2023年12月14日木曜日

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点―【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点

まとめ
  • フィナンシャル・タイムズ記事では、ジョセフ・ナイ氏の主張が取り上げられ、米中関係の複雑さを強調しつつも、競争的共存を目指すべきだという立場が示されている。
  • ナイ氏は、米国の地政学的優位性やエネルギー自給能力、労働力の増加などの利点を強調し、中国との関係を緊張や冷戦を回避しつつ、協力して管理すべきだと述べている。
  • ナイ氏の主張は中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。
  • ナイ氏は米国が国内の開放性を維持し、民主的価値観を守ることも重要だと強調しており、米国のソフトパワーの重要性を示唆しています。
  • しかし、中国に近接した国々の視点や安全保障上の懸念についてはナイ氏の議論は、十分に答えているとはいえない。

習近平とバイデン

 11月17日のフィナンシャル・タイムズの記事は、米中関係の複雑さとその解決策についてジョセフ・ナイ氏の論説America should aim for competitive coexistence with Chinaを紹介している。それによれば、ナイ氏は米国と中国の関係は困難であるが、競争的共存を目指すべきだと主張している。ナイ氏は、バイデンと習近平のカリフォルニアでの会談で合意された米中軍組織の対話再開にも触れながら、両国関係は依然として険しいと指摘している。

 その上で、ナイ氏は米国には地政学的優位性やエネルギーの自給能力、労働力の増加といった利点があると強調している。そして、米国は競争的共存のためには中国の外交姿勢を牽制しつつ、緊張や冷戦を回避し、協力する方策を模索すべきだと述べている。彼は、米国が国内の開放性を保ち、民主的価値観を守ることも重要だと指摘している。また、米国のソフトパワーが中国の支配を望まない国々から支持されている点も強調している。

 しかし、ナイ氏の主張が、中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。さらに、オバマ時代のアジア政策に似た点が見られ。過去の米国の対応が寛容すぎた。ナイ氏の議論が米国以外のインド太平洋諸国にとって、中国の振る舞いが安全保障上の脅威になっている現状にどのように対応するか、議論が不十分である。

 ナイ氏の主張は米中関係の複雑性を示しつつも、競争的共存を模索すべきだという立場を取っているが、特に日本を含めた中国に近接した国々の視点に焦点を当てることができていない。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

まとめ
  • 日本の保守派の視点では、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチには信頼性を感じられない。
  • 中国の権威主義は、米国や日本の民主的同盟国の利益を脅かす存在であり、日本は慎重に対処すべきだ。
  • 日本は米国との軍事同盟を強化し、中国の侵略に対抗する必要がある。
  • 軍事的、経済的、外交的な力による抑止政策をとることで、日本は中国の圧力に立ち向かい、安全保障を確保するべきだ。
  • 日本は民主主義の価値観を強化し、中国の圧力に対抗するための連帯を形成する必要がある。
保守派の視点から見ると、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチは信頼できないと感じます。競争的共存は、リベラルな理想にすぎないと思えます。

ジョセフ・ナイ

中国は米国や日本などの民主的同盟国の利益を脅かす権威主義国家です。日本は慎重に中国との接し方を検討すべきです。米国との軍事同盟を強化し、東シナ海や南シナ海での中国の侵略に対処する必要があります。

日本は中国の経済的圧力に屈してはなりません。民主主義の価値と国家の安全保障のために立ち上がる必要があります。過去のオバマ政権の政策は失敗でした。バイデン政権も同じ過ちを繰り返そうとしているように見えます。

日本やアジアの他の同盟国は、ソフトパワーや協力だけではなく、ハードパワーや強さを誇示する必要があります。中国は力しか理解できない国です。

日米をはじめ、先進国は、すでに中国に対して国交を回復したり、WTOに加盟させたりなどして、競争的共存の機会を十分に提供しました。にもかかわらず、中国はそれを無視しました。そのような国が今後、競争的共存をする見込みなどありません。

日本や米国のような同盟国は、軍事費を増やし、合同軍事演習を実施し、中国の不公正な貿易慣行や人権侵害に対抗するために関税や制裁措置を積極的に用いる必要があります。

中国共産党大会

中国共産党が支配している限り、競争的共存は夢のまた夢です。彼らの目標は世界支配であり、協力ではありません。日本と欧米諸国は、現実を直視する必要があります。今こそ、中国の野心を抑止し、希望ではなく力で対処する時です。

中国に対抗するために日本がすべきことは、東シナ海や南シナ海での中国の野心に直接対抗するために、海軍力や空軍力を増強することです。戦闘機、空母、潜水艦、沿岸ミサイル防衛の強化が不可欠です。

日米同盟を強化する必要があります。日本は米国との軍事協力を深めるべきであり、米国の「核の傘」は中国を抑止する鍵となります。安倍元総理が主張していた核シェアリングも検討すべきです。

インド、オーストラリア、ヨーロッパとの安全保障パートナーシップを築く必要があります。日本は同じ民主主義国家と協力し、中国の圧力に対抗する統一戦線を構築すべきです。情報共有や武器取引、海軍の共同パトロールは、抑止力を高めることができます。

外交的、経済的な反撃が必要です。日本は中国の行動に正式に抗議すべきであり、関税をかけたり技術輸出を制限したりすることもできます。中国の圧力に立ち向かうべきです。

中国の軍事活動を監視する必要があります。日本は中国の海軍増強や極超音速ミサイル実験、台湾への潜在的な侵略計画を注視する必要があります。警戒が不可欠です。監視衛星やサイバー・プログラムは欠かせません。


国内での民主主義の価値観を強化すべきです。日本は民主主義、人権、法の支配へのコミットメントを再確認すべきです。民主主義の連帯は、中国の野心に対抗するための、道徳的な権威を持つことになります。

日本は軍事的、経済的、外交的に、力による抑止政策を取る必要があります。中国の圧力に立ち向かうことによってのみ、安全保障を確保できます。競争的共存は希望論であって、抑止力こそが厳しい現実に対処する唯一の術です。保守派の視点から見ると、これが日本が中国の野心に対処する最も適切な方法です。

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