2020年12月5日土曜日

【日本の解き方】コロナショックによる物価下落の要因を見極める 30兆円の需要不足に対応を 経済運営の手腕が問われる―【私の論評】コロナ対策を過てば、日本経済は韓国やタイに追い抜かれかねない(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナショックによる物価下落の要因を見極める 30兆円の需要不足に対応を 経済運営の手腕が問われる

旅行会社の店頭に掲げられた「Go To トラベル」キャンペーン予約開始の案内(10月18日、東京都千代田区)


 総務省が発表した10月の消費者物価指数(CPI、2015=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101・3と、前年同月比0・7%下落し、下げ幅は9年7カ月ぶりの大きさとなった。「Go To トラベル」の影響で宿泊代が下がった影響とされている。

 一般論を考えよう。各種の経済ショックで国内総生産(GDP)が落ち込むが、それが「供給ショック」なのか「需要ショック」なのかを見極めるのは、経済政策のイロハのイである。

 言い換えるとマクロ経済分析での総供給曲線のシフトなのか、総需要曲線のシフトなのかだ。しかし、実際にはどちらのタイプであるかを判断するのは簡単ではない。ほとんどの場合、総供給も総需要も共にシフトするからだ。

 そこで、どちらのシフトがより大きいのかを見極めることが重要になる。これによって処方箋としての経済対策も全く異なってくる。

 供給ショックの場合、財政出動や金融緩和を使うと、インフレが高まり、スタグフレーション(不況下のインフレ)になってしまう。この場合、基本的には供給曲線を元に戻すような施策が必要であり、総需要管理政策として増税や金融引き締めも必要になってくる。

 これに対し、需要ショックの場合には、財政出動や金融緩和によって有効需要を増やす政策になる。

 歴史を振り返ると、1970年代の石油ショックは供給ショックだったし、2008年のリーマン・ショックは需要ショックだった。11年の東日本大震災の際、日本の主流経済学者の多くが復興増税を主張したが、その背景として供給ショックという見立てがあった。サプライチェーン(流通網)の寸断があったので、供給ショックと見たのだが、それは誤りだった。
 今回の世界的なコロナショックでも、オリヴィエ・ブランシャール氏など一流経済学者の中にも供給ショックと見る向きもあったが、間違いだと言わざるを得ない。

 筆者は早くから財政政策と金融政策の同時発動を主張していたが、これは、コロナショックがロックダウン(都市封鎖)などで旅行、飲食などの需要が蒸発するような需要ショックであると見ていたためだ。

 どちらのショックなのかは、その後の物価の動きでわかる。コロナショックの当初、マスクなどの個別価格の上昇があり、それが供給ショックの見立てにもつながったが、問題なのは個別物価ではなく、全体の一般物価の動きだ。

 その後の消費者物価指数などの一般物価の動きをみると、やはり今回のコロナショックは需要ショックだった。つまり、需要ショックで、需給ギャップが拡大し、それとともに物価が下落したのだ。これはその後、失業率の増加という筆者の予測とも関連している。

 これらは需要不足に起因するものなので、第3次補正予算などで30兆円以上もあるGDPギャップを埋めないと、物価の下落と失業の増加は避けられなくなる、マクロ経済運営の手腕が問われている。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

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