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2014年8月30日土曜日

ニートを救わない「サポステ」に批判噴出 「時給200円」「心をくじく」と告発も―【私の論評】ちょっと待ってくれ、厚生労働省は雇用調整はできない。デフレを解消しない限りこのような無限地獄はいつまでも続くのではないかい(゚д゚)!

ニートを救わない「サポステ」に批判噴出 「時給200円」「心をくじく」と告発も

荒ぶるニートスズキ

厚生労働省の支援事業「地域若者サポートステーション」(通称:サポステ)に批判が集まっている。「就労支援」や「職業体験」の名のもとに60万円もの費用を取られ、無給で労働させられる実態もあるというのだ。

ジャーナリストの池上正樹氏は、このような例を「ブラックすぎるサポステの信じられない実態」としてダイヤモンド・オンラインで紹介し、AERA 2014年8月25日号にも執筆している。若者を支援するはずの施設が、逆に若者から搾取したり、やる気をくじいたりしているとなれば問題だ。60万円払って「無給労働」に従事するケースも

池上氏の記事によると、無職だった20代女性のAさんは2013年7月、近隣のサポステを訪問。面談で勧められたのは、団体が実施する「有料プログラム」だった。費用は50~60万円。内容はマナー研修を経て、団体が運営している飲食店で働くというものだった。しかも無給で、施設長はこう言ったそうだ。
「働かせていただいてるんだから、受け取ろうとする方が間違っている」
「あなたがやりたいんなら、どうぞハローワークへ行って、勝手に仕事探してください」

これを聞いた池上氏は、A氏とともにこれに抗議したところ、施設長は謝罪。求めに応じAさんの個人情報は一部返却し、残りをシュレッダーにかけたという。

サポステとは、厚労省が2007年からスタートさせた制度だ。厚労省が認定したNPO法人、株式会社などが全国160か所で運営を行っている。対象は「働くことに悩みを抱えている15~39歳の若者」で、キャリアコンサルタントによる相談や協力企業への職場体験など、就労に向けた支援を行っている。

全国160か所のサポステでの2013年の実績は、新規登録者は4万3229人。そのうち就職した人は1万6416人(38.0%)と一定の効果があるように見える。

しかし、のべ来所者数(63万9083人)や相談件数(45万1461件)の数字を見ると、来所・相談しに行った人のごく一部しか「就職」という結果が得られていない。

予算ゼロから名称を変えて「35億円復活」

実際、サポステ事業は、一度は「取りやめ」になると見られていた。厚労省がサポステに割く2014年度予算は、安倍首相の仕分けで44億円がいったんゼロに。しかし14年4月の補正予算では、「若者育成支援事業」と名前を変えて35億円の予算がこっそり復活していた。

この裏には、厚生労働省が事業を委託する運営団体が「天下り先だから」という指摘もある。運営団体のひとつである日本生産性本部には、民主党時代の事業仕分けで、天下り官僚が27人いると批判されたことがあった。

ツイッターなどネットには、サポステの対応を評価するものもある。「ウチの方のサポステは電話対応しっかりしてますたよ」「地域によってだいぶ違うと思う。兄宅のほうは良かった」と、場所や担当によって対応は分かれるようだ。

しかし前出のAさんと同じく、無下にされてしまったという声も存在する。
「嫁が今行ってる所もなかなか酷い。無給ではないが、時給200円交通費支給なし。行き帰りの交通費でマイナス…」
「私はサポステで『助けてほしいんでしょ』と言われた。本来人に見せたくないところまでさらけだした人間にその台詞」

ある男性は、担当カウンセラーが「精神障害の知識が全くないまま鬱などの利用者を叱責したり、高圧的な態度をとってくる」と目撃証言を明かし、「たぶん、お役所的な感覚だと思う」と評する。通院暦を明かすと「今日は何しにきたの?」と態度硬化

AERAにも、5~6年の引きこもり経験のある女性が、過去の通院歴や服用した薬などの情報を正直に話したところ、相談に応じたキャリアコンサルタントは「それで、今日は何しにきたの?」などと態度を硬化させた例が紹介されている。ショックを受けた女性の父親が抗議したところ、
「お嬢さん、病気なんですよ」「対象にしているのは、社会復帰の可能性のある健全なひきこもり層です」

と反論されたという。どういう基準でこのコンサルタントが採用されたのかは分からないが、勇気を振りしぼって訪れた「悩みを抱えている若者」の心をくじくような事業なら、やめてしまった方がマシではないか。

あわせてよみたい:「突然折れる若者」が224万人、その原因は・・・?

