2020年12月10日木曜日

こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」―【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

 こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」

衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国


写真はイメージです


(福島 香織:ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。

 ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。

 気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2〜8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。

 だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか。

年内に6億回分のワクチンを市場に供給

 中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。

 中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。

 中国工程院の王軍志院士によれば「中国の不活化ワクチンの主な特性は天然ウイルスの構造と最も近く、注射後の人体の免疫反応が比較的強く、安全性もコントロール可能」という。ファイザーやモデルナのワクチンはマイナス70度やマイナス20度といった非常に低温での厳密な温度管理が必要だが、中国の不活化ワクチンは2〜8度での輸送が可能で、通常のクール便で問題ないほど手軽だ、と主張していた。

 米ニューズウィーク誌サイト(12月4日付)によれば、トルコは12月後半から中国製ワクチンの接種を開始する予定である。一部南米国家でも数カ月内に中国製ワクチンの接種を開始するという。また、モロッコでは年内に国内8割の成人に中国製ワクチンを投与する準備を進めている。

 さらにアラブ首長国連邦も12月9日に、正式にシノバックの不活化ワクチンを導入することを表明。同国ではシノバック・ワクチンの第3期治験を実施していたが、その結果として86%の有効性が確認されたという。明らかな副作用もなく安全性も保障された、とした。すでに閣僚たちはこのワクチンの接種を受けている。

中国製ワクチンの効果に疑問符も

 一方で、中国製ワクチンに対して、中国人自身が根深い不信感を抱いていることも確かだ。たとえばウガンダの中国大使館によれば、現地のインド企業が請け負っている建設プロジェクトに従事している中国従業員47人が新型コロナ肺炎検査で陽性を示していた。このうち一部の患者は発熱、咳、倦怠感、下痢などの症状が出ている。台湾紙自由時報によれば、この47人はすでに中国製ワクチンを接種していたはずだという。だとするとワクチンの効果はなかった、ということになる。

 中国の公式報道によれば、シノバックのワクチンは、海外に出国した中国人労働者に6月から優先的に投与されていた。特に中央機関直属の労務従事者およそ5.6万人には接種済みと発表されている。ウガンダのプロジェクトの従業員も当然接種済のはずだという。中国側はこの点について正式に確認はしていない。

 また10月にブラジルで行われていたシノバック製ワクチンの治験が、治験者の深刻な不良反応を引き起こし死亡したという理由で一時中断されたこともあった。中国側は、この不良反応とワクチンの安全性は無関係であると主張しており、ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている。

 医学誌「ランセット」に寄稿された治験結果によれば、シノバックのワクチンは1回目の接種から28日以内に新型コロナウイルスへの抗体を作り出したが、その抗体レベルは新型コロナに感染したことがある人より低い、とあり、レベルが不十分ではないか、という見方もある。

ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル

 中国のワクチンに対するネガティブなイメージは、中国の製薬業界の伝統的な不透明さのせいもある。たとえば深センの大手ワクチンメーカー、康泰生物の会長、杜偉民にまつわるスキャンダルである。

 ニューヨーク・タイムズ(12月7日付)が改めて特集していた。康泰生物は自社独自で新型コロナワクチン開発を行うと同時に、英アストラゼネカ開発の新型コロナワクチン2億回分の中国国内製造を請け負うことになっている。

 だが、康泰生物と杜偉民はかねてからワクチン利権の中心としてスキャンダルにまみれ、2013年に、康泰製のB型肝炎ワクチン接種後に17人の乳幼児が死んだ事件も引き起こしている。ワクチンと乳幼児の死の因果関係は科学的に証明されていないが、それは父母ら批判的言論を行う人々に当局が圧力をかけて世論をコントロールしたからだとみられており、中国社会における杜偉民とワクチンメーカーに対する不信感はずっとくすぶり続けている。

 ちなみに杜偉民が関わったワクチンによる健康被害事件は2010年にも起きている。狂犬病ワクチン18万人分について効果がないことが監督管理機関の調べで分かり、大きく告知されたのだが、このワクチンを生産した当時の製薬企業は杜偉民の所有企業だった。杜偉民はこのスキャンダルから逃げるために、問題の製薬企業株を別の製薬企業に譲渡した、という。

 また同じ年に、康泰製のB型肝炎ワクチンを接種した広東省の小学生数十人が嘔吐、頭痛などを訴える事件もあった。当局はこれを「集団性心因反応」とし、ワクチンの品質が原因だとはしなかった。だがその3年後に康泰製B型肝炎ワクチンを接種した乳幼児の集団死亡事件があり、庶民の心象としてはワクチンの品質が怪しい、とみている。だが、当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた。

