2023年が幕を開け、国内外の情勢が風雲急を告げている。欧米歴訪中の岸田文雄首相は13日午前(日本時間14日未明)、ジョー・バイデン米大統領とワシントンのホワイトハウスで会談し、軍事的覇権拡大を進める中国などを念頭に「日米同盟の強化」などで一致した。一方、国内では菅義偉前首相が、岸田首相の「派閥主導の政治」や、増税路線に苦言を呈した。内閣支持率が低迷するなか、十分な説明や議論のないまま「大増税路線」に突き進む岸田政権に待ったをかけたのか。「政局の嵐」が吹き荒れそうだ。
「派閥政治を引きずっているとのメッセージになり、国民の見る目は厳しくなる」
菅氏は10日発売の月刊誌「文芸春秋」のインタビューで、首相就任後も宏池会の会長を続ける岸田首相をこう批判した。同日夜、菅氏は外遊先のベトナムでも、岸田首相の経済政策について次のように語った。
「『少子化対策』は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは(私は)まったく考えていない」
岸田首相は年明け4日の年頭記者会見で、「異次元の少子化対策」を打ち出した。首相に近い自民党の甘利明前幹事長は翌5日放送のBSテレ東番組で「消費税増税論」に言及した。菅氏はこれに異議を唱えたのだ。
さらに、菅氏はベトナムで記者団に、「政治家は国民の負託を受けている。自らの理念や政策よりも、派閥の意向を優先するようなことはすべきでない」「歴代の多くは所属派閥を出て務めていた」などと続けた。
この経緯をどう見るのか。
菅氏の取材を20年近く続けるジャーナリストの鈴木哲夫氏は「月刊誌での発言、マスコミへの発信を含め、入念にタイミングを計算していた。岸田首相への『宣戦布告』だろう」と分析した。
菅氏の上げた〝狼煙〟は波紋を呼んだ。
菅氏が一昨年の自民党総裁選で推した河野太郎デジタル相は11日、「言うことも分からないではない。自民党の中はいろいろなものが派閥で動いているが、国民と向き合うのが大事」と述べた。
石破茂元幹事長も13日のTBSのCS番組収録で、「至極全うなことを言っている。形式として(首相になれば)派閥を離れるのは自民党の良識ではなかったか」と同調した。
一方、安倍晋三元首相が率いた安倍派所属の世耕弘成参院幹事長は「岸田首相が派閥色を露骨に出して仕事をしたり、決定したことは全くなかった」としながら、「派閥のトップ、派閥を離脱して首相や総裁を務めるというのが、安倍首相までの慣例だった。岸田首相自身が判断すればよい」と語った。
支持率低迷に直面する岸田政権は今年、統一地方選や衆院補選を控える。岸田首相が強い意欲を示す、5月に地元・広島で開催するG7(先進7カ国)首脳会議もにらみつつ、衆院解散に打って出るかが注目だ。
前出の鈴木氏は「だからこそ、菅氏は『政局』の年と見極めた。まずは増税路線に反対したが、安全保障政策などを含め、さらに対案を提示していくだろう」とみる。
具体的な動きは、どうなりそうか。
自民党内の勢力図=別表=は複雑だ。岸田首相は自身の岸田派と、茂木敏充幹事長の茂木派、麻生太郎副総裁の麻生派で主流派を形成するが、岸田派は第4派閥で、基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。
一方、菅氏は無派閥系議員に加え、二階俊博元幹事長の二階派、森山裕選挙対策委員長が率いる森山派との連携も強める。最大派閥で岸田政権と距離がある安倍派の有力者、萩生田光一政調会長とも距離が近い。
勉強会で勢力結集「ポスト岸田」人材探しか
鈴木氏は「岸田政権の増税方針は、財務省による『安倍派への報復』という側面がある。岸田首相はこうした官僚主導に乗っているが、政治主導を目指す菅氏が最も嫌う方向性だ」と指摘する。
菅氏と岸田首相には因縁がある。2021年10月に退陣した菅政権の末期、〝菅降ろし〟の火ブタを切ったのは、政調会長の岸田首相だった。
菅氏は退陣後、目立った行動を避けてきた。菅氏の今回の動きについて、立憲民主党の安住淳国対委員長は「いろいろな意味で、自民党内に不満がたまっている証拠かなと思う」と分析した。
鈴木氏は「岸田首相は最近、茂木氏、麻生氏と距離感も出つつある。菅氏は、安倍氏の悲報を受けて喪に服していたが、いよいよ動き出す決断をした。当面は、勉強会などの形で、勢力を結集し、政治情勢もみながら、『ポスト岸田』の適任となる人材を見定めていくことになるのではないか」と語った。
【自民党派閥勢力】
《主流派》岸田派(宏池会) 43人 茂木派(平成研究会) 53人 麻生派(志公会) 53人
