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2020年2月17日月曜日

中国企業が従業員を大量解雇!習主席が最も恐れる事態に… 「物不足&ハイパーインフレ」でついに暴動も? 政府措置に人民反発「人命軽視だ!」―【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!


新型コロナウイルスは中国経済も直撃している

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。中国本土では17日朝時点で、新型肺炎(COVID19)の感染者は7万人以上、死者は計1765人となった。日本国内で確認された感染者も16日夜時点で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の355人を含め、計414人。日本政府は16日、「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の初会合を官邸で開いたが、遅すぎではないか。米国やオーストラリアのように、入国拒否の対象地域を「中国全土」に広げるべきとの声も強い。専門家会議は日本の現状を「国内発生の早期」との認識で一致したが、初動対応に失敗した中国の二の舞にしてはならない。中国事情に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が「中国経済の危機」「習近平政権の危機」に迫る緊急寄稿第4弾-。


 例年より長い春節(旧正月)休暇から明けた中国だが、多くの人民は日常生活に戻るどころか、「封鎖された都市」のなかで、不安と恐怖と怒り、そして悲壮感などを抱えながら過ごしている。

 ロイター通信や、台湾紙・自由時報(2月11日)などによると、北京市市場監督管理局は「先週、北京市内で営業していたレストランは約1万1500軒で、全レストランのわずか13%だった」という。

 都市部で360店舗以上を経営するチェーンレストラン大手「西貝」は、「従業員約2万人の給料の支払いが危うくなった」と報じられ、北京の大手カラオケチェーンの「K歌之王KTV」もすべて閉店したまま、従業員約200人が雇用契約を打ち切られた。

 職業教育チェーン企業の「IT兄弟連」北京校は、学生募集をストップして職員の解雇も決め、エレベーター内の電子広告などを展開する「中国新潮伝媒」は従業員500人の解雇を発表している。

 感染を阻止するため、生産現場で工場労働者が医療現場と同じ防護服を着ている映像も出回っているが、それも含め、企業側の経済的な負担としてのしかかっている。

 一説には、現状で「全国の30%の企業が解雇や縮小を決断した」というが、新型肺炎の発生地である湖北省武漢市のみならず、全国各地の中小企業が、経営危機に直面し、すでに多くの人民が失職や給料の遅配、減給の憂き目に遭っていることが推測される。

 皮肉なのは、武漢市において目下、人手不足で「4時間で4000元(約6万2800円)」などの好条件を提示し、求人に奔走しているのが葬儀場である。ある葬儀場の募集要項には「幽霊を恐れず、大胆で強いこと」と記されていたと拡散された。

 また、12日には台湾などのメディアが、「中国政府が、死体を収める袋を100万個、至急作るよう繊維工場に命じた」といった噂話まで報じた。

 中国の習近平国家主席が最も恐れる事態が「大規模解雇による社会不安の広まり」である。

習近平

 習氏の要請を受けて、中国発展改革委員会は11日の記者会見で、「企業の早期生産再開を促す9つの措置」を発表した。

 そこには、(1)物資輸送の保護に全力を注ぐこと(2)産業チェーンの修復、リアルタイムの監視と分析で人口移動を把握すること(3)換気・消毒、体温の監視など必要な措置で流行の広がりのリスクを効果的に軽減すること(4)科学的かつ医学的な観察による集団隔離-などの措置が掲げられた。

 さらに、12日には、「共同防衛・管理メカニズムに関する記者会見」が開催された。運輸部交通服務事業部長が「高速道路の出入り口、地方の幹線道路、農村道路などの無許可の閉鎖や分離、緊急輸送車両の通行妨害などを厳重に禁じる」と述べ、高速道路のサービスエリア、料金所、省・地方の幹線道路にアウトブレーク(集団発生)予防と管理検疫所、または検査ステーションを設置することも公にした。

 だが、北京政府が打ち出すこれらの措置に、武漢市はじめ地方の役人、経営者や人民が素直に喜ぶかは大いに疑問だ。それどころか、専門家の「感染者数のピークはまだこれから」との予測から、「中国当局は、経済安定のために外国人投資家の撤退を阻止し、経済的利益に重きを置いている」「政権の維持が最優先で人命軽視だ」といった反発につながっているのだ。

 しかも、中国全土では依然、消毒液やマスクなどの物資不足に直面しているが、湖北省の病院は医療廃棄物が山積し続け、武漢市の医療従事者は一説には3分の1が感染し、心身ともに限界に近づいているとされ、「医療現場の崩壊」が危惧されている。

 国内外の専門家はさらに、習政権が恐れる、もう1つの事態を指摘し始めている。「物不足によるハイパーインフレ」である。今後、職も食も得られない人民が、暴動を起こすか、餓死者が大量に出回る可能性は捨てきれない。

 習政権は崖っぷちにある。安倍晋三政権も、東京五輪・パラリンピックを中止にさせないためにも、「国家の緊急事態」として迅速かつ大胆な措置を断行すべきだ。


 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】中国の高物価と人民解放軍が、習近平を失脚させるかもしれない(゚д゚)!

確かに、中国のインフレは深刻です。1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は5・4%と8年3カ月ぶりの高水準でした。物流や市場が整っている北京市でさえ、市場によっては白菜は1月の春節前の3倍、大根とキュウリは2倍の値をつけています。


上昇の主因は二つの疫病です。まずアフリカ豚熱(ASF)の流行で豚肉が品薄となり、1月の豚肉価格は前年比2倍以上の水準になりました。CPI上昇率でみても、昨年12月はASFを主因に4・5%まで上がりました。



これに、追い打ちをかけたのが1月下旬以降に急拡大した新型肺炎。国家統計局の董莉娟・高級統計師は10日発表の1月のCPI上昇について「春節と新型肺炎が影響した」と解説しました。

感染拡大で人々が外出を控えようと、物資の買い占めが各地で起きました。各地方政府は感染拡大を防ぐため人の移動を制限。外との人の往来を一切遮断する地区もあり、産地からの出荷を含め物流が滞りました。

春節明けの2月も働き手が郷里から元の職場に戻りきらず、物流網の回復は鈍いです。多くの地方政府が10日には工場の操業を解禁したのですが、人手不足や感染拡大への恐怖から生産再開が遅れています。

マスクなど感染防止に必要な品だけでなく、白菜など生鮮食品も大幅高です。国営新華社通信によると、河南省鄭州市のスーパーは白菜1個を63・9人民元(約1千円)で販売。

上海市のスーパーはレタス価格が8倍。山東省政府は高騰を防ごうと、感染防止グッズや生活必需品を仕入れ値から35%超値上げして売れば処分するとの通知を出しました。

中国情勢では、こうした庶民を苦しめるハイパーインフレと、人民解放軍の動向も見逃せません。

事実上、中国国内は「パンデミック(感染爆発)」状態といえ、最前線に立つ、人民解放軍の医療部隊も疲弊しつつあります。「政権は銃口から生まれる」(毛沢東)という国柄だけに、「死のウイルス」が解放軍内にまで広がれば、初動対応に失敗した習近平政権への怒りが爆発しかねないです。もともと、習政権に不満を抱えていた最精強の「北部戦区」などの動きが注目されています。

「依然として非常に厳しい」「大規模な措置が必要だ」

習国家主席は10日、北京市内の医療施設などを視察し、新型コロナウイルスをめぐる状況について、こう語りました。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えました。

今回の感染拡大以降、習氏は公の場にほぼ姿を現しておらず、「最高権力者の身に何かが起きているのでは」との憶測も流れました。日本でも、福島原発事故後、一時行方不明となった大物政治家がいましたが、マスクに白衣姿で登場したことで、新型肺炎を心底警戒していることをうかがわせました。

