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2018年5月27日日曜日

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者―【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者

2018年5月、アメリカンフットボールの悪質な反則行為問題について、
羽田空港で取材に応じ、うつむく日大の内田正人監督

 日本大学アメフト部が起こした悪質タックル事件は、監督を辞任することを表明した内田正人氏(62)が“首謀者”とされたことで、混迷を極めた。問題のプレーは5月6日、関西学院大学との定期戦で起こった。パスを投げ終えて2~3秒後の無防備なQBに、日大選手が背後から猛タックル。倒れた選手は全治3週間のケガを負った。

 タックルをした選手は、「“(反則)やるなら(試合に)出してやる”といわれた」と周囲に話していたことが相次いで報じられ、内田氏の指示が疑われている。日大選手は関東学生連盟から処分を受け、内田氏は辞任を表明した会見で「一連の問題は全て私の責任」と語ったが、反則を指示したかについては語らず、関学大側に文書で回答するとしている。

 日大は、本誌・週刊ポストの取材に対して「監督についてはラフプレーを指示した事実はありません。ですから、現在は責任を問う状況になっていません」(広報部)と話していたが、結局は辞任に追い込まれた形だ。大学側がそこまで擁護し続けた内田氏とは、どういった人物なのか。

 スパルタで知られる日大の名将、故・篠竹幹夫監督のもとでQBとして活躍し、後にコーチとなって支えた。2003年に監督に就任すると、大学日本一を決める甲子園ボウルに5度の出場を果たす。昨年は27年ぶり21度目の日本一に導いた名将である。

 監督であると同時に、日大卒業後は大学に就職した職員でもある。保健体育事務局長という役職から、理事を経て、現在は5人しかいない常務理事となっている。日大関係者が明かす。

「内田さんは出世街道を歩んできた“日大エリート”です。日大には体育会の入部人数や予算を差配する保健体育審議会があり、その事実上のトップが内田さん。前トップが今の田中英壽理事長で、このポジションは日大の出世コースといわれています。

 内田さんは人事部長も兼ねていて人事権も持つ。学内では田中理事長の側近と見られており、“理事長に万一のことがあれば次は内田”といわれている実力者です」

 アメフト部の監督は辞任したが、大学の常務理事という立場は続くことになる。

【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

スポーツの世界では、スポーツ・インテグリティ(sports integrity)ということが最近いわれています。

これは、何かといえば、だいたい以下のことに集約されます。

1.「インテグリティ」とは、「高潔さ・品位」「完全な状態」を意味する言葉。 
2.スポーツにおけるインテグリティ(スポーツ・インテグリティ)とは、「スポーツが、様々な脅威により、欠けることなく、価値ある高潔な状態」。 
3.本来、スポーツには、人々を幸福にして、社会を善い方向に導く力があるといわれている。スポーツが本来持つ力を発揮するためには、誠実性・健全性・高潔性が守られていることが前提。
以下に、このスポーツ・インテグリティを脅かす要因についてのチャートを掲載します。



今回の事件はスポーツ・インテグリティを脅かすものであって、その結果あのような事件が起こってしまったものです。

スポーツ・インテグリティに関しては、笹川財団の行った昨年のセミナーのレジメが詳しいです。
「スポーツ・インテグリティについて考える」 

そうして、今回の事件では、スポーツ・インティグリティの毀損の理由としてガバナンスの欠如についてはあまり報道されていません。これに関しては、日大自体のガバナンスの欠如、それと学生スポーツそのものをガバナンスする機構が欠けているということをこのブログでは指摘しました。おそらく巷の報道よりは、かなりガバナンスについて突っ込んだものになっていると思います。

それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
日大悪質タックル問題 醜聞にまみれた米名門大の「前例」―【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!
日大選手の記者会見 

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本では学生スポーツ全体をガバナンスする機関もなく、日大のガバナンスにも問題があること、特に内田正人氏が、日大の常務理事と監督を兼任していたことが問題であることと、日大自体のガバナンスの正当性に問題があること等を指摘しました。

この記事では、ガバナンスとはそもそも何かというその定義や、あるべき姿なども掲載しました。

また、ガバナンス(統治)の正当性については、以下のようにまとめました。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。 
そうして、この記事では述べませんでしたが、ガバナンスの正当性の根拠である「人の強みを活かす」ことであることはかなり重要なことです。そうして、この点を理解していないマネジメントも多いです。