《非主流派》安倍派(清和政策研究会) 96人 二階派(志帥会) 43人 森山派(近未来政治研究会) 7人
《無派閥》 83人
※国会資料などをもとに作成
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「派閥政治を引きずっているとのメッセージになり、国民の見る目は厳しくなる」
菅氏は10日発売の月刊誌「文芸春秋」のインタビューで、首相就任後も宏池会の会長を続ける岸田首相をこう批判した。同日夜、菅氏は外遊先のベトナムでも、岸田首相の経済政策について次のように語った。
「『少子化対策』は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは(私は)まったく考えていない」
岸田首相は年明け4日の年頭記者会見で、「異次元の少子化対策」を打ち出した。首相に近い自民党の甘利明前幹事長は翌5日放送のBSテレ東番組で「消費税増税論」に言及した。菅氏はこれに異議を唱えたのだ。
さらに、菅氏はベトナムで記者団に、「政治家は国民の負託を受けている。自らの理念や政策よりも、派閥の意向を優先するようなことはすべきでない」「歴代の多くは所属派閥を出て務めていた」などと続けた。
この経緯をどう見るのか。
菅氏の取材を20年近く続けるジャーナリストの鈴木哲夫氏は「月刊誌での発言、マスコミへの発信を含め、入念にタイミングを計算していた。岸田首相への『宣戦布告』だろう」と分析した。
菅氏の上げた〝狼煙〟は波紋を呼んだ。
菅氏が一昨年の自民党総裁選で推した河野太郎デジタル相は11日、「言うことも分からないではない。自民党の中はいろいろなものが派閥で動いているが、国民と向き合うのが大事」と述べた。
石破茂元幹事長も13日のTBSのCS番組収録で、「至極全うなことを言っている。形式として(首相になれば)派閥を離れるのは自民党の良識ではなかったか」と同調した。
一方、安倍晋三元首相が率いた安倍派所属の世耕弘成参院幹事長は「岸田首相が派閥色を露骨に出して仕事をしたり、決定したことは全くなかった」としながら、「派閥のトップ、派閥を離脱して首相や総裁を務めるというのが、安倍首相までの慣例だった。岸田首相自身が判断すればよい」と語った。
支持率低迷に直面する岸田政権は今年、統一地方選や衆院補選を控える。岸田首相が強い意欲を示す、5月に地元・広島で開催するG7(先進7カ国)首脳会議もにらみつつ、衆院解散に打って出るかが注目だ。
前出の鈴木氏は「だからこそ、菅氏は『政局』の年と見極めた。まずは増税路線に反対したが、安全保障政策などを含め、さらに対案を提示していくだろう」とみる。
具体的な動きは、どうなりそうか。
自民党内の勢力図=別表=は複雑だ。岸田首相は自身の岸田派と、茂木敏充幹事長の茂木派、麻生太郎副総裁の麻生派で主流派を形成するが、岸田派は第4派閥で、基盤は脆弱(ぜいじゃく)だ。
一方、菅氏は無派閥系議員に加え、二階俊博元幹事長の二階派、森山裕選挙対策委員長が率いる森山派との連携も強める。最大派閥で岸田政権と距離がある安倍派の有力者、萩生田光一政調会長とも距離が近い。
勉強会で勢力結集「ポスト岸田」人材探しか
鈴木氏は「岸田政権の増税方針は、財務省による『安倍派への報復』という側面がある。岸田首相はこうした官僚主導に乗っているが、政治主導を目指す菅氏が最も嫌う方向性だ」と指摘する。
菅氏と岸田首相には因縁がある。2021年10月に退陣した菅政権の末期、〝菅降ろし〟の火ブタを切ったのは、政調会長の岸田首相だった。
菅氏は退陣後、目立った行動を避けてきた。菅氏の今回の動きについて、立憲民主党の安住淳国対委員長は「いろいろな意味で、自民党内に不満がたまっている証拠かなと思う」と分析した。
鈴木氏は「岸田首相は最近、茂木氏、麻生氏と距離感も出つつある。菅氏は、安倍氏の悲報を受けて喪に服していたが、いよいよ動き出す決断をした。当面は、勉強会などの形で、勢力を結集し、政治情勢もみながら、『ポスト岸田』の適任となる人材を見定めていくことになるのではないか」と語った。
【自民党派閥勢力】
《主流派》岸田派(宏池会) 43人 茂木派(平成研究会) 53人 麻生派(志公会) 53人
《非主流派》安倍派(清和政策研究会) 96人 二階派(志帥会) 43人 森山派(近未来政治研究会) 7人
《無派閥》 83人
※国会資料などをもとに作成
【私の論評】とうとう菅前総理は、党内「積極財政派」対「緊縮派+財務省」の拮抗を崩す戦いに参戦したか(゚д゚)!
