2023年9月7日木曜日

「H2A」47号機打ち上げ成功 「高い信頼性」の面目保つ―【私の論評】H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった(゚д゚)!

「H2A」47号機打ち上げ成功 「高い信頼性」の面目保つ

まとめ
  • 日本の月面着陸実証機「スリム」が成功裏に打ち上げられた。
  • 日本の宇宙開発の再興を象徴する出来事。
  • スリムは、月面の目標地点への高精度着陸を目指す。
  • ロケットにはクリズムも搭載されており、これは新たな宇宙天文台として活躍する。


 日本初の月面着陸を目指す小型実証機「スリム」を搭載した日本の主力大型ロケット「H2A」47号機が、2023年9月7日に打ち上げに成功した。

 H2Aは、日本の宇宙開発の要となるロケットだが、近年は失敗が相次ぎ、信頼性が揺らいでいた。しかし、今回の成功により、日本の宇宙開発は再び勢いを取り戻した。

 スリムは、月面の目標地点に誤差100メートル以内で高精度に着陸することを目指している。打ち上げから3~4カ月後に月の周回軌道に到着し、着陸は4~6カ月後の見通し。成功すれば、日本は旧ソ連、米国、中国、インドに続き、5番目の月面着陸国となる。

 また、H2A47号機は、X線で宇宙を観測する衛星「XRISM(クリズム)」も搭載していた。クリズムは、国際共同プロジェクトで運用される宇宙の新たな天文台として、銀河の形成や元素の進化など、多様な宇宙の謎の解明に利用される。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった(゚д゚)!

まとめ
  • 日本の月面着陸実証機「スリム」がH2Aロケットにより成功裏に打ち上げられた。
  • 日本の宇宙開発の再興を象徴する出来事。
  • スリムは、月面の目標地点への高精度着陸を目指す。
  • H2A47ロケットには、国際プロジェクトによるX線天文衛星「クリズム」も搭載されていた。
  • H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントだった
H2Aロケットは、2001年8月に試験機である1号機が打ち上げられて以来、45回中44回の打ち上げに成功しており、成功率は97.77%です。H2Bロケットも含めると、55回の打ち上げで54回の成功となり、成功率は98%と世界的にも高い水準を誇っています。

H2Aロケットは、2024年度に退役予定です。

H2シリーズの後継機となるH3ロケットは、2023年3月7日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新型主力ロケット「H3」初号機を種子島宇宙センターから打ち上げようとしましたが、2段目のエンジンが着火せず、打ち上げできませんでした。

H3初号機

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2023年5月24日に開催された文部科学省・宇宙開発利用部会で、同年3月に初号機打ち上げに失敗した「H3」ロケットの2号機を、初号機と同じく固体ロケットブースター「SRB-3」を2本装着した「H3-22」という形態で打ち上げる方向性を打ち出した。衛星の代わりに打ち上げ環境計測用ペイロード(積載物)を搭載する考えです。

H2A47の打ち上げ成功の地政学的意義は、主に3つの点で見ることができます。

それは、宇宙開発国家としての日本の評価を高めることです。日本の宇宙開発の歴史は古く、1957年に初の人工衛星を打ち上げたことに遡ります。しかし近年、日本の宇宙開発はいくつかのロケットの失敗など、いくつかの挫折に直面してきました。H2A47の打ち上げ成功は、日本の宇宙開発にとって大きな前進であり、日本が依然として世界の宇宙開発競争の主要プレーヤーであることを示すことになりました。

また、日本が宇宙開発に力を入れているというメッセージを他国に発信するものでもあります。H2A47の打ち上げは、中国が宇宙開発を急速に拡大しているときに行われました。H2A47の成功は、日本も負けずに宇宙開発先進国としての地位を維持しようと決意していることを示すことになりました。

H2A47の成功は、日本が宇宙先進国としての地位を維持する決意を固めていることを示すものであり、日本の宇宙コミュニティにおける他国との結びつきを強化するものです。H2A47の打ち上げは、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカといった国々との協力による国際共同プロジェクトでした。このプロジェクトの成功は、日本が他国と協力して共通の目標を達成する能力を備えていることの証です。

H2A47の打ち上げは、日本、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカの5か国が協力して行われた国際共同プロジェクト「XRISM(クリズム)」の一環です。

XRISM

XRISMは、X線で宇宙を観測する衛星です。X線は、可視光線より波長が短いため、宇宙の奥深くまで届き、ブラックホールや超新星などの高エネルギー現象を観測することができます。

XRISMには、日本が開発したX線望遠鏡「XRISM-S」と、カナダ、フランス、ドイツ、アメリカが開発したX線望遠鏡「XRISM-C」、「XRISM-F」、「XRISM-D」、「XRISM-A」が搭載されています。

