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2018年9月25日火曜日

トランプ大統領の“切り札”か…中国、北朝鮮の「隠し資産」丸裸 米国、世界の“制金権”握る「無血戦争」のシナリオとは? ―【私の論評】米対中国貿易戦争は単なる警告であり、前哨戦に過ぎない!本命は本格的な金融制裁(゚д゚)!

トランプ大統領の“切り札”か…中国、北朝鮮の「隠し資産」丸裸 米国、世界の“制金権”握る「無血戦争」のシナリオとは? 

国際投資アナリスト大原浩氏

 貿易で中国の習近平国家主席と、非核化で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と対峙(たいじ)するトランプ米大統領は、独裁国家の権力者がひれ伏す切り札を握っている-。こう指摘するのは金融市場に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏だ。連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)の監視網を背景にした米国の「金融支配」により、独裁者の隠し資産は丸裸にされるという。「無血戦争」のシナリオとは-。

 相変わらず米中貿易戦争が話題になっているが、その議論の中で抜け落ちているのが「貿易戦争」は本当の殺し合いをする戦争の一部であるということである。

 現在、米国の徴兵制は制度そのものは存続しているが、議員の息子が徴兵され、ベトナム反戦運動が激化したこともあって停止している。

 その米国が、自国の若者の血を大量に流す戦争を長期間続行するのは、世論対策も含めて簡単ではない問題である。北朝鮮や中国などの独裁国家は、そうした事情を見透かしているフシがある。

 しかし米国は、どのような国も太刀打ちできない最新兵器に裏打ちされた強大な軍事力だけではなく、血を流さない戦争=「無血戦争」においても圧倒的な強さを持っている。

 いわゆる購買力の高い「消費者」の立場から「売り手」である中国を締め上げる「貿易戦争」もその一つだし、本当の戦争で言えば「海上封鎖」に相当するような「経済制裁」も、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる効果的な戦略だといえる。

中国への攻勢を強めるトランプ大統領

 しかし、「無血戦争」における米国最大の武器は「金融」だ。世界の資金の流れを支配しているのは米国であり、戦争用語の「制空権」ならぬ「制金権」を米国が握っているというわけだ。

 例えば、経済制裁の一環として、北朝鮮やイランの高官の口座を凍結したというようなニュースを聞くとき、「どうやって口座を調べたのだろう」という疑問を持たないだろうか?

 このような人物が本名で海外に口座を開くとは考えにくく、当然偽名やトンネル会社などを使用する。しかし、そのような偽装をしても、FBIやCIAは、口座間の資金の流れを解析して、本当の口座の持ち主をすぐに特定できる。

 この基本技術は、筆者が執行パートナーを務めるシンクタンク「人間経済科学研究所」の有地浩・代表パートナーが30年ほど前にFBIで研修を受けたときにはすでに実用化されていた。

 その後、テロ対策、マネー・ロンダリング対策で銀行口座開設や送金の際の本人確認が非常に厳しくなったのは読者もよくご存じだと思うが、これは米国の指示によるものだ。日本だけではなく世界的な現象なのである。

 少なくとも米国の同盟国・親密国においては、どのような偽装をしても米国の監視の目からは逃れられないということである。以前スイスのプライベートバンクの匿名性が攻撃され、口座情報が丸裸にされたのも、この戦略と関係がある。

 そして、北朝鮮や中国など、米国と敵対している国々のほとんどが、汚職で蓄財した個人資産を自国に保管しておくには適さない。いつ国家が転覆するかわからないためで、米国やその同盟国・親密国の口座に保管をするしかないというわけだ。

 米国と敵対する国々の指導者の目的は、国民の幸福ではなく、個人の蓄財と権力の拡大であるから、彼らの(海外口座の)個人資産を締め上げれば簡単に米国にひれ伏す。

習近平国家主席、金正恩氏(右から)は全面降伏するのか

 孫子は「戦わずして勝つ」ことを最良の戦略としているが、まさに金融を中心とした「無血戦争」で、連勝を続けているトランプ氏は、そういう意味では歴代まれに見る策士の才能を持つ、もしくは優秀な策士のブレーンを持つ大統領なのかもしれない。

