日本が「失われた20年」を招いてしまったのか、理解できないのでしょうか。虚心坦懐に日本での出来事をみていれば、理解できるはずです。

しかし、彼らは「反日」で目が曇っています。だから、日本の状況を正しく判断する事ができないのだと思います。日本のリフレ派の識者がこれを、韓国に対して説明しても彼らは聞く耳を持たないでしょう。であれば、全く効果が期待できないので、支援しないのが一番です。支援しても、何も効果がでないので、さらに日本に対して面妖な要求をつきつけるようになるだけです。そんなことは、私達は過去の例で嫌というほど、見せつけられています。

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2016年4月19日火曜日

【熊本地震】「食料最低限なのに…」MBS山中アナ、取材用弁当写真をツイッターに上げ批判続出 「配慮欠けた」謝罪―【私の論評】自己満足だけで、被災地に支援物資を送ったり赴く「意識高い系」にはウンザリ(゚д゚)!

【熊本地震】「食料最低限なのに…」MBS山中アナ、取材用弁当写真をツイッターに上げ批判続出 「配慮欠けた」謝罪





熊本地震を取材していた毎日放送(MBS、大阪市)の山中真アナウンサー(39)が、取材用弁当の写真を自身のツイッターに投稿し、相次いで批判を受けていたことが19日、わかった。同アナはすでに「配慮に欠けた行為」と謝罪し、写真などを削除した。

■山中アナ「やっと1食目…手に入りにくい」、ネット上「なら持参しろ」

同局などによると、山中アナは「前震」発生翌日の15日から熊本に入り、精力的に取材。同日放送の生ワイド番組「ちちんぷいぷい」などで報告した。

問題となったツイートは16日夜に投稿された。揚げ物などが入った弁当の写真とともに、〈やっと今日の1食目。食料なかなか手に入りにくいです〉とのつぶやきを書き込んだ。

この直後、ツイッター上には〈食料飲料が最低限なのに〉〈あなた以上に現地の方は食料を求めているでしょうに〉〈食糧持参しろよ〉といった趣旨の反応が相次いだという。

山中アナはその後も、ラーメンを食べる予定などを投稿したが、18日夜になって、〈被災者のみなさんに不快な思いをさせてしまいました。配慮に欠けた行為で申し訳ありませんでした〉と謝罪し、写真など一連の投稿を削除した。

弁当は同局取材班が購入したもので、被災者に支給予定だったものを横取りした-などとする指摘は否定したものの、「被災者の方々に対して配慮を欠いた行為で、おわびするしかない」(広報)とし、詳しい経緯を調べている。

熊本地震の取材をめぐっては、関西テレビ(大阪市)の中継車がガソリン給油の行列に横入りしたとして非難を浴びたばかり。

【私の論評】自己満足だけで、被災地に支援物資を送ったり赴く「意識高い系」にはウンザリ(゚д゚)!

関西のテレビ局が行った被災地での取材時における不祥事に関するニュース以下に2つをあげておきます。

■カンテレ謝罪、地震取材車ガソリンスタンド割り込み(日刊スポーツ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160419-00000015-nksports-ent

■MBS山中アナ、取材用弁当写真をツイッターに上げ批判続出 「配慮欠けた」と謝罪(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160419-00000545-san-soci

カンテレの列の割り込みは確かに褒められたことではありません。謝罪を行っていることから事実であったと想定されます。これは確かに良くないことと思います。

益城町役場前に避難した人々に6強の余震が襲った =15日午前0時3分、熊本県益城町
しかし、MBSの山中アナの件に関しては、ニュースを読んだ限りでは多少可哀想な気がしなくもありません。取材で丸1日頑張って、夜中になってやっとお弁当にありつけた。彼は、そんな過酷な取材現場の状況を伝えようとしたのでしょう。それによって、現地の状況を伝えようとしたのでしょう。しかも、それはテレビ報道でもなく、新聞でもなく、MBSの公式ツイートでもありません。あくまで、山中真氏の個人ツイートです。

ただし、記事を見ているだけでは、どのような状況であったのかが良くわからず、何ともいえない部分もあります。

たとえば、取材に行ったとしても、何人のクルーで行ったのかとか、どのようなルートで、どのような方法で現地に行ったのかなどの情報がないので何とも言えません。

多人数で現地まで、多少大きめの車両で行ったとしたならば、食糧品・飲料なども携行すべきだったと思います。人数が多ければ、確かに何人か現場に滞在しただけでも、相当の食料・飲料を消費することになるのは、最初からわかることです。

