2025年9月4日木曜日

なぜ今、創生『日本』に注目すべきなのか──伝統と国益を護る最後の砦


まとめ
  • 創生『日本』は安倍晋三元首相が築いた議員連盟であり、「改革の原理としての保守主義」を体現し、伝統と国益を守る拠点として再び動き出している。
  • 2015年の再始動、2020年の再結集、2022年以降の勉強会、2025年の総会へと活動を重ね、保守の原則である「漸進的改革」を政治に結びつけてきた。
  • 勉強会ではFOIPや家族制度を議論し、安全保障から社会制度まで「保守的改革」の方向性を示している。
  • 安保法制や憲法解釈の転換を後押しし、夫婦別姓論争では通称使用拡大を提案するなど、現実政治に影響を与えてきた。
  • 台湾有事と防衛増税が迫る今、創生『日本』は「改革の原理としての保守主義」を体現しつつ、安倍晋三の遺志を継ぎ、高市早苗らと共に国家の針路を示す最後の砦となっている。
🔳なぜ今「創生『日本』」に注目すべきなのか

2月5日の創生『日本』の総会・研修会

日本の政治は停滞の色を濃くし、外交・安全保障・経済の全てが岐路に立たされている。台湾有事の現実味が高まり、防衛増税が避けられない議題となる今こそ、理念に裏打ちされた羅針盤が求められている。そうした中で、安倍晋三元首相が立ち上げた議員連盟「創生『日本』」が再び動きを強めている。

この議連は、安倍外交の根幹である自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を継承し、家族制度や憲法改正といった制度の根幹に踏み込んできた。単なる思想結社ではない。安全保障関連法制や憲法解釈の転換など、国家の方向を決定づける実際の政治に影響を及ぼしてきた。その存在感は今後ますます増すだろう。
 
🔳創生『日本』の歩みと再始動
 
創生『日本』は2007年に「真・保守政策研究会」として発足し、2010年に現在の名称となった。目的は、伝統と文化の擁護、戦後体制の見直し、そして国益の確保と国際的尊敬を得る国づくりである。

活動は第二次安倍内閣期に一時休止したが、2015年の自民党創党60周年を機に再始動。2020年11月には安倍辞任から3カ月後、加藤勝信、衛藤晟一、稲田朋美ら約20名が集まり、事実上の再出発を果たした。 

安倍氏の死去後、2022年9月には「会長は置かず月1回の勉強会を継続する」と決定。初回には米ハドソン研究所のケネス・ワインシュタイン博士を迎え、FOIPの意義を学んだ。2023年2月には産経新聞の阿比留瑠比氏が「安倍氏は戦後体制を漸進的に改革した政治家」と語り、保守的改革の象徴として評価した。

2025年2月5日には国会で総会・研修会が開かれ、41名が参加。議題は選択的夫婦別姓制度だった。講師の皆川豪志氏(産経新聞)は「子どもの視点を尊重すべき」とし、別姓導入に懸念を示した。最終的に、戸籍は同一氏を維持しつつ旧姓を通称として広く使える制度改正で一致した。中曽根弘文は「国民の声を受け止めるべき」と訴え、高市早苗は通称使用拡大を柱とする私案を提示した。
 
🔳改革の原理としての保守主義と創生『日本』の意義
 
これらの動きは、憲法改正や台湾有事、防衛増税と深く関わる。憲法改正では家族保護規定を踏まえつつ現実的改善を追求し、安全保障では台湾有事を避けて通れない課題と認識。FOIPの理念を基盤としたシーパワー連携が不可欠である。防衛増税は急進を避け、国民合意を前提に段階的に進めることが強調されている。

創生『日本』は、単なる懐古の場ではない。国家の針路を決定する拠点である。伝統を守ることを前提に家族制度を中核に据え、急進的個人主義の奔流に抗う。国家の存立を賭けた安全保障を直視し、現実逃避的な融和論を退ける。そしてFOIPを議会から支え、日本が単なる米国追従でないことを世界に示す。

ドラッカー

ここに改革の原理としての保守主義の本質がある。政治信条が保守かリベラルかは実は一般に考えられているほどには重要な問題ではない。しかし、実際に改革を断行する際は保守的でなければならない。
保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である。(ドラッカー『産業人の未来』)
壊せば二度と戻らない制度や価値が社会には存在するからだ。ピーター・ドラッカーが説いたように、持続可能な改革は伝統と制度の骨格を尊重しなければならない。改革とは「伝統を尊重しながら未来へ進む行為」であり、理念なき急進は社会を混乱に陥れるだけである。

ドラッカーは、改革のための原理は、保守主義たるべしとする。

第一に、過去は復活しえないことを認識することが必要である。第二に、青写真と万能薬をあきらめ、目前の問題に対する有効な解決策をみつけるという、控え目で地味な仕事に満足することを知ることが必要である。第三に、使えるものは既に手にしているものだけであることを知ることが必要である。(『産業人の未来』)

守るべきを守り、変えるべきを変える。秩序だった斬新的改革こそ国民の進路を示すものであり、創生『日本』はその羅針盤なのだ。

創生『日本』は現実政治に影響を与えてきた。第二次安倍内閣期、集団的自衛権の限定容認を含む安保法制の成立を後押しした。外交面では、早くからFOIPを共有し、日本政府が公式戦略として採用する土台を築いた。近年では夫婦別姓をめぐる議論で通称使用拡大という折衷案を提示し、現実の政策に影響を及ぼした。
 
🔳高市早苗の立ち位置
  
 
高市早苗の存在は見逃せない。彼女は創生『日本』の中心人物であり、家族制度や経済安全保障の議論をリードしてきた。2025年の総会で通称使用拡大案を示し、議論を現実的方向に導いたのは象徴的である。安倍晋三の理念を最も忠実に受け継ぐ政治家の一人として、発言力を増している。彼女は創生『日本』を思想の場にとどめず、現実政治に結びつける推進力となっている。

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