XRISMの打ち上げ成功は、X線による宇宙観測の新たな扉を開くものであり、宇宙の謎の解明に大きく貢献することが期待されています。

具体的には、XRISMは、以下の観測を行う予定です。
  • ブラックホールや超新星などの高エネルギー現象の観測
  • 銀河の形成や進化の観測
  • 元素の合成や進化の観測
XRISMの観測成果は、宇宙の成り立ちや進化の理解に大きく貢献することが期待されています。

XRISMには軍事的な直接的な意味はないですが、いくつかの方法で軍事目的に使用することができます。

まず、XRISMは人工衛星やミサイルなど、宇宙空間にある物体を追跡するために使われる可能性があります。これは、他国の活動を監視したり、攻撃から身を守るために使われる可能性があります。

第二に、XRISMは軍事基地や施設など地上の物体の画像化に使用できる。これは情報収集や攻撃計画に利用できます。

第三に、XRISMは新しい兵器や防衛システムの開発に利用できます。例えば、XRISMはX線が物質に及ぼす影響を研究するために使用され、新しいタイプの装甲や兵器の開発に使用される可能性があります。

ただし、XRISMは軍事目的で設計されたものではないことに注意する必要があります。XRISMは宇宙を研究するための科学衛星です。XRISMの潜在的な軍事利用は、その科学的目標の二次的なものです。

XRISMは軍事目的に使用される可能性はありますが、そのために設計されたものではありません。XRISMを軍事目的に使用するかどうかは、日本政府が決定することになるでしょう。ただ、XRISMで得られた成果を各国がいずれ軍事目的に使うことはあるでしょう。

XRISMに限らず、宇宙開発は、地政学的にも影響を伴うものです。最近のインドの成功、北朝鮮の失敗、中国の宇宙開発の成功も、地政学的に大きな影響を与えています。

インドの成功は、発展途上国も宇宙開発で大きな偉業を達成できることを示しました。このことは、他の発展途上国も独自の宇宙開発計画を推進するきっかけとなりました。

北朝鮮の失敗は、核・宇宙兵器開発計画の危険性を示しました。北朝鮮の人工衛星打ち上げの試みは国際的な非難を浴び、同国は国連から制裁を受けています。

中国の成功は、中国の軍事力の増大に対する懸念を引き起こしました。中国は今や世界第2位の宇宙開発国であり、その宇宙開発は軍事と密接に結びついています。

H2A47の打ち上げ成功は、世界の宇宙コミュニティにとって前向きな進展です。各国が協力して共通の目標を達成できることを示すとともに、日本の宇宙開発へのコミットメント(「委託、関与」「公約、約束、言質」「責任」「参加」などを意味する言葉です。 つまり、責任をもって自分が関わっていくこと、責任をもってある事象や物事に関わっていくことを公約・明言すること、責任を伴う約束をすることを指す言葉)を再確認するものです。

宇宙開発と地政学 AI生成画像

インドや中国、その他の国々の最近の成功は、地政学的にも大きな影響を与えました。こうした動きは今後も宇宙開発の未来を形作り、世界のパワーバランスに大きな影響を与えるでしょう。

H2A47の打ち上げ成功は、地政学的、経済的、科学的に重要な意味を持つ一大イベントでした。これは、日本が世界の宇宙開発競争のリーダー的存在であり、宇宙開発を人類のために役立てようとしていることの表れといえます。

【関連記事】

インド宇宙研究機関 “太陽観測衛星 打ち上げ成功”―【私の論評】宇宙開発でインドは大成功、北は失敗で、インドは威信を高め、北はますます孤立(゚д゚)!

ロシア、ウクライナ侵攻の短期決着になぜ失敗?アメリカが明かした「宇宙」の攻防―【私の論評】陸だけでなく、宇宙・海洋の戦いでも、ますますズタボロになるロシアの現実(゚д゚)!

各国で激化する宇宙開発競争、軍事予算と表裏一体の側面も 日本は豪印との協力が現実的 韓国も候補だが… ―【私の論評】日本では、宇宙開発を「研究開発」主体から、「宇宙ビジネス」へと高めていくことが必要不可欠(゚д゚)!

〝宇宙大国〟崩壊の危機 ロシア、ISS計画から離脱 独自のステーション建設優先「西側の制裁が相当効いている…本格的な衰退見えてきた」識者―【私の論評】ソ連崩壊時のように現在のロシア連邦は、宇宙開発どころではなくなった(゚д゚)!

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!

0 件のコメント:

【中国の偽善が許されるのはなぜ?】GDP世界第2位の大国がWTOで“途上国扱い”され続ける理由―【私の論評】中国はTPP参加に手をあげたことにより墓穴を掘りつつある

【中国の偽善が許されるのはなぜ?】GDP世界第2位の大国がWTOで“途上国扱い”され続ける理由 岡崎研究所 まとめ 中国が自国の保護主義政策を講じながら、米国の産業支援策を非難しているのは偽善である。 現行のWTO制度は、多くの国が「途上国」と自称できるため、中国の保護主義政策を...