ネット上では、「どうして、(新型ウイルスが発生した湖北省)武漢市に行かない?」といった批判も見られているといいます。

その武漢市では、突貫工事で「火神山医院」と「雷神山医院」が建設され、人民解放軍の医療部隊が運用しています。病床が足りず、体育館などに簡易ベッドを大量に設置して、感染者らを集中収容する方針が出されましたが、これは解放軍の「野戦病院」の手法です。

日本ではあまり知られていませんが、人民解放軍は、先進国などのような、国の軍隊ではなく中国共産党の軍隊(というか私兵)です。。「党が鉄砲を指揮する」というのが、中国のシビリアン・コントロール(文民統制)であり、軍を指揮する「最高実力者」は党中央軍事委員会主席です。

一方で、人民解放軍は歴史的成り立ちから、軍中央の支配が届きにくい半ば独立した軍閥の集まりでもあります。習氏に忠誠を誓う軍閥と、習氏と距離を置く軍閥があります。背景に、利権と政争が複雑に絡みあっています。

習氏は2012年、党総書記と党中央軍事委員会主席に選出された後、「軍の腐敗撲滅」や「統合作戦能力の向上」などを掲げて、軍改革を進めてきました。「7大軍区」から「5大戦区」に再編し、軍人を30万人削減しました。狙いの1つは、軍閥と一体化した反習派の軍区の解体といわれています。



習政権となって、解放軍は弱体化させられ、機能を奪われています。不満がかなり鬱積しているはずです。『隙さえあれば何かやってやろう』というのが軍の特性といえます。習氏が最も恐れるのは、人数が多く、軍事的にも充実している「北部戦区」でしょう。

北部戦区は16年2月、人民解放軍で最精強とされた旧瀋陽軍区と、旧北京軍区の内モンゴル自治区、旧済南軍区の山東省を統合して誕生しました。ロシアと朝鮮半島に接するため、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されてきました。

司令部は瀋陽市に置かれています。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権と近く、北朝鮮利権の見返りに、武器やエネルギー、食糧などを極秘支援しているとの見方もあります。反習派の牙城とされています。

北朝鮮は1月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国人観光客の入国を無期限で禁止しました。盟友関係にある北部戦区から連絡でもあったのでしょうか。

新型肺炎の感染拡大で、中国国内では武漢市をはじめ、「70都市以上」「4億人」が封鎖・隔離されているという報道があります。封鎖都市の中には、北部戦区の管轄区域である山東省臨沂市(人口約1140万人)や、黒竜江省ハルビン市(同約960万人)も含まれています。

習政権の初期対応の遅れが、中国全土から世界各国に「死のウイルス」をバラまく結果となっています。軍人にも被害者が続出する出る事態となれば、解放軍、特に北部戦区はどう動くでしょうか。

新型肺炎の感染拡大阻止に解放軍が駆り出されていますが、軍人は集団生活をしているため、集団感染してもおかしくはないです。「人民解放軍内で感染拡大」という事態に陥れば、軍人も自分たちを守るために命令に背いたり、独自の道を進む可能性もあるでしょう。習氏の『個人崇拝』は崩れつつあります。最悪の場合、中国全土で暴動が起き、共産党体制が揺らぎかねないです。

特に、先にあげたハイパーインフレによる国民の鬱積と、人民解放軍の鬱積がたまり、憤怒のマグマが形成された場合、その憤怒のマグマが習近平に向いて大爆発した場合、習近平の失脚等も十分あり得るでしょう。

2016年12月24日土曜日

【お金は知っている】中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く―【私の論評】行き着く先は超元安とハイパーインフレしかない中国経済(゚д゚)!

【お金は知っている】中国 止まらぬ資金流出、人民元の下落 習政権の慢心が自滅招く

トランプ氏(左)と習近平(右)
 中国共産党は1972年2月のニクソン大統領(当時)以来、歴代米大統領に対して台湾を中国の一部とみなす原則を一貫して認めさせてきた。トランプ次期米大統領は「それに縛られない」と明言する。習近平国家主席・党総書記の面子(メンツ)はまるつぶれである。

 北京は何か報復行動をとるかとみていたら、19日にフィリピン沖の南シナ海で米軍の調査用無人潜水機を奪取した。20日には米軍に返還したが、時間をかけて潜水機のデータを調べ上げた。露骨な国際法違反である。粗野でぞんざいなふるいまいを見せつけることが、相手の面子をつぶすと考えるところは、魯迅の『阿Q正伝』そのものだ。

 中国はみかけのうえでは国内総生産(GDP)や対外純資産規模で世界第2位の経済超大国でも、中身は悪弊にまみれている。慢心すれば必ず失敗する。人民元の国際化を例にとろう。

 昨年11月には習政権の執念が実り、国際通貨基金(IMF)が元をSDR(特別引き出し権)構成通貨として認定させた。限定的ながら金融市場の規制を緩和し、人民元の金融取引を部分自由化した。同時に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を創立し、国際通貨元を世界に誇示しようとした。

 ところが、昨年8月に人民元レートを切り下げると、資本が逃げ出した。当局が規制しようにもどうにも止まらない。

 この11月までの12カ月合計の資金純流出額は約1兆ドル(約118兆円)、このうち当局の監視の目を潜った資本逃避は約5000億ドルに上ると米欧系金融機関のアナリストたちは分析している。

 特徴は、11月8日の米大統領選後の11月9日を機に、資金流出が大幅に加速していることだ。当選したトランプ氏が減税とインフラ投資という財政出動を通じて、景気を大いに刺激すると期待されるために米国株が急上昇し、中国に限らず世界の資金がニューヨーク・ウォール街に吸引される。

 中国に対して強硬姿勢をとるトランプ氏にチャイナマネーがおびき寄せられ、トランプ政策に貢献するとは、習政権はここでも面目なしだが、もっと困ることがある。


 グラフを見よう。米大統領選後、元安と市場金利上昇にはずみがついた。いずれも資金流出による。中国人民銀行は元暴落を避けるために外貨準備を取り崩し、ドルを売って元を買い上げるが、それでも元売り圧力はものすごく、元の下落に歯止めをかけられない。商業銀行の手元には元資金が不足するので、短期市場金利である銀行間金利が高騰する。すると、金融引き締め効果となって、莫大(ばくだい)な過剰設備を抱える国有企業を苦しめる。地方政府も不動産の過剰在庫を減らせない。企業や地方政府の債務負担、裏返すと銀行の不良債権は膨らむ一方だ。

 トランプ政権発足を目前に、中国は経済で自滅の道に踏み出した。経済超大国としての要件を満たしていないのに、対外膨張を図ろうとしたからだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】行き着く先は超元安とハイパーインフレしかない中国経済(゚д゚)!