 杜偉民は2016年に自社のワクチンの承認を早期に得るために関連部門の官僚に賄賂を贈り、その官僚は収賄罪で有罪判決を受けた。しかし、杜偉民自身は起訴されていない。ニューヨーク・タイムズもその真の理由については触れていないが、杜偉民が特別な背景を持つ人物であるとみられている。ちなみに出身は江西省の貧農の出で、苦学して衛生専門学校で学び、地元衛生官僚になったあと、改革開放の波に乗って「下海(官僚をやめて起業)」し、中国ワクチン業界のドンとなっていたことは、メディアなどでも報じられている。

 これだけスキャンダルにまみれているにもかかわらず、康泰生物は、ビル・ゲイツ財団の元中国担当責任者の葉雷氏から「中国最先端のワクチン企業の1つ」と絶賛され、新型コロナワクチンでも不活化ワクチンを開発、9月には臨床に入っている。同時に、英アストラゼネカ製ワクチンの生産も請け負うことになり、深セン市政府から2万平方メートルの土地を譲渡され、新型コロナワクチン用の新しい生産工場を建設している。

中国のワクチン外交に対抗せよ

 こうした問題を、中国の製薬会社の地元政府との癒着体質、という一言で受け流していいのだろうか。中国製ワクチンが中国国内で使われるだけであれば、それは中国の内政問題だが、新型コロナワクチンは世界中で使用される。しかも、世界のワクチン市場をどこの国のワクチンが制するかによって、国際社会の枠組みも影響を受けることになる。

 南ドイツ新聞は「中国のワクチン外交」というタイトルで次のような論評を掲載している。

 「中国は各国にマスク外交を展開し、ウイルスの起源(が中国だという)議論を封じ込めようとした。現在はワクチン外交を展開中で、その目的は単なる象徴的な勝利を獲得することだけではない。今後、何カ月後かに、中国が将来的にどのような世界を想像しているかはっきりと見えてくるだろう。南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い、ブラジル衛生相はあちこちに頭を下げまわって中国のワクチンに対する不信を打ち消そうとしている。すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加している。ワクチン戦略は中国指導者に言わせれば衛生領域の“シルクロード”だ」

 つまり、中国が目論んでいるのは衛生版シルクロード構想、ワクチン一帯一路戦略である。中国に従順な国には優先的にワクチンを供与し、中国がゲームのルールを作る。WHOが中国に従順になってしまったように、中国からワクチンを与えらえた国々が皆、中国に従順になってしまう、という予測があると南ドイツ新聞は論じる。

 民主主義国が、こうした中国のワクチン外交に対抗するために、合理的な価格で途上国でも扱いやすいワクチンを開発できなければ、結局世界の大半は中国ワクチンの生産量に高度に依存する羽目になってしまう。こうして中国は新たな政治秩序を打ち立てようと考えているのだ、という。

 こんな状況を考えると、ワクチン実用化をただ、ただ喜ぶわけにはいかないだろう。日本は来年の東京五輪を実現するためになんとしてもワクチンを確保したいと考えているところだろうが、ここで中国製ワクチンに頼ろうとすることだけは避けてほしいと思う。

 それよりも、日本は少し遅れてでも、やはり自前のワクチン開発を成功させなければならない。それは自国民の健康と安全のためだけでなく、ポストコロナの世界秩序にも影響するのだという意識も必要だ。

【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

フィリピンのドゥテルテ大統領は12月3日、米ニューヨークで開催された国連の新型コロナウイルス対策を協議する首脳級特別会合で、各国代表に対して「新型コロナウイルスのワクチンは国際社会が平等にそのアクセスを保証されるべきである」と主張して、途上国や貧困国などがそれを理由にワクチンへのアクセスで不利になるようなことがあってはならないと訴えました。

ドゥテルテ大統領がこうした姿勢を示した背景には、中国が積極的に進める「ワクチン外交」を表向きは歓迎しつつも、2つの理由で中国に対する警戒心が内面には存在すると指摘されています。 

ドゥテルテ フィリピン大統領

まず、インドネシアなどでも同様ですが、中国製ワクチンの安全性に関する警戒感です。欧米の製薬会社と競うようにして早期開発、早期投与を目指す中国の製薬会社によるワクチンですが、フィリピン国民の間では、その安全性についての懸念が依然として強いのです。 

もう一つは、ワクチン外交の展開に関連して、医療保険分野以外での中国の攻勢が今後強まることへの猜疑心です。 

フィリピンは中国との間で南シナ海の領有権争いを抱えているほか、米軍がフィリピンで軍事演習をする際の「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」の破棄問題、フィリピン南部を中心にした「テロとの戦い」、さらにフランス製が有力とされるフィリピン初の潜水艦導入問題などを抱え、安全保障の面で大きな転換期を迎えています。