 そして、中間選挙でのトランプ氏の行く末がどうなろうと、長年準備されてきた「対中無血戦争」は、中国が全面降伏するまで延々と続くだろう。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】米対中国貿易戦争は単なる警告であり、前哨戦に過ぎない!本命は本格的な金融制裁(゚д゚)!

米国では、ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)ですら、中国と軍事衝突するのは現実的ではないとしています。となると、米国はこれからも、さらに貿易戦争を拡大していくことになります。実際、後もう少しで拡大できなくなる程度に拡大しています。

ただし、貿易戦争は米国にとっては、景気減速を招くこともめったにないです。米国の1930年の悪名高いスムート・ホーリー法による高い関税でさえ、大恐慌にせいぜい少し影響した程度です。中国も打撃を受けますが、それで現在の中共(中国という国という意味ではなく中国共産党という意味)が崩壊するほどのものにはならないことでしょう。


一方、国際的な金融混乱が経済への下押し圧力を強めた例には事欠かないです。大恐慌をはじめ、約10年前のリーマン・ブラザーズ破綻に至るまでそうです。

こうした危機は通常、民間セクターの暴走(リスクの高い国家や住宅購入者への過剰な融資など)を発端としています。ところが、触媒の役目を果たすのはどこかの政府の政策であることが多いです。

フランス政府による金の備蓄が大恐慌につながったたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)のポール・ボルカー議長(当時)の徹底したインフレ抑制策が1980年代の中南米債務危機をもたらした例などがあります。

米政府はかねて、外国の危機を抑えることは米国の長期的な国益になるとみなしてきました。1982年と1995年にはメキシコに支援の手を差し伸べ、1997年にはアジア通貨危機を封じ込めるために国際通貨基金(IMF)と協力しました。2008年には住宅ローンによる金融危機の打撃を受けた国々の銀行を下支えするため、FRBが各国の中央銀行を支援しました。

米国が故意に経済的苦痛を与えるとき、それは戦略地政学的な理由によるのが普通です。そして可能な限り、同盟各国と協調して行動します。

最近では、ドル中心の銀行システムから北朝鮮とイランを締め出すことにより、両国に大きな打撃を与えています。ロシアによるウクライナ侵攻や米選挙への介入、英国在住のロシア元スパイとその娘の毒殺未遂などを受け、米欧が課した経済制裁はロシア経済に大きな混乱をもたらしています。

ここまで大きな制裁でなくても、米国は民間銀行にさえ金融制裁を課することがあります。マカオのバンコ・デルタ・アジア(匯業銀行)という銀行は、2005年9月、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、米国との送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化されました。

バンコ・デルタ・アジアのアジア本社

また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、2014年6月米国の制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けました。

米国にとっては、以前から金融は他国に対して制裁をするときにかなり有力でしかも手慣れたツールなのです。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発します。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

その後のベトナム戦争で、アメリカは戦費調達のために膨大な国債を発行し、戦争後は巨額の財政赤字に苦しみました。そして71年、当時のリチャード・ニクソン大統領によって金とドルの兌換停止が宣言され、ブレトン・ウッズ体制は終わりを告げました。いわゆるニクソン・ショックです。しかし、その後も世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いています。

今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前ですが、ドルで借りたものはドルで返さなければならないです。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけです。

ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなります。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねないです。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。そうして、中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものだ。今年10月以降、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用される見込みであることが報道されたが、仮にSDR入りしても、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになる。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させたり、戦闘機を離陸させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるでしょう。

