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2020年5月27日水曜日

2カ月半遅れの中国全人代 経済ガタガタ、外交は…トランプ氏「中国は無能」 コロナ第2波なら共産党のメンツ丸つぶれ? ―【私の論評】日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然(゚д゚)!

2カ月半遅れの中国全人代 経済ガタガタ、外交は…トランプ氏「中国は無能」 コロナ第2波なら共産党のメンツ丸つぶれ? 

高橋洋一 日本の解き方

中国全人代の開幕式にマスクを着けずに臨む習近平国家主席(下)=22日、北京の人民大会堂

中国の全国人民代表大会(全人代)は22日、新型コロナウイルスの感染拡大により、2カ月半遅れで北京で始まった。

 中国経済はガタガタだ。1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6・8%減と発表された。それだけに、全人代は低迷からの脱却をアピールする絶好のチャンスといえる。

 これまで全人代ではその年の経済成長目標を数字で掲げてきた。今回は数字を提示できるかどうかがポイントだったが、明記できなかった。中国の統計数字は信用できないが、全人代の数字は中国政府の目標なので、政治的な意味は十分にある。

 中国経済は厳しい。1~3月期の数字は公表され、4月から経済活動は戻りつつあるとしている。中国経済は外需依存が高いにもかかわらず、世界経済は相変わらず低迷したままだ。しかも、対外部門の統計はごまかしにくい。ここで目標数字を公表すると、かえってやぶ蛇になりかねなかった。

 国内経済対策では、新型コロナウイルス対策のための特別国債1兆人民元(約15兆円)発行など、20年の財政赤字率を前年より0・8ポイント高い3・6%以上に設定した。これは、典型的なマクロ経済対策である。

 対外関係では、特に米国との対立が激化する中で、経済で強調する材料がない。ただし、国防予算は前年比6・6%増で、コロナ騒動の中でも過去最高額だ。また、国内引き締めの意味を込め、香港の反政府活動を摘発するための治安法制「国家安全法」が審議される予定だ。

 ただ、香港をめぐっては、昨年11月に米国で「香港人権・民主主義法」が成立した経緯もあり、予断を許さない。その後、新型コロナウイルスを巡り米中対立は激化した。

 トランプ米大統領は20日、「この『世界規模の大量殺人』をもたらしたのはほかでもない、『中国の無能さ』だ」とツイートした。

 今や、米中は貿易戦争どころか「準戦争」状態のようだ。新型コロナウイルスについて、初期段階で情報を隠蔽した中国に対し、米国を含む世界で損害賠償請求が続出しているくらいなので、トランプ大統領も少なくとも11月の大統領選までは強気の姿勢を崩せない。

 そうした中で、一国二制度を完全に骨抜きにする「国家安全法」が全人代で取り上げられることは、米中対立の火に油を注ぐことになるだろう。

 それにしても、2カ月半遅れたとはいえ、中国は全人代の開催を急ぎすぎている感が否めない。会期を例年の半分の1週間に短縮し、全人代代表や報道陣のPCR検査など感染対策は万全だと強調しているが、中国全土から3000人近い代表が北京に集まる。それらのスタッフを含めれば、数万人が地方から北京に来るわけで、それが感染第2波の引き金となればシャレにならず、中国共産党のメンツ丸つぶれだ。

 それでも開催したということは、コロナ封じ込めに自信があるのか、それとも、仮にそのような事態が起きても報道されないということなのだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然(゚д゚)!

中国の隠蔽体質からいって、中国全土から3000人近い代表が北京の全人代に集まり、それらのスタッフを含めれば、数万人が地方から北京に来るわけで、それが感染第2波の引き金となるでしょうが、中国はこれを隠蔽することでしょう。油断すると、第二派、第三派の感染拡大が中国を起点として世界中に広がるかもしれません。

そもそも、中国では、中国ウイルスもしくは、武漢ウイルス感染者数や死者の統計を何度も変更しています、最終的にはコロナに感染したとしても、症状が出ない場合は、感染者に含めないということまでしています。

これから、中国では武漢ウイルスの感染者も死者も出ないでしょう。ただし、現実には出るでしょうから、それらは強制隔離して、隔離された人たちが死亡しても、武漢ウイルス以外で亡くなったと、して虚偽の死亡診断書が作成されることでしょう。

中国の保健当局、国家衛生健康委員会は23日、新型コロナウイルスの感染者について、「きのうは新たな感染者は確認されなかった」と発表しました。


中国の保健当局が中国本土で新たな感染者が確認されなかったと発表したのは、中国政府が対策を本格化させた、ことし1月20日以降、初めてです。

一方で、保健当局は感染しながらも症状がないことを理由に、統計に加えていない「無症状」の感染者について、22日に新たに28人確認されたと発表しています。

実際中国の習近平指導部は28日閉幕の全国人民代表大会(全人代=国会)で、新型コロナウイルス感染症対策の評価を巡り共産党や軍の内部で意見の不一致が生じないよう思想統一を図ったようです。これは、はやい話が、今後武漢ウイルスの感染者が出たとしても、出なかったことにして隠蔽することを暗に徹底したものとみられます。

出席者は競うように習国家主席に忠誠を誓い、1週間にわたる会議は事実上、感染症対応への批判を封じ込めるための場となりました。

「全軍が思想と行動を共産党中央の政策決定と一致させなければならない」。習氏は26日、全人代の軍関連の会議に出席。新型コロナ対策で党の指導に従うよう命じました。新華社電が伝えました。

22日開幕の全人代は新型コロナが最大の議題で、習氏の指導力を礼賛する声が相次いだとされています。

国内では、このような徹底もできるでしょうか、国外はそうはいきません。トランプ大統領をはじめ、中国への批判はすさまじく、とどまるところを知りません。

そんな中で、中国外務省が異常な反発をしてきました。安倍晋三首相が25日の記者会見で、「新型コロナウイルスが中国から世界に広がった」と語ったところ、激しく噛みついてきたのです。

中国は、世界全体で34万人以上の死者を出している「死のウイルス」について、発生国として、初動対応の失敗が指摘されていることなどに、問題意識を感じていないのでしょうか。これでは、日本国民は、習近平国家主席の「国賓」来日を歓迎できません。

「ウイルス起源の問題を政治化し、(中国に)汚名を着せることに断固として反対する!」

中国外務省の趙立堅報道官は26日の記者会見で、安倍首相の発言にこう反発しました。ウイルスの起源については「厳粛な科学の問題だ」と言い放ちました。

趙氏といえば今年3月、自身のツイッターで「米軍が武漢に感染症を持ち込んだのかもしれない」と投稿し、ドナルド・トランプ米政権の猛反発を受けた、いわくつきの人物です。ただ、中国外務省高官の正式発信だけに放置できるものではありません。

そもそも、安倍首相は中国に汚名を着せていません。

25日の記者会見で安倍首相は、対中姿勢も明確にした

米ウォールストリート・ジャーナルの記者に、「今、米国と中国がウイルスなどをめぐり激しく対立している。日本はどっち側につくでしょうか?」と突然聞かれ、冒頭の前置きをしたうえで、次のように続けました。

「日本の外交・安全保障の基本的立場としては、米国は日本にとって唯一の同盟国である。基本的価値を共有している。日本は米国と協力しながら、さまざまな国際的な課題に取り組んでいきたい」

「中国も、世界において経済的にも重要な国であり、プレーヤーだ。国際社会は『日本と中国がそれぞれ、地域や世界の平和や安定、繁栄に責任ある対応を取っていくこと』が期待されている」

外交的に極めてバランスのいい発言といえます。

新型コロナウイルスの世界的大流行をめぐっては、米国や英国、ドイツ、フランス、オーストラリアなどで、中国政府の責任を追及し、損害賠償を求める動きが高まっています。

日本は現時点で、こうした動きと一線を画していますが、中国外務省の異常な反発は看過できるものではありません。

この方にはお越しいただかなくてもよろしいのでは・・・・・

中国が、世界保健機関(WHO)をスポークスマンのように手なずけ、当初からウイルスについて正しい発信をせず、世界全体に被害を広めたことは事実です。米国では与野党を超えて『中国発』との認識を持っています。

安倍首相が記者会見で、同様の認識を発信したことは日米連携のためにも重要です。日本の経済界には『習主席の機嫌を損ないたくない』という思惑があるようです。

国会議員からも中国を強く批判する声はあまり聞こえてきません。しかし、人権問題や尖閣諸島での身勝手な行動を考えれば、国民がもっと強い姿勢を示さなければならないです。習主席の『国賓』来日を歓迎すべきではないのです。

ここで、日本としては、習近平の意向で国内では、どうにもでもなることから、海外でもそれが通用すると思わせてはならないのです。

中国は、元々対外関係など重視せず、自国の内部の都合だけで動く習性がありました。かつての世界は、中国市場の大きさに目を奪われ、中国が経済的に発展して豊かになれば、いずれ先進国等と同じ様になり、まともになるだろうと、それを許容してきました。

しかし、それが中国を勘違いさせてきたようです。中国は比較的豊かになっても、先進国のようになることはありませんでした。それどころか、最近の中国は世界秩序を中国にとって都合の良いように作り変えることを公言しました。これは、このブログでも何度か述べたことです。

今の中国にそのようなことをされれば、世界は闇に覆われることになります。だからこそ、日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然なのです。今後、中国が世界で自分勝手、わがまま勝手をすれば、世界中から厳しい仕打ちを受けることを身をもって体験させるべきなのです。



2019年1月11日金曜日

三人っ子政策を導入? 急速に高齢化する中国の大問題―【私の論評】先進国では人口減は経済の衰退に直接つながらないが、中国にその理屈は通用しない(゚д゚)!

