2021年2月25日木曜日

悪質「組織ぐるみ」の総務省接待 なぜ全額自腹にしなかったか悔やむだろう―【私の論評】民間と比較すると、あまりに杜撰な官庁の利害関係者接待に対する備え(゚д゚)!

 悪質「組織ぐるみ」の総務省接待 なぜ全額自腹にしなかったか悔やむだろう


 どうしても飲食したいなら、自腹で割り勘なら接待にならないのでいい

率直にいえば、20年以上前には、どこの省庁でもよく見られた許認可官庁と対象業者間の関係だ。なお、1998年に発覚した大蔵省スキャンダルでは、大蔵省官僚4名が収賄の疑いで逮捕されたほか、内部調査の結果、112人が処分を受けた。

1998年に発覚した大蔵省スキャンダルでは官僚がノーパンしゃぶしゃぶで
接待をうけていたことが発覚した。写真はブログ管理人挿入(以下同じ)



この大蔵省スキャンダルを契機として、1999年に国家公務員倫理法が公布、2000年に施行された。

ざっくり公務員の感覚をいえば、それ以前の接待は収賄の対象で、その相場はおおむね100万円。100万円を超えると、収賄で逮捕されるが、それ以下ならまあ許されるという感覚だった。実際、大蔵省スキャンダルでは公務員も何人か逮捕されているが、それらは100万円以上の接待を受けていた。もっとも、100万円という当時の相場は、官僚側が勝手に思っていた数字であり、何も根拠もない。実際には、社会通念で変わりうるので、今なら50万円とかもっと低いかもしれない。

100万円未満はいいとなると、社会通念とずれるので、国家公務員倫理法が作られ、5000円以上の利益供与があれば届け出ること、特に飲食では1万円以上を届け出るとされた。ということは、100万円未満の接待でも、1万円以上は事実上禁止だ。どうしても飲食したいなら、自腹で割り勘なら接待にならないのでいいとなった。

 今回の接待問題、組織ぐるみという点ではかなり悪質

筆者は、国家公務員倫理法の施行時に海外にいたので、帰国したら浦島太郎になると思い、国家公務員倫理法・倫理規定の資料を何度も読み返した記憶がある。

国家公務員倫理法の施行により、かつての接待はなくなったとされていたが、今回の総務省接待問題は、それに反し組織ぐるみという点ではかなり悪質だ。

しかも、自腹を切らないという点でセコい。今回総務省の処分を退職後ということで免れた人もいるが、飲み会の誘いは断らないということで有名だという。毎回自腹で断らないなら立派だが、おごってもらう接待を断らないというなら、何を言っているのかわけわからない。

かつて「飲み会を断らない」と豪語していた今回処分を受けた山田真貴子内閣広報官(60)

ある人は、本件は贈収賄の可能性があるので、菅首相の息子にも責任があるといっていた。総務省内部調査では、一人当たりの接待額は10万円程度なので、100万円というかつての相場ではないといっても、これで贈収賄の立件は難しいだろう。

ある人は、首相の息子に誘われたら官僚は断れないと批判したが、利害関係者であっても会食がいけないのではない。おごってもらう接待がいけないのであって、自腹で割り勘であれば事後に会食事実を役所に報告しておけばいい。

処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世は難しいだろう。ただ飯が高くついた。今回処分を受けた者の中には、一部自腹を切っていたが、なぜ全額自腹にしなかったのかを悔やむだろう。そして、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しい。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職できるだろう。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

【私の論評】民間と比較すると、あまりに杜撰な官庁の利害関係者接待に対する備え(゚д゚)!

接待は、企業対企業、企業対監督官庁の間でも、つきものとも言って良いくらいのものです。この接待に関しては、かなり厳しいところもあります。

私の会社でも、これはかなり厳しい方だったと思います。入社したばかりの頃、新入社員研修で教えられたことの一つに、接待に関する対応の仕方がありました。

それは、取引先などから接待の誘いがあった場合どう対処すべきかというものでした。社員の場合は、自分で判断しないで、GM(ゼネラルマネジャー、一般の会社だと部長にあたる)に必ず報告せよというものでした。

その新人教育の内容は今でもなんとなく、一部は覚えいます。それはスイカを売るたとえ話です。講師が一般的なスーパーなどで売られているスイカの原価率等を示したうえで、「あなた方がスイカを100個売るとして、99個スイカを売ったとして、それで良しとしますか?」と質問しました。

ほとんどの人は「良くない」と答えました。講師は「そのとおりです。スーパーなどでは、利益率が少ないので、最後の一個を売りきらないと利益は出ないのです」、そうして講師はこう続けました「利益率が少ないのに、さらに取引先の接待を受け、仕入れのときに判断が鈍ればそれだけで損をしてしまうこともあり得るのです」、「だからこそ、先程述べたように取引先からの接待を受けたときに、GMに報告しないと教えているのです」。

私自身は、新人教育で教えられた通りに、接待に誘われた場合は、必ずGMに報告しました。ある職位以上になると、接待の誘いはかなりありましたが、必ず報告しました。

最近はQRコードで割り勘もできるのだが、総務省の役人は知らない?

