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2019年4月28日日曜日

米、WTO抗議の日本を全面支持 首脳会談で首相が謝意 改革連携で一致―【私の論評】日本は、TPP協定の規定をWTOに採用させるべき(゚д゚)!

米、WTO抗議の日本を全面支持 首脳会談で首相が謝意 改革連携で一致

夕食会を前に記念殺意するトランプ大統領とメラニア婦人(右側)、安倍首相と昭恵夫人=26日、
ワシントンのホワイトハウス

 ジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関の会合で、韓国による福島など8県産水産物輸入禁止措置をめぐってWTOの上級委員会で主張が退けられ、抗議した日本の立場について、米国が全面的に支持していたことが分かった。安倍晋三首相は26日午後(日本時間27日午前)、米ワシントンで行った日米首脳会談でトランプ大統領に謝意を伝えた。両首脳はWTO改革で日米が連携していく方針も申し合わせた。

 複数の政府関係者によると、韓国のほか米国、中国など164の加盟国・地域が参加した26日のWTOの非公式会合で、米国の代表が「日本は科学的根拠に基づき、韓国の措置がWTO協定に非整合的であることを示している」と指摘した。その上で「上級委員会が実質的な理由なく判断を覆したのは遺憾だ」と述べたという。

12日、水産物輸入禁止措置を巡り、WTOで韓国勝訴の判断が出たことを喜ぶ市民団体=2019年
4月12日 ソウル

 会合で、伊原純一駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は「被災地の復興の努力に水を差す。極めて残念だ」などと抗議していた。

 WTOのあり方をめぐっては、首相は米国に先立ち訪問したベルギーで「産業で大きな変化が起こっているが、WTOは変化に追いついていない」と批判していた。上級委員会に関し「議論を避ける形で結論が出たり、結論が出るまでに時間がかかりすぎる」とも語り、6月に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)でWTO改革を議論する意向を示した。

◇WTO訴訟をめぐる経緯

 東京電力福島第1原発事故後、韓国が福島など8県産水産物の輸入を禁止していることに対し、日本政府は2015年8月、不当だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。1審に当たる紛争処理小委員会(パネル)は昨年2月、禁輸は「不当な差別」と認めて是正を勧告したが、上級委員会は今月11日、1審の判断を破棄する報告書を出し、日本側の「逆転敗訴」が確定した。

【私の論評】日本は、TPP協定の規定をWTOに採用させるべき(゚д゚)!
4月12日、WTOの紛争解決上級委員会は、日本国政府が、放射能汚染を理由に課してきた韓国政府による日本産水産物の輸入規制を不服として訴えた件について、日本国側の主張を認めた小委員会の判決を取り消す決定を下しました。


WTOの紛争解決の仕組みでは、上級委員会が最終審となりますので、現行の制度では同決定を覆すことはできないのですが、この一件から今日のWTO、否、国際経済について議論すべき幾つかの論点が見えて来るようにも思えます。
第一の論点は、言わずもがな、WTOの紛争解決メカニズムの不備です。現代国家において採用されている三審制、あるいは、二審制の司法制度では、仮に上級審において下級審の裁判過程における不備が問題とされた場合には、同訴訟は下級審に差し戻されます。

つまり、差し戻しを受けた下級審において改めて同案件は審理され、判断が下されるのです。この場合、前判決が維持されるケースもあれば、逆の判断に至るケースもあります。ところが、現行のWTOのパネル方式の仕組みでは、差し戻しの制度が設けられておらず、下級審における不備はイコール判決の取り消しを意味してしまいます。

これでは、たとえ‘原告側’の言い分が正当であり、また、多大な被害や損害が生じていても救済の道が閉ざされているに等しく、司法面においてWTOは制度改革を要すると言わざるを得ないのです。

第二の論点は、自由貿易の推進機構として設立されたはずのWTOが、国家の輸出入規制に対して寛容な態度に転じた点です。米国のトランプ政権は、グローバリズムの原動力となってきたWTOに対しては脱退を示唆するほどに批判的でしたが、今般に見られるWTOの判決は、加盟国による貿易制限に対して好意的なのです。