上の記事では、最近の中国の資金流出の状況を掲載しています。しかし、この資金流出がなぜおこるようになったのか、そうしてこの酷い資金の流出の行き着く果てはどうなるかについては掲載されていません。本日は、それに関して記そうと思います。

まずは、このような資金流出が発生するようになった背景を簡単に記します。

一言でいえば、中国政府はコントロールしてはならないものをコントロールしたことが、とめどもない資金流失の直接の原因ということです。

中国政府は、農民から収奪した土地を工業団地や商業地などに転換して不動産バブルを演出したにもかかわらず、供給が需要を大きく上回ってマンションやショッピングセンターが「鬼城(ゴーストタウン)」だらけになってしまいました。そこで習近平政権は投機の受け皿を不動産から株にシフトし、株投資を煽って株高に誘導しました。不動産の次は株の官製バブルを演出しました。


ところが、それは元々政府のやるべき仕事ではありません。株価は、将来得られるであろう企業収益の現在価値です。本来企業の業績が良くならない限り、株価は上がらないのです。その本質を中国政府は理解せず、株式市場にカネを突っ込んで、なりふり構わぬPKO(株価維持策)を続けました。しかし、中国企業の業績は伸びていないのですから、当然の結果として株価は2015年夏から下落し始めました。

すると今度は大量保有株主の株式売却を半年間禁止し、違法売買の摘発を強化しはじめました。しかし、株価が下がっている時に株を売れないことほど株主にとってストレスになることはありません。そのため、大量保有株主の株式売却解禁と同時に株価は大幅に下落しました。株価の急変時に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を新設後5日間で2回も発動したのですが、それがまた呼び水となって、さらに株価は下落するという悪循環に陥ってしまいました。

突然の株価下落で唖然とする上海市民
これら一連の動きから、世界中から中国政府は資本主義経済を全く理解してないという事実が露呈ししてしまったので、現在世界中がある種のパニック状態に陥っています。中国政府は欧洲がやっているような感じのつもりで上へ下へと中国経済をコントロールしようとしてきたつもりなのですが、いまやヨーヨーの紐が伸びきったように何をもってしてもコントロール不能になってしまったのです。

元々、中国は資本主義の歴史もないのですが、工業化の歴史もありません。日本の場合は工業化の長い歴史があるため、生産性の向上や商品価値の向上を実現できたのですが、中国にはその素地がありません。そのため日本のようにイノベーションも期待することもできず、上がり続ける給料や通貨を支えることができません。

にもかかわらず、中国政府は人件費を市場に委ねることをせず、強制的・人為的に毎年15%ずつ引き上げてきました。そのため企業の競争力が著しく低下したのです。

しかし、人民の反発が怖くて賃下げはできないので、自ずと為替は元安に向かうことになりました。1ドル=6.5元ぐらいまで高くなった人民元は、今の人件費と生産性であれば、フロート制(変動相場制)に移行したら1ドル=12~14元ぐらいまで下がらざるを得ないでしょう。

人件費と為替の両方を「管理」することなどできるわけがありません。本来中国政府は、今の人件費で成り立つ労働料集約型の産業は中国には存在しないと心得るべきだったのです。

本来、市場にまかせるべきものを人為的にあれこれ、介入しすぎたため、もはや中国政府に経済政策の打ち手はありません。かつてのように有効需要を創出しようと思っても、すでに高速鉄道、高速道路、空港、港湾、ダムなどの大型インフラはあらかた整備済みで、乗数効果のあるインフラ投資の領域は中国にはありません。

しかも、一人っ子政策を続けてきたせいで今後は高齢化が急速に進展しているのですが、介護や年金などの社会保障を支える人材・予算が大幅に不足しています。

さらに、「理財商品」という隠れた“地雷”もあちこちに埋まっています。これは短期で高利回りを謳った資産運用商品で、株式ブームの前に人気となりました。集まった資金は主に地方政府の不動産開発やインフラ整備などの投資プロジェクトに流れたとされています。

中国のシャドーバンキングの仕組み 

ところが、今後はそれらのプロジェクトが行き詰まり、理財商品を発行した「影の銀行」が損失を受けてデフォルト(債務不履行)を起こす可能性があるのです。日本のバブル崩壊でノンバンクが次々に倒れたのと同じ現象です。

そして、中国国内で投資先を失った資金の流出が加速しているのです。人民元は個人では年間約120万円しか海外に持ち出せません。しかし、中国本土から人民元を香港などに違法に送金する「地下銀行」を運営していた300人余り、総額8兆円近くが摘発された例もあるように、現実には資金を流出する方法は存在しています。資金の海外流出は必然的に人民元安と株安につながります。

鳴り物入りでスタートした中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、中国にはプロジェクトを審査して遂行していく能力があるマネジメント経験者がいないからことごとく失敗しています。

中国はまるで、先進国がこの100年間に経験してきたことを10年間に凝縮したかのような状況にあります。しかもその規模は10倍に膨れ上がり、対する政府の能力は1/100ぐらいしかないといった状態です。

もはや中国経済は習近平政権に限らず、誰をもってしてもコントロール不能になりました。コントロールしてはいけないものをコントロールしたから、こうなったのです。行き着く先は超元安とハイパーインフレしかありません。

これを経験して、はじめて習近平政権は、資本主義経済においてはコントロールしてはならないものをコントロールすれば、とんでもないことになることを学ぶことになるのでしょうか。いや、そのときには習近平は失脚しているでしょう。

【関連記事】





2014年8月19日火曜日

絶望の中国不動産 バブル崩壊か 北京、上海含め主要都市の9割下落―【私の論評】天皇陛下の御心に思いをはせるなら、日本の安寧を願うなら、「とつくに」を構うな、捨て置け(゚д゚)!

絶望の中国不動産 バブル崩壊か 北京、上海含め主要都市の9割下落

中国最大の都市上海市の黄昏、ここでも住宅価格が下落している

中国不動産市況の悪化が底なしだ。国家統計局が発表した7月の新築住宅価格指数は、主要70都市のうち約9割に当たる64都市で前月より下落した。首都北京や上海など巨大都市を含めて全国的に値下がり傾向が続いており、下落した都市は6月の55都市から一段と増えた。中国経済への打撃も大きい。

不動産バブルの崩壊の波は全国に波及している。64都市の下落は、集計方法を変更した2011年以降、最多となった。浙江省杭州や海南省三亜といった地方都市が前月比2・4%下落と大きく下げたほか、住宅需要が比較的強かった北京も1%下落、広東省広州も1・3%下落、上海も下がるなど、巨大都市の変調も明らかだ。

前年同月との比較では65都市が上昇したものの、伸び率は6月より65都市すべてで鈍化した。

「最終的には中国政府が公的資金を大量に投入してバブル崩壊させないのではないか」(国内系シンクタンク)との観測があることが、余計にバブルを膨らませているのが厄介だ。

【私の論評】天皇陛下の御心に思いをはせるなら、日本の安寧を願うなら、「とつくに」を構うな、捨て置け(゚д゚)!

中国不動産パブルに関する中国の動画を以下に掲載します。



以下にこの動画の説明を掲載します。
【新唐人2014年4月22日ニュース】昨年高騰した中国不動産市場とは打って変わり­、今年の第1四半期は例年に比べ、上昇率が縮小しています。開発企業が様々な手段で販­売促進活動しても市場の成長はスローダウンしたままです。今年、このまま価格が下落し­続けると、中国の不動産市場は暴落するのか?中国国内の不動産価格の増減は裕福層にど­んな影響を及ぼすのか?誰が不動産価格下落の最大の被害者なのか?専門家の分析を聞い­てみましょう。
本当は、中国のインフレ率に関する動画を探したのですが、YouTubeで見ている限り、これに関する情報は統制されているようで、中国のインフレ率に関する動画タイトルのものをみると、すべて日本国内の物価上昇の内容になっていました。

たとえば、以下のようなタイトルのようなものがありました。

中国インフレ率低下 疑問の声

この内容、すっかり日本の物価のニュースに変わっています。タイトルとは全く別のものになっています。これは、一体どういうことでしょうか。やはり、何らかの形で情報統制がなされていると考えるべきかと思います。