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【私の論評】ちょっと待ってくれ、厚生労働省は雇用調整はできない。デフレを解消しない限りこのような無限地獄はいつまでも続くのではないかい(゚д゚)!

この記事を読んだ皆さんは、どう思われたでしょう。大方の人は、役所の対応の仕方に憤りを覚えたことでしょう。私も、この点には賛成です。

しかし、上の記事もそうですし、大方の人々は気づいていないようですが、この問題には背後避けて通れない大きな問題があります。

それは、ここ20年ほど日本はデフレが続いているという現実です。

デフレになれば、雇用醸成が悪くなるのは当然のことです。日本では、なぜか雇用というと厚生労働省が主幹省庁ととらえる人が多いですが、それは全くの間違いです。

厚生労働書は、労働問題を主幹とする官庁であり、広義の雇用問題とは無関係です。広義の雇用問題とは、いわゆる職そのものの創設です。厚生労働書は、これには全く無関係です。

職が創設された後に、雇用のミスマッチや、雇用者側、被用者側の問題に対応するのが厚生労働省の役割です。

では、雇用を創出する官庁はどこでしょうか。

なぜか、日本ではほとんど認知されていませんが、それは日本銀行です。こんなことを言うと、日本では多くの人々に怪訝そうな顔をされます。多くの人々は、日銀は金融関係の官庁であり、雇用問題とは全く関係ないと思っているようです。

しかし、それは大きな誤解です。日本以外の他の国では、中央銀行の金融政策が雇用問題に密接に結びついているということが認識されていて、雇用情勢が悪くなると、中央銀行に対する風当たりが強くなるのが普通です。

これについては、このブログでも以前掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!
雇用調整ができる官庁がどこかを日本人は知らない?

のブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。  
日銀が、やるつもりもないインフレ目処1%など無視して、インフレ率を本当に2〜3%上昇させたとします。そうすれば、日本でも、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上で昔から知られているし、経験則としても成り立っている法則です。
無論、雇用対策のため、のべつまくなく、インフレにするというわけにはいきません。ある程度以上、インフレになれば、ハイパーインフレとなり大変なことになる場合もあります。そういうときは、中央銀行は、すぐにはインフレ率を高めるわけにはいきませんから、これは、打ち出の小槌のようにいつもできるというわけではありません。雇用枠が増えても、ハイパーインフレということにでもなれば、雇用が増えたという経済に対するブラス要因が、ハイパーインフレというマイナス要因によってかき消されるどころか、経済が悪化してしまいます。 

それに、経済のその時々の状況で、インフレ率を高める方法もいろいろあります。いろいろある方策のうち、雇用に悪影響を及ぼす方策もあります。同じ二つ三つの金融政策を実施するにしても、順番があります。順番を間違えると、かえって、雇用に悪影響を与える場合もあります。こうしたことを認識しながら、雇用調整を行うことは、本当に難しいことです。だからこそ、アメリカではFRBの金融政策の専門家が専門家的立場から、これを調整して、雇用対策を行います。  
雇用を直接生み出すのは、日本でも、本来日銀であるはずです。しかし、日本では雇用対策といえば、厚生労働省の管轄とかたく信じて疑わない人が多いようです。しかし、厚生労働省は、雇用枠を増やすことはできません。一定の雇用枠の中で、雇用対策ができるのみです。できることは限られていて、雇用のミスマッチを改善することくらいのものです。
これに関しては、従来よりマクロ経済学では、フィリップス曲線として知られている事実でもあります。

この曲線は、縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となります。フィリップスが初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていましたが、物価上昇率と密接な関係があるため、縦軸に物価上昇率を用いることが多いです。

これは、短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味する(インフレーションと失業のトレードオフ関係)。つまりフィリップス曲線とは、短期において「失業率を低下させようとすればインフレーションが発生」し、「インフレーションを抑制しようとすれば失業率が高くなる」ということを表した曲線である。