三人っ子政策を導入? 急速に高齢化する中国の大問題

今年は「金豚年」、金運・出生率・景気拡大と願懸けに喧しい

金豚年にあやかって全身ゴールドのピカピカ豚の貯金箱。金運、子宝に恵まれるという
 「『金豚』の年は、経済だけでなく、金運もアップする!」

 春節が迫る中、中国やアジア圏の友人は、新年が待ち遠しくて仕方がないという。

 日本では新年は新暦(太陽暦)のため1月1日だが、中国をはじめ香港、韓国、台湾、シンガポール、べトナム、マレーシア、インドネシア、カンボジア、ネパールなど多くのアジア諸国(華人系)は、旧暦(太陰暦)のため、今年の新年(春節)は2月5日。

 特に中国では、1年で最も重要な行事の一つで、故郷を目指す帰省ラッシュは「春運」と呼ばれ、春節期間にのべ数十億人が大移動。全国で交通機関が麻痺することで知られる。

 中国では、1週間ほどの正月休みとなるが、イスラム圏のマレーシアやインドネシアでも華人系の正月として、2月5日は祝日だ。

 しかも、今年の干支は「豚」。日本の干支は「イノシシ」だが、西遊記の「猪八戒」を思い出してもらえればお分かりのように、中国語では「猪」とは「豚」のこと。ちなみにイノシシは、中国語で「野猪」という。

 なぜ日本だけイノシシになったか。定説はないが、「家畜のブタを飼う習慣がなかった日本は、野生のイノシシを捕獲し、タンパク源にしていたから」というのが有力な説のようだ。

 さておき、この「豚」。イスラム圏では不浄とされ、豚をあしらった縁起物を控える業者も一部あるが、中華圏では十二支の中でも豚は「金豚」「黄金豚」といわれ、「豚が夢に現れると大吉」とされるほど、経済上昇や金運アップの象徴と知られる。

 さらに、「黄金豚年生まれ」は、「大金持ちになる」とも伝えられ、師走真っ只中の中国やアジア圏では、黄金豚の置物や貯金箱が大人気で、売り切れ御免の店舗も続出しているようだ。

筆者も縁起を担ごうと、初めて「金豚」をゲットした。

 中国人などアジア圏の華人が信じてやまない風水では、今年の豚年のラッキーカラーはまさに、「金」「赤」「白」という。

 街中やスーパーなどには、例年にも増して金や赤色が眩いばかりに輝き、ギラギラの春節商戦を煽っている。

 豚は、子沢山でも知られ、「豚年の出生率は上がる」というジンクスもある。

子豚を授かる金色の親豚の縁起物。金豚年で一番人気だ

 赤ちゃん用品の関連企業株も上昇するとされ、まさに「金豚株」は注目株だ。

 特に中国では、米中貿易戦争勃発で今年の経済動向に暗雲が立ちはだかる。建国以来、70年ぶりの人口減が明らかになる中、国家の存続をかけ、「金豚年」に望みをかけている。

 春節を前に中国郵政が発行したその記念切手には、2匹の親豚と愛らしい「3匹の子豚」が描かれた。

 このことから、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)などソーシャルメディアでは、将来的な労働人口減少による経済低迷、国力の後退を危惧し、「政府が二人っ子政策や産児制限を完全に撤廃し、『三人っ子政策』を新たに導入するのでは」と話題になっている。

 中国政府は2016年、40年近く続いた一人っ子政策を廃止し、夫婦に2人目の子供を容認した「二人っ子政策」を導入した。その際にも、事前に発表された申年の切手に、小猿2匹を描いていた。

 今回、3匹の子豚が描かれたことから、三人っ子政策が導入されるのではないかとみたわけだ。

 しかし、一人っ子政策の廃止による効果は政府の期待を裏切っている。

 2016年の中国の出生数は、前年比で130万人多い1790万人だったが、増加数は予想の半分以下にとどまった。2017年は2000万人を見込んだが、1700万人に減少してしまった。


 さらに、今年に入って米国のウィスコンシン大学の易富賢氏ら人口統計専門家が、「2018年の全土の出生数は前年比で79万人増加するとの政府予測を裏切り、250万人減少した」と香港メディアなどで発表。


 今月中に予想されている中国国家統計局の2018年の人口統計公式発表を前に、中国の昨年人口が、建国以来初めて70年ぶりに減少したことを明らかにしたのだ。

 その上で「少子高齢化の波は加速化し、中国経済の活力は弱体化し、人口動態上の危機でもある」と警鐘を鳴らした。

春節を象徴する深紅の提灯は、時代が変っても、正月に欠かせない飾り物だ

 また、中国の出生率は「2000年以降、日本より低い状態が続いている。中でも2010年から2016年の平均は『1.18』で日本の1.42をはるかに下回った」とも指摘した。

 そんな中、中国が「金豚年」にあやかり、二人っ子政策を廃止しても、その効果は望まれないのが現実ではないだろうか。

 中国だけではなく、韓国、シンガポール、タイ、台湾、最近では多産のイスラム圏のマレーシアでも少子高齢化の潮流が懸念されている。

 このように、中国でも高等教育を受けた大都市圏の女性は、仕事を最優先するだけでなく、若い夫婦にとって高騰する教育費や住宅費用が大きく家計を圧迫していることから多産に向かうのは難しいとみられる。

 さらに、心理的な作用として、「一人っ子が理想」だとする長年の概念を取り払うだけの大家族や子育てによるメリットより、デメリットが危惧されている現状がある。

 筆者の友人で、北京に住む共働き夫婦も、日頃、こうつぶやく。

 「住宅費の高騰だけでなく、保育施設不足に加え、将来的に高齢化する『4人の親』の面倒を見る資金に備え、2人の子供より、1人に経済的、精神的支えを集中したい」

 さらに、長年の「一人っ子男子優遇政策」が中国の男女比を狂わせた。

 男の子を持ちたいという伝統的な考え方から、作為的な中絶や流産で、出産可能な女性の絶対数が極端に少ないのだ。

下着から寝具にいたるまで、春節では「赤」に統一することで、その年の繁栄がもたらされるという
下着チェーン「古今」のディスプレイ

 そのため、最近では中国人男性とベトナム人女性の強制的な結婚が国際問題に発展しているほどだ。

 こうした状況に、出生率が最も低い遼寧省では昨夏、減税、教育費、さらには住宅費の補助や出産・育児休暇の延長など、助成策を打ち出した。

 また、江西省は、人工中絶規制を強化する指針を発表。女性が人工中絶を希望する場合、医療従事者3人の同意署名を義務づけた。

 男児の出産優遇阻止の策というが、「国家の人口計画達成が目的だ」「女性は、自分の卵巣の選択肢もないのか」などと、ウェイボーなどで批判が殺到、炎上した。

 そんな中、今年1月4日、中国の中国社会科学院は「中国の人口は、2029年の14億4000万人をピークに減少に転じ、労働力減少は中国経済に重大な影響を与える」と政府に異例に、国家の制度改革を求めた。

 こうした経済後退や国力低下の危機感から、国に頼らず独自に少子化対策を実施する企業も現れた。

 世界有数の中国のオンライン旅行企業、「シートリップ」はこのほど、社員の子供が学齢期を迎えた際、ボーナスを支給するほか、中国企業初の取組みとして、女性管理職の「卵子凍結」費用補助を決めたことを発表した。

 前述の在米の人口統計専門家、易氏は、「一人っ子政策が、中国の深刻化する少子高齢化の主要因」と指摘した上、「中国の人口減少傾向は、日本が20年前に直面した問題と類似し、中国の製造業界も将来的に、深刻な労働力不足に喘ぐだろう」と警告する。

 しかし、筆者は以前にも指摘したが(「悲惨極まりない中国人の老後 失踪死亡が多発」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51859)、特に中国と日本社会の高齢化の実態には大きな違いがある。

 中国では、「未富先老」。すなわち、「国民が裕福になる前に、高齢化が先に訪れる」。そのため先進国になって高齢化に突入した日本とはわけが違う。しかも、その規模が比較にならない。

 中国では2050年、日本の人口に相当する約1億2200万人が、「80歳以上の後期高齢者」で占められる。実に中国の人口の約9%にもなる。

 また、中国民生部傘下の研究機関、中民社会救助研究院によると、「中国では毎日1300人以上、年間で50万人が失踪する」と悲惨な実態が明らかになっている。

 行方不明の8割が65歳以上の高齢者という。

 今後、経済成長率が低下し、社会保障制度への不満や懸念が高まったときこそ、一党独裁の共産党体制の存続が危ぶまれるだろう。

(取材・文・撮影 末永 恵)

【私の論評】先進国では人口減は経済の衰退に直接つながらないが、中国にその理屈は通用しない(゚д゚)!