なお、2011年にも同じ話題で、インフレ率低下に疑問の声が上がっていることが報道されています。

その動画が以下のものです。



これは、2011年のものです。以下に、この動画の説明を付加しておきます。

【新唐人2011年12月11日付ニュース】中国では11月の消費者物価指数が、前年­同月比と比べて4.2%の上昇と、10月の5.5%よりも下がり、14ヶ月ぶりの低さ­となりました。中国のインフレにブレーキがかかったとの評価がある一方で、当局の発表­する数字そのものに対し、疑問を呈する声も尽きません。
中国国家統計局は12月9日、11月の消費者物価指数は前年同月比と比べて4.2%の­上昇にとどまったと発表。14ヶ月ぶりの低さでしたが、食品価格は8.8%の上昇と依­然、高い伸びを見せています。
ウォールストリート・ジャーナルが行ったネット調査でも、87%が中国の物価は下がっ­ていないと答えました。
ネットにこんな書き込みがあります。「野菜の値段は11月、大きく上がった。下がった­のはほんのごく一部に過ぎない。消費者物価指数の食品価格は上がっており、庶民はそれ­を痛感している」
また、当局の公表するデータそのものを疑う声もあります。
経済評論家 草庵居士さん
「中国共産党は平気で嘘をつきます、実際のインフレは公表データよりも深刻です。
10月~12月までで名義上の成長率は22%、しかし、実際の成長率は約6%、だから­真のインフレ率は16%くらいでしょう 」  
11月の購買担当者指数は50を切り、製造業の縮小が見られました。工業や投資の最新­データも、中国経済が今、徐々に停滞していることを示しています。 
しかしロイター通信は専門家の分析として、この中国経済の停滞は、政府の経済政策の結­果であり、想定内だと報道。しかも11月の消費も回復していることから、中国経済は穏­やかな成長を保てると評価しています。
イギリスのBBCも、経済成長の保持こそ中国政府の最優先課題だと多くの専門家は見て­いると報道。中国中央銀行はさらに、金融緩和策をとるだろうと予測しました。
しかし香港第二の金融グループで主席経済アナリストを務める曹遠征氏は、物価レベルが­大きく下がらないため、来年の通貨政策も、安定重視でいくだろうと予測します。
中国人民大学・財政税収研究所の呂氷洋副所長は、消費税を中心とした中国の税制度を批­判。庶民の消費意欲をくだき、お金が政府や国有企業に流れるようにしていると述べます­。 
別の専門家も、放漫財政は国が富み庶民が貧しくなる一因だと批判。経済モデルの転換を­妨げていると言います。
北京天則経済研究所 馮興元副処長
「通貨政策が穏健に向かい、金融がやや緩和されるのは正常です。肝心なのはいまだに 放漫財政が続いていることです。
必要なのは規制緩和と減税による環境整備です。産業政策ばかりでなく競争する環境を整­えるのです」 
来年の経済指針が検討される「中央経済工作会議」が12日から14日まで開かれます。­安定した経済成長とインフレ抑制などが経済政策の重点になると見られています。
以下に中国のインフレ率と、消費者物価指数の変化についてグラフをあげておきます。

インフレ率(年平均)の推移 - 世界経済のネタ帳


消費者物価指数(年平均)の推移 - 世界経済のネタ帳

2011年は、このグラフを見る限りにおいては、インフレ率も上昇していますし、物価も上昇しています。年度内でみれば、下がることもありますが、こうして後付でみてみれば、間違いなく両者ともあがっています。

特に、インフレ率ということになれば、政府のごまかしもできるかもしれませんが、物価に関しては、実際に多くの人々が消費をして、肌で感じていることですから、最終的には嘘は発表できないと思います。

中国にいる外国人も、物価に関しはいろいろ調査していると思いますので、これはあまり極端なデタラメ統計値を発表するわけには逝かないのだと思います。

そうした目でみると、確かに物価はあがりっぱなしです。

以下に上の中国と同じグラフの日本のものも掲載しておきます。

インフレ率(年平均)の推移 - 世界経済のネタ帳

消費者物価指数(年平均)の推移 - 世界経済のネタ帳

日本の場合は、物価が、2014年あたりでは、随分と上がって、ピーク時に近くなっています。最近の状況を反映しています。また、完璧にデフレになった1998年から右肩下がりで物価が盛、2006年くらいには、インフレ率も物価指数もあがっています。

これは、小泉政権下での、日銀による金融緩和による成果です。このまま、日銀が金融感を続けていれば、日本はデフレから脱却できたかもしれません。

その後、日銀は金融緩和に転じたため、インフレ率も、物価も下がっています。

特にインフレ率が急激に落ちているのは、リーマン・ショックの時だと思います。

このリーマン・ショックのときには、中国を含めた日本以外の他国は、すべて金融緩和に走ったにもかかわらず、日銀は総体として、金融引締めを続けたので、インフレ率の落ち込みが激しかったのだと思います。

その結果、デフレはさらに深刻化し、超円高傾向になりました。そのため、リーマン・ショックなど、本来日本への影響など微々たるものですんだものを、その回復は震源地のアメリカや、かなり影響を受けたEUよりもさらに遅く、一人まけの状態でした。

ビキニ小姐 スキー場でバブルチックな催し物(笑)。
今年の冬です。場所は遼寧省瀋陽のスキー場

私は、日本のこの低迷をリーマン・ショックではなく、日銀によるものと考えていますので、リーマン・ショックとは呼ばず、日銀ショックと呼んでいます。

それにしても、2004年あたりから、一方的に右肩上がりに上がり続ける、中国の物価指数をみると、今の中国では、上の記事の末尾にあるように、最終的には中国政府が公的資金を大量に投入してバブル崩壊させないようにしてしまったとしたら、とんでもない超物価高になることが予想できます。

そうなったときに、一番苦しむのは、中産階級ではなく、多くの一般庶民です。

5月の中国CPI2.5%上昇 物価の安定続くと中国国家統計局はしているが・・・・

多くの人々が塗炭の苦しみを味わう、超物価高すなわち、超ハイパーインフレに見舞われたとすると、昨今暴動件数がとみに増えた中国で、さらに増えるということになると思います。

そうなると、政府もとても制御できなくなります。その果てには、中国現体制の崩壊ということもあり得ます。

そんなことは、とてもできるものではありません。だからこそ、中国はバブルを崩壊させるしかないでしょう。できること、というよりやらなければならないことは、急激に崩壊させるのではなく、ソフト・ランディングさせることでしょう。

いままで、中国の経済対策は、ある意味非常に簡単でした。経済が一度悪化すれば、大規模に資金を注入して、金融緩和策を実行し、積極財政を行う。それで、経済が加速気味になれば、今度は金融引締め、緊縮財政を行うということで、対処してきました。

中国は、過去の日本の日銀などとはずいぶん異なる、柔軟な姿勢をとってきました。そうして、日本との大きな違いは、この過程において、人民が反抗すれば、公安警察、人民解放軍、城管などを駆使して、人民を弾圧して、事を収めてきました。

これは、日本などの先進国ではなかなかできないことであり、私はこのブログて、2008年あたりから、中国のバブル崩壊を何度も語っており、まるで狼少年のようになってしまいしたが、はっきりいえば、中国と日本などの先進国などとの違いを意識していなかったがため、こうしたことになってしまったのだと思います。

さらに、昨年4月前までの日銀は、基本的に長きわたり、デフレ政策をとってきたため、日本国内は深刻なデフレに見舞われ、対外的にはかなりの超円高でした。

これにより、日本でモノをつくるよりも、中国でモノを作ったほうが、はるかに安上がりという異常事態が続きました。これも、中国にとって、経済対策がやりやすい状況をもたらしていました。しかし、それも、昨年の4月より、日本が異次元の包括的金融緩和に転じたため、そのようなことはなくなりました。

中国某所で暴動(新疆ウイグル自治区じゃなくて漢民族の地域)とされる写真 8月9日

そうして、これだけ物価が上昇した今日、さらに、2010年以降、中国内の毎年平均の暴動数が、10万を超えるという状況になってしまっては、過去のようなやりかたは、なかなか通じません。過去のやり方を繰り返せば、ハイパーインフレになり、人民の憤怒のマグマは今度こそ、頂点に達し暴動どころか内乱にまでなってしまう可能性が高いです。