それでも、接待になりそうな場合も時折ありました。たとえば、何かのイベントがあって、イベント会場でも酒を含む飲食があり、その後取引先から一緒に飲みに行こうととの誘いがあり、流れで取引先と一緒に飲みにいかざるをえない時もありました。

その場合には、取引先と自分の分を含めて、飲食店に取引先には悟られないようにして、飲食店に飲食代を現金で払う旨を伝えて、飲食が終了する前に自腹で払うようにしていました。

このようなことが何回もあったので、それが習性になり、取引気ではない人、たとえば大学の先生等と飲むときも、自腹ではらってしまうことが何度かありました。

取引先ではない、利害関係のない人と飲む機会もありましたが、そのようなときに、聞いていると、なかにはこのようなことに酷い緩い会社もあって、たとえば、取引先の企業の人間が病気で入院したときにわざわざ入院したことを知らせる人間がいたそうです。それは、暗に見舞いを請求しているということです。

企業によっては、在職中には社内の人間に年賀状を出すことすら禁止している会社もあるそうです。年賀状を出せるということは、その人間の住所を知っているということですから、当然のことながら、お中元やお歳暮等を送ることができるわけで、そうなると人事のときなどに情実が入るため禁止しているそうです。

こんな話も聞いたことがあります。ある大手スーバーの店のGM(店長)が、取引先の園芸店に行って、その店に青々とした竹が植えてあったので、その竹をポンと叩いて「この竹青々としていて、いい竹ですね」と取引先に話したそうです。

その日、家に帰ってくると、自宅の庭にその竹が植わっていたので、驚いて、その竹の代金を自腹で払ったそうです。その取引先は、竹をよこせと、店長が言ったと、忖度したようです。

そのときには、いずれの会社でもこのようなことはあるのだと、改めて再認識しました。

その自分からみると、今回の役人どもの態度は、自腹を切らないという点でセコすぎると思います。

高橋洋一氏は、冒頭の記事の最後で「処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世は難しいだろう。ただ飯が高くついた。今回処分を受けた者の中には、一部自腹を切っていたが、なぜ全額自腹にしなかったのかを悔やむだろう。そして、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しい。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職できるだろう」としていますが、そのとおりです。

人事の原理原則からみても、処分を受けた官僚のうち高ランクの者は、これ以上の出世が難しいのも当然のことです。

経営学の大家ドラッカーは人事について以下のように語っています。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる」(『創造する経営者』)
ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。

それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを明らかにします。

人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにします。

「強みによる人事」チャート クリックすると拡大します

組織内の全員が、息を潜めて人事を見ています。小さな人事の意味まで理解しています。意味のないものにまで意味を付けます。この組織では、気に入られることが大事なのでしょうか。

“業績への貢献”を企業の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”の決定において、真摯さとともに、経済的な業績を上げる能力を重視しなければならないのです。

致命的になりかねない“重要な昇進”とは、明日のトップマネジメントが選び出される母集団への昇進のことです。それは、組織のピラミッドが急激に狭くなる段階への昇進の決定です。

そこから先の人事は状況が決定していきます。しかし、そこへの人事は、もっぱら組織としての価値観に基づいて行なわれます。
重要な地位を補充するにあたっては、目標と成果に対する貢献の実績、証明済みの能力、全体のために働く意欲を重視し、報いなければならない。(『創造する経営者』)
今回処分された、官僚は高橋洋一氏が述べているように、公務員を退職しても、すぐには天下りも難しいでしょう。しかし、ほとぼりが冷めるのをまって、それなりのところに再就職でしょう。しかし、本来このような不祥事をしなかった場合のランクの高いところは無理でしょう。それでも、再就職できるだけましと思うべきでしょう。

それにしても、このようなことをみるにつけ、ドラッカー氏が主張していたように、統治の部分を除いてそれ以外の部分は政府の外に出すべきと言う考えは妥当だと思います。

そうでないと、このような問題はときがたてばまたぶり返すこになります。どのような組織でも、統治と実行を同じ組織が担うと、今回のような不祥事はもとより様々な腐敗が生じるのです。

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