ソ連が崩壊した直後のロシアでは、経済が低迷し哨戒機を飛ばす燃料にも事欠いた時期があった
写真はロシアの対潜哨戒機ツポレフ142M3

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られていますが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造をよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしていたわけです。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっていました。

その動きを必死に妨害しているのが日米であり、同時にインドやASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。欧州の国々も中国に対する警戒心を強めています。

そういった世界の流れをみると、貿易戦争では米中対立には決着はつかないでしょうが、次の段階では金融戦争に入り、この段階では中国に軍配が上がる可能性はきわめて低いと言わざるを得ません。

その時に中国に残されている道は2つだけです。1つ目は、知的財産権を尊重する体制を整えることです。それは、口で言うのは容易ですが、実際はそんなに簡単なことではありません。

まずは、中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するために、徹底した構造改革を実行しなければなりません。これが実現できなければ、知的財産権など尊重できません。しかしこれを実行すれば、中共は統治の正当性を失い崩壊することになります。

もう1つの道は、厳しい金融制裁を課せられても、そのまま今の体制を保つことです。そうなると、経済はかなり弱体化し、現在のロシアなみ(韓国と同等の東京都のGDPより若干少ない程度)になってしまうことでしょう。

そうなると、中国は他国に対する影響力を失い、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になり果てることになります。

これは、トランプ政権のみならず、ポストトランプでも米国議会が主導して実行され続けるでしょう。

米国の対中国貿易戦争は単なる中国に対する警告であり、前哨戦に過ぎないです。本命は本格的な金融制裁なのです。

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2016年11月8日火曜日

【電通に強制捜査】「この件はわれわれに判断できるレベルでなくなった」と厚労省幹部 安倍政権、高橋まつりさん過労自殺に重大関心―【私の論評】今回の強制捜査は、公取委の出番の前哨戦かもしれない?

【電通に強制捜査】「この件はわれわれに判断できるレベルでなくなった」と厚労省幹部 安倍政権、高橋まつりさん過労自殺に重大関心

電通の東京本社に家宅捜索に入る東京労働局の
労働基準監督官ら=7日午前9時27分、東京都港区
7日の朝。東京・汐留の電通本社ビルに東京労働局の担当者約30人が家宅捜索に踏み込んだ。高橋まつりさん=当時(24)=の遺族が過労自殺を公表して1カ月。支社、子会社も含めた立ち入り調査から強制捜査へと畳みかける厚労省の姿勢は強硬そのものだ。

 「この件はもうわれわれのところで判断できるレベルのものではなくなった」。ある厚労省幹部は立件を急ぐ政権の意向をにおわせる。

 国の基準を超える残業時間の上限を労使で合意していた電通。高橋さんのケースでは残業が月約105時間に及んだことも。自己申告に基づく会社の記録では労使協定の上限をぎりぎり下回っており、遺族は「過少申告の指示があった」と主張。違法な残業隠しの有無は捜査の焦点になる。

 安倍晋三首相の周辺は「首相は高橋さんのツイッターに目を通している」と首相の関心の高さを強調。今後働き方改革の議論で過労死防止がさらにクローズアップされそうだ。

【私の論評】今回の強制捜査は、公取委の出番の前哨戦かもしれない?

今回の強制調査は、厚生労働書の範疇など超え、政府、官邸の意向が働いているのは間違いありません。

安倍晋三首相は「働き方改革」を政権の「最大のチャレンジ」と位置付け、9月末に会議の初会合を開いて議論が本格化しています。長時間労働の是正は、「同一労働同一賃金」と並ぶ改革の柱です。

「過労死ライン」とされる労災認定基準(月80時間)を大幅に超える残業は蔓延(まんえん)しています。総務省によると、昨年の基準超え残業は、労働者全体の8%強。特に30代の男性に限ると15%を超えています。

厚労省が今年10月に初めてまとめた「過労死等防止対策白書」によると、昨年度に過労自殺(未遂も含む)で労災認定されたのは93件。勤務問題を原因の一つとする自殺は2159件にも上ります。