だから、今後の経済運営は、かなり難しいです。ここからが本当の中国政府の経済運営の能力がみられる時期でもあります。

それにしても、最近の中国の日本への擦り寄り姿勢は、このような国内経済状況を踏まえたものであると考えます。

中国の擦り寄り姿勢を示す記事を以下に掲載します。
中国の李国家副主席、日中関係改善へ意欲表明 朝日新聞2014年8月18日(月)21:16
 中国の李源潮(リーユワンチャオ)国家副主席は18日、超党派の若手中堅議員からなる「日中次世代交流委員会」の訪中団と北京で会談し、「小異を捨てて大同につくことが日中双方に求められている」と繰り返し述べ、日中関係改善への意欲を表明した。 
 団長の遠山清彦衆院議員(公明)と細野豪志衆院議員(民主)が会談後、記者会見して明らかにした。 
 日本側は今回の訪中で要人との面会を要請していなかったが、1週間ほど前に中国側から「要人会見があるので日程を延ばして欲しい」と連絡があったという。李氏が2013年3月に副主席に就任して以降、日本の現職国会議員と会見するのは初めて。 
これは、明らかに中国経済の失速を念頭においたものだと思います。

それにしても、日本としては公明・民主の議員が中国に行って、関係を深めたくらいでは、中国の本気度を疑うべきです。

さんざん、愚弄した挙句日中関係改善への意欲を示されたとしても、現状では国民感情が許さないと思います。

困るなら困るで捨て置けといいたいです。どうせ、助けてやっても、また元に戻れば、そんなことはきれいさっぱり忘れる連中なのですから!





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中国訪問に際し記者会経をされる天皇皇后両陛下

特に平成4年に、今生天皇、皇后両陛下が中国を訪問され、それがきっかけで、それまで世界中の国々から制裁を受けていた中国が、世界中の国々から受け入れてもらえたということをすっかり忘れる恥知らずな連中ですから、困ったら捨て置き、国家レベルのつきあいは冠婚葬祭程度にとどめておくべぎです。

平成4年の中国訪問に関する陛下のインタビューについて、以下にその記事のURLを掲載します。


以下は、天皇陛下が中国から日本に戻られたとき詠まれた歌です。
外国(とつくに)の旅より帰る日の本の空赤くして富士の峯立つ
この歌は平成4年に懸案であった中国訪問を終えられて帰国の際に詠まれたものです。中国残留の日本人孤児たちが、あるいは北朝鮮から解放された拉致被害者たちが、機上から見る富士山に帰国を実感したといいますが、その思いは境遇を超えて日本人共通のものに違いありません。

いずれにしても、国土の象徴を国の象徴が見下ろすという取り合わせが壮大であり、響きが雄々しいです。現代の「国見歌」のようにも思えます。なお、天皇は即位20年を振り返って、次のように述べておられる。「象徴とはどうあるべきかということは、いつも私の念頭を離れず、その望ましい在り方を求めて今日に至っています」(平成21年4月記者会見)

皆さん、この歌の真意を、陛下の真意をお汲み取り下さい。

なぜ、わざわざ、陛下が「とつくに」からご帰還なさり、富士山をご覧になって安堵され、中国残留の日本人孤児たちや、北朝鮮から開放された拉致被害者たちが見たであろう富士の美しさと、それを見た安堵の気持ちに思いをはせられ、機上からご覧になられた富士山を歌に詠まれたのか。

それは、もう明らかだと思います。立場上おっしゃることができないので、このような歌に気持ちをしたためられたのです。おいたわしいことです。これがわからない人は、よほど鈍感な人だと思います。
==============================================================




日本のマスコミ等は、あたかも中国がないと日本が困るかのような報道ばかりしますが、中国との貿易は輸出入のどちらも日本のGDPの数パーセント、しかも、どれも中国でないと駄目ということはなく、すべて他国で代替がきくものがほとんどです。最近では、あのレアアースも中国から輸入しなくてもなんとかなるようになりました。

対外直接投資も、数年前から対中国向けより、対インド向けのほうが増えています。それに、これも日本GDPの数パーセントで、とるに足らないものであり、さらにもう中国には良い投資先はありません。

いずれにせよ、日本はデフレなのですから、これを解消するだけで国内の経済は良くなります。であれば、無理をして中国とつき合う必要もありません。

いまわの際の、とつくにの空騒ぎも、1,000年に一度の震災や津波、原発事故や戦後体制でさえ、悠久の歴史を持つ我が国からみれば、ほんの一時のことに過ぎません。朝廷をはじめとする私たち日本人の日本の伝統文化、それに勤勉で実直な国民性は、古から今に至るまで、継承されてきましたが、これからも悠久の歴史の中に燦然として輝き続けるどころか、さらに輝きを増すことでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年11月19日火曜日

【経済学101】ラルス・クリステンセン 「ヒットラーを権力の座に押し上げたのはハイパーインフレではなくデフレである」―【私の論評】日本も過去の歴史を学んでいない、政治家・官僚・マスゴミ・似非識者が多すぎ!過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけ!

【経済学101】ラルス・クリステンセン 「ヒットラーを権力の座に押し上げたのはハイパーインフレではなくデフレである」

デフレがヒトラーを生み出した!ファシズムの温床、デフレ!

2か月ほど前のことだが、マシュー・オブライエン(Matthew O’Brien)がアトランティック紙で次のように語っている。

ハイパーインフレーションからヒットラーの台頭に至るまでは一直線を引くことができる ことは誰もが知っていることだろう。しかし、この件に関しては誰もが知っていると思い込んでいることは間違いなのである。ナチスが権力の座に就いたのは物価が4日ごとに倍になったハイパーインフレの時期(1923年)-この時期にもナチスは権力の獲得を目指していたが、その試みはうまくいかなかった-ではなく物価が下落していたデフレの時期(1933年)なのである。

オブライエンの言う通りである。しかしながら不幸なことに、ヨーロッパの政策当局者らの中には過去の(経済や政治に関する)歴史をきちんと学んでいる人物がほとんどいないようである。加えて、自由市場に基づく資本主義体制を擁護する者の中で次のことに気付いている人物もまたほとんどいないようである。すなわち、資本主義体制に対する最大の脅威は過度の金融緩和ではなく過度の金融引き締めなのであり、過度の金融引き締めこそが反動的なポピュリスト―右か左かを問わず―が権力の座に就く土壌を形成することになるのだ。

(追記) ドイツのシュピーゲル紙が次のように語っている。

1922年から1923年にかけてドイツ全土を襲ったハイパーインフレはついにはアドルフ・ヒットラーの台頭を促したのであった。

・・・ドイツのメディアの中にも自国(ドイツ)の歴史からきちんと教訓を学ぶ必要のある人物がいるようである。

オブライエンの記事の存在を教えてくれたことを含めPetar Siskoに感謝。

P.S. スコット・サムナー(Scott Sumner)が直近のブログエントリーの中で自由市場の擁護者の多くが金融政策に関わる問題を巡っていかに間違った考えを抱いているかを話題にしている。

もう一つP.S. デフレ圧力に晒されているユーロ圏で進行しているこの新しいニュースにも要注目である。

【私の論評】日本には過去の歴史を学んでいない、政治家・官僚・マスゴミ・似非識者が多すぎ!過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけ(゚д゚)!