その一方で中国からの多額の経済支援への依存という現実もあり、あらゆる問題で中国による影響を考慮せざるをえない状況にあります。

世界で突出してワクチンの生産能力を拡大している中国ですが、その需要は生産能力をはるかに上回る規模に膨らんでいます。世界経済フォーラムが8月下旬に行った全世界27カ国の成人約2万人を対象にしたアンケート調査の結果によれば、74%が「新型コロナウイルスのワクチンができれば接種する意向がある」と回答しましたが、中では97%と最も高くなりました。

さらに中国は多くの国にワクチンを優先提供するとしており、その数を概算してみると、20億人分に達します(8月27日付中央日報)。これに中国の人口14億人を加えると34億人となり、世界の人口77億人の約半分に中国がワクチンを提供する計算になります。

最近では、新型コロナワクチンは2回の接種が必要であることがわかってきたことも頭が痛い(8月31日付CNN)。34億人が2回接種することになれば68億回分が必要となりますが、中国の開発企業の供給量(6億回分)はその10分の1に過ぎません。

量的な制約に加えて、質的な問題を抱えていることも懸念されます。

中国の開発企業のうち、カンシノ・バイオロジクスのワクチン候補「Ad5-nCOV」は、ベクター(遺伝子の運び手)に遺伝子組み換え操作で無害化したアデノウイルス5型(Ad5)を利用しています。

アデノウイルスは風邪を引き起こすウイルスの一種です。新型コロナウイルスが持つ遺伝子をAd5に乗せて体内に運び込み、実際にコロナウイルスに攻撃されたときに免疫反応を起こさせることができるようにしておくとう仕組みです。カンシノ・バイオロジクスは、エボラ出血熱用のAd5由来のワクチンを開発した経験を新型コロナワクチンの開発に応用しています。

ところが多くの人が既に抗体を持つ風邪のウイルスを利用して開発されているため、その効果を不安視する声が高まっています。専門家によれば、中国や米国では約40%の人々が既にAd5の抗体を持っており、アフリカでは80%に上ると言われています(9月1日付ロイター)。

Ad5に対する抗体があると、免疫システムは新型コロナウイルスではなく、ベクター(Ad5)を攻撃する恐れがあり、ワクチンの効果が低下します。

一部の科学者は、Ad5由来のワクチンがヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染リスクを高めることにも警戒感を示しています。米メルクが2004年に行ったHIV向けのAd5由来のワクチンの臨床試験では、Ad5の抗体を持つ人のHIVの感染率が高まることがわかっているからです(8月31日付ロイター)。

ジョンズ・ホプキンズ大学のワクチンの研究員は「Ad5基盤のワクチンは、多くの人々が免疫力をもっているため憂慮される。効果が70%どころか40%程度かもしれない。これは、受けないよりはましだということになるが、これでは彼らの戦略が何のためのものなのかわからない」と語りました。 Ad5基盤のワクチン開発に参加したカナダのマックマスター大学の博士は「Ad5基盤のワクチンは、高熱を誘発する可能性がある」と指摘しました。

中国メデイアは9月1日、中国製のワクチンは使用後に重症化の可能性があると報じました。その原因はADE(抗体依存性感染増強現象)です。ADEとは本来ウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進する現象のことです。中国では2万人以上が臨床試験に参加しましたが、多くの人が接種後に深刻な副作用に苦しみ、北京の病院で治療を受けているとの情報があります。


ADEの詳細なメカニズムについては明らかになっていないことも多いです。ただこれまでに、複数のウイルス感染症でADEに関連する報告が上がっています。例えば、コロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類にワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、ADEが原因と考えられています。

いずれにせよ、ワクチン製造の中国企業が全てのデータを公開し、競合各社の評価を受けることが一段と重要になっています。世界が中国製ワクチンを信頼するようになるとすれば、情報には透明性がなければならないはずです。しかし、それはワクチン外交で勝利を収めようともそのような情報が公開されない限り、我が国では使用すべきではありません。

このように、安全性・有効性などに問題を抱えたまま「ワクチン外交」を強引に展開すれば、中国は世界から猛反発を受け、ますます孤立してしまうのではないでしょうか。

日本がワクチン開発で出遅れた理由についてこの20年間を振り返れば、新型コロナを含め繰り返し新興・再興感染症が起きているのに警戒感は維持されなかったことです。「日本はなんとかなるだろう」と考えていたからです。しかし、今回の反省があって変わらなかったら、よほど鈍感ということになるかもしれません。