問題は、残業時間の上限に法的な“抜け道”があることです。政府内では、残業時間の上限を労働基準法に明記し、それを超過した場合の罰則強化を検討。政府は年度内にも「働き方改革実行計画」に具体案を盛り込み、労基法改正など関連法案を来年の通常国会に提出する方針です。

このような状況での、高橋まつりさん=当時(24)=の遺族が過労自殺を公表わけですから、安倍総理としてもこれは捨て置けません。捨て置けば、「働き方改革」を本気で実行する気があるのかどうかを疑われてしまいます。

高橋まつりさんの遺影と母親の幸美さん=10月7日、東京・霞が関
私には、母親の幸美さんの悔しさがにじみ出た写真のように見えます。
今回は、電通本社だけではなく、各地の支社でも、同様の強制捜査が行われたということからも安倍総理の本気度が感じられます。

労働基準法という法律には、使用者と労働者の間の労働契約の最低限を画する機能(専門用語で「直律的効力」などといいます)があり、たとえば、一日8時間・週40時間を超える労働時間について、残業代を支払わない、という契約をしても、無効となり、労基法通りの残業代を支払わなければなりません。

ただ、労働基準法には、この民事的な効力のみならず、行政取締法規・刑罰法規としての側面があり、いわば、三つの顔を持っているのです。

従前、東京労働局や配下の労基署等が電通に対して「立ち入り調査」を行っていましたが、これは「行政取締法規」としての側面からのものです。金融庁が銀行や証券会社に対してするような意味で、監督官庁として企業に行政指導や調査をしているわけです。
(労働基準監督官の権限) 
第百一条  労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
○2  前項の場合において、労働基準監督官は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。
昨日の「強制捜査」は、これではなく、さらに踏み込んで、刑事訴訟法に基づいて裁判所に「捜索差押令状」を請求して行った正式の捜査と思われます。いわゆる「ガサ入れ」です。根拠条文は労基法102条です。
第百二条  労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法 に規定する司法警察官の職務を行う。
この条文を読んで頂ければ分かるように、労働者を使用する企業から見た場合、労働基準監督官は、単なる監督官庁ではなく、場合によっては労基法違反を犯罪として捜査をされる警察官でもあるのです。昨日のニュースは、法人としての電通や、場合によっては、使用者個人が、犯罪を犯した(可能性のある)者として、捜査の対象となっている、ということを意味するのです。

労働基準監督官というと、最寄りの労働基準監督署(労基署)にいるイメージが強いですが、各都道府県に、その上級機関である「労働局」があり、ここにも監督官はいます。さらに各都道府県の労働局は厚生労働省の労働基準局の指揮命令を受けています。ここにも、当然、監督官はいます。本省-局-労基署という三層構造になっています。

今回の捜査ですが、東京労働局ばかりが目立ちますが、大阪、京都、名古屋の支社にも強制捜査がはいりました。当然、大阪・京都・名古屋の労働局も動いています。そうすると、厚生労働省の本省が指揮して、各地で一斉捜査をしたことになります。

ここから先は、私の推測ですが、これまでの立ち入り調査の結果、かなり悪質な労基法違反の証拠が見つかった可能性があります。電通は、残業時間は申告制になっているところ、1991年の過労自死事件の後、少なくとも本社については、別途、労働者の在社時間を自動的に測定するためのシステムを導入しているはずです。残業の申告が適正にされていなければ、在社時間と労働時間に大きな差が生まれる可能性があります。また、この間、実際の残業時間と申告された残業時間の差がかなりある、という報道がされています。

労働時間の資料は証拠隠滅できない(3年の保存義務があり、隠滅すると別途犯罪になります。)ので、今回の強制捜査は、立ち入り調査で判明したそれらの証拠(具体的には「三六協定」の上限を超えた違法残業の証拠)を、正式に差押え(押収)するための措置だと考えられます。