1938年9月1日、ベルリンの「アドルフ・ヒトラー
広場」で行進中の兵士たちに敬礼するヒトラー。

おそらく、ドイツの歴史について忘れ去られていることで、重要なことがもう一つあります。それは、ドイツの当時の空前のハイパーインフレの原因は何であったかというものです。これも日本はもとより、ほとんどの国の政策担当者や、マスコミに忘れ去られています。特に、日本は酷いです。

第一次世界大戦後のドイツがハイパーインフレになった原因としてはいくつもありますが、その大きな直接的な原因の一つは当時のドイツ連邦銀行の独立性によるものです。

この当時のドイツにおける中央銀行(ドイツ連邦銀行)の独立性とは、現在世界各国で標準となっている独立性とは異なります。

現在の世界標準の中央銀行の独立性とは、国の金融政策はその方針を政府が定め、中央銀行はその方針に従い、専門家的な立場から、その方針を実現するための手段を自由に選択できるというものです。国の金融政策の方針はあくまで、政府が定めるということです。

ドイツ連邦銀行

当時のドイツ連邦銀行は独立性を有していましたが、その独立性の中身は、現在の世界標準の独立性とは異なるものでした。どのようなものであったかといえば、国の金融政策は、方針まで含めて中央銀行であるドイツ連邦銀行が定めるというものでした。

政府は、選挙で選ばれた議員などもその構成員の中に含まれ、民意も直接的に反映されるものですが、中央銀行は政府の一下部機関に過ぎず、そんなところが、国の金融政策を独自で決定するのは本来あってはならないことです。しかし、その当時のドイツはそうではなく、結果としてドイツ連銀が、政府の意向とは関係なく、貨幣を大量に刷り増すことになり、ハイパーインフレになってしまいました。

こうしたことの反省もあり、現在の世界の中央銀行の独立性とは、先ほども述べたように、政府の決めた金融政策の方向性に従い、専門的な立場からその方法を自由に選ぶことができるというように制限されたのです。

日本銀行

このことも、忘れ去られています。特に、現在の日本では忘れ去られています。日本でも、従来は日本銀行の独立性はごくまともなものでしたが、平成9年(1997年)6月18日の日銀法改正により、日銀の独立性は拡大され、日銀が国の金融政策の方針を定めることができるようになりました。

この次の年、1998年より日本は完璧にデフレに突入し、それから15年以上もの年月がたっています。その間、ほんのいっとき金融緩和をした例外の期間をのぞき、日銀はデフレであるにも関わらず、ずっと金融引き締め政策を継続し、日本はデフレスパイラルの泥沼に落ち込むこととなりました。安倍政権が誕生することになり、安倍総理が金融緩和をすると約束し、実際に4月から異次元の包括的金融緩和を実行したところ、未だデフレから脱却はできないものの、景気は確実に良くなりました。

過去の日銀の金融政策は全くの間違いであることが、実証されました。15年もの長きにわたって、日銀は誤謬を繰り返していたことが白日の元に晒されることになりました。

以上に述べたことからも、現在の日銀法による、日銀の独立性はあまりに強大すぎます。日銀は、政府の一下部組織に過ぎません。そんな下部組織の、金融政策会議により、日本国の金融政策が定められるという今日の方式は明らかに間違っています。

しかし、特に日銀黒田体制ができあがるまでは、国会議員などが日銀を批判すると、馬鹿なマスコミ、似非識者などは、日銀の独立性を楯にとって「批判するのはおかしい、日銀の独立性に反する」などとはやしたてました。これは、全くおかしなことです。たとえ、現行の日銀法の範囲内で考えたとしても、政府の一下部機関に過ぎない日銀が失敗すれば、批判されるのは当然のことであり、独立性があるからといって、全く批判してはならないなどということにはなりません。

過去の歴史を学ばないのは、何もドイツの政策担当者やマスコミだけではありません。多くの国の政策担当者、マスコミにみられる現象です。しかし、日本では過去の栄光ともいうべき自国の歴史がすっかり忘れ去られ、デフレを長期間にわたって放置するということが平然として行われてきました。

高橋是清

日本の過去の栄光とは、世界恐慌(日本では昭和恐慌)を世界で一番早く脱却したという世界に誇る日本の英知を示す輝かしい歴史です。これは、高橋是清による金融緩和、積極財政政策によるものです。これに関しては、以前のこのブログにも掲載したことがありますので、以下のその記事のURLを掲載します。
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!
ポール・クルーグマン博士

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事の【私の論評】においては、高橋是清の金融・財政政策についてその概要を解説させていただきました。是非ご覧になってください。

世界恐慌の原因は、深刻なデフレでした。デフレのときには、金融緩和、積極財政を実施し、早期に経済を立て直すという現在のマクロ経済学上では、当たり前のど真ん中を、日本では昭和恐慌からの早期脱出という形で理論だけではなく、実際に実行してみせたわけです。

この事実は、あまり語られることはありませんでした。それは、様々な原因があるものの、やはり第二次世界大戦に日本が負けたということが大きく影響していると思います。

アメリカは、日本のような政策をとらなかったため、戦前にデフレから脱却することはできませんでした。アメリカがデフレから脱却できたのは、戦争を遂行するための金融緩和政策と、積極財政が効いてきた大戦の最中のことです。もし、戦争がなかったら、回復は相当遅れたことと重います。20~30年か、もっと長く続いたかもしれません。なぜなら、アメリカは、デフレであっても、リフレ政策をするという考えは全くなかったからです。戦争により、戦時国債を乱発することによる結果としての金融緩和、戦争を遂行するため、大量の兵士に給料を支払い訓練して、兵器・要員を大量に生産、戦地まで運ぶという事業による結果としての積極財政がリフレ政策と同じような効果をだしたため、ようやくデフレから脱却できたのです。

そもそも、深刻な世界恐慌から敗戦国の日本が世界で一番先に脱却していたという事実は、アメリカなどの戦勝国からすれば、とても容認できないことだったと思います。実は、戦勝国よりも敗戦国である日本のほうが、知恵があり、経済的には優れていたなどという事実はあまり公にしたくない事実だったと思います。

そのためか、戦後の教育の基本は、ソ連のコミンテルンが大勢を占めた、アメリカGHG(事実です、GHQの構成員のほとんどはソ連のスパイか、馬鹿のいずれかでした)によって創られたこともあり、この事実は日本では学校でもあまり教えられることもありませんでした。しかし、私たち日本人は、この事実を日本の英知を示す素晴らしい一つの事例であることをしっかりと記憶にとどめるべぎです。特に政治家・官僚、政策担当者、マスコミの特に経済記者の方々はその詳細まで含めて、学ぶべぎてす。

日本でも、政治家、官僚、政策担当者が、しっかり学んでいれば、15年間もデフレを放置するなどということにはならなかったはです。過去を学ばない、ないがしろにする者には創造性は育まれせん。

それは、アインシュタインの言葉でも理解できることです。これについては、以前のこのブログても掲載したことなので、以下にそのURLを掲載します。
BOOK REVIEW 『これからの思考の教科書』- ビジネススキルとしての思考法を順を追って学べる良書―【私の論評】常に革新的であるために、一つの思考方法に凝り固まるな!!アインシュタインと菅総理大臣から真摯に学ぼう!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にアインシュタインの発言などを抜粋して掲載します。
このことを端的に示しているのが、アインシュタインです。アインシュタインといえば、あの相対性理論で有名です。特にその中でも、「E=MC2」という式は、統合的思考の産物です。わずか、この一行の式の持つ意味はまるで、広大な宇宙のようです。 
こうした、アインシュタイン自身が自分の業績について語った言葉が印象的です。「私の理論は、すでに先人がそのほとんどすべてを開拓したものです。私が付け加えたのは最後のほんの!%程度くらいにすぎません」。これは、かなり、謙遜した言葉と受け取られるかもしれません。しかし、真実です。 
アインシュタインは、先人が開拓した物理の理論を情報として、徹底的に、頭の中にインプットしたのだと思います。そうして、そこから、様々な知識を生み出し、その過程で、無論、論理的思考と、水平的思考を駆使し、最後の最後で、統合的思考方法を適用して、壮大な理論を「E=MC2」という、単純な公式としてまとめあげたのです。わずか、!%といいながら、その1%は、偉大であり、人類の金字塔となったのです。
アインシュタインは、科学の分野の人であり、先人が開拓した物理の理論を情報として、徹底的頭の中にインプットしました。金融、経済でも同じことです、高橋是清の実施した事柄や、ケインズなどの理論については、政治家や政策担当者は真摯に勉強すべきです。