そうでないとしても、食糧品や飲料も携行させないで現地に取材に行かせて、現地で飲料・食料を調達させるような出張のさせかたをしたというのなら、これは非常に問題です。そもそも、これでは、クルーを生命の危険に晒すことにもつながります。これは、山中真アナウンサー一人の問題ではなく、そのような形で出張に行かせた責任者にも問題があります。

現地では、食糧品や水がなかなか入手できないということは十分予想できたはずですから、当然のことながら、数日分の食料・飲料を持たせた上で、現地に赴かせるべきだったでしょう。かなり多めに飲料・食糧など携行させ、現地の本当に困っている人たちに分けてあげることなどができれば、ベストだったと思います。

しかし、MBSを含めマスコミは、そのようなことには無頓着なようです。以下のようなツイートがありました。


それにしても、この取材クルーの送り方は、自衛隊などのやり方と比較すると対照的です。さすがに自衛隊は、そのあたりは上のほうから厳しく命令されているせいか、しっかりしています。

私の記憶では、東日本大震災のときにも、現地に赴いた自衛隊員は、現地で温かい食べ物を炊き出していながら、自分たちはそれを食べずに、大型車両やテントの中で、冷たい缶詰の携行食料を食べていました。その様子を見た取材陣が、「そのようなものだけいいのですか?」と質問をされると、質問された自衛隊員は「自分たちはこれで良いのです、温かい食事は被災者の方々のためのものです」と語っていました。このような、自衛隊のやり方は、おそらく熊本の震災救援活動でも踏襲されていることでしょう。

東日本震災時 被災地で携行食料の缶詰を黙々と食べる自衛隊員たち
私自身は、そこまでする必要があるのかと思うほどでした。ただし、自衛隊といういわば自己完結型の軍隊組織と、テレビ局の取材クルーを同次元で比較すること自体が最初から間違いなのかもしれませんが、やはり現地に赴かせる側としては、食糧・水などある程度は携行させるべきだったでしょう。このあたりは譲れないところです。

さて、このアナウンサーは無頓着に、現地で調達をした食事の写真をツイッターに掲載して、炎上してしまいました。このツイッターに対して、返信した人たちはどのような人なのでしょう。

被災地のはるか遠くから、テレビを見ながらマスコミ批判をしていれば満足する下品な輩もいるかもしれませんが、そうでない人もいることでしょう。

実際、ツイッターを見ていると、被災地の人々の苛立ちのツイートが散見されます。以下にいくつかあげておきます。

このようなツイートは結構多く、内容などから確実に被災地の人のものであるとわかるものもあります。

さらに、交通渋滞に関して以下のようなツイートもあります。


さらに、あまりの交通渋滞の酷さに、道路の混み具合を示した写真付きで、はっきりと、個人のボランティアは、はた迷惑というツイートをしている被災地の人もいました。

さてマスコミに限らず、一般人でも善意で被災地のために何かをやろうとして、その結果として現地の人に迷惑をかけたり、二次災害に繋がることもあるようです。

それに関して、いくつかの記事を読んだので、その内容を以下に簡単にまとめておきます。

まず基本的なことですが、第二の災害を生むのは「間違った善意」であるということです。この場合の「間違った」とは、現地ニーズを把握していない、あるいは勘違いしているという意味ですが、「いまだから言える『要らなかった支援物資』 - 東日本大震災【第二の災害】」というまとめサイトでは、「不要なもの一覧」として以下のものが挙げられています。ネットには他にも東日本大震災のときに送られて不要だったもの、というか(ハッキリ言って)迷惑だったものがリストアップされていますが、どこの情報も概ね同じです。

以下、引用(「いまだから言える『要らなかった支援物資』 - 東日本大震災【第二の災害】」より)
◎不要なもの一覧
1、千羽鶴・応援メッセージや寄せ書き
2、成分表が読めない海外食品(アレルギー成分がわからないため)
3、冷凍食品(冷蔵庫が使えないため)
4、保存食以外の食料(缶詰・瓶詰・カップ麺も賞味期限が切れたものは不安)
5、古すぎる古着・洗濯していない毛布・布団・下着など
6、自分で食料などを確保できないボランティア
今回の熊本地震に関しては、いまだ「緊急支援の段階」なので、必要とされるモノも比較的分かりやすいです。熊本市のウェブサイトにも「必要とされるもの」リストが掲載されています。