よく「書類送検」という言葉が使われますが、実は、捜査機関(今回の場合、労働局と労基署)は、犯罪として捜査した以上は、原則的に、送検する(全件送致主義)のです。ただ、厚労省の本省が乗り出して、強制捜査に入った以上、犯罪として立件できると考えた可能性が高く、犯罪を証明する証拠とともに各地の検察庁に「送検」される可能性が高いでしょう。

重要なのは、実は、その先です。実際に起訴するか否か、と、正式に起訴するのか、略式起訴で罰金刑で終わらせるのかを決めるのは、各地の検察庁です。現状、労働基準法の運用が消極的な理由はいくつかあるのですが、そのうちの一つは、検察庁が、この種の事件について、やる気を出さないためです。

しかし、ここまで大規模な捜査が行われたのと官邸の意向も働いている以上、潮目は変わった、と見るべきです。東京地検を始め、検察庁が、この件をどこまで本気で取り組むかも、問われます。悪質な実態が証拠で裏付けられた場合には、使用者個人への懲役刑の適用も含め、労基法の積極的な運用が期待されると言えるでしょう。

東京地検 得総本部の査察風景
また、労働基準監督官の活躍の一方で、こういう電通に対して大量に業務を発注していると思われる政府の姿勢も問われてくると思います。違法残業を立件する一方で、違法残業の元となる業務を発注していたのでは、政府がマッチポンプをやっているようなものです。

この政府のマッチポンプですが、現状ではそうせざるを得ない理由もあります。

電通は表面上は一広告代理店にすぎませんが、実は「電通」は単体では世界最大の約1兆4千億円の年間売上高を誇る広告代理店であり、日本では圧倒的な支配力を誇っています。社員約5700人を抱え、メディア・政財界に巨大な影響力をもっています。日本の大企業のほとんどが電通に広告を任せています。

電通1社で4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告市場のシェアは5割に及びます。日本の広告業界は、電通と博報堂を合わせて2社で7割を超えるという異常な状況になっています。

企業団体の宣伝広告費は新聞社やテレビ局にとって貴重な収入の柱となっており、新聞やテレビ等の主要マスコミは広告収入がなければ、成り立ちません。

これは、日本の主要マスコミに対する広告代理店の影響は絶大であるということであり、生殺与奪の権を握っているといっても過言ではありません。


このように電通が独占企業として広告業界に君臨しているため、電通はマスコミを事実上の支配下に置くことが可能となっているのです。現在のマスコミの報道がかなり偏向しているにはこのような背景もあります。

電通は日本のメディアを牛耳り、思いのままに操っているのです。その結果として、日本政治に対しても絶大な影響力を行使しているのです。

電通がこのようなビジネスモデルを築いた背景については、以前このブログでも説明したので、これに関してはその記事に譲るものとして、とにかく現状の電通が巨大な影響力を行使しているのは間違いないです。

