【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…
無利子でかなりの規模で借金できれば、テレワーク用に最新のパソコンと大画面の表示装置を買おうか、将来の子供の学費にするか、いやマンションを買うか、などさまざまな夢が実現しよう。高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。
トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。
これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。
米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。
イエレン氏の述べた「パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」 という発言内容と同じことをすでにトランプ大統領は実行していたのです。
大統領選挙の公約においては、バイデン氏は様々な政策を増税して行うと発言しており、米国経済はバイデン政権下で低迷することになると発言していたため、私自身はバイデン政権下で、米国経済は落ち込むと予想していました。
ところが、蓋を開け見ると、イエレン氏が財務長官に任命され、しかも上記のような正しい発言をしていたので、安心しました。よって米経済はトランプ政権時代と比較して遜色ないか、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することが予想されます。
おそらくバイデン氏としては、経済運営に自信がなかったのでしょう。それを補うためにも、過去の実績のあるイエレン氏を財務長官にしたのでしょう。そうして、それは正しい選択でした。バイデン氏の安全保障政策は未だどうなるのか、予断を許さないですが、イエレン財務長官が思ったとおりに財政政策を実施でき、バイデン政権がこれを邪魔しなければ、米国経済は早期に回復して、再び成長軌道に乗ることが期待できます。米国、金融界、産業界などもこれを歓迎していることでしょう。
コロナ禍からの再生担うジャネット・イエレン財務長官 |
ただし、経済政策においてトランプ氏やイエレン氏だけが、慧眼の持ち主というわけではありません。すでに、予算収支は常にバランスが取れている必要はないというのが世界の通説です。特にまともな経済運営をしている国々においてはすでに常識です。バイデン氏はその常識からかけ離れていたということです。
そうして、特に、インフレ率がゼロに近く、金利がGDP成長率よりも低い日本では、適度の政府赤字が現在世代だけでなく将来世代のためにも有益なのです。むしろ、均衡させたり、黒字にすることこそ、利益に反することになるのです。
コロナ危機が世界の需要を減退させ、GDP成長率を低下させる今、それを一時的にしのぐには政府支出が特に必要なのです。均衡予算への見当違いな固定観念のために、法的用語を使えば「緊急避難」のための財政支出を避けることは非人道的であり、国民経済全体にも害を及ぼすことになります。菅政権としては、財政健全性という時代遅れな意見を強調する論者の意見を鵜呑うのみにすべきではありません。迷ったら新任の高橋洋一内閣官房参与の意見に従うべきです。「健全財政」の美名の陰には、増税によって権限が拡大することを望む財務官僚の意見や、消費税の減免税率によって利益を受ける新聞業界の利害が隠れているのです。
アベノミクスの第3の矢は、将来に向けて日本の潜在的な成長力を高めるための構造改革でした。この分野での進展は、安倍政権の努力にもかかわらず緩やかであったといえます。能率化を進めようとすると一部の人びとに不利益が及ぶので、構造改革は一部の政治家、官僚、経済人から抵抗を受けます。そのため、日本には官庁のデジタル化の遅れ、公印を押す習慣、所得税で共働きを抑制する税制など時代遅れのルールが多く残っています。
コロナ危機で、会社に皆が同時にいてすべき仕事は意外に少ないことも明らかになったのですが、危機が過ぎた後では守旧派の意見で昔の働き方が戻りつつあり、最近またコロナ禍がぶり返したのに、テレワークが再開した企業は少ないです。
スガノミクスではまず、トランプ氏やイエレン氏のように、財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫いた上で、首相自身の最も持ち味の出る構造改革と成長戦略に焦点を当てるべきです。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