以下、引用(「熊本市ウェブサイト」より)
【必要物資】
長期の避難生活に必要なもの
・飲料水
・アルファー米(断水のため炊飯ができません)
・カップめんなど保存ができる食料品
・ウェットティッシュ
・おしりふき
・生理用品
・紙おむつ(大人用、子ども用)
・トレットペーパー
・粉ミルク
など
※なお、配送に時間がかかる場合がありますので、生ものや傷みやすいものはご遠慮ください。
当面はこれらの物資を送っておけば、間違いはありません。しかし、それで万全というワケでもありません。単純にこれらを送れば良いと思い、個人で郵便局や宅配業者を用いて、発送するととんでもないことになってしまうこともあります。

善意の支援物資が被災地の負担になる場合も…(画像は記事とは無関係です)
千羽鶴や応援メッセージ、汚れた古着や使用済みの毛布など、被災地に届いても「処分」するしかない品々もあります。95年の阪神淡路大震災の際には、こうした「使用できない救援物資」の処分で、被災した自治体が2800万円の費用を投じたケースもあります。

熊本、大分両県で20万人近い避難者が発生した今回の地震。2016年4月17日から翌18日にかけ、各メディアの報道では、熊本市内にある避難所での「救援物資不足」が伝えられています。こうした状況を受け、救援物資を被災地へ送ろうと呼びかける動きがネット上でも加速しています。

こうした状況の中、ツイッターには「#被災地いらなかった物リスト」とのハッシュタグが登場。東日本大震災を経験したという複数のユーザーが、「千羽鶴・寄せ書き」や「古着」、「生鮮食品」といった品々を挙げ、「送らない方がいい」と呼びかけています。

実際、今回の地震を受けて福岡市が呼び掛けた支援物資提供の協力依頼でも、受け入れ品をペットボトルの水や未使用のタオル・毛布の6種類に限定。福岡市コミュニティ推進課は「指定した以外の物品をお持ちになられる方もいるのですが、お断りしているのが現状です」としています。

それだけでなく、個人が被災地に救援物資を送ること自体が「被災地にとっては『ありがた迷惑』となる可能性がある」と指摘する声も出ています。ツイッターやネット掲示板などを見ると、
「お願いだから、むやみやたらに救援物資を送らないで...」
「一時的な感情で小口の物資を送っても被災地の負担とゴミを増やすだけ」
「救援物資を個人で送っても現状は届けられない、被災地の負担にしかならない」
との声が複数見られます。こうした意見の背景には、過剰に集まった支援物資が被災地の「負担」になってしまった事例があります。

熊本地方などを襲った大地震による道路被害をうけ、ヤマト運輸、日本郵便が熊本県宛て荷物の集荷、配達を一時中止しました。しかし、今なお全国各地の宅配便営業所、郵便局に支援物資を持ちこむ人は絶えないそうです。

そんな「善意の人」が、窓口職員といざこざを起こした事例も報告されています。少しでも被災者の力になりたいという人々の思いが空回りする様子が浮かび上がってきました。

ヤマト運輸では16日より熊本宛の荷物の集荷、配達を一時中止している
「ご納得いただけないお客様もいらっしゃるようで...」ヤマト運輸の広報担当者はメディアの取材にこう話したそうです。同社は 16日より、熊本県宛ての荷物の集荷、配達を一時的に中止しています。18日17時30分現在、各営業所では支援物資含むすべての荷物の受け取りを断っている状況です。
しかし、そうした事情を知らない人は多いようです。営業所に支援物資を持ち込み、職員に「受け取れない」と言われると憤慨。職員といざこざになってしまう例が本部に報告されている、というのです。
真偽は確認できませんが、ツイッター上でも16日、「ヤマト運輸で働いてる友達が困ってます&悲しんでます。熊本宛ての支援物資を持った人が営業所にどんどんやってきてるそうです。荷受けを断られ『善意を踏みにじられた』と従業員に心無い言葉を浴びせて帰っていく人もいるそうです」
との投稿があり、18日17時30分現在までに2万5000回以上リツイート(拡散)されました。
この投稿に対し、
「頭を使って欲しかった」 
「物事はよく考えることが大事」
 と独りよがりの「善意」を諌める声が上がっています。


消防防災科学センターの公式サイトに掲載された「救援物資は被災地を襲う第二の災害である」と題された資料では、「救援物資は被災地にはありがたいもの」としつつも、救援物資が被災地に与える「悪影響」について具体例を用いて紹介しています。