そうして、これはマネジメントするもの、すなわちマネジャーのインテグリティに多いに関わっています。インテグリティは、スポーツ界はもとよりありとあるゆる組織のマネジャーに必要不可欠な資質なのです。

「インテグリティ」(integrity)とは誠実、真摯、高潔、整合性などの概念を意味する言葉です。組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観を示す表現として、特に欧米の企業社会でよく使われます。

あらゆる組織のーのインテグリティ(誠実さ)を最優先し、法令順守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と組織の倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営を、インテグリティ・マネジメントと呼びます。

米国企業の経営方針や社員が守るべき行動規範を記した文面には、「インテグリティ」という言葉が頻繁に使われています。「人を雇うときは三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす」(スティーブ・シーボルト著『一流の人に学ぶ自分の磨き方』より)と語ったのは、世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。

ここで「高潔さ」と訳されている概念がインテグリティです。インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあり、それならばいっそ愚かで怠惰な人間を雇うほうがましだと、バフェット氏は主張しています。


この言葉を好んで用い、インテグリティこそが組織のマネジメントを担う人材にとって“決定的に重要な資質”だと喝破したのが、経営学の大家ピーター・ドラッカーでした。ドラッカーはたとえば著書『現代の経営』で、次のように語っています。
マネジャーが学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない資質がある。(中略)それは、才能ではなく真摯(integrityの日本語訳)さである。 
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さ(integrity)の欠如だけは許さない。 
真摯さ(integrity)に欠けるものは、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。
三番目の言葉には、先述したバフェット氏の指摘との共通性も感じられます。とはいえ、「高潔さ」「真摯さ」といわれても、あまりに漠然としていて、いまひとつピンとこないのも事実です。

人を雇ったり、リーダーを選んだりする場合、要するに、インテグリティに優れた人とはどういう人のことなのか、具体像がこの言葉だけからではつかみにくいです。

実はドラッカー本人でさえ、「インテグリティの定義は難しい」と語っています。ただし、“インテグリティの欠如”を定義するのは難しくないとしています。ドラッカーは、インテグリティの欠如した人物の具体例を、『現代の経営』中で次のように列挙しています。
  • 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
  • 冷笑家
  • 「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
  • 人格より頭脳を重視する者
  • 有能な部下を恐れる者
  • 自らの仕事に高い基準を定めない者
上記のような者は、たとえ他の何かが優れれていたとしても、真摯さ(integrity)に欠け、組織を腐らせるとしています。

マネジメントの担い手としてインテグリティに優れた人材を充てようと思ったら、逆に、このような“インテグリティの欠如”を物語る特徴にフォーカスして人を判別すべきだと思います。

ドラッカーは「真摯さ(integrity)は習得できない。仕事についたときにもっていなければ、 あとで身につけることはできない。 真摯さはごまかしがきかない。 一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。 部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、 ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。 そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない」としています。

さて、日大の内田正人常務理事はどうなのでしょうか。会見などでの発言を聴いている限りでは、真摯さに欠ける面があるようにも、思われます。

日大の理事会は、内田氏に限らず、理事の中に真摯さに欠ける人間がいるかどうかを精査すべきです。ドラッカーが指摘するように、理事会にともに他の理事働いたことのある理事は、すでにそれを判別できるはずです。



日大理事会は、真摯さに欠ける理事がいたら、すぐにもそのような人物は辞任させ、真摯さに欠けない人間だけで、理事会を構成するようにして、今一度スポーツだけではなく、すべての分野においての統治機能を強化するべきです。それが今回の不祥事のようなことを起こらないにするための第一歩です。

これをしなければ、日大の組織は完璧に腐敗し、いずれ崩壊することになります。なぜなら、どんな組織も社会が許容するから存続が許されているのであり、社会が許容しなければ、どんな巨大組織であっても一夜にして崩壊するからです。

現状を放置すれば、やがて日大もそのような運命をたどることになるでしょう。

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2018年5月18日金曜日

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「殺人タックル」日大アメフト部・内田正人監督、学内No.2の実力者だった! 常務理事で人事掌握 “鉄の結束”背景に上意下達の気風

日大アメフト部・内田正人監督

アメリカンフットボールの日大の選手が定期戦で関学大のクオーターバック(QB)に「殺人タックル」をした問題で、カギを握る人物が日大の内田正人監督(62)だ。アメフト部のみならず、大学の常務理事で人事を握り、実質的なナンバー2とされる。「上意下達」(関係者)の気風が影響したとの指摘もある。