上の記事には、

「全国160か所のサポステでの2013年の実績は、新規登録者は4万3229人。そのうち就職した人は1万6416人(38.0%)と一定の効果があるように見える。

しかし、のべ来所者数(63万9083人)や相談件数(45万1461件)の数字を見ると、来所・相談しに行った人のごく一部しか「就職」という結果が得られていない}

という内容が掲載されています。

やはり、サポステの最終目的も、ニートを最終的に就職させることのようです。であれば、現在のようにデフレが続いているようではこの問題は本質的には、解決しません。

なぜなら、いかにニートである人々が、なかなか仕事に就けない状況を改善したとしても、雇用状況が悪ければ、なかなか就職できないという状況に変わりはないからです。

こうした雇用問題を解消し、その後に労働問題の対策にはいるべきです。無論、現在ある問題をそのまま放置しておくことはできないと思いますから、厚生労働省もできることは実施しながら、デフレが収束した後は、本格的にとりくむべきと思います。

家の中の水道管が破裂して、水浸しになっているときに、破裂を放置して、水をかき出したとしても、限界があります。やはり、根本的には破裂を直さなければなりません。

そうして、これは昨年の4月より、実際に日銀が、異次元の包括的金融緩和を始めたので、状況は改善しつつあります。

しかし、今年度になってから状況は変化しました。そうです。4月からの増税です。せっかく、金融緩和の効果により、雇用状況がよくなりつつあったのに、この増税により、雇用情勢はまた悪くなります。

実際に、今年の5月には、雇用情勢はかなり良くなりました。これは、金融緩和による成果です。これに関しては、以前もこのブログに掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
有効求人倍率、1.09倍 5月、バブル後の最高更新―【私の論評】経済対策と経済失策には、タイムラグがあるということを知らない変態マスコミ・政治家・似非識者が多すぎ(゚д゚)!リフレは雇用を改善させないんだっけか?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に要点のみ掲載させていただきます。

厚生労働省が27日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0・01ポイント高い1・09倍だった。1992年6月の1・10倍以来の水準で、バブル崩壊後の最高値を更新した。総務省が発表した完全失業率(同)は前月より0・1ポイント低い3・5%で、97年12月以来の水準になった。
昨年はリフレに疑義を唱える人々も多かった。しかし1年たってそれ
が政策が正しいことを示す事実が次々に浮かび上がってきている。

ご存知のように4月から増税をしたのですが、4月ももちろん雇用状況は改善していましたが、5月においてはまだ、増税が雇用情勢に悪影響を及ぼすには至っていなかったため、このような雇用状況になっていました。
このようなことは、良く発生する社会現象です。ちなみに、バブルの象徴にいわれていた、あの「ジュリアナ東京」は、バブル崩壊後にオープンしています。バブルが崩壊しても、人々の心はすぐに変わることなく、バブル気分がしばらく続いたのです。


ジュリアナ東京は、バブル崩壊後に開店したという事実は意外と知られてない

5月時点では、4月から増税されているにもかかわらず、人手不足などが顕著だったので、増税後の経済の先行きが不透明さもあり、雇用条件は改善を続け、バブル後の最高を更新したのだと思います。
これをアベノミクス第一の矢である、異次元の包括的金融緩和によるものてあることははっきりとしています。
そのまま、金融緩和策だけを続けていけは、6月以降も雇用状況は少しずつ改善して行ったものと思います。無論、大多数の人がそれを実感できるようになるまでは、まだまだ時間がかかったでしょう。少なくとも、後1~2年以上はかかったものと思います。
しかしながら、6月からは状況が変わってきました。
6月の実質賃金大幅減 米紙、アベノミクスの先行きを不安視 格差拡大にも懸念―【私の論評】増税始めるのが早すぎたってだけのこと。アベノミクスは第一の矢印しかちゃんと効いていない。もう少しすると、アベノミクス無効論が巷をにぎわすが、これに惑わされてはいけない(゚д゚)!
これも、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に要点だけ掲載させていただきます。

厚生労働省は7月31日、6月の毎月勤労統計調査(速報値)を発表した。それによると、基本給に残業代・ボーナスなどを合計した「現金給与総額」は前年比0.4%増の43万7362円で、4ヶ月連続の増加となった。しかし、物価の影響を加味した「実質賃金指数」は前年比3.8%のマイナスと大幅に下落した。海外各紙は「賃上げは依然、お預け」(フィナンシャル・タイムズ紙=FT)、「予想を下回った」(ブルームバーグ)、「6月になってスローダウン」(ウォールストリート・ジャーナル紙= WSJ)と、いずれも後者の数字を重視して日本の景気に低調な評価を下している。
これは、結局雇用情勢が悪化したということです。