私は、このブログに以前「菅氏再登板」待望論を掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
菅義偉氏、岸田首相に反旗か 派閥政治、増税を批判「国民の声が届きにくくなっている」 自民党議員「意趣返しする意向があるのでは」との声も―【私の論評】今となっては短期政権になった理由が良くわからない菅政権、菅氏の再登板はあり得る(゚д゚)!
菅前首相(左)は、岸田首相の官僚主導政治に反発したのか |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
増税一辺倒の岸田氏と比較すれば、菅氏の政策や安定感には定評があるほか、仕事師という異名を持つほど、徹底した仕事ぶりで、岸田首相が唐突に辞任するようなことがあれば当面の“リリーフ(継投)”として白羽の矢が立つ可能性は十分にあります。安倍元首相も1年で辞任した後、再登板して戦後最長の長期政権を築いたという事例もあります。「検討師」などと揶揄される岸田氏から比較すれば、菅氏の仕事師ぶりが、ますます光りを増したともいえます。岸田首相が、経済面でも安倍路線を引き継いでいれば、こんなことにはならかったかもしれれません。
私自身は、菅元総理が再登板していただくのが、現状では最も良いと思います。ただ菅元総理としては、コロナ政策など本来は他国などと比較すれば、成功だったにもかかわらず、マスコミ等に印象操作をされて、失敗であるかのように喧伝され、挙句の果てに宏池会が、菅降ろしの口火を切るなどのことをされ、結局自ら辞任したという苦い経験があります。
そのため、自身が返り咲くというよりは、上の記事にもあるように、「ポスト岸田」の人材を派閥との関係とは無関係に見出し、自らがメンターとなり、育て上げいずれ総裁選に出馬させるという意図があるのかもしれません。これは、亡くなった安倍元総理もそのようなことをいずれするつもりだっようです。ただし、それにはまだ時間がかかります。
現状では岸田首相に反旗というよりは、岸田首相に変化を促していると見たほうが良いかもしれません。
昨日は、このブログに以下のような現状の政局の見たてをあげました。
一昨年秋の自民党総裁選挙で争った総理大臣の岸田文雄と、政務調査会長の高市早苗。その2人のもとに財政政策を議論する2つの組織が発足しました。岸田総理は安保では、安倍路線を引き継ぐ行動をするのに、経済面ではそうではありません。両方とも引き継いだ上で、それ以外のところで、岸田色を出せば、今日のような事態を招くことなく、政権は安定したとみられるので、この点は、残念でなりません。それに、将来日本の経済が落ち込めば、安保にも悪い影響を及ぼすことにもなりかねません。そうなれば、日本と安全保障で関係のある米英豪等の国々にも悪影響を及ぼすことになりかねません。これは、安保に関しては、今や日本国内だけを考えていれば良いということはなく、米英をはじめとする西側諸国との関係の中で考えなければならず、他国との関係で行動しなければならないからかもしれません。日本国経済に関しては、無論貿易関係にあることから、他国のことも考慮しなければならないところもありますが、現状では安保ほどではないということがあるのかもしれません。さらに、日本国経済に他国が口を挟むということなれば、内政干渉と受け取られることになりかねず、他国も日本経済に対して、口を挟むようなことしずらいということがあるのでしょう。
岸田のもとにできた組織の最高顧問は党副総裁の麻生太郎、名称は「財政健全化推進本部」、高市のもとにできた組織の最高顧問は元総理大臣の安倍晋、名称は「財政政策検討本部」です。
自民党内では、財政再建派と、積極財政派と色分けすると、積極財政派が多数となっているといわれています。