 内田氏は日大豊山高校出身で、日大アメフト部では、レシーバーが散弾のように散らばりパス攻撃に有利な「ショットガンフォーメーション」で黄金時代を築いた篠竹幹夫監督の下でセンターとして活躍し、国際試合にも出場した。卒業後も職員として大学に残り、コーチとして篠竹監督を支え、4度の日本一、17度の学生王座に貢献した。

 44年にわたり監督を務めた篠竹氏が2003年に定年で勇退した後を継いで監督に就任。16年には一度勇退したが、チームの成績低迷を受け17年に監督に復帰した。

 練習前にトータルで2500ヤード(約2・3キロメートル)のダッシュを課すなどスパルタ練習で、約20人の大量退部者を出したが、昨年12月の甲子園ボウルで関学大を下し、27年ぶりの学生王座に返り咲いた。

 この甲子園ボウルの再戦となった春の定期戦で起きたのが、前代未聞の悪質タックルだった。

前代未聞の悪質タックル

アメフト部と関わりの深い日大OBの男性は、「内田監督は、相手選手に不必要なタックルをさせるような指令は出さないはずだ」と困惑する一方、「普通なら悪質なタックル1回で選手を引っ込めて叱るが、監督やコーチには選手のプレーをとがめる様子がなかった」と首をひねる。

 内田氏の指示があったのかについて日大は「大学内での調査の結果、そのような事実は確認されなかった」(広報課)との立場だ。アメフト部OBも「内田監督はいい人。部員もきっと何も気にしていないはず」。

 日大、そしてアメフト部の“鉄の結束”の背景について、ある関係者は「日大は上意下達が徹底している組織という印象が強い」と話す。

 アメフト部で絶対的な存在の内田氏だが、大学内でもトントン拍子に出世している。14年に理事に選出された内田氏は、17年には4期目の田中英壽理事長と3期目の大塚吉兵衛学長体制の下で常務理事となり、人事を担当するなど学内有数の実力者だ。

 前出のOBは「篠竹監督時代には、相手校に対するリスペクトがあった。今回の騒動も監督がきちんと顔を出し、正式に謝罪するべきだ」と話すが、判断を下せるのは内田氏本人だけなのか。

【私の論評】アメフト監督が大学の常務理事を兼ねるのは統治論的にはあり得ない(゚д゚)!

さて、この問題連日デレビで報道され、識者なども様々な意見を述べているのですが、残念ながら私からすればまともな意見を言っている識者はおらず、どれも核心をついていません。このままではこの日本の社会で似たようなことがこれからも度々繰り返されるとの危機感をいだきました。

問題の本質は、内田正人氏がアメフト部の監督という、企業でいえばいわば現場の監督のような仕事をしつつ、一方ではトップマネジメントを担っているというあり得ないようなことが、日大という組織でまかり通っているということです。

企業ではトップマネジメントと、現場監督を同時に兼ねるようなことはまずありません。特に上場企業であれば、そのようなことはそもそも、許されることではありません。

なぜそうなのかといえば、そのようなことでは、企業の統治に支障をきたすからです。統治に関しては以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!
57年財務省入省組の記念写真 佐川氏、福田氏の他片山さつき氏も・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の組織の「統治」に関わる部分のみを引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知ったのです。
企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものでありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。
この事例は、無論政府の役割についてですが、統治ということでは、企業も大学のような組織でも同じことです。実際、ドラッカー氏はマネジメントの原則があてはまるのは企業のような営利組織だけではなく、あらゆる組織にあてはまるものであるとしています。

ですから、上の政府の役割の政府の部分を、企業なら「取締役会」、大学なら「理事会」と言い換えても成り立つのです。

実際に入れ替えてみます。
大学の理事会の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。大学という組織のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 理事会は大学の統治をするところです。そうして、内田正人氏が、アメフトの監督をしながら、常務理事をするということは、まさに統治と実行を両立させようとすることに他なりません。

この統治の原則からすれば、内田氏はアメフトの監督をしながら、常務理事をすることはさけなければならないです。アメフトの監督を続けるなというなら、そもそも理事になるべきではないのです。理事を続けたいなら、アメフトの理事をやめるべきなのです。

両方を掛け持ちすれば、統治の能力が麻痺するのです。実際、日大は統治能力が麻痺しているようです。内田氏は、あの事件から10日以上もたっているのにもかかわず、会見を開いて説明責任を果たすということもしていません。