上級委員会の説明によれば、第一の論点で述べたように、韓国側の規制を容認した理由は第一審である小委員会の判決手続きにありますが、仮に、自由貿易の推進を最優先とするならば、小委員会の手続き上の問題点を指摘しつつも自らが判断して然るべきです。

そうして、第三の論点は、農水産物分野における貿易規制の是非です。実のところ、韓国政府による放射能汚染を理由とした日本産水産物の輸入規制は、日本国民にとりましては、必ずしもマイナスではありません。

国民の生命に関わる食糧安全保障、並びに、国民生活と直結する農水産物の市場価格といった側面からしますと、輸出の拡大は、マイナス方向に働く傾向にあるからです。GATT時代におけるケネディ・ラウンドにあって、農産物も工業製品と等しく自由化の対象となったものの、完全なる自由化には農業の壊滅や食糧依存体質の深刻化といったリスクがあります(食糧輸入が途絶えた途端、国民は飢餓状態に…)。

日本国政府も、WTOの交渉に際しては常々高関税率を維持すべく苦心惨憺をしていますが、穀物輸出国以外の諸国にとりましては、自国の存亡にも関わるいわば‘防衛線’なのです。

こうした農産物の特殊性からすると、WTOにおける‘農産物も例外扱いせず’の姿勢が現状に適しているのか疑問なところです。むしろ、方向を転換して農産物を例外化し、自国優先の原則を認めた方が、よほど、世界は安定化するかもしれないのです。

以上に幾つかの主要な論点を述べてきましたが、WTOもまた、自由貿易原理主義的な従来の方針を見直さざるを得ない局面に至っているのかもしれません。貿易とは人々を豊かにこそすれ、食糧不安や経済的な危機を招く元凶となってはならないと思うのです。

さて、WTOは上でも述べたように、明らかに大きな欠点があります。私は、WTOは、日米が主導しつつ新たなものにつくりかえていくべきものと思います。特に、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けるべきと思います。

TPPというと、現状の中国は入りたくても入れません。中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。

この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。

米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

TPPのルールが世界の貿易ルートとなれば、中国は中共を解体してもTPP協定を含む新WTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。

ライトハイザーUSTR代表は12日、世界貿易機関(WTO)の指針は「時代遅れ」との認識を示しました。 ライトハイザー代表は、中国の台頭やインターネットの進化など、状況が変化しているにも関わらず、WTOがなお1990年代初期の指針に基づき運営されており、「時代遅れ」と指摘。

米国はこうした問題に対処するため、WTOの改革に向け取り組んでいると語りました。 また、米国が引き続き中国との貿易ルール改善に向け取り組んでいるとしたほか、貿易問題を巡り日本や英国などと進展していきたいとの考えを示しました。

米国には、このような考え方があるわけですから、日本がWTOを改革のため、TPP協定の規定をWTOに採用するように働きかければ、元々オバマ大統領時代に、米国がTPPを推進しようとしたわけですから、これに対して米国も賛同せざるを得ないと思います。



TPP協定の規定をWTOが採用することを決めた場合、トランプ大統領がTPPに入らないとする根拠は薄弱になります。

そうなると、米国はTPPに入る可能性もでてくることになります。日本としては、米国とともにTPP協定の規定をWTOに採用するように努力すべきと思います。TPPが加盟国だけではなく米国を含む世界にとって、有用な協定になるように日本は努力すべきです。

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2019年3月22日金曜日

南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」―【私の論評】米国とアジア各国にTPP協定を広げ対中国経済包囲網を強化するが日本の役割(゚д゚)!