そうして、その原因は、増税をするのが早すぎたということが原因です。この原因について、この記事に書いた部分を以下に掲載します。
しかし、5月までは雇用情勢は少しずつですが、改善を続けていました。それは、以下のグラフを観ても明明白白です。あまりにもはっきりし過ぎています。
クリックすると拡大します
就業者数は、アベノミクス後には、間違いなく改善を続けていました。しかも、5月まで改善していました。 
それが、急に6月から落ち込んだとすれば、増税の影響であることは間違いないです。
そうして、これを皮切りに、雇用がまた悪化していく可能性が大です。 
本来なら、増税するにしても、金融緩和策で経済が好転し、インフレ率が4%台くらいになるまで、待ってから、景気の加熱を防ぐという意味合いで増税すべきでした。 
デフレの最中の増税はどう考えても間違いです。
いろいろと長々と掲載してきましたが、結論を言います。

結局厚生労働省など雇用を増やすことはできず、一定の雇用枠の中で、雇用のミスマッチを是正することしかできません。

雇用枠を拡張することができるのは、日本銀行です。金融緩和をして、物価が数パーセントもあがれば、他はなにもしなくても、一夜にして数百万の雇用が生まれます。

実際に、日銀は昨年の4月より異次元の包括的金融緩和をしてきましたので、雇用状況は改善してきましたが、今年の4月より、消費税増税をしてしまったので、これが金融緩和を足を引っ張り雇用情勢を悪化させています。

こんなことだと、雇用情勢は悪化したままで、抜本的な対策を打つことはできません。

このような状況で、厚生労働省あたりがいくら頑張っても、本来は雇用問題も、労働問題もなかな解消できるものではありません。

本来であれば、厚生労働省は財務省なり政府に対して、増税による悪影響をすみやかに是正するように勧告などだすべきです。

方法は、いくらでもあります。たとえば、大幅な所得税減税を実施すること。あるいは、再配分的な雇用を目指すための、給付金制度の拡充などです。

しかしながら、厚生労働省はこのようなことせずに、サポステ事業などを実施して、お茶を濁しています。

ここが役所の悪いところで、成果があがろうがあがるまいが、何かをやっていることを見せれはそれで良いわけで、何も責任は追求されません。

こういうところで、長い間、無責任な仕事をしていると人間は頭が腐ってます。頭が腐った人間が、サポステ事業など委託するから、腐った事業になってしまうのです。まさに、小人閑居して不正をなすの、ことわざどおりの所業です。

サポステ事業など、デフレまっただ中の現状では、当の厚生労働省ですら、本当に役に立つとは思ってないでしょう。もし、本当に役に立つと信じて実施しているなら、それこそ、頭がいかれています。委託を受けて、直接サポステを実施する受託者側の人々も、本気ではないと思います。当面、金になるからやっているだけです。

日本は恐ろしいデフレという無限地獄という罠にはまっている


いずれにせよ、デフレから脱却しない限り、何をやってもどこかに皺寄せがいき、たとえサポステ事業が改善されたとしても、それがまた新たな問題を生み出したりして、無限地獄が続きます。

これを根本的に是正して、まともな社会にするためには、デフレ脱却以外に処方箋はありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年9月1日土曜日

若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

若者雇用戦略のウソ


政府がまとめた「若者雇用戦略」が批判を浴びている。策定に加わった委員までもが、省庁の権益拡大を警告する。就職難を口実に、行政の効率化が疎かになってはいないか。

厳しい雇用情勢が続く中、政府が労使の代表と6月にまとめた「若者雇用戦略」。この内容を巡って、今も関係者の間で批判がくすぶっている。


「戦略という言葉の使い方を勘違いしている」

そう指摘する東京学芸大学の藤原和博・客員教授は、若者雇用の専門家として、戦略を策定する「雇用戦略対話」の委員に招かれた。だが、議論はあくまで政府や連合が主導し、従来の民主党政権の政策を追認するばかり。各省の政策の優先順位を明確にすることもない「雇用戦術報告会と呼ぶべきものだった」。

4回目の会合で政府関係者が注文だけ言って途中退席すると、「これ以上の議論はムダだ」と悟った。「単なる予算要望の場に、力を貸すつもりはない」。藤原氏はこの会合を最後に、辞任を申し出た。

若年層の雇用情勢の改善に向け、野田佳彦首相の肝いりでまとめられた今回の若者雇用戦略。ただし、その内容は全国の大学にハローワークの窓口を設けるなど、既存の政策を拡充するものばかりだ。

過去に事業仕分けでいったん廃止と判定されたこともある「ジョブ・カード制度」についても、今回の戦略では普及促進の方針が明記された。藤原氏の指摘の通り、雇用対策を口実に各省庁が権益拡大を狙った内容とも受け取れる。