冒頭の記事では、人口の減少は経済の衰退につながると無意識に決めつけているようです。これは、日本でも「デフレ人口減少説」などという愚かなことがいわれていたこともあり、多くの人が無意識に正しいと信じているのではないでしょうか。

しかし、これは、真実ではありません。特に、日本においてはそうです。

人口減少と高齢化は、たしかに日本の経済・社会に深刻な問題を生み出しています。しかしその一方で、人口が減り働き手の数が減っていくのだから、日本経済のこれからの成長率はよくてゼロ、自然に考えればマイナス成長だろう、というような考えが広く共有されているようです。

しかし、こうした考えは誤りです。日本の1870(明治3)年から20世紀の終わりまで125年間の人口と実質GDP(国内総生産)の推移を比較した図を以下に掲げます。これをご覧になれば、マクロ経済の成長が決して人口によって決まるものではないということが、ご理解いただけるものと思います。

日本の人口と経済成長(1870年〜1994年)

この間、GDPと人口はほとんど関係ないほどに乖離しています。戦後の日本経済にとって最大のエピソードといってもよい高度成長期(1955~1970)には、経済は年々10%成長したのですが、人口の伸びは約1%程度でした。1%という数字は、全人口、生産年齢人口、労働力人口、どれをとっても大差はありません。毎年10%-1%=9%ずつ「1人当たりの所得」が上昇していたのです。

このグラフは20世紀末で終わっていますが、この図に描かれている125年間は人口が増えている時代でした。人口が減り始めたら、どうなるか分からない、と思った人もいるかもしれません。

これはもっともな疑問だと思います。人口減少はたしかにそれ自体としては経済成長にとってマイナス要因です。しかし、先進国の経済成長は人口要因よりも「1人当たりの所得」の上昇によってもたらされる部分のほうが大きい、という結論は、人口減少の時代にも人口増加の時代と同じように成立します。

百聞は一見に如かずといいます。人口が減り始めた現在の日本経済の実績を見ることにししましょう。厚生労働省社会保障審議会・年金財政における経済前提に関する専門委員会(2017年10月6日)の資料にある過去20年間(1996-2015)の「成長会計」の結果は以下の通りです。



「成長会計」とは、実質GDPの成長率を資本投入・労働投入と、それでは説明できない残差としての「全要素生産性」(Total Factor Productivity、頭文字をとりTFP、通常イノベーションないし技術進歩を表すものと解釈されています)、3つの要素それぞれの貢献に分解する手法です。

さて、結果をみると、1996年から2015年まで、この間には1997~1998年の金融危機、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災などさまざまな出来事がありました。にもかかわらず、20年間の平均成長率は0.8%、そのうち資本投入の貢献分が0.2%、労働投入はマイナス0.3%であり、TFPの貢献が0.9%となっています。

注目されるのは、労働投入の貢献分マイナス0.3%です。この期間、人口は減り始め、それに先立ち労働力人口は減少してきましたから、労働の貢献は0.3%のマイナスになっています。

しかし、TFP(イノベーション)の貢献0.9%により日本経済は年々0.8%ずつ成長しました。人口が減っているから1人当たりに直せば、1%を超えます。人口減少それ自体はマイナス要因だが、先進国の経済成長にとっていちばん重要なのは、やはりイノベーションなのです。

ちなみに、1997年から日本は、マクロ経済政策のまずさからデフレに見舞われ、失われた20年という全く成長しない時代を迎えています。こうした期間があったにもかかわらず、日本経済はこの期間も含め1996年〜2015年まで、年平均で0.8%ずつ伸びてきたのです。

もし、この失われた20年がなければ、日本経済はもっと成長していたはずなのです。やはり、日本のような先進国では、人口がどうのこうのというより、TFP(イノベーション)が経済の発展に大きく寄与しているのです。

では、中国はどうなのかということになると思います。私自身は、中国が日本をはじめとする先進国のようにある完璧とはいえないまでも、ある程度まともな社会構造を持っていれば、日本と同じことがいえると思います。

しかし、中国はそうではありません。先進国と中国の社会構造の大きな差異は、民主化、経済と政治の分離、法治国家化です。これに関しては、先進国では完璧とか十分とはいえないまでも、中国よりははるかに進んでいます。

しかし、中国ではこれが、絶望的に遅れています。これらが整備されていない、遅れた社会ではどのようなことがおこるかといえば、先進国でみられたように、多数の中間層を輩出し、それらが自由な社会経済活動を実施して、多くの富を築くということが阻害されてしまうのです。

過去の中国は、社会構造の遅れから多数の中間層を輩出できませんでしたが、諸外国から様々な方法で莫大な資金を集め、国内の巨額のインフラに投資を実施し、成長してきました。

そのせいか、中国では先進国のように多数の中間層は生まれませんでしたが、少数の飛び抜けた富裕層が生まれました。そうして、遅れた社会構造は今でもそのまま温存されています。

中国が古い社会構造をある程度改革し、多数の中間層を輩出し、それらが自由に社会経済ができるように保証すれば、これからも中国経済は伸びていく可能性がありますし、人口減少になっても経済を伸ばし続けることも可能になるかもしれません。

しかし、今のままでは、それは不可能です。先進国でも、人口減少は様々な社会問題を生んでいますし、これからも生み続けるでしょう。しかしイノベーションによってこれを変えて新たな社会を作り出すこともできます。かつて、多数の中間層を輩出したように、何らかの手段でまた社会構造を転換することもできるでしょう。

しかし、現在の中国共産党は、社会構造は古いままで、国内のインフラ整備は一巡してめぼしいプロジェクがなくなったため、今度は一帯一路で外国に多額の資金して富を創造しようとしています。

さらに、国内では、古い社会はそのままにして、AIなどに多額の投資をして、政府が掛け声を掛け、「中国製造2025」や「高速通信5G」などを推進して、富を創造しようとしています。

本当は、社会の構造転換が重要なのに、それはなおざりにして、多額の資金を投下し、政府が掛け声をかけるという方式は最早通用しません。もうすでに制度疲労を起こしています。

こうしたことから、先進国では人口減少それ自体はマイナス要因ですが、先進国の経済成長にとっていちばん重要なのはイノベーションであるという構造は成り立たないのではないかと思います。

今のままであれば、中国は衰退していくばかりです。そうして、昨年から始まった米国による対中国冷戦Ⅱは、中国の衰退を加速させることになります。

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2018年7月6日金曜日

中国がこれまでの国際秩序を塗り替えると表明―【私の論評】中華思想に突き動かされる中国に先進国は振り回されるべきではない(゚д゚)!

中国がこれまでの国際秩序を塗り替えると表明
いよいよ米国と真正面から激突へ



ドナルド・トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席

 中国の習近平国家主席が、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩序を構築していくことを宣言した。この宣言は、米国のトランプ政権の「中国の野望阻止」の政策と正面衝突することになる。米中両国の理念の対立がついにグローバルな規模にまで高まり、明確な衝突の形をとってきたといえる。

 習近平氏のこの宣言は、中国共産党機関紙の人民日報(6月24日付)で報道された。同報道によると、習近平氏は6月22日、23日の両日、北京で開かれた外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」で演説して、この構想を発表したという。

 この会議の目的は、中国の新たな対外戦略や外交政策の目標を打ち出すことにあり、これまで2006年と2014年の2回しか開かれていない。

 今回の会議には、中国共産党政治局常務委員7人の全員のほか、王岐山国家副主席や人民解放軍、党中央宣伝部、商務省の最高幹部らも出席した。出席者には中国の米国駐在大使も含まれており、超大国の米国を強く意識した会議であることをうかがわせる。

これまでよりも指導的な立場に立つと表明

 習主席はこの会議で「中国は今後グローバルな統治の刷新を主導する」と宣言し、「国際的な影響力をさらに増していく」とも明言した。中国独自の価値観やシステムに基づいて新たな国際秩序を築くと宣言している点が、これまでの発言よりもさらに積極的だった。

 習氏の演説の骨子は、以下のとおりである。

・中国はグローバルな統治を刷新するための道を指導していかねばならない。同時に、中国は全世界における影響力を増大する。

・中国は自国の主権、安全保障、発展利益を守り、現在よりもグローバルなパートナーシップ関係の良い輪を作っていく。

・中国は多くの開発途上国を同盟勢力とみなし、新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を作り上げてきた。新たな国際秩序の構築のために、中国主導の巨大な経済圏構想「一帯一路」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」をさらに発展させる。

・中国主導の新しいスタイルの国際関係は、誰にとっても「ウィン・ウィン」であり、互恵でなければならない。

 習近平主席のこの新たな対外政策演説は、今後、中国がこれまでよりも指導的な立場に立って、新しい国際秩序を築いていくことの方針表明だといえる。具体的には「社会主義」という言葉を明確に打ち出しており、米国が主導して構築してきた現在の国際秩序とは異なる「グローバルな統治」を目指すことが明言されている。

 だが、中国が構築しようとしている新たな国際秩序には、従来の米国主導の国際秩序にみられるような人権、自由、法の統治という普遍的な価値は明記されていない。中国は「社会主義」という標語の導入で、独自の国際秩序システムを推進しようとしているのだ。

米国の指摘に「その通り」と応じた中国

 米国のトランプ政権の中国認識を改めて確認すると、明白な対決の構図が浮かび上がる。トランプ大統領自身が2017年12月18日に発表した「国家安全保障戦略」での中国に関する記述には、以下の内容があった。この国家安保戦略は、中国を米国主導の国際秩序への最大の挑戦者として特徴づけていた。