岡崎研究所

 ポンペオ米国務長官は3月1日、訪問先のフィリピンでドゥテルテ大統領、ロクシン外相と会談、同外相との共同記者会見で、南シナ海における米比相互防衛条約の適用を明言した。この問題での、ポンペオ長官の発言は次の通り。

フィリピンの海岸にて

 冒頭発言:島国としてフィリピンは、自由な海洋へのアクセスに依存している。南シナ海における中国の人工島建設と軍事活動は、米国だけでなく貴国の主権、安全、したがって経済的活動に脅威を与えている。南シナ海は太平洋の一部をなしているので、同海域におけるフィリピンの軍、航空機、公船に対する如何なる攻撃も、米比相互防衛条約第4条の相互防衛義務発動の引き金となる。

 質疑応答:米比相互防衛条約下での我々のコミットメントは明確だ。我々の義務は本物であり、今日、南シナ海は航行の自由にとり重要な海域の一部をなしている。私は、トランプ政権が、地域と世界中の安全、商業的航行への自由のため、これらの海域の開放性が確保されるようコミットしていることを、全世界が理解していると思う。我々は、その取り組みにおいてフィリピンだけでなく――フィリピンはその一環である必要があるが――この極めて重要な経済的シーレーンの開放性を維持し中国がこれを閉ざすと脅さなくするべく、地域の全ての国々を支持することにコミットし続ける。

出典:‘Remarks With Philippine Foreign Secretary Teodoro Locsin, Jr.’(U.S. Department of State, March 1, 2019)
https://www.state.gov/secretary/remarks/2019/03/289799.htm

 ポンペオ長官の今回の発言は、南シナ海におけるフィリピン軍等への攻撃が米比相互防衛条約の対象になると明言したことで注目された。この発言が大きな意味をもつ理由は同条約第4条の規定にある。第4条は「各締約国は、太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」としている。つまり、南シナ海は条約に言う太平洋に含まれないとも解釈する余地があったのを、太平洋を含むと明確にしたのである。

 ドゥテルテ政権下のフィリピンは、米国、中国との関係で立場がふらついているきらいがある。その原因の一つには、米国の対比防衛へのコミットメントの確実性へのフィリピン側の不安もあると思われるので、ポンペオ長官の今回の発言は歓迎できる。南シナ海における中国の軍事活動を名指しで批判したのも適切である。

 ただ、フィリピン側には、米比同盟をめぐり歴史的に複雑な感情があり、今回の共同記者会見でのロクシン外相の発言からも、それが続いていることが窺われる。ロクシン外相は、米比間の協力を強調しつつ、フィリピンにおける米比相互防衛条約の「見直し」要求があることについて、更なる考慮が必要であるとして「曖昧さの中に、不確実性つまり抑止力がある。明確化は遺漏と条約外の行動を招く。しかし、過度の曖昧さはコミットメントの強固さを疑わせることになる」と述べている。

 このように、米比間には少し温度差が見られるので、米比協力には今後とも何らかの紆余曲折があるかもしれない。米国の南シナ海における航行の自由作戦をはじめとする軍事行動を含む努力の継続が重要で、その中で、その助けとなる米比関係が緊密化していくかどうかにも注目していくということであろう。

【私の論評】米国とアジア各国にTPP協定を広げ対中国経済包囲網を強化するが日本の役割(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、「ドゥテルテ政権下のフィリピンは、米国、中国との関係で立場がふらついているきらいがある」とありますが、確かにそのきらいがいくつかあります。

まずは、フィリピンはかつて米国の植民地だったことがあります。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】ドゥテルテ比大統領、米国憎悪の真相 CIAによる暗殺計画の噂まで浮上―【私の論評】歴史を振り返えらなければ、米国への暴言の背景を理解できない(゚д゚)!
握手するドゥテルテ比大統領と、安倍首相
この記事は、2016年10月26日のものです。このときにはまだトランプ大統領は存在しておらず、オバマが大統領でした。

この当時、米国への憎悪を顕にしていたドゥテルテ大統領ですが、その背後には米国とフィリピンの過去の関係があったのです。それは、フィリピンがスペインの植民地から独立しようとしていたとき、米国はスペインからフィリピンを買い取る約束をし、それに腹を立てたフィリピンが米国と戦争をし、結局負けて米国の植民地となったという屈辱の歴史があるのです。