労働行政に残るムダ

「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」。今春まで約8年間、東京都内のハローワークで契約職員として勤務していたある女性は、正規職員の上司が何気なく発した言葉に愕然としたことがある。


このハローワークでは、業務の大半をキャリアコンサルタントの資格を持つ非正規の職員が支えていた。非正規の職員には紹介や相談件数などのノルマが課される一方、正規職員は管理業務が中心。勤務時間中に宴会の案内状を作っている上司の姿を見て、苛立ちを感じたこともある。

・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・・・・ 

野田首相は今回の戦略策定に当たり「分厚い中間層の中核を担う若者たちのために、切実な危機感を共有しよう」と呼びかけた。しかし、企業は厳選採用の傾向を強めており、雇用は一握りのグローバル型人材と多数のローカル型人材に2極化しつつある。ある人材サービス会社の幹部は、「『分厚い中間層』という考え方がそもそも幻想ではないか」と指摘する。

政府は今回の戦略によってフリーターの半減などを目指すが、労働市場の実態と乖離した方向性のままでは、新たな行政のムダを招く恐れがある。既存の政策の総点検を避けたことが、将来世代の負担を増やす結果になってはならない。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

本日の日経新聞には、以下のような記事が掲載されています。

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は31日、金融政策について「特に米労働市場の改善が重要で、必要に応じ追加緩和政策を行う」と述べた。具体的な手段に踏み込むのは避けつつも、当面の雇用統計などの結果次第では緩和に動く姿勢を強調したものだ。
これは、FRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるバーナンキFRB議長の公演内容の一部です。

上の発言で特に注目していただきたいのは、「特に米労働市場の改善が重要」というところです。この発言に関して、奇異に感じる人は、平均的な日本人かもしれません。奇異とも何とも思わず、当たり前の発言であると感じた人は、中央銀行による雇用調整策についてよくご存知の人かもしれません。


このブログの冒頭の記事を読んでいると、雇用に関して、野田総理大臣はもとより、この記事のなかに登場する人たちも、それに、この記事を書いた記者も、中央銀行(日本では日本銀行)による、雇用調整や対策のことを全く知らないのではないかとさえ思ってしまいます。

アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。

この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。

このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。

日銀が、やるつもりもないインフレ目処1%など無視して、インフレ率を本当に2〜3%上昇させたとします。そうすれば、日本でも、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上で昔から知られているし、経験則としても成り立っている法則です。

無論、雇用対策のため、のべつまくなく、インフレにするというわけにはいきません。ある程度以上、インフレになれば、ハイパーインフレとなり大変なことになる場合もあります。そういうときは、中央銀行は、すぐにはインフレ率を高めるわけにはいきませんから、これは、打ち出の小槌のようにいつもできるというわけではありません。雇用枠が増えても、ハイパーインフレということにでもなれば、雇用が増えたという経済に対するブラス要因が、ハイパーインフレというマイナス要因によってかき消されるどころか、経済が悪化してしまいます。


それに、経済のその時々の状況で、インフレ率を高める方法もいろいろあります。いろいろある方策のうち、雇用に悪影響を及ぼす方策もあります。同じ二つ三つの金融政策を実施するにしても、順番があります。順番を間違えると、かえって、雇用に悪影響を与える場合もあります。こうしたことを認識しながら、雇用調整を行うことは、本当に難しいことです。だからこそ、アメリカではFRBの金融政策の専門家が専門家的立場から、これを調整して、雇用対策を行います。

雇用を直接生み出すのは、日本でも、本来日銀であるはずです。しかし、日本では雇用対策といえば、厚生労働省の管轄とかたく信じて疑わない人が多いようです。しかし、厚生労働省は、雇用枠を増やすことはできません。一定の雇用枠の中で、雇用対策ができるのみです。できることは限られていて、雇用のミスマッチを改善することくらいのものです。


日銀と、厚生労働省の二つの雇用対策がマッチしてはじめて、若者の雇用なども含むまともな雇用対策ができます。日銀が、金融政策で雇用枠を増やしたとしても、それは、枠を増やしたというだけであって、現実には、雇用のミスマッチがあれば、雇用問題は解消しないわけです。ここで、厚生労働省が、実効的な雇用のミスマッチを是正する政策を行えば、雇用問題が解消するわけです。