・中国はインド・太平洋地域で米国に取って代わることを意図して、自国の国家主導型経済モデルを国際的に拡大し、地域全体の秩序を中国の好む形に変革しようとしている。中国は自国の野望は他の諸国にも利益をもたらすと宣伝しているが、現実には、その動きはインド・太平洋地域の多くの国の主権を圧迫し、中国の覇権を広めることになる。

・ここ数十年にわたり、米国の対中政策は、中国が既成の国際秩序に参加することを支援すれば、中国を自由化できるという考え方に基礎をおいてきた。だが、この米国の期待とは正反対に、中国は他の諸国の主権を侵害する方法で自国のパワーを拡大してきた。中国は、標的とする他の諸国の情報をかつてない規模で取得し、悪用し、自国内の汚職や国民監視をも含む独裁支配システムの要素を国際的に拡散してきた。

・中国は米国に次ぐ強力で大規模な軍隊を築いている。その核戦力は拡張し、多様化している。中国の軍事近代化と経済拡張は、大きな部分が米国の軍事や経済からの収奪の結果である。中国の急速な軍事増強の主要な目的の1つは、米国のアジア地域へのアクセスを制限し、自国が行動の自由を獲得することである。

・中国は他の諸国を中国の政治や安保の政策に従わせるために、経済面での報酬や懲罰を使いわけ、秘密の影響力行使工作や軍事力の威嚇も行っている。インフラ投資や貿易戦略は地政学的な野望の手段となっている。南シナ海での拠点の建造とその軍事化は、他国の貿易のための自由航行に危険を及ぼし、主権を脅かし、地域の安定を侵害する。

 米国政府は中国に対してここまでの警戒や懸念を表明してきたのである。これまで習近平政権はその米国の態度に対して、正面から答えることがなかったが、今回の対外戦略の総括は、その初めての回答とも呼べそうだ。つまり、米国による「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」という指摘に対し、まさにその通りだと応じたのである。米国と中国はますます対立を険しくしてきた。

【私の論評】中華思想に突き動かされる中国に先進国は振り回されるべきではない(゚д゚)!

上の記事を簡単にまとめると、中国は、米国の作った戦後秩序に対する挑戦をすると指摘しています。大筋で正しい見方であると思います。

安全保障関係については、中国の軍備増強、海洋進出に対抗し、抑止力等を強めることが重要で、習近平の演説などを特に気にすることはありません。

アジア・インフラ投資銀行については、中国は、IMF、世銀、アジア開発銀行の活動と競合しようとしていて、IMFの融資条件を無意味にしています。

アジア・インフラ投資銀行は、中国主導で、他の加盟国の投票権は決定的ではなくなるでしょうから、出資のみして、影響力を行使できません。だからこそ、日米は加入しません。本来、他の先進国も加入すべきでないです。

中国は、世界を階層的に捉え、そのトップにいたいと考えていることは上の習近平の演説に垣間見えますが、これは米国主導秩序の改革などよりはるかに大きな話です。

中国共産党、習近平が何をしようとしているのかは、よくわかりません。中国は、かつてのソ連のように共産主義を広めようとしているわけでもありませんし、民族主義で中国を豊かにかつ強くするという単純な目標を追求しているように思われます。ただ、中国は多民族国家で、漢民族主義だけでは諸問題が出てくるでしょう。

中華思想の概念図

中国が世界を支配するという中華思想は古代から存在していました。現代中国も、『民族の偉大なる復興』というスローガンを掲げて、現代中国の政治と外交はいまだ『中華思想』によって突き動かされているようです。

その証左として、習近平国家主席は2013年の就任以来真っ先に周辺国外交を重要視し、その理念として習主席自身の考えとして「親・誠・恵・容」の四文字を掲げています。

ここで「親」とは、周辺諸国に親しみ親切にしてあげるということ。「誠」とは周辺諸国に対して誠意を持って接するということです。

「恵」とは主に経済分野の話であり、周辺諸国に経済的な「恵」を与えることによってその発展と繁栄に貢献するということです。最後の「容」は、周辺諸国に対して寛容な態度で臨み、各国の立場を「包容」するということです。

しかしこれらは、時代錯誤の、上から目線の外交的マスターベーションに過ぎません。そしてその外交理念は中国の伝統思想としての『中華思想」から来ていると考えられます。

上から目線の習近平

先の「中華思想の概念図」からもわかるように、中華思想では、世界の中心に文化的・道徳的優位性において世界の頂点に立つのが中華があり、これは「天子」と呼ばれる中国高弟の支配下の世界のことです。

そして中華の周囲にはいわゆる「東夷・西戎・南蛮・北狄」と呼ばれる未開の民が生息していて、彼らは中華文化からの影響を十分に受けていないがゆえにいまだに文明化されていない「化外の民」とされています。

そこで中華皇帝はまず「徳」をもって彼らに接し、中華の道徳倫理と礼儀規範を持って彼らを感化させ、やがて彼らが文明開化して中華世界の一員となっていくのです。

その際に徳を持って化外の民を感化し彼らを中華世界へと導くことは中華高弟の偉さの照明であり、感化される化外の民が多いほど中華皇帝は「真の天命」を受けた偉大なる皇帝として評価されることになります。

ところがこの中華秩序におけるその「支配」とは実は形式上のものでよく、諸国は中華王朝とその皇帝に対して「臣下」としての礼儀さえきちんと守っていれば良いという程度のものでした。

だから「臣下の礼」の最たるものとして諸国に求められたのは皇帝に対して定期的に貢物をもってご機嫌伺いに来ることで、いわゆるこれを「冊封体制」といいます。



そしてその形式さえとってくれれば皇帝は持ってきた貢物の何倍もの価値のあるものを与えるのであって、つまりは経済的合理性ではなく形式を整えることが大事だったのです。

その数が多ければ多いほど、皇帝の徳が証明され本物の天子として認められ、その権威が不動のものになるということで、そしてそれに逆らう国があれば、当然ほうっておくわけには行かず頑迷で野蛮な国は征伐をしなくてはなりません。
 
しかし力関係が逆転しているような国があれば、実際には無視したり逆に経済的に援助をして懐柔するといった行動をとるときもあります。つまりこのような「中華秩序」というのは、実態と虚構がないまぜになった、本音と建前が混合している奇妙な国際関係とも言えるのです。

中国の歴代王朝にはそうやって国力がまだ満ちてもいないのに周辺国を征伐に向かい国力を落として内乱で滅びたものがいくつもありました。結果として王朝を滅ぼしても守らなくてはならないしそうしなければ認められないのが中華秩序であり、今日の中国でもこの覇権主義的思想は忠実に受け継がれていると見るべきです。

アメリカはオバマ政権までは、中国の野望を聞き流してきましたが、そのためアジアの軍事バランスは大きく中国に傾いてきました。いわばアジアに局地的な冷戦秩序ができつつあるともいえます。

だから戦争のリスクがすぐ切迫しているとはいえないですが、北朝鮮の崩壊などでバランスが大きく崩れたときは危険です。日本の安全保障で重要なのは、このような軍事バランスを維持することです。

無論そのために、安倍総理は「安全保障のダイヤモンド」という構想を立案し、それに向けて外交努力を続けてきました。

今や中国は、「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」と臆面もなく主張し、これに応えるように、米国は中国に対して貿易戦争を仕掛け、それに対して中国も応酬しようとしています。

日本をはじめとした先進国は、様々な利害の衝突もありますが、それにしても中国による世界秩序に対して譲れない部分があるはずです。特に、民主化、経済と政治の分離、法治国家化という概念は、絶対に譲れないところでもあります。

そうして、この部分が何が何でも譲るべきではありません。中国が、チベット、ウイグル、内蒙古、満州などの本来の外国の領土であるところを除く自国の本土のみで、中国の価値観を実現するのはある程度許容できるところもあるかもしれません。

しかし、現在は19世紀ではなく、すでに21世紀です。現在に至るまで、古代の妄想を引き継いでいるのは、不合理だし、異様でもあります。

そうして一帯一路やAIIBにより、他国にまで中華思想を押し付けるようなことが絶対あってはなりません。さらに、中国人民も中国の体制に虐げられることは本来防がなければならないはずです。

やはり、先進国は、米国と協調して、中国の現体制を崩壊に向かわせるべく努力すべきです。特に、妄想ともいえる、中華思想は必ず打ち砕かなければなりません。

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2018年4月30日月曜日

「ガラパゴス」ぶり突出、野党が驚愕の17連休“世界の恥” 政治学・岩井教授「先進国で審議を放棄するケースまずない」―【私の論評】官僚は統治に走り、野党政治家は実行ばかりに注目する国日本の不幸(゚д゚)!

