2023年12月21日木曜日

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本―【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

これぞ未来の大砲「レールガン」の使い方、研究現場で聞いてきた 米軍も諦めた課題、日本

まとめ
  • 日本の防衛装備庁が公式YouTubeチャンネルでレールガンに関する研究動向を公開。
  • レールガンは電気を利用して弾丸を加速させる砲で、日本は世界で初めて洋上射撃試験を実施。
  • レールガンの開発には高速で射程の長い特性があるが、砲身摩耗の問題が大きな課題。
  • 日本は砲身素材変更と電流制御の改良により、120発以上の発射に成功し、実用化に向け進展。
  • レールガンはコストやサイズの利点があり、ミサイルとは異なる戦術的利点を持つが、技術的な試験が進行中で、自衛隊の要望に応じた最終運用形態が検討されている。


2023年12月1日、防衛装備庁は公式YouTubeチャンネルで、レールガンに関する研究動向を公開しました。この技術は電気を利用して弾丸を加速させる砲であり、その研究は従来の火薬を使用する兵器とは大きく異なります。世界中で未来の兵器として注目を集める中、日本は他国をリードし、今年10月には初めて洋上での射撃試験を行いました。

研究を担当する陸上装備研究所からは、現在のレールガンの開発状況や潜在的な用途に関する情報が提供されました。この兵器は、弾丸に電気を通して磁場を生成し、それによって弾丸を加速させて射出するものであり、現行の試験機は全長約6mで口径は40mm四方です。

従来の火砲と比較すると、レールガンは弾丸の速度が桁違いで、射程も極めて長い特性を持っています。ただし、この技術には砲身摩耗の問題があり、アメリカ海軍はこの問題から開発を中止しましたが、日本は砲身素材の変更と電流制御の改善により、120発以上の発射に成功し、実用化に向けて進展しています。

レールガンの優れた点は、コストとサイズの面での利点が大きいことです。ミサイルよりも小型で低コストな弾丸を多く携行でき、レーダーでの捕捉が難しく、迎撃が困難な特性を持ちます。ただし、ミサイルは射程や精度で優れており、それぞれの兵器には独自の利点があります。

現在は、技術的な試験が進行中で、単発の試射から始まり、連射や安定した飛翔に関する課題に取り組んでいます。最終的な運用形態は、自衛隊の要望によって決定される見通しです。防衛省の資料によれば、「早期装備化」が目指されており、研究者たちは実用化に向けて努力を重ねています。この先、レールガンが実戦配備されれば、日本の防衛力に革新的な役割を果たすことが期待されます。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】軍事から宇宙開発まで、電磁波武器の未来を切り拓く日本

まとめ
  • 米海軍は2021年にレールガンの開発中止を発表し、予算案でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定。
  • レールガンの開発は技術的課題やコスト面、極超音速兵器の出現など複数の要因で困難を伴い、米海軍は他の技術開発に資金と人材を集中する方針。
  • 小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は人工クレーターを形成し、成功を収めた。
  • インパクタに代わる爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンの研究が進行中で、小惑星への衝突やクレーター形成に利用される見通し。
  • 日本はレールガン開発を進め、将来的には極超音速兵器への対処や低コストの射撃手段としての実用化が期待されているが、課題も残る。
米軍が試作したレールガン

レールガンの開発は相当難しいようです。米海軍は、レールガンの開発を長年にわたり進めてきましたが、2021年に開発の中止を発表しました。これは、2022会計年度予算案の中でレールガンプログラムへの資金供給を「0」に設定したことから明らかになりました。

レールガンの開発は、技術的な課題やコスト面、さらには極超音速兵器の登場による戦略的な変化など、多くの要因により困難を伴っていました。そのため、米海軍はレールガンの実用化に見切りをつけ、他の技術開発に資金と人材を集中させることを決定したと考えられます。

ただし、これは米海軍の予算案で示された方針であり、議会がレールガンプログラムへの投資継続を決断すれば、同プログラムへの予算が復活する可能性も残されています。

日本では、惑星探査の目的でレールガンの開発をすすめています。これをレールガンと呼んで良いのかは別の問題ですが、レールガンのようなものの開発をすすめているのは事実です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の衝突装置「インパクタ」は、小惑星の表面に人工クレーターを作るための装置です。これは、直径約10m、深さ約2mの人工クレーターをつくることに成功しまた。

光跡を引っ張りながら地球に帰還する「はやぶさ2」の試料カプセル=2022年12月6日未明

現在、インパクタに使用される爆薬の代替として、電磁波を利用したレールガンのようなインパクタの研究が進行しています。

電磁波を使用したレールガンは、電気の力を利用して弾丸を加速し、それを小惑星の表面に衝突させることでクレーターを形成します。この場合、爆薬の使用がなく、電磁力を利用するため、より環境に優しく、クレーターを形成するプロセスにおいてもより制御が可能になると考えられています。

レールガンが実用化された場合、その特性を活かした様々な用途が考えられます。以下にいくつかの可能性を挙げてみます。

ミサイル防衛:レールガンは、その高速性と連射能力を活かして、敵のミサイルを迎撃する手段として使用される可能性があります。特に、中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として期待されています。

敵基地攻撃能力:レールガンは、その長射程性を活かして、敵の基地を攻撃する手段としても使用される可能性があります。

低コスト:レールガンは火薬を使わず、電磁力を使って弾を発射するため、理論上は低コストでの連射が可能です。

日本がレールガンの実用化に成功する可能性は十分にあります。その理由は以下の通りです。

技術的進歩:日本はレールガンの開発において一定の進歩を遂げています。防衛装備庁は2020年代後半にレールガンの実用化を計画しており、初速が秒速1700メートル程度の一般的なミサイルに対し、研究段階で音速の6倍を超える秒速2300メートル近くを達成しました。

高度な素材技術:レールガンは電気を通しやすい丈夫な材料が必要で、日本が強みを持つ高度素材が開発の焦点となります。

防衛需要:中国やロシアなどが開発に力を入れる「極超音速兵器」に対する防衛手段として、レールガンの実用化が期待されています。

中国の超音速ミサイルDF-ZF簡体字:東風ZF)

以上の理由から、日本がレールガンの実用化に成功する可能性は高いと言えます。ただし、レールガンの実用化にはまだ多くの課題が存在します。例えば、大電流の供給、加速距離やレールの摩擦・電気抵抗・耐熱限界といった物理的・技術的制約があります。これらの課題を克服するためには、さらなる技術開発と研究が必要となります。

ただ、いずれこれを克服できる可能性はあると思います。早期の実用化に向けて努力していただき是非実現していただきたいものです。

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