ただ、財政再建派は数は少ないものの、年齢がどちらかというと高めで、しかも財務省がバックについています。積極財政派のほうが数自体としては、多めですが、年齢は財政再建派と比較すると、低めで、しかも財務省のバックはついていないということで、現状では両派は、拮抗しているようです。
現状では、岸田総理は、閣議決定などで、増税をすすめようとはしているものの、そうなれば積極財政派らの激しい反発は必定であり、本格的な岸田おろしの政局になりかねず、考えあぐねている最中であると考えられます。
増税に関しては、実は多くの人が思う以上に、切迫しています。1月27日からはじまる通常国会に防衛増税確保法案が出されることが閣議決定されれば、それでほぼ防衛増税が決まり、その後は消費税増税もいずれ15%は決まりになるだろという見立てを高橋洋一氏はしています。実際、財務省はそれを目指して、昨年から動いて、多くの議員等を説得しているとみられます。
おそらく、増税確保法案が出されることになれば、財務省や岸田政権による各派閥に対する根回しは終了しており、国会では野党などの反対はあるものの、最終的には多数決で決定してしまうでしょう。
こうなると、かつて三党合意で「消費税増税」が決まってしまったのと、同じで、結局安倍総理が2度も増税延期をしたにもかかわらず、結局は総理在任中に2度も消費税増税しなくてはならなくなってしまったのと同じ状況になることが予想されます。
政局があって、岸田総理が総理をやめようが、誰が総理大臣になろうが、防衛増税とそれに続く消費税増税もやらざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高いのです。
だかこそ、自民党内部の会議では、積極財政派の大怒号が飛び交うようなことがあったのですが、軽減税率の適用を受けている新聞社などは、こうしたことは背景はほとんど報道しません。テレビ局と新聞社は提携会社や協力会社という関係性にあり、各テレビ局のニュース系列と全国紙との結びつきは強く、テレビもほとんど報道しません。
菅前総理としては、無論このような状況は熟知しており、自分が総理になろうとか、岸田降ろしを主導しようというのではなく、岸田総理の増税に対する翻意を促そうとしているのではないかと考えられます。
確かに、防衛増税、消費是増税などをしてしまえば、昨年の参議院選公約でそのようなことを示していない岸田総理に対する国民や党内外からの風当たりは相当強くなり、退陣に追い込まれることになるでしょうし、その後誰が総理になったにしても、日本経済は落ち込み、雇用も悪化し、自民党政権の基盤は揺らいでしまいます。下手をすれば、自民党は再び下野する可能性も否定しきれません。
そのような事態を防ぐためにも、派閥に属しない菅前総理は、現在の拮抗する、「自民党積極財政派」対「自民党緊縮財政派+財務省」の争いに参戦し、何らかの方法でこのバランスを「積極財政派」に有利にしようと目論んでいるのかもしれません。
確かに、この戦いには、派閥に属さいない菅前首相は適任だと思います。菅前総理は、安倍元総理に比較すると、マクロ経済に関しては詳しくはないですが、少なくとも増税すべきではない時期、増税すべき時期の判断はつくようです。そうして、判断がつけば、その方向に向かって行動し、仕事師の本領を発揮できる人です。
自民の「積極財政派」及び「緊縮派」の議員もいずれかの派閥に属しています。出身派閥の意向を完全に無視することはできません。そこに、菅前総理が参戦すれば、「積極財政派」議員も動きやすくなると考えられます。
こうした奇跡を起こした菅前総理に、再び新たな奇跡をおこしていただきたいです。
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このあたりの政局は、23日の通常国会の幕開けから徐々に明らかになっていくことでしょう。あるいは、サプライズで、冒頭ですぐに明らかになるかもしれません。
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