「ガラパゴス」ぶり突出、野党が驚愕の17連休“世界の恥” 政治学・岩井教授「先進国で審議を放棄するケースまずない」

野党6党は、国会審議を欠席しながら、「官僚イジメ」といわれる合同ヒアリングには熱心だ 

 野党6党の「ガラパゴス」ぶりが突出している。大型連休前の27日も衆院本会議などを欠席する「職場放棄」を強行し、驚愕の「17連休」を決定的にしたのだ。同日、南北首脳会談が行われ、朝鮮半島情勢が激動するなか、国会審議を拒否し続けるつもりなのか。欧米の先進国ではあり得ない怠慢行為に対し、識者からは「異常だ」「恥ずかしい」などと批判が噴出している。

 政府・与党は27日の衆院本会議で、今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革法案」の審議を始めた。議場に野党6党の姿はなく、その後の衆院厚労委員会も、日本維新の会以外の野党はボイコットした。

 立憲民主党の辻元清美国対委員長は、働き方改革法案の審議入りについて「大型連休前の駆け込みでの審議入りを強行したのは、信じられない」と批判した。

 だが、野党6党は法案と直接関係がない、麻生太郎副総理兼財務相の辞任などを要求して審議拒否している。これらは、海外にも共通する国会戦術なのか。

日本大学の岩井奉信教授(政治学)

 日本大学の岩井奉信教授(政治学)は「野党が演説を引き延ばし、対抗する手法は米国でみられるが、先進国で審議自体を放棄するケースは、まずない。与野党が『議論を尽くし、多数決で決める』ことで合意しているためだ。日本の野党には戦略がなく、時代錯誤も甚だしい。時間とお金のムダであり、有権者の支持は得られないだろう」と指摘する。

 野党が欠席戦術で、法案審議の「時間切れ」を狙う背景には、150日という通常国会の会期も影響しているという。岩井氏が続ける。

 「欧米では、国会が1年以上にわたって開かれ、審議を引き延ばす意味がない。日本は、審議時間をめぐる駆け引きが国会戦術の主要部分を占め、政局につながりやすい。立法府は議論する場であり、通年国会を導入するなど、審議のあり方を見直すべきだ」

 野党の「ガラパゴス」ぶりは、安全保障への「無関心」にも表れている。野党6党が20日に「職場放棄」に走るまで、国会で本格的論戦は交わされず、自衛隊の日報問題ばかりが取り上げられた。

拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司教授

 米国事情に精通する拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司教授は「米国は、国益を守るために安全保障を重要視し、与野党が異なる立場で真剣に議論を戦わせる。『反対のための反対』に固執する日本の野党とは大違いだ。北朝鮮情勢が予断を許さないなか、今の日本は、海外から『国益を守る議論もせずに、大丈夫か?』と批判されても仕方ない。異常だ。情けない」と話している。

【私の論評】官僚は統治に走り、野党政治家は実行ばかりに注目する国日本の不幸(゚д゚)!

野党は政府の役割は何なのか、おそらく全く理解していないのでしょう。政府の役割につては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!

この記事より、政府の役割に関する部分のみ以下に引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
"
政府の役割は実行ではなく、“決定”と“方向付け”と“エネルギーの結集”です。そうして、これが統治というものです。

現在の政府は、下部組織として様々な官公庁があり、これらが政府の統治にもとづき実行をするようになっています。しかし、これは必ずしもはっきりと区分されているわけではありません。

実際、日本では官僚が統治の分野まで踏み込んでしまっているというのが、非常に問題です。その中でも、国の財政の実行を司るべき財務省が、本来は政府により実行されるべき日本国の財政の決定と、方向付けとエネルギーの結集という統治の分野にまで踏み込んでいることが、大問題なのです。

実際、財務省は緊縮財政、その中でも特に増税を巡って政府とバトルを繰り広げるなど、統治と実行は両立しない(両立されれば片方もしくは両方が機能しなくなる)という統治の原則を破っています。そうして、過去数十年にわたって、政府も財務省も財政においてまともな成果をあげられていません。

そのせいもあってか、日本のGDPの成長率は未だ韓国以下です。だから、政府は財務省が統治に関わることを禁忌とすべきなのです。この禁忌を破った官僚は、左遷するなり辞任させるなりすべきなのです。

そうして、財務省から統治機能をとりあげ、財務省の中では、財政企画と実行を厳密にわけて別組織にすべきなのです。

このように、日本では官僚が統治をするという間違いが放置されていますが、もう一つ問題なのは、野党が政府の役割である統治を何であるのかを理解していないということです。

政府の役割は日本国を統治することであり、政治の関心は政府の統治に向けられるべきなのです。無論、実行に関して全くノータッチということにはいきません。特に、統治に瑕疵があって、実行に問題が生じている場合は、その瑕疵を是正しなければなりません。

しかし、政治の関心は主に政府の統治に向けられるべきです。そうして、政府の統治が民主的手続きにのっとり、効果的になるようにしなければなりません。それが、政治家の本来の仕事です。

しかし、最近の野党の行動をみていると、これを全く理解していないのではないかと思います。

まずは、野党6党は、国会審議を欠席しながら、「官僚イジメ」といわれる合同ヒアリングには熱心であるという本末転倒の行動をしています。

合同ヒアリングに出て来るのは、財務省の課長クラスです。この人たちは、財務省の幹部クラスの官僚から指示を受けて、財政の実務を実行する際の責任者であり、この人たちからヒアリングをしたり、イジメてたとしても、これは政府の統治とは直接関係ありません。

考えてみると、最近の野党は統治とは全く関係ない、実行にばかり注目して、その実行に関して瑕疵はないかと追求し、批判するばかりで、統治には全く目が向いていません。

考えてみると、保育園の問題も実行レベルの問題です。保育園の問題は政府レベルの問題ではなく、地方自治体の実行レベルの問題です。これは、とても政治の本質に関わる問題とはいえません。

保育園の問題でも、実行レベルにだけ目を向けるのではなく、幼児教育に関わる“決定”と“方向付け”と“エネルギーの結集”について、議論をして、これらが効果的に実行されるように法律案を提出することが、政治家の本来の仕事であるはずです。

考えてみれば、森友問題、加計問題なるものもそうです。これも、本来政府の統治ではなく、実行に関わるものです。無論実行に関わるものも、何か瑕疵があった場合、それが政府の統治の瑕疵に原因がある場合もありますから、実行に関して一切関わるべきではないとはいいません。

しかし、結局のところ過去一年以上かけても、安倍総理や昭恵夫人をはじめとして、政府からは誰も責任をとって辞任するという事はありませんでした。あったのは、文書書き換えに関して佐川氏が辞任したのと、最近福田氏がセクハラ問題で辞任したくらいです。未だに、政府の統治レベルの問題にはなっていません。

これらは政府の統治に関わるものではなく、あくまで近畿財務局や文部省などの実行に関わる分野の問題です。自衛隊の日報問題も同じことです。これも、政府の統治に関わるものではなく、あくまで実行に関わるものです。

先程述べたように、政治家の本質は、政府の統治に関わることが本質です。

日本では、官僚が統治に走り、野党の政治家が、こぞって実行にばかり目を向けるということが恒常的に行われています。

それによって、何が国民にもたらされたかといえば、お粗末な財政政策により、結局GDPの伸び率が韓国に劣るような状態をもたらし、過去の国会は本質的ではない「もりかけ問題」で1年以上も無駄な時間が費やされてしまいました。

それに追い打ちをかけるように、野党は「職場放棄」を強行し、驚愕の「17連休」を決定的にしてしまいました。

野党の皆さんには、言いたいです。こんなことを続けるなら、政治家はやめるべきです。そうして、市民運動家になるべきです。それも、「〇〇反対運動」などの左翼系市民運動などではなく、社会の矛盾を是正したり、社会のニーズやウォンツを探り出しれそれに対処するようなNPOなどをたちあげて、社会実行レベルの様々な分野での社会事業で成果をあげて下さい。



たとえば、まずはある都市で、政府や自治体の力も借りながら、新しい画期的な保育園の管理手法を開発し、本当に保育園に行かなければならない幼児が行けなくなるという状況を防ぐ方法を開発して下さい。これが開発できれば、他の都市に広めて下さい。

そうして、全国にそれを広めるのです。このようなことは、本来政府や自治体が直接手をかけるよりも非営利事業(NPO)が取り組んだほうが成果をあげやすいです。

「審議拒否」など頻繁にして、国民に馬鹿にされ疎まれる存在になるくらなら、社会事業家になって具体的に社会の矛盾などを是正する仕事をしたほうが、政治家として軽蔑されるよりも、多くの人から尊敬され充実した人生が送れます。

何よりも、選挙で落ちることを心配する必要もなくなります。

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2016年2月15日月曜日

【湯浅博の世界読解】尖閣衝突「5日で日本敗北」 衝撃シナリオに見え隠れする中国のプロパガンダ―【私の論評】内実は他先進国とは渡り合えない、儀仗兵並の人民解放軍だが?

