2021年2月1日月曜日

英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

 英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 

激突!米大統領選

TPPに参加する英国のボリス・ジョンソン首相

 英政府は1日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を正式申請する。発足時の参加国以外による初の正式申し込みで、米国のTPP復帰など、加盟国拡大の好機といえる。英国メディアによると、英国は、日米とオーストラリア、インド4カ国の枠組み「QUAD(クアッド)」にも参加する可能性があるという。TPPは「中国包囲網」としての意味合いがあるだけに、英国のTPP加盟実現の重要性は高そうだ。

 「英国民に莫大(ばくだい)な利益をもたらす経済連携を築く」「(加盟申請は)自由貿易の旗手となる野心を表している」

 ボリス・ジョンソン英首相は1月30日、このような声明を発表した。

 自動車など、英国からの輸出品の関税引き下げや、ビジネス目的の往来が容易になることなどを目指す。エリザベス・トラス国際貿易相が1日、西村康稔経済再生担当相らとオンラインで会談し、申請する見通しだ。

 英国は経済面だけでなく、安全保障分野でも「アジアとの連携強化」に積極的だ。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月30日までに、英国がクアッドに参加する可能性があると伝えた。英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は今年、東アジア地域に展開して、自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 習近平国家主席率いる中国共産党政権は、コロナ禍でも軍事的覇権拡大を進めている。1日には、中国海警局(海警)に外国船舶への武器使用を容認する海警法を施行した。

 香港の旧宗主国である英国は、香港民主派弾圧などで中国との対決姿勢を強めており、日米などとの同一歩調を模索しているとみられる。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「英国は、EU(欧州連合)から離脱し、経済的あるいは安全保障上、自立することは当然といえる。地政学的に考えれば、ユーラシア大陸の核保有国を(クアッドと英国で)挟むことができ、手を結ぶべき絶好の国といえる。親中懸念があるジョー・バイデン米政権が不安とするならば、英国のクアッド参加はそれを埋めてくれる。日本政府は『歓迎している』ことを発信してもいいくらいだ」と指摘した。

【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

英国は既に昨年9月11日、日本と自由貿易協定締結で合意したと発表していましたた。英国にとっては、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)後に初めて結ばれる主要な協定とされていました。

国際貿易省は声明で「英国は日本との自由貿易協定を確固たるものにした」と発表し、「これはわが国が独立した貿易国となって初の主要な貿易協定となり、対日貿易は推定152億ポンド(約2兆800億円)規模の増加が見込まれている」と明かしました。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相と茂木敏充外相は昨年9月11日、ビデオ会議で協議し、包括的経済連携協定を結ぶことで大筋合意に達した。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相

この協定は、昨年発効したEUと日本間の広範な貿易協定を基礎としていますが、同協定は昨年12月31日をもって、英国には適用されなくなりました。

英国は昨年1月にEUから離脱したものの、年末まで移行期間を設けることに合意しています。現在は既存のものと同様の協定、または新協定を年内に締結するため、交渉を急いでいます。

トラス氏は「ブレグジット後初の主要な貿易協定であり、これは英日両国にとって歴史的な瞬間だ」と歓迎。さらに、新協定は英国が環太平洋連携協定(TPP)に加盟するための「重要な一歩」だと述べました。

英国とEU間の将来的な貿易協定に関する協議は難航し、行き詰まっています。

英紙デーリー・テレグラフなどは1月31日までに、中国の脅威をにらんだ日米とオーストラリア、インドの4カ国で構成される枠組み「クアッド」に英国が参加する可能性が浮上していると報じました。

英国は香港問題などの人権問題をめぐり中国への対抗姿勢を鮮明にしており、「自由で開かれたインド太平洋」を目指す日米などと連携を強めたい考えとみられます。 

米国のトランプ前政権は外交・安全保障面でクアッドを含む中国包囲網の構築を進めてきました。 バイデン米大統領も菅義偉首相との初の電話会談でクアッドで協力を強化することで一致。

米ホワイトハウスのサリバン国家安保補佐官が日本、オーストラリア、インドなど4カ国が参加する多者安保協議体「クアッド」について「インド・太平洋政策の土台になるだろう」として「もっと発展させたい」との考えを示しました。

このような中でクアッドへの参加に消極的な韓国の代わりに、昨年欧州連合(EU)と決別した英国がこれに参加する可能性が浮上しています。クアッドが「クインテット(5人組)」に拡大改編した場合、自由・民主陣営における韓国の立場が一層弱まるとの見方も出ています。

デーリー・テレグラフ(電子版)は28日、クアッドを「中国への対抗勢力として米国が拡大をにらむ『アジアの北大西洋条約機構(NATO)』」と表現。新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港の人権問題などで中国への強硬姿勢を強める英国が中国に対抗するため、クアッドに参加する可能性があるとの見解を示しました。 

また、英紙タイムズ(電子版)は29日、ジョンソン英首相がバイデン政権との外交政策の擦り合わせに熱心になっていると指摘。ジョンソン氏が今後、インドを訪問した際に参加も視野に入れた協議を行うとの見通しを示しました。英国は対中、対露政策で米国とともに強硬路線をとり、米英の「特別な関係」を維持したい思惑があります。

英国がクアッドに参加する可能性は昨年以降ずっと話題に上っていました。昨年EUから離脱した英国は新たな活路を見いだすため「アジアへの回帰」を政策として推進しています。米国や日本との海上合同軍事演習を通じて持続的にインド・太平洋地域への関心を示し、先月には日本との合同軍事訓練に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を参加させる可能性があるとも報じられました。

最新鋭空母「クイーン・エリザベス」


英国は昨年5月、対中協力に向けたいわゆる「民主主義10カ国(D10)構想」を呼び掛けるなど、共通の価値観に基づく連帯に積極的な関心を示してきました。そのため韓国の外交関係者の間からは「韓国が除外された状態でのクアッド拡大・改編」に対する懸念の声も出ています。

 2020年1月末に欧州連合(EU)から離脱した英国は世界各国との連携で経済成長や影響力拡大を図る「グローバル・ブリテン」構想を掲げており、アジア太平洋地域との連携拡大も視野に入れます。議長国を務める6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、韓国とオーストラリア、インドの3カ国を招待する方針を表明。G7に韓豪印を加えた「民主主義10カ国」(D10)を結成する構想を進めています。 

英国は中国を念頭に置いたアジア太平洋地域の連携を主導し、存在感を高めたい考えとみられます。

東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきています。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていますし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。また、日米とオーストラリアとインド(クアッド)、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。

ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コアとなる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりえます。

日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

その両国が、TPPとクアッド+英国で、協力しあうのは、まさに理にかなっているといえます。さらには、ファイブアイスとの関係を強化していくこともそうだと思います。

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