アインシュタイン

また、私たち一般人も、詳細までは知らなくても、歴史的事実として概要は知っておくべきものと思います。そのようなことが実際に実行されていれば、デフレが15年も続くだとか、来年の4月に増税するなどのことはなかったものと思います。

一人のリーダーだけがそのような姿勢であっても、世の中は変えられません。大勢の人がそのようにしなければ、馬鹿なことはこれからも何度となく繰り返されると思います。私は、安倍総理は過去を真摯に学んでおり、本当は増税などしたくなかったのでしょうが、自民党の中でも、過去の歴史を学んでいる人はほんの一握りであり、それに抗って増税を見送った場合には、安倍長期政権は実現することはかなわず、結局は大事を成すチャンスすらなくなってしまうので、妥協せざるを得なかったのだと思います。残念なことです。平成15年の総裁選には是非勝利をおさめて、これから馬鹿なことが繰り返されないよう頑張っていただきたいものです。

アインシュタインのいうように、日本の過去の政策担当者らが、高橋是清などの先人の研究を徹底的に調べ、それに何らかの新しい1%の新しいことを付け加えるようなことができていたら、デフレになるどころか、今頃日本は大躍進していたかもしれません。

結局、過去を学ばず、ないがしろにする者には創造性は育まれず、馬鹿の壁をさらに高くするだけなのだと思います。何事においても、過去の歴史を真摯に学び、それに新たな1%を付け加えることができたら、天才になれるということかもしれません。ただし、その1%が難しいということだと思います。しかし、その前にまずは、過去の歴史を真摯に学ばない者には、何も新しいことはできないということです。

過去を学ぶ手段としては、何も社会科学、自然科学を学ぶだけではなく、歴史や文学などもあります。この分野もある程度は齧らないと、馬鹿の壁がさらに積みあがるだけになります。読書にはこうした役割もあるということです。どんなに科学が発展したといっても、人間の生きている時間など限られており、生きているうちに自ら直接体験できることなどたかが知れています。古今東西の先達の考えたこと、感じたことなど学べば、自ら直接体験できないことにまで視野は広がります。視野の広がりが、馬鹿の壁を崩してくれます。しかし、そのようなことをしない人は、馬鹿の壁をうず高く、積み上げて馬鹿な人生を送り、一生を終えることになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年11月3日日曜日

米中通貨戦争、敗者は中国―【私の論評】中国を敗者に追い込んだのは、米国だけではない!寧ろ日本のほうが大きな役割を果たした!!

米中通貨戦争、敗者は中国

米中通貨戦争の勝者はアメリカ?

米中が通貨戦争で火花を散らしている。人民元切り上げを拒む中国に対して米国がドルの大量増刷で元高誘導を仕掛ける一方、中国は「脱米国化」を唱えて戦後のドル基軸通貨体制を崩そうとの動きを強めている。両国の攻防は先鋭化の一途だが、敗者は中国となるだろう。中国の2008年秋からの異常なまでの公共事業拡大と、米国の量的金融緩和政策(QE)で流入した巨額のドル資金がバブル経済を破裂寸前にまで追い込んでいるからだ。来年から本格化する量的緩和の縮小がその口火を切る可能性が高まっている。

「米国は超大国の地位を乱用して世界を混乱させている。他国の命運をこの偽善国家に委ねる時代を終わらせ、新世界秩序を築くために『脱米国化』を進め、ドルに代わる新たな基軸通貨を設けるべき時だ」

米議会が連邦債務上限引き上げ問題で紛糾していた10月半ば、中国国営通信社、新華社はこんな要旨の英文論評を世界に発信した。

窮地の敵に塩を送った日本の戦国武将とは対照的に、中国は大店のもめ事を利用して米国に取って代わる野心をのぞかせた。

これには「政府が銀行や企業を操り、企業家精神も育たず、独自開発の製品もない中国が世界経済をリードできるわけがない」(米フォーブス誌ネット版)。「3兆6600億ドル(約358兆円)の外貨準備を持つ中国は米国債を買い続けるしかない」(タイム誌ネット版)などと、米メディアの反発も強い。

ホワイトハウスのカーニー大統領報道官は「数百年来、債務を正確に返済してきた米国の信用と原則は揺らがない」とコメントしたが、心穏やかであるわけがない。

だが実は米国がリーマン・ショック後の08年秋から始めたQEがすでに中国をインフレ・バブルの醸成からその崩壊へと、じりじり追い込んでいるのである。

中国政府統計によると、QE開始からこの10月までの5年間に増加した外貨資金は約1兆8千億ドル(約176兆円)にのぼる。米連邦準備制度理事会(FRB)がQE1~2を通じて増刷したドルの約8割に相当する巨資の流入が、中国全土で不動産バブルを膨張させている。

「全国不動産値の総額は国内総生産(GDP)の4倍を超え」(著名経済評論家の牛刀氏)、「日本のバブル時を上回った」との日本側推計もある。

その一方「北京、上海の空室マンションはそれぞれ380万戸、400万戸にのぼり、暴落を恐れる地方政府が土地の供給を絞り、開発業者に高値で落札させることでバブル崩壊を防いでいる」(同)という。

加えて、リーマン・ショック後の経済失速を恐れた胡錦濤前政権の4兆元(約64兆円)景気対策に悪乗りした地方政府の無謀な公共事業が不良債務の山を築き、「総額は20兆元(約320兆円)を超えた」(項懐誠・元財政相)とされる。

さらに鉄鋼、アルミ、造船などの構造不況産業がひしめく企業部門の総債務は「昨年で65兆元(約1040兆円)」(米金融大手モルガン・スタンレー推計)にのぼる。

仮にバブル崩壊が地方財政や国有企業の破綻と相まって、4大国有銀行を直撃する事態になれば国家の重大危機を迎える。

その引き金となりそうなのが、米国の金融緩和縮小から利上げへのプロセスだ。これを機に巨額のドル資金が一斉に本国に還流し始めるのを誰よりも恐れているのは、習近平政権だろう。米国の債務騒動を冷笑している場合ではあるまい。(北京・山本勲)

【私の論評】中国を敗者に追い込んだのは、米国だけではない!寧ろ日本のほうがはるかに大きな役割を果たした!!