【湯浅博の世界読解】尖閣衝突「5日で日本敗北」 衝撃シナリオに見え隠れする中国のプロパガンダ

RAND corporation(ランド研究所) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる日中衝突で「日本は5日間で敗北する」という衝撃のシミュレーションが、インターネット空間で飛び交っている。米外交誌「フォーリン・ポリシー」の1月15日号に掲載された仮想シナリオの紹介記事である。特に国防総省に近いランド研究所が実施したとの触れ込みだから、その衝撃は余計に増幅された。

原文にあたってみると、記事は2人の記者が連名で書いており、ランドが実施した詳細なシミュレーション報告ではない。本文も「ホワイトハウス地下の危機管理室ではなく、ランド研究所で専門家にたずねる形で行われた」と、ただし書きをつけている。

5日間の初日は、日本人の右翼活動家が尖閣に上陸し、中国の海警に逮捕されるという前提ではじまる。2日目は、外交か警察案件のはずが、いきなり日本が護衛艦、戦闘機を派遣し、米国が駆逐艦や潜水艦をだして中国の軍艦とにらみ合う。

3日目は、中国のフリゲート艦が射程内に入った空自機を機関砲で攻撃。交戦状態になって、海自艦2隻が撃沈される。4日目と5日目は中国がサイバー攻撃で日米の送電や証券取引システムを破壊する。米国は潜水艦と航空機を増派して、海自艦隊の撤退を支援した。かくて尖閣は中国が確保して終わる。

一読して、現実離れしていることに気づくはずである。活動家は日本の巡視船に阻まれるし、上陸できても中国側でなく日本側に逮捕される。2日目に米艦船が現場に出現した時点で、中国艦船は矛を収めざるを得ないだろう。交戦状態になっても、米軍や海自潜水艦の威力が過小評価され、米国が都市機能マヒに追い込まれて、報復に出ないことなど考えられない。

2人の記者から取材を受けたのは、確かにランド研究所のシュラパク氏で、文字通り戦争ゲームのプロだ。元来、ランドのシミュレーションは、政府関係者を招いて行われ、綿密な研究分析の上に、多様な動きを検討し、独自の裁定を下すのが通例だ。ところが、記事にはそうした周到さはみられない。

この記事に対する日本国内の反応にランドは、あくまで記者たちと東シナ海で考えられる可能性を短時間、議論したもので、ランドの公式シミュレーションではないことを強調している。

なぜいま、シュラパク氏が絡んで記者2人が、米国の「巻き込まれ脅威論」のシナリオを発表したのだろうか。結果として、「米国が小さな無人島に関与して中国との紛争に巻き込まれ、米国の国益を損なう」という中国のプロパガンダに沿ったものになっている。

最近、中国の対外宣伝は米欧紙への寄稿やシンクタンクを活用して、ソフトに語りかける手を使う。とかく世論は、目立った主張や甘いささやきに幻惑されがちだからである。この記事に効用があるとすれば、日本の安保法制に穴はないかを確認し、日米同盟の紐帯(ちゅうたい)を確認するよう促したことだろうか。

横須賀生まれの日系人である米太平洋軍のハリー・ハリス司令官
外交誌の公表から12日後、米太平洋軍のハリス司令官が講演で、尖閣防衛について「中国の攻撃を受ければ、米国は間違いなく日本を防衛する」と述べて、クギを刺したのは妥当であった。

しかもここ数年、ワシントンで発表されるアジアの戦略報告書の主流は「中国の軍事的台頭にどう対処すべきか」であることを銘記すべきだろう。(東京特派員)

【私の論評】内実は他先進国とは渡り合えない、儀仗兵並の人民解放軍だが?

尖閣に関しては、上記とは別にYouTubeでは、中国がアメリカ軍撃破というシナリオの「3D模擬奇島戦役」というタイトルの動画が掲載されています。その動画(コピー)を以下に掲載します。



この動画は、昨年9月からYouTubeに掲載されています。9月というと、中国で抗日記念70周年軍事パレードが行われました。

昨年9月3日に北京で挙行された「抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード」と歩調を合わせて、中国艦隊がアラスカ州アリューシャン列島沖のアメリカ領海内で“パレード”し、アメリカ海軍を憤慨させたなどということもありました。 

中国のイージス艦もどきの鑑定 能力はイージス艦にはるかに及ばない

しかし、中国によるアメリカ軍人の神経を逆なでする動きはそれにとどまりませんでした。直接人民解放軍当局が発表したものではないのですが、「某軍事同盟軍が中国に奇襲攻撃を仕掛ける。中国人民解放軍が反撃し、その軍事同盟軍の島嶼に位置する基地を占領する」というシナリオの「3D模擬奇島戦役」というタイトルの動画がネット上を駆け巡り、再び米軍関係者を憤慨させました。

この「3D模擬奇島戦役」と銘打ったシミュレーション動画は、人民解放軍の基地が攻撃される場面から始まります。そして「20××年に、某軍事同盟が国際法を無視して海洋での紛争を引起し、綿密に計画された奇襲作戦によって、いくつかの人民解放軍基地が攻撃された」というテロップが流れます。

わざわざ「某国」ではなく「某軍事同盟」としているのは、明らかに日米同盟を暗示しています。同様に「綿密に計画された奇襲作戦」はまさに真珠湾攻撃を暗示しており、「抗日戦争勝利70周年記念」を意識した演出のようです。

そうして、この動画で中国軍は、島嶼を攻撃するのですが、これは尖閣を想起させます。これは完璧に中国のブロパガンダです。

そうして、ブログ冒頭の記事におけるシミレーションも、やはり中国のブロパガンダに利用されたものと考えられます。

ブログ冒頭の記事では、「米軍や海自潜水艦の威力が過小評価」と掲載されていますが、まさにそのとおりだと思います。

それに関しては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国海軍、尖閣接近のウラ 米爆撃機の威嚇に習政権“苦肉の策”か ―【私の論評】日本と戦争になれば、自意識過剰中国海軍は半日で壊滅!東シナ海で傍若無人ぶりを働けば撃沈せよ(゚д゚)!
B52を空母に搭載するとこんな感じです 合成写真

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国海軍は、日本の自衛隊とまともに対峙すれば、一日で壊滅するであろうこと、米国とまともに対峙すれば、数時間で壊滅するであろうことを掲載しました。

米国と本気で対峙したとすると、数時間で勝負がつくのは目に見えています。航空兵力、海軍力のいずれをとっても、中国は米国の敵ではありません。

まともに戦えば、海上自衛隊の敵でもありません。この記事でも説明しましたし、このブログでも何度か掲載しましたが、日本の対潜哨戒能力は世界一です。潜水艦建造技術も世界一です。

日本の潜水艦は、技術力が非常に高いので、今のトップクラスの「そうりゅう」型だと、原子力潜水艦よりは多少短いですが、それでもかなりの時間潜行できますし、それにスクリュー音がほとんどしないため、どこの国の海軍であれこれを発見することはほぼ不可能です。

オーストラリアも新型の導入を検討している日本の「そうりゅう」型潜水艦
これに対して、中国の対潜哨戒能力は日本には全く及ばず、中国側は日本の潜水艦の動向を全くつかむことができません。いざ戦争になったら、日本は中国の艦船や潜水艦の動向をつぶさに把握できますが、中国側は、どこに日本の潜水艦がいるのか、全く把握できません。

特に潜水艦に関しては、製造技術がお粗末なので、中国の潜水艦は、まるでドラム缶をドンドンとハンマーで殴るようなけたたましい音をたてながら、水中を進むので、簡単に敵国に発見されてしまいます。

この状況で日中がまともに、海にまみえることになると、中国の空母、艦船、潜水艦などは、一方的に日本の潜水艦の餌食になることになり、あっという間に海の藻屑と消えてしまうことになります。

その他航空兵力も現実はかなりお粗末なので、自衛隊の敵ではありません。この状況では、中国は尖閣に人民解放軍を派遣しようにも、到達する前にことごとく撃沈・撃破されてしまいます。はっきりいえば、自殺行為です。

これが、中国大陸の陸の上ということになれば、ゲリラ戦も可能なので、状況は多少なりとも変わるかもしれませんが、海・空戦ということになれば、ゲリラ戦というわけにもいかず、中国に勝ち目はありません。

中国の第五せだい戦闘機といわれる殲20 ステルス性能も低く、
米専門家は第三世代の戦闘機と費用するものも存在する

自衛隊に対してもこの有様ですから、米国相手だと、数時間で中国海軍は戦闘不能に追い込まれてしまうことでしょう。日米同盟軍と戦うことになれば、どうあがいても、全く勝ち目はありません。

それにしても、なぜ中国がこのようなことをするのかといえば、無論プロパガンダのためですか、では、なぜプロパガンダを行うかといえば、もう軍事力の差異ははっきりしすぎるくらいはっきりしているので、中国としては、これ以上南シナ海での示威行動や、尖閣付近での示威行動をできないことは明らかなので、習近平としては、苦肉の策として、これらを実行する以外に道はなかったのだと考えられます。

習近平というと、国内では、腐敗の撲滅などといいながら、実際には権力闘争の続きを実行しています。そうして、人民の憤怒のマグマは従来から煮えたぎって、いついかなるとき大噴火するかわからない状況です。

そのような状況の中で、日本に対しても、アメリカに対しても、強気の態度をみせて、相手に譲歩を迫るようでなければ、国内の人民や、反習近平派の重鎮たちも納得しないどころか、習近平体制を崩しにかかることになります。

特に最近では、経済が悪化しているので、ただでさえ、人民の不満が募っています。しかし、だからといって、本格的に日米と対峙すれば、先に示したようにボロ負けするだけです。そうなれば、習近平はさらに窮地に追い込まれることになります。

だから、昨年は、日本とも戦ったこともない中共が、抗日70周年記念軍事パレードをしてみたり、アリューシャンで米国相手に示威行動をしてみたり、尖閣に機関砲装備の公船を派遣したり、挙句の果てに、上記のようにランド研究所の記事を流布したり、動画を流したりして、本当は無意味なのに、いかにも自分は、やっているぞとばかり、パフォーマンスを演じているわけです。