これが、フィリピンが米国、中国との関係で立場がふらついていることの背景にあることは間違いありません。これについては、説明すると長くなるので、これ以上この記事では説明しません。詳細を知りたい方は、リンク先の記事をご覧になってください。

さらに、最近ではフィリピンにある旧米海軍スービック基地が中国資本の手に陥る恐れが出てきたということがあります。

1月8日、フィリピン・サンバレス州スービック湾にある造船所を運営してきた韓国の中堅造船会社の現地法人が、現地の裁判所に会社更生法の適用を申請したのが、事の発端でした。

スービック湾

地元メディアの報道によると、フィリピンと韓国それぞれの金融機関からの同社の負債総額は約13億ドル(約1430億円)となり、数千人が解雇される見通しで、フィリピン史上最大の経営破たんのひとつだといいます。

そして、そこに「中国企業が買収に名乗りを上げた」(ロドルフォ比貿易産業次官)のです。

スービック湾地域は、1884年にスペインが海軍基地として利用を開始し、1889年には米国に管理権が移り、米軍が撤退する1991年まで米海軍の重要な軍事拠点でした。海軍基地は、その後、スービック経済特別区(SBFZ)に指定されました。総面積は760キロ平方メートルと、シンガポールの面積を上回り、工業団地には日系企業も多数入っています。

一方、造船所は2006年に操業を開始し、これまでに123隻の中・大型船を建造。船舶受注残高で世界のトップ10に入ったこともありますが、10年代に造船不況が深刻化してからは下降線をたどってきました(2月13日時点で親会社の韓進重工業も債務超過となりました)。

中国が進出する南シナ海に面するスービック湾は、米軍基地がなくなったとはいえ、日本や米国の艦船の寄港地にもなっています。海上自衛隊の護衛艦「かが」は18年9月、初の海外寄港としてスービック湾に入港。

在比日本大使館によると、「かが」に乗艦・視察したドゥテルテ比大統領はこの時、社交辞令かもしれないが「日本との防衛協力を一層強化していきたい」などと語りました。

仮に中国資本がスービック湾に進出すれば、日米の艦船が中国の監視下に入ることになります。

ペンス米副大統領

ペンス米副大統領は、18年10月に行った演説で、中国について「(米国の)地政学的な優位性に異議を唱え、国際秩序を有利に変えようとしている」と批判。さらに「関税、為替操作、強制的な技術移転、知的財産の窃盗」に加えて、人権や宗教を弾圧しているとして、中国共産党を名指しで非難しました。

経済分野のみならず人権にまで踏み込み、共産党をも標的にしたことから、米中の「新冷戦」が本格化したと内外で受け止められました。

実際、トランプ政権は「ゼロ・サム的なアプローチ」(米高官)で貿易戦争を中国に仕掛けており、トランプ支持層の間では歓迎されています。しかし、こうした強面の手法に艶が感じられないのは、オバマ前政権が中国を念頭に構築しようとした東アジアの多国間の枠組みが軽視され、域内の米軍の前方展開も縮小の危機にさらされているためです。

オバマ前大統領は、ロシアや中国による「一方的な現状変更」に対して、軍事的な解決より対話を優先させたことから、「弱腰」と批判を浴びました。一方、「世界の警察官を降りた」(オバマ氏)かもしれないですが、同盟網の再整備と国際的なルール・規範づくりを主導することで、米国の国際社会における指導的な地位を維持しようともしました。

オバマ氏は、11年9月、「アジア重視政策」をぶち上げて、オーストラリア北部のダーウィンに2500人の米海兵隊を展開すると発表。14年4月には、米軍にフィリピン国内基地の共同使用を認める米比の新軍事協定を締結しました。これによって米軍は冷戦後、約23年ぶりにフィリピンに回帰しました。そうして、中国への経済的な包囲網は、言うまでもなく環太平洋連携協定(TPP)でした。