しかしながら、現在日本で行われているような、厚生労働省が行う、雇用対策は、帯に短くタスキに長しという対策がほとんどのようです。まさに、このブログの冒頭の記事に書かれてあるようなことが、実態であると考えられます。このようなことを防ぐため、アメリカなどでは、地域に密着したNPOが、地域の雇用のミスマッチを解消するために、求職者に住宅から、職業教育、職場斡旋を含む包括的なブログラムを提供するということが行われています。このような、NPOの中には、地方銀行や、建築会社までメンバーとして含まれていたりします。NPOとはいっても、日本とは全く意味合いや、規模が違います。おそらく、こちらのほうが、政府が直接手を下すよりもはるかに、効果があると思います。こういうことも、大方の日本人は知らないようです。NPOというと、奇特な人たちが、手弁当で奇特なことをするものという認識だと思います。

その先端的な試みの一つとして、たとえば、COUSERAがあります。これは、最近できた、オンラインでアメリカのいくつもの大学の授業を無料で受けられる、というブログラムです。私もさっそくいくつかの講義に登録したことは、以前のこのブログにも掲載したことがあります。従来、こうしたプログラムは、いくつかありましたが、このブログラムが他のものとは明らかに異なる点があります。それは、大学の講義が受けられるだけではなく、仕事を探すというブログラムも含まれているということです。


私は、実際にこれで求職活動を行うことはないので、実際の仕組みがどうなっているか、詳しくはわかりません。おそらく、COURSERA側から、企業に対して、求職者履歴書と、このブログラムで提供している、大学教授による講義の成績の評価内容や、COURSERAの質問応答サイト(学生同士で質問したり、それに答えるサイト)での活動履歴などが求職者の情報として企業に発信されるのだと思います。そうなれば、企業としても、履歴書や面談、テストだけでなく、より包括的に学生の適性をみることができるのだと思います。このシステムに興味のある方は、下のTEDの動画をご覧になってください。



このような先端的なこころみは、国に期待することはほとんど無理だと思います。厚生労働省は、自ら直接雇用のミスマッチを是正するようなことはせずに、地域の民間営利企業や、民間非営利企業がこのようなことをやりやすくするための、インフラを整備する側にまわるべきと思います。

しかし、ここで、はっきりさせておきますが、厚生労働省の若者雇用戦略が良かろうが、まずかろうが、いずれにしても、雇用枠を生み出すのは、本来日銀の仕事であるということです。雇用枠が増えないのに、厚生労働省が、雇用のミスマッチ対策をしていても、ほとんど効果は期待できません。部分的にみるのではなく、国全体としてみれば、雇用枠がもとのままであれば、結局若者の誰かが、厚生労働省のプログラムてで就職したとすれば、他の若者の誰かが就職できなかったということになるだけのことです。


厚生労働省の記録には、当該ブログラムにて、誰かが就職したという記録が残りますが、これによって、就職できなかった他の人の記録は残らず見えないだけで、結局は、全体では何も変わらないということになります。そうして、現在の雇用情勢をみれば、これが、実体だと思います。


こんな簡単な理屈を野田首相もわかっていないようです。雇用枠を広げる仕事をすべき日銀が、デフレ・円高促進政策ばかりやって、結局雇用枠を減らすことばかりに執着しているようでは、雇用枠はいつまでたっても増えません。そんな最中に、厚生労働省だけが、若者雇用戦略として、雇用対策を行っても効果がでないのは、あたりまえの真ん中です。日本では、雇用は、厚生労働省だけの管轄であり、日銀はまるで蚊帳の外のような扱いです。

そんな馬鹿な話はありません。  日本でも、諸外国で当たり前のど真ん中になっている、日本の中央銀行である日銀に雇用枠を広げる仕事に真面目に取り組ませるべきだし、その責めを負わせるべきであると思うのは私だけでしょうか?そうしなければ、若者雇用戦略など最初から成り立ちません!!冒頭の記事で、若者雇用戦略を批判している人たちだって、ほんど的外れです。なぜ、雇用に関する戦略に日銀が全く関与しないのか。関与しなくても、誰も気にしない!!このような慣行がいつからまかり通るようになったのか、私には全く理解できません。皆さんは、どうお考えになりますか?

 

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五輪に沸くロンドンが「ゴーストタウン」化 短期的な景気浮揚効果の予測に疑問符―【私の論評】不況のイギリスでは増税した後で増刷して、さらにオリンピックでも景気浮揚の効果はなくなったというのに、日本ではこれから増税とはこれいかに?


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特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...