以下に中国で昨年行われた抗日70周年記念軍事パレードに向けて練習をする女性儀仗兵の動画を掲載します。



この助成儀仗兵は、平均身長1・78メートル、平均年齢22歳で統一されていました。本番では計17人12列の正方形の隊列を組んで行進しました。

儀仗兵とは、儀礼,警護のために,元首,高官,将官に配置される将兵のことです。日本では 1945年まで,天皇,皇族の儀礼に際しては,近衛兵がその任にあたりました。

ところで、儀仗兵は戦闘のための兵ではありません。中国の人民解放軍は、非常に不思議な組織で、そもそも、他国に見られる軍隊とは異なります。この組織実は、商社のような存在で、様々な事業を展開しています。

日本でいえば、商社が武装しているというのが、人民解放軍の真の姿です。そうして、人民解放軍は、人民を解放する軍隊ではなく、共産党の配下にある組織です。そうして、内部もかなり腐敗しており、それこそ、習近平の腐敗撲滅運動の標的にもなっています。

そもそも、このような組織が、他国の軍隊なみに機能するとは考えられません。日本の商社の社員に軍隊なみの武装をさせたらどうなるか、想像に難くないです。さらに、中国では長い間の一人っ子政策のため、人民解放軍の兵士たちもほとんどか一人っ子です。そうなると、中国内での苦しいゲリラ戦なども無理かもしれません。

そうして、この武装商社は、技術的にはかなり遅れた、空母、潜水艦、航空機などを持っています。これらは、先進国の軍隊とまともに対峙した場合、ほとんど役立たずです。ただし、外見はそれらしく、場合によっては美しくさえもみえます。

モデルなみの中国人民解放軍の儀仗兵
ところで、ロシアの軍事米空母1隻を撃沈するのに中国人民解放軍の海軍力の40%が犠牲 になると、ロシアの軍事専門誌「Military-Indust rial Courier」が2013年に分析しています。中国が毎年国防予算 を2けた増加させ、軍事力で米国に追いつこうとしているが、まだ 格差は少なくないということです。 

同誌は、中国が米空母との海戦を念頭に置いて非常に効果的な武器 体系を備えてきた、と紹介した。世界初の対艦弾道ミサイルと呼ば れる東風21Dは射程距離が3000キロにのぼり、日本やグアム の海上の米空母を狙うことができる。鷹撃83などの誘導ミサイル
を装着した12隻の駆逐艦も、アジア・太平洋地域の米艦隊に大き な脅威になる可能性があります。
 
中国は最近、ロシアからモスキットSSM P-270対艦ミサイ ルを備えた駆逐艦4隻を追加で購入した。空母「遼寧」と中距離艦 対空ミサイル紅旗16を搭載した護衛艦「江凱」15隻も敵艦を沈 没させる威力を持ちます。

米空母が率いる艦隊が中国領海に入れば、中国海軍は対艦ミサイル を搭載した駆逐艦10隻とミサイル艇40隻をまず投入し、ゲリラ 戦術で米艦隊を苦しめようとすると予想た。もし空母1隻が沈没 すれば、米海軍は海上制空権の約10%を喪失し、数千人の乗務員
が犠牲になります。
しかし同誌は中国軍が米空母を撃沈するのは容易でないと分析しました。 ひとまず中国が人工衛星・攻撃機・レーダー網を総動員しても、移 動を続ける空母の位置を正確に追跡して打撃するのが容易でない。 米空母は巡洋艦・駆逐艦・潜水艦はもちろん、偵察機・対潜ヘリコ プターなどの護衛を受けます。。 

また、最も発展した艦隊防空網というイージスシステムを通じて、 飛んでくるミサイルをほぼ正確に迎撃することができます。 

空母に搭載されたF35ステルス戦闘機と無人攻撃機は数百キロの 長距離飛行が可能で、中国本土のミサイル発射台など軍事施設を打 撃できます。米空母は中国領海に入らず十分に攻撃できるということです。 

同誌はこのような分析で、中国が米国のジェラルド・R・フォード 級空母1隻を撃沈するには中国海軍戦力の30-40%を消耗する と計算しました。(ジェラルド・R・フォード級空母は2015年進水予定のジェラルド・Rフォードをはじめ、現在のニミッツ級空母に 代わる米次世代原子力空母)

ただ、カギは米海軍が保有する11隻の空母など強大な海上戦力を どれほど迅速に西太平洋に投入できるかだと分析しました。現在、西太 平洋を管轄する米海軍第7艦隊には、空母「ジョージ・ワシントン 」をはじめ、60-70隻の軍艦が配属され、18隻は日本とグア ムに常時配備されています。また、緊急事態が発生すれば、まず最大 6、7隻の空母を西太平洋に投入できます。

米国の空母一隻を撃沈するのに中国は海軍力の40%が犠牲になる

さて、上の分析もっともらしくもあるのですが、2つ大きな見落としがあります。それは、潜水艦と対潜哨戒能力です。上の分析はロシアの分析なので、やはり、自国の兵器の優秀さをアピールする反面、自国の弱みである潜水艦についてはほとんど触れません。

冷戦末期には、日本の自衛隊は、対ソ対潜哨戒を徹底に的に実施し、ソ連の原潜などの潜水艦の行動を逐一偵察しました。そのため、日本の対潜哨戒能力は世界一のレベルになりました。当時のソ連の潜水艦も、現在のロシアの潜水艦も日本の技術には到底及ばず、対潜哨戒能力もかなり低レベルです。

先に述べたように、日本の潜水艦はステルス性が抜群で、中国側には全く発見できません。米国の潜水艦も、日本の潜水艦ほどではありませんが、中国よりははるかに高く、中国を相手とするならステルス性は十分です。

だから、日米の潜水艦は、中国側に察知されずに自由に行動することができます。一方中国の潜水艦は、日米に逐一その所在が確認されてしまいます。

こんなことから、中国が日米などと海戦をするということになると、無論日米は潜水艦を多用することになります。そうなると、中国は初戦で潜水艦からの攻撃に晒され、海軍力はすぐに消滅することになります。その後に、日米は余裕をもって、作戦を遂行することができます。

こんな事を考えると、先ほど中国の儀仗兵について触れましたが、それこそ、人民解放軍自体が、儀仗兵のようなものであるといえなくもないかもしれません。儀仗兵であったとしても、他国の軍隊とはまともに渡り合えないかもしれませんが、人民を弾圧したり、周辺の弱小国などに対しては、戦いを挑むことができるかもしれませんが、日米豪などの先進国の軍隊とは無理というものです。

とは言いながら、人民解放軍は、核を保有しています。商社のような組織が、軍備をするどころか、核武装をして、技術的には稚拙ながら、原潜も保有しているという、とんでもない組織が人民解放軍です。

中国のプロバガンダに対しては、上記のような中国の内部事情を熟知したうえで、一体何のためにやっているのか、想像しながら分析をするといろいろなことが見えてきます。

私たちは、中国を等身大に見る習慣をつけるべきと思います。いたずらに中国に脅威を抱く必要はありませんが、それにしても、核武装をしている厄介な国であることには変わりありません。その核ミサイルは日本を標的にしていることを忘れるべきではありません。こんなことを考えると、現状ではやはり日米同盟がいかに重要であるのか、集団的自衛権がいかに重要であるのか、認識を新たにする必要がありそうです。

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2016年2月2日火曜日

“黒田バズーカ3”韓国経済直撃 ウォン高加速で輸出悪化に拍車―【私の論評】先進国になりそこねた韓国はウリジナル・タンゴを踊るのか(゚д゚)!

“黒田バズーカ3”韓国経済直撃 ウォン高加速で輸出悪化に拍車

ウォンの急騰は韓国の輸出に大打撃となる 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「黒田バズーカ第3弾」が韓国経済を直撃している。すでに深刻な輸出難に陥るなか、日銀のマイナス金利導入で為替のウォン高が急加速した。今後は欧州や中国でも通貨安が進むとみられ、韓国は独り負けになりかねない。

韓国の昨年の経常収支黒字規模は1059億ドル(約12兆8400億円)と初めて1000億ドルを超えた。ただ、中身をみると、輸出が2014年と比べて14%減ったのに対し、輸入が原油安の影響などで19%減とより多く減ったことが主な要因で、実態は「不況型黒字」だといえる。

さらに今年1月の輸出は前年同期比18・5%減と、リーマン・ショック後の09年8月以来6年5カ月ぶりの減少率を記録。前年割れは昨年1月以来実に13カ月連続という不名誉だ。

韓国はこのところ投資マネーの資金流出もあってウォン安が進んでいたにもかかわらず、輸出の押し上げ効果は生まれなかった。

そんなタイミングで、日銀のマイナス金利導入により、今度は輸出にとってより不利になるウォン高が進んでいる。日銀の決定会合前に1円=10・2ウォン台だったのが、1日には9・9ウォン台まで一気に円安ウォン高となった。

ボードを置いて会見する日銀の黒田東彦総裁=29日午後

輸出のさらなる悪化懸念もあって、日銀の決定後、世界的な株高現象が生じたにもかかわらず、韓国株の反応は鈍かった。「黒田バズーカ」による円安が日本の輸出産業にプラスに働く半面、韓国の輸出産業にとってはマイナスに働くことが懸念されたものとみられる。

すでに現代(ヒュンダイ)自動車の1月の販売台数は前年同月比12・5%減、グループの起亜自動車は同15・4%減となった。両社とも昨年12月との比較では30%超の落ち込みを記録している。

日銀に続いて3月には欧州中央銀行(ECB)が追加緩和実施を示唆するほか、中国も経済失速を受けて人民元の下落圧力が強まっている。

一方で韓国はこれまで利下げを行っても効果は限定的で、大胆な金融緩和を行うと資金流出が加速するというジレンマに陥っている。韓国経済はなすすべもなく埋没してしまうのか。

【私の論評】先進国になりそこねた韓国は、ウリジナル・タンゴを踊るのか(゚д゚)!