これが、統治と実行がはっきり分離されていて、内田氏がアメフトの監督をのみをしているか、あるいは内田氏は常務理事だけをしていて、アメフトの監督は別の人物が行うなどのことをしていれば、そもそも、あのような事件はなかったか、あったにしても、未だに説明責任すら果たさないというお粗末なことはなかったでしょう。

統治と実行を両立させようとすると、このような不祥事が頻繁に起こることが、経験的に知られており、企業などの民間営利組織では、特に大企業では統治と実行は両立できないように、会社法などで定められています。

日本の官庁でも同じようなことが行われています。たとえば、財務省は、本来政府が定めるべき日本国の財政の方針を中途半端に定めるなど、統治をしておきながら、一方では徴税するなどの実行も行っています。これでは、日本国の財政に関わる統治能力が麻痺するのは当たり前のことです。

企業でも、中小企業の場合は、このあたりが曖昧になっているところが多いです。以下は北海道にある中小企業での実話です。本格的な春も近い3月のある日、季節外れの大雪が降ったので、社員や役員も含めて、駐車場の除雪をしたそうです。

除雪は専務取締役の仕事か・・・・・

その作業中に、専務取締役もいたそうです。専務も他の社員に入り混じって、2時間近くも除雪作業をしていたそうです。その姿を見たその会社の社長は後でその専務に対して「除雪作業をやらせるために君に高い給料を支払って、専務にしているわけではない。やるべきことをやれ」と叱ったそうです。

この事例では、社長は専務にこのような注意をするくらいですから、自分たちが主に実行すべきことは「統治」であると気づいているようですから、まともです。

しかし、そのようなことに気付かずに、自分も営業や作業に追われる中小企業の社長もいます。こうなると悲劇です。無論、社長がある程度、営業や作業をするのは規模の小さな企業では仕方ないことです。しかし、社長が企業統治のことなど全く頭になく、営業や作業に拘泥するような会社は早晩潰れます。

また、統治と企画の区別がつかない人もいるようです。これは、全くの別物です。企画とは、統治によって決定と方向付けを行なわれている状態で、その方向付けにしたがって、具体的に資源を割り当てる計画です。

その意味では、企画も実行の一部といえます。ただし、大企業では企画と、企画に基づいた実行をするのも別組織で行われるのが普通です。たとえば、大企業では、財務と経理が別組織になています。これを一緒にすると腐敗を助長するようなものです。

統治と企画を、取り違えると大変なことになります。本人は統治しているつもりでも、実は企画をしているということもあり得ます。そうなると、会社は方向性を失いいずれ機能しなくなくなります。

本来企画をするべき人たちに、統治をまかせようとする経営者もいます。これは、良く丸投げなどともいわれています。経営者があまり方向性など示すこともなく、部下に企画を立案させるような行為です。これも、部下が育たなかったり、部下が方針まで決定しなければならない状態に追い込まれ、混乱しいずれ企業が機能しなくなります。

財務省や、日大などは大所帯ですが、明らかに統治と実行が分離されていないので、財務省はまともな財政ができず、日大は今回のような不祥事を起こしてしまいました。

考えてみれば、最近の角界の度重なる不祥事も、統治と実行が区分されていないことに原因があるといえるかもしれません。相撲界の理事会の理事は、相撲取りの経験しかない人が大半です。それで本当に統治ができるのかどうか、はなはだ疑問です。

ものごとが、実行されている、現場を熟知していないと経営者はつとまらないと良くいわれます。それは事実です。しかし、現場しか知らない人は経営者などつとまりません。組織を統治すべき経営者にはそれ以外の知識や経験、洞察力、統合的思考などが欠かせません。

統治と実行は、厳密に区分されるべきものなのです。この当たり前の原則について、あまりテレビなどで報道されないのは、あらゆる組織において統治に関わる人は圧倒的に少数だからでしょう。さらに学校でもまともに教えられないことにも問題があると思います。

多くの人は、ガバナンス=統治であることくらいは知っているようですが、では統治とは何なのかということを具体的には理解していないようです。何しろ、日本では官僚や政治家、マンモス大学の理事でもそれを理解していないようですから、多くの人が理解しないのも無理はないかもしれません。

しかし、私達は、統治をすべき人がこれを理解していないような組織では今回のような不祥事がいつでも起こり得ることを認識すべきです。これが、問題の本質です。

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