95年の阪神淡路大震災では、約43万個に及ぶ「個別包装」の救援物資が神戸市に届きました。震災に伴う交通網の乱れから、市は24時間体制での対応を余儀なくされたほか、膨大な物資の仕分けや配布に多くの人手を割く必要が出てしまいました。また、西宮市では使用できない支援物資の処分に2800万円の費用を投じることになりました。

04年の新潟県中越地震では、被害の大きかった小千谷の市役所に地震発生の当日夜から物資が届き始めました。余震の可能性が高い状況の中、「市役所周辺の道路は荷降ろしを待つトラックで大渋滞」となったほか、積み重なった荷物が「職員の通行にも支障をきたすまで」溜りました。市役所職員は、その対応で一睡もできなかったそうです。

こうした過去の事例を踏まえ、現在では過剰な支援物資による「第二の災害」を防ぐための呼びかけを行う動きも出ています。被災地支援を行うNPO法人「レスキューストックヤード」は、救援物資を送る際のマニュアルをネット上で配布。それによると、
「個人の物資支援は、被災地の自治体職員に一層の負担を強いる」
「報道を通じての支援呼びかけはタイムラグがあるため、時期を逸した救援物資が届くことも多く、不良在庫を生み出してしまう」
「物資よりはお金を送るべき」
などといった情報がまとめられています。同団体の公式サイトでは、どうしても被災地へ支援物資を送りたい場合、個人で被災地へ送ることは避け、ボランティア団体などが呼び掛ける支援物資募集を利用することを薦めています。

以下に、一般の人が熊本などの被災地に支援をするときの留意点をまとめておきます

(1)小口で個人の支援物資を送ることは、なるべく避けること。ただし、親戚や知人の人が被災地にいて、宅急便などが使えて、その人が要望したような場合はその限りではありません。

(2)物資よりはお金を送るべき。被災地の人たちの今後の支援を考えれば、最も有効な救援は物資ではなく義援金となります。支援物資は、いくら善意で送ったにしても、被災地の人たちのその時々のニーズやウォンツにあわないこともあります、お金は邪魔になることはありません。日本赤十字社の義援金口座なら、ゆうちょ銀行の窓口から送金すれば手数料なしで全額を被災都道府県に送ることができます(ATMの場合は振込手数料がかかる)。
日本赤十字社は「平成28年熊本地震災害義援金」の受付を2016年4月15日から開始しました。義援金は全額被災者に届けられ、生活再建に充てられます。 
寄付は以下の方法で受け付けています。 
1.郵便振替(ゆうちょ銀行・郵便局)。口座記号番号は00130-4-265072、口座加入者名は「日赤平成28年熊本地震災害義援金」。 
2.銀行振り込み。金融機関は、三井住友銀行すずらん支店(普通預金「2787530」)、三菱東京UFJ銀行やまびこ支店(普通預金「2105525」)、みずほ銀行クヌギ支店(普通預金「0620308」)。口座名義はいずれも「日本赤十字社」。 
3.熊本県支部。金融機関は、肥後銀行三郎支店(普通預金「591893」)、熊本銀行日赤通支店(普通預金「3087071」)。口座名義はいずれも「日本赤十字社熊本県支部 支部長 蒲島郁夫(カバシマイクオ)」。
2016年6月30日まで義援金の受け付けをしています。
(3)物資を送る場合は、行政の窓口、その他のNPOなどの(ex.レスキュー・ストックヤード)窓口を利用することとし、その窓口の指定する通りの方法で提供します。

(4)被災地にボランティアに赴くときは、個人で行くのではなく、被災地支援に定評のあるNGO(ex.ガールズパワー)やNPO等に連絡してその一員として赴く。被災地に知り合い、親戚などがいて、その要請に基づき行くならその限りではありませんが、もし行くなら、必ず数日分の食糧・飲料水を携行してください。

支援するなら、以上の留意点に注意して、その時々の被災地の人たちのニーズやウォンツを満たすように行動できるようにすべきです。

くれぐれも、自己満足だけで、被災地の人たちに嫌われるような行動だけはつつしんでいただきたいものです。自己満足だけで、被災地に支援物資を送ったり赴くような人は、現代風に言えば「意識高い系」として非難されたり揶揄される事になります。

最近やたらと批判されるいわゆる「意識高い系」は結局自己満足の人

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