韓国経済は、日銀の今回のゼロ金利政策により、ウォン高がいっそう進んで、大変なことになりました。

何しろ、韓国のGDPに占める輸出の割合は、43.87%ですから、もろに直撃をうけるわけです。これは、中国の22.28よりも高いですし、日本の15.24%や米国の9.32%よりはるかに高いです。

日本は、10数年前くらいまでは、8%程度でした。米国も最近は、9%台ですが、以前は7%ほどでした。米国や日本は、内需がかなり大きいため、あまり輸出をしなくても実体経済にはあまり大きな影響はありません。

何やら、良く日本は、資源がないので、外国から資源を輸入して、それを加工して海外に輸出して成り立っている貿易立国であるというようなことをまことしやかに言う人もいますが、この数字を見ていればそんなことは全く出鱈目であるということが良くわかります。

そうして、上のようなことを語る人は、無条件で貿易立国は素晴らしい良いことであり、それによって国は栄えると無邪気に信じ込んでいる人が多いです。

しかし、これも全く間違いとまではいいませんが、程度問題です。GDPに占める個人消費の割合を比較してみると、韓国は50%台、中国は35%、日本は60%、米国70%台です。一国の経済を強くするには、なにをさておきまずは、当該国の内需を増やすことが前提条件であると思います。

この数値を比較しても、わかるように、韓国は輸出が多く、個人消費は少なめです。そうしてこれは当然のことです。先に、貿易立国を無邪気に良いことと信じている人の例を述べましたが、韓国はまさに、この人のように、貿易立国を現代風に言い直した「グローバル戦略」が良いことであると信じ、とにかく輸出を増やすことを奨励してきました。

とにかく、輸出拡大が韓国の生きる道ということで、企業はもとより、韓国政府もグローバル化一辺倒で経済政策を推進してきました。その結果が今日の悲惨な事態を招いてしまいました。

輸出額が大きいということは、一見国際競争力があって良いようにもみえますが、逆の方向からみると、外国の影響を受けやすくなるということです。経済を良くするたには、ますば、米国のように自国の内需をできるだけ拡大すべきです。

2012年のグローバリゼーション・インデックス
韓国も、中国も日本より順位が上田が?

本来ならば、韓国はもっと内需を拡大すべきでした。本来もっと余裕のあるときに、金融緩和を行いつつも、グローバル戦略一辺倒ではなく、内需拡大策も実行すべきでした。そうして、それと並行して、以下で述べるような中進国のジレンマを乗り越える、構造改革もすべきでした。

しかし、それを韓国はないがしろにしてしまいました。それは、韓国のような国にとって難しいといえば、難しいことなのかもしれません。

内需を拡大するためには、いわゆる経済的中間層を増やして、この中間層が社会・経済活動を活発に行えるように社会基盤を整えていく必要があります。

そのためには、民主化はもとより、経済と政治の分離、法治国家化を推進しなければなりません。これが、基盤としてある程度整備されていなければ、経済的中間層が増えることはありませんして、人為的に増やしたにしても、中韓層が社会・経済活動を活発に行うことはできません。

ある程度の民主化が実現されていなければ、社会問題を解決するなどという活動も活発化しません。経済と政治の分離がされていなければ、一国の経済は、政治と不可分に結びついて、政治家や官僚と政府に近い人々だけが富裕層となり、経済的中間層など増えることはありません。

ある程度、法治国家化されていなければ、多くの中間層が、自由に取引をしたり、社会活動を行うことはできません。

発展途上国などの経済が飛躍的に伸びて、新興国などともてはやされても、なぜかほとんどの場合、その後経済成長ができなくなり、所得が発展途上国と、先進国の中間あたりで、止まってしまうという現象がよく見られます。それを中進国のジレンマと呼びます。

韓国経済は未だに「中進国のジレンマ」から抜け出せないでいるのです。現在、韓国の国民1人あたりGDPは約2万5000ドルです。一般的に国民1人あたりGDPが1万ドルを超えると途上国から新興国になり、2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国とされます。(無論、この数値は現在価値でということです)

しかし、3万ドル経済に向かおうとする中進国は、しばしば為替や労働コストが高くなって競争力を失い、3万ドルに近づくと落ちるという動きを繰り返します。これが「中進国のジレンマ」です。韓国経済も、調子が良くなるとウォンや労働コストが高くなり、そのたびに競争力を失って落ちるという状況を繰り返しています。

戦後の日本とドイツは5年、スウェーデンは世界記録の4年で2万ドル経済から3万ドル経済に突き抜け、先進国の仲間入りを果たしました。まずは、社会を変革し、イノベーションや生産性向上ができるようにして、為替や労働コストの上昇を乗り越えたのです。

中進国のジレンマを乗り越えることや、一端先進国になるとそこから、中進国以下に落ちることは滅多にありません。その例外は、2つしかありません。中進国のジレンマを乗り越えて、中進国から先進国になったのは、日本だけです。

また、かつて、先進国だったのが、今や発展途上国になってしまったのはアルゼンチンのみです。アルゼンチンはかつて、先進国でした。それが、現在は発展途上となってしまいました。

アルゼンチンには有名なアルゼンチン・タンゴがあり、この音楽は他のラテン諸国と比較すると、芸術性も高く、メランコリックで一線を画したところがあります。あのような音楽は、一度豊かで先進国ともなりながら、その後衰亡して行ったアルゼンチンのような国でなければ、生み出されなかったのではないかと思います。



アルゼンチンと日本に関しては、1971年にノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの経済学者・統計学者サイモン・グズネッツーは以下のように語っています。

「世界には4つの国しかない。 先進国と途上国、そして、日本とアルゼンチンである」
1900年初頭、アルゼンチンは黄金期を迎えていました。世界を制するのはアメリカかアルゼンチンか。そう言われるほどの国力を誇っていたのです。

実際、その当時の国民1人あたりのGDPは、およそ2750ドル。同じ時期の日本は1130ドルでしたから、日本の2倍以上の経済力があったことになります。


サイモン・クズネッツ氏
この関係が逆転したのは、1967年のこと。高度経済成長に沸く日本、そして停滞・後退を始めたアルゼンチン。

戦後の混乱から、奇跡的な発展を遂げた日本は、資源がほとんどない小国でありながら先進国の仲間入りを果たしました。一方アルゼンチンは、豊かな資源がありながら、工業化に失敗し、衰退しました。

途上国から先進国になった日本と、先進国から途上国になったアルゼンチン。どちらの事例も非常に稀なことであり、それをもってグズネッツは前述の言葉で世界には4種類の国があると説明したのです。

アルゼンチン・タンゴを生み出したかつての先進国アルゼンは今・・・
その後、アルゼンチンは2001年から02年にかけて国家的な経済崩壊を体験しました。アルゼンチンのたどった経済崩壊までの軌跡を簡単に並べてみると、
1国家の成長産業勃興
2経済の高成長
3成功体験
4傲慢
5転落
6崩壊
となります。

これは、国家的経済崩壊の例として「アルゼンチン型」と呼ばれていますが、今の韓国もこれによく似ているかもしれません。ただし、韓国の場合、未だ完璧に先進国にはなりきれていません。韓国はまだ、「6崩壊」まで進んではいませんが、長引く不況に対する国民の閉塞感は、アルゼンチンより深刻かもしれません。

韓国の場合は現状は、イノベーション不在、基礎科学軽視、ものまね文化で、スピードと規模を重視するという風潮が強いです。そうした産業の“底”の浅さが「中進国のジレンマ」から抜け出せない最大の理由であり、さらにその深因は、記憶偏重の教育、学校秀才万能、そして男尊女卑の社会風潮にあると考えられます。

ソウル 広大前のアルゼンチンタンゴクブ[Tango O Nada]の看板
まずは、これを克服して、先にも述べたように、さらなる民主化、法治国家化の強化と、政治と経済の分離をして、中間層を多く輩出し、彼らが自由闊達に、社会経済活動をできるようにすべきです。

[Tango O Nada]の店内。韓国人がアルゼンチン・タンゴを踊っている
資金に乏しい韓国は、日本のように日銀の当座預金に市中銀行の預金がかなり積み上がってはいないので、これまで利下げを行っても効果は限定的だったしこれからも変わりません。ウォンの擦り増しなどの大胆な金融緩和を行うと、ハイパーインフレになるか、資金流出が加速するというジレンマに陥っています。

このままでは、韓国は先進国に仲間入りする前に、アルゼンチン・タンゴを踊ることになりそうです。それも、アルゼンチンが独自のアルゼンチン・タンゴを生み出したのとは異なり、ウリジナル・タンゴを踊ることになりそうです。


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