鈍感だったのは誰なのでしょうか。09年に新型インフルエンザが流行した際、麻生太郎政権は海外から大量のワクチン輸入を進めました。後に余ると、同年8月の総選挙で野党に転じていた自民党議員がこれを批判しました。

翌年6月、専門家による新型インフルエンザ対策総括会議は「ワクチン製造業者を支援し(略)生産体制を強化すべき」と結論付けました。インフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていたからです。

縮小市場に対し、政府の資金的支援が必要だってにもかかわらず、実際に行われたことは逆でした。日本にも国立研究機関における基礎研究と民間企業の開発研究を資金的に橋渡しする厚生労働省外郭の財団はありました。しかし民主党政権の事業仕分けでやり玉に挙がってしまったのです。米国のような研究開発のサポートの仕組みはその後も不十分です。

この事業仕分けは、背後で財務省が民主党を操っていたといわれています。再政権交代後自民党政権になってもこの姿勢は変わらず、財務省は緊縮財政の名のもとで、ワクチンのような戦略物資への投資も緊縮してしまったのです。

備えへの投資については、自民党も民主党も真剣さを欠いていました。将来を見据えるどころか、その場しのぎのパフォーマンスをしていたのです。

こうした財務省に反発した安倍首相は二度にわたって、消費税増税を二度にわたって延期しましたが、財務省の力は強く、結局安倍総理は2度にわたって増税をしてしまいました。

それにしても、09年にも20年にも、同盟国が戦略物資として融通してくれる、という甘えはなかったでしょうか。平時ならともかく、有事に自国優先主義が跋扈するのは当然ですし、それどころか、中国は自らの覇権を強化するために、ワクチンを使おうとしています。

こんな姿勢で、さらなる有事が発生したときに本当に国民を守れるのでしょうか。

幸い、安倍政権の末期の第二次補正予算作成時には、政府と日銀の連合軍で、政府が国債を発行し、日銀がそれを買い取るという仕組みで、政府が大量の資金を調達しました。そのため、コロナ対策としては、十分な対策ができるはずでした。

ところが、第二次補正予算の予備費は10兆円あったにもかかわらず、未だ7兆円が手つかずになっているという有様です。この7兆円は、医療従事者への手当や、コロナ専門病院設立のためにも使われるはずでした。しかし、現実にはそうではなかったので、今日「医療崩壊」の危機が囁かれているのです。私は、これには当然のことながら、財務省から厚生省などへの圧力があったものと睨んでいます。

太田充 財務事務次官

本来、平時と有事は分けて考えられるべきです。有事には、有事対応ができるように、憲法に緊急事態条項を加えるべきであり、法体系も有事があったときの対応を含むものにすべきです。さらに、平時から有事に備えることも含めるべきです。そうでないと同じことが繰り返されることになります。

ただし、国産ワクチンも遅いと言われてきましたが、早ければ年内には臨床試験に入ります。確率された技術を使った開発のため、従来でいえばワープ・スピードに近い速さで、安全なワクチンができることになりそうです。

国産ワクチンで先行するのは、大阪大発の創薬ベンチャー、アンジェスです。ウイルスのDNAの一部を複製したワクチンの治験を6月に開始し、11月に第2段階に進みました。当初は来年春の承認を目指していたのですが、数万人規模の治験を検討する必要があり、時期はまだ見通せない状況です。 

塩野義製薬は、抗原たんぱく質を遺伝子組み換え技術で作ったワクチンを開発。年内の治験開始を目指しており、来年には国内外で大規模治験を実施する予定です。生産設備への投資も進め、年間3000万本を供給できる体制をつくります。

明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)と第一三共の2社は来年3月に、医薬品開発支援のアイロムグループ子会社のIDファーマ(東京)は3~5月に治験に入る予定です。 

海外では「安全保障の観点から平時でもワクチン技術の蓄積が進んでいた」(製薬大手)ことから、開発が国内勢に大きく先行している。ただ、継続的な接種には国産ワクチンが欠かせない。「技術を蓄積しておけば、次のコロナのときにすぐにワクチンを作れる」(KMバイオ)面もあり、国内開発に期待が寄せられています。

このような体制をつくるためにも、菅政権には安倍政権に引き続き、財務省と対峙し勝利していただきたいものです。これに勝利すれば、日本はワクチンだけではなく、様々な面で大変革され、経済も発展します。

ワクチンを避ける人も出るなかで、ウイルスの根絶は不可能です。それでも対コロナの国家戦略の中で、ワクチンという物資の価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰り返されることになります。

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