上の記事、重要だと思ったので、アーカイブ的な意味あいでも、全文掲載させていただきました。

昨日も、機軸通過の話でしたが、本日もさらにその話を掲載しました。上の記事では米中通貨戦争においては、中国を敗者に追い込んだのが、米国一国のみで日本などは全く念頭にないようですが、結論から言ってしまうと、最近の中国を敗者に追い込んだのは、むしろ日本であり、日本が最大の役割を担ったことは否めないと思います。

確かに、米国がリーマン・ショック後の08年秋から始めたQE(量的緩和)がすでに中国をインフレ・バブルの醸成からその崩壊へと、じりじり追い込んでいるのは事実です。量的緩和によって、中国に巨額のマネーが転がり込んだことは事実です。そうして、これが中国にとって旧体制を温存したまま経済発展を継続することができたということは事実です。

リーマンショック後の日米マネタリーベースの比較

しかし、日本はその前からこれに近いことを実施しています。1987年増税、日銀法の改正により、1988年を境に日本は完璧に国内はデフレ、対外的にはかなりの円高となりました。円高で国内はデフレ、そうして、親中・媚中派の政治家や、マスコミが中国の大躍進をもてはやす中、デフレでなければ、日本国内に向けられたであろう資金が、中国に投資されるようになりました。

固定相場制でしかも、低い元相場と日本の超円高で、国内で生産するよりも、中国で生産して逆輸入したほうが低価格になるという状況になったため、多くの日本製造業などが、中国に進出して日本国内は空洞化しました。そうして、資金や技術が日本から中国に移動しました。

中国を世界第ニの経済大国に押し上げた縁の下の力持ち日銀元総裁白川氏
その後、今年の4月まで、日銀は基本的に金融引き締め策を実施してきたことは、周知の事実です。特に、白川体制では何がなんでも金融引き締めさえやれば、良いというのが実体でした。おかしげな基金を設立して、短期の債権を買い取るなどのことをして、あたかも金融緩和をしているようにみせかけ、実質は金融引きめを続けたというのが真相です。

短期の債権など、もともと現金・預金に近い性格のものであり、結局これを日銀が買い取ったとしても、金融緩和したことにはなりません。しかし、そうまでして、白川は日銀の金融引き締め策を継続し、結局デフレ・円高の守護神となっていました。

日本が統計上誰が見ても否定できないほどのデフレ状況になったのは、1998年からですが、それ以前からデフレ傾向はみられ、デフレ傾向になってからは、20年以上の年月が経過しています。

これが、中国にとっては、アメリカのQEなど金額的にも、期間的に比較しても比較の対象にならないほど資金を日本から調達できたということで、中国の経済発展にかなり寄与しました。

これについては、私はこのブログで、日銀による中国麻薬漬け政策と呼んでいました。その記事のURLを以下に掲載します。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、慢性的な円高に苦しんだ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していることを掲載しました。金融緩和する前までの日本は、国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていました。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになていました。そうして、無論、日本企業が中国で生産するために、中国に直接投資をしました。

それに日本国内はデフレですから、どの企業も設備投資を控えていたため、新たな動きもなく、もしデフレでなければ、日本国内に投資されていたはずの投資が、海外に流れました。その結果として、日本国の対外金融資産額(要するに日本が外国に貸しつけているお金)は、昨年度末で、260兆円を超え、これは無論世界一の水準です。これは、昨年度末に限らず、過去20年間世界一でした。これらは、米国やEUにも流れていましたが、当然中国にもかなり流れていました。

衝撃的な中国の麻薬中毒の娼婦の写真。現代中国も現実はこれに近いものがあり崩壊間近。
こういう観点から見ると、日本が20年前から始めた日銀による円高・デフレ政策がすでに中国をインフレ・バブルの醸成からその崩壊へと、じりじり追い込んでいたということであり、この事実を私は日銀による中国麻薬漬け政策と呼んだことです。

それにもう一つはっきりしているのは、アメリカのQE(金融緩和策)はまだ終焉していませんが、日本ではすでに、日銀人事を通じて、金融引き締めから金融緩和に転じています。日銀黒田総裁が、すでに今年の4月より、異次元の包括的金融政策を開始しています。

黒田バズーカといわれる、異次元の包括的金融緩和を実施した日銀黒田総裁

その結果、わずか2~3ヶ月ほどして、中国の経済は大混乱となりました。日本は、すでに中国をインフレ・バブルの崩壊へと、じりじり追い込んでいるということです。これに対して、アメリカQEの取りやめはまだ、行っていません。

中国敗退の道筋をつけたのは、日本であり、アメリカのQE中止は、すでに日本が道筋をつけた中国敗退のシナリオに最後の追い討ちをかけるだけものです。

日本の円高・デフレ政策は、日本の富を中国に移転したということです。日本では、日本ダメ論などが蔓延していますが、日本が、本質的に経済的に豊な国でなければ、このようなことは起こりえません。これがなければ、中国の経済成長もままならず、中国は2010年の段階で、世界第二の経済大国になったなどと、豪語ばできなかったでしょう。

実際は中国の統計は出鱈目なので、その当時も、現在でも、世界第二の大国にはなっていません。しかし、出鱈目でもあまりかけ離れていれば、世界第二経済大国などとは吹聴できないですが、日本の圧倒的な支援があったがために、彼らは自信を持って世界第二の経済大国になったと世界に向かって公表することができました。その当時は、今は出鱈目でも、あと数年もすれば真実になると心底思っていたことでしょう。

人間も国も健康が一番。中国は、社会構造改革でまともになる必要がある!

このようなことから、米中通貨戦争に米国が勝利したのは、米国によるものではなく、日本のほうがはるかに大きな役割を果たしたということがいえます。

そうして、この結果に導いた日銀元白川総裁は、このようなことは全く意識していませんでした。おそらく、彼の頭では、中国に良かれと思ってしたことなのでしょうが、あまりに長い間続ければ、それが当たり前となり、これがまるで麻薬漬けのような効果を奏し、中国をおごり高ぶらせ、その当たり前の結果がバブル崩壊です。皮肉なものです。

そうして、アメリカ側のQEも、何も中国との通貨戦争勝利のために行ったものではありません。あくまで、国内の景気問題や、雇用問題に対処する目的で行ったものです。QEの継続は、中国などとは全く関係なく、自国の雇用情勢がある水準以上になるまで継続するというものです。

そもそも、通貨戦争など本来あまり成り立ちにくいものです。ある国がどこまでも金融緩和を続ければ、確かに当面の通貨戦争には勝つかもしれませんが、そのまま続けていれば、国内がインフレになってしまいます。それでも続けていれば、ハイパーインフレになってしまいます。そうなれば、金融緩和策はやめざるを得なくなります。こういうことから、通貨戦争をやり続けることは現実には無理です。

かつての日銀による、中国支援策、アメリカによる国内経済対策によるQEが期せずして、中国をインフレ・バブルの醸成からその崩壊へと、じりじり追い込んでいるのです。アメリカのQEのとりやめ、もしくは、日本のデフレからの脱却のいずれかが、中国のバブル大崩壊の最後の駄目押しとなることでしょう。これは、どちらが早くても・遅くてもこれから中国で確実に起こることです。

中国がまともになるためには、海外からの大量の資金をあてにするだけではなく、かつての日本が数十年で、西欧が数百年かけて実施したような社会構造改革が必須です。具体的には、まずは民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠です。

女性の体も出ているところは出ている引っ込んでいるとこ引っ込んでいなければ美しくはない。国も同じである。
最低限民主化、経済と政治の分離、法治国家化等がある程度実践されていなければ美しい国とはなり得ない。

これを実施し、中間層を育ててこれからの人々が富裕層から比較すると規模は小さいものの、数の多いこれらの層が、経済・社会活動を行うことによって、国を栄えさせるという体制を構築することが必須です。今のままでは、どうにもなりません。どんどん衰えていくだけです。

そもそも、比較的安定した米ドルがあるこの世界で、中国の元が世界の基軸通貨になるなど考えられません。元を取引に用いる国とは、その国の貨幣がよほど信用力のないところしかありません。元基軸通貨構想も、いくつもある中国の妄想の典型的な一つでもあります。妄想は現実ではありません。中国政府はこの事実にはやく気づいていただきたいものです。いつまでも気づかなければ、いずれ必ず中国は分裂します。それは過去の離合、分散の中国の歴史が雄弁に物語っています。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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