これに対してトランプ氏はTPPを撤退し、米国が主要メンバーである東アジアサミットを事実上欠席しました。「米軍を韓国に維持するのは非常に高くつく。いつか(撤収)するかもしれない」と在韓米軍の撤退すらほのめかしました。

トランプ政権は、北朝鮮との核協議、中国との貿易戦争とアジアで外交戦線を拡大していますが、政権発足から3年目に突入しても、いまだにアジア外交の司令塔となる国務省高官(東アジア担当の次官補)は不在のままなのです。

米国の攻勢に対して、中国側もやられっぱなしではありません。中国企業「嵐橋集団(ランドブリッジ)」が15年、米海兵隊が駐留するオーストラリア北部ダーウィンの港湾管理権を獲得(99年の貸与契約)。

習近平総書記(国家主席)は17年の共産党大会で「建国100周年を迎える49年ごろ、トップレベルの総合国力と国際影響力を有する『社会主義現代化強国』を築く。世界一流の軍隊を建設する」と高らかに表明しました。

先に記したペンス演説は、中国のこうしたスタンスに対応したものですが、アジア各国との連携がないなかで、旧スービック基地が中国企業に狙われている事実の重要性には注意が払われていません。一方、ドゥテルテ氏は「中国企業を扱うのには慣れている」と述べ、中国企業がスービックの造船所を買収しても問題ないとする立場を示しています。

フィリピンは、アキノ前政権時代、南シナ海での領有権争いをめぐり中国を国際的な仲裁裁判所に訴え、中国が主張する管轄権を全面否定する勝利を勝ち取るなど対中最強硬派を自任していました。それがドゥテルテ氏に代わって一転、「親中的」になり、昨年11月、中国との間で南シナ海での天然ガス・石油を共同で資源探査する覚書を交わしました。

スービック湾の造船所買収には、日本や豪州の企業も手を挙げています。フィリピンのロレンザーナ国防相はメディアに対して「フィリピンが造船所を引き継ぎ、海軍基地を保有したらどうか。造船技術も取得できる」と述べましたが、ドゥテルテ氏の判断はどうなるかわかりません。

貿易赤字の縮小や知的財産の保護などで中国を屈服させれば、長期的には中国によるアジア支配の勢いを阻止することができるかもしれませんが、スービック湾が中国資本に落ちることがあれば、短期的にはどうなるかはわかりません。


ドゥテルテ大統領は親日家としても知られています。日本としては、米国とフィリピンをうまくとりもつ役割をにない、さらに長期的な視野にたち、米国はもとよりフィリピンもTPPに加入できるように支援していくべきです。

TPPは今や日本が旗振り役となって、11ヵ国によりすでに発効しています。たとえ米国や中国が動かなくとも、世界は動くのです。特にこれは、貿易においては確かな事実です。環太平洋経済連携協定(TPP)は、ドナルド・トランプ米大統領が離脱を表明した2年後、TPP11という新たな装いの下で年明けとともに11カ国で始動しました。これによる最大の敗者は、米国の生産者です。おそらく、トランプの次の大統領は加入する可能性が高いと思います。

フィリピンは、現在TPPには加入していませんが、ブルネイやベトナムなど近くの国も加入しています。日本としては、いずれ加入してもらうことを前提として、様々な支援をしていくべきです。

昨年6月22日来日中のフィリピンのディオクノ予算管理大臣が朝日新聞の取材に応じ、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP11)について、「参加することもオープンだ」と述べ、参加に意欲を示していました。タイや韓国なども参加を検討しており、協定がアジア各国に広がる可能性が出てきました。

韓国に関しては、最近日本政府が、いわゆる「元徴用工」への異常判決など、国際法や2国間協定に違反する暴挙を連発している韓国への対抗措置として、同国がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)へ新規加入を希望した場合、「加入を拒否する」方針を強めているのでどうなるかは、わかりません。

しかし、今後米国はもとより、アジア各国に協定を広げて、対中国経済包囲網を強化していくのが日本の役割だと思います。特に、米国とフィリピンが日本が主導したTPPに加入した場合、米比間の温度差はなくなる可能性が高いと考えられます。

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