以下に当該記事のリンクを掲載します。
電通東大卒女性社員自殺 一般家庭出身社員へのしわ寄せ―【私の論評】日本人を駄目にする悪魔企業電通は使うな、入るな、入れさせるな(゚д゚)!
電通本社ビル
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を掲載します。 
悪魔企業電通を弱体化するために、私達としては、日本人を駄目にする悪魔企業電通は、広告媒体としてなるべく使うな、雇用先として最悪の電通には入るな、入れさせるなという方針を貫くべきでしょう。 
広告媒体として使わないということは、現在では大企業には無理なのかもしれません。しかし、大企業の日本に占める割合は数%にすぎません。その他多くの星の数ほどある中堅企業や中小企業などは電通など直接にも間接的にもつかわずに、新興インターネット媒体などを使うべきです。 
就職を考える学生やその親たちも、絶対に電通を就職先に選ぶべきでもないし、選ばせるべきではありません。一般家庭出身の人であれば、電通に入ってしまえば、奴隷のように働かされるだけです。
電通に師弟を入れた著名有名人・社会的地位の高い人達は、来高畑淳子のようにの臍を噛むかも
著名・有名人・社会的地位の高い人達の師弟も、電通に入るべきではありません。入って、10年もすれば、他社では使いものにならなくなってしまいます。単なる馬鹿に成り果てて、社会に不適応な人間になるだけです。 
自分たちの子どもや孫を電通に入れるべきではありません。電通に子どもを人質にとられると、自分の仕事や事業に支障がでるかもしれません。何よりも、自分たちのこどもが、いわゆるバカ息子、バカ娘になる可能性が高まり、バカ息子にはバカ嫁が、バカ娘にはバカ婿が来ることになり将来に大きな禍根を残すことになります。 
このようなことを地道に続けていけば、電通はやがて姿を消すか、姿を消さないまでも、悪魔ではなくなり、普通の企業になることでしょう。電通が普通の企業になり、まともにイノベーションできる組織になれば、それはそれで良いことです。しかし、今のままでは日本人にとって良いことは一つもありません。
この結論で、私は日本人を駄目にする悪魔企業電通は広告媒体として使わないこと、また新卒などはこの会社にはいるべきでないこと、親などは自分の子どもをこの会社に入れさせるなと主張しました。

しかし、電通の市場独占状態とそれによる実質上のマスコミ支配をやめさせるには、これだけでは随分長い間時間がかかってしまいます。

しかし、これにはもう一つ非常に短期間で効果的に電通の市場独占状況をやめさせる方法があります。

独占といえば、これは当然のことながら、公正取引委員会のことが頭に浮かぶのが当然のことと思います。

しかし、公取委は過去においては、電通を追求することはありませんでした。

2012年当時でも、テレビのプライムタイム(19~23時)で電通は番組CMの49%(取扱い秒数シェア)を占めていました。CM枠への新規参入が極めて難しいことが、公正取引委員会などの調査で判明していました。

この調査報告書は以下のリンクから入手できます。
広告業界の取引実態に関する調査報告書
ところが公取委は、広告業界の寡占にメスを入れませんでした。背景を探ると、2002年まで公取委員長を務めた根来泰周氏が、電通に恥ずかしげもなく天下っていたのです。就任期間は2003~2010年でした。

根来氏は同時に、大日本印刷や三菱ウェルファーマといった公取委の職務権限が及ぶ巨大企業の役員に渡るなどして荒稼ぎしていました。その他歴代公取委員長も、資生堂や旧新日本石油などに再就職していました。

電通は、人脈重視の経営戦略をとっています。カレル・ヴァン・ウォルフレンは著書『日本・権力構造の謎』の中で、以下のように指摘しています。
電通が、これほど無敵の存在になれたのはその人脈のおかげである。同社の社員採用方針でつねに目指してきたのは、テレビ界や出版界のトップ・クラスの管理者や幹部役員、および特別な広告主、プロの黒幕などの息子たちや近親者からなる人材プールを維持拡充することであった。このような人脈人事がクライアントや政府機関、放送会社や出版社との非公式なつながりを強化するのに、いかに有益だと会社が考えているかが判る。
 電通は、さまざまな団体と「非公式なつながりを強化する」戦略を前提に人員採用の方針が打ち出されているというのです。この本が出版されたのは1989年です。

公職にあったものが、退任後、民間企業の幹部に就任することを「天下り」と言います。天下りの受け入れは、ウォルフレンも指摘するように「非公式なつながりを強化する」ことが目的である場合が多いです。

電通について言えば、同社は公取委委員長を6年にわたって務めた人物を、監査役として在籍させていました。その人物こそ根来泰周氏です。

参考までに、根来氏以外の歴代委員長の天下り先も紹介しておきます。

■小粥正巳(1992年9月24日-1996年8月27日)

 ※日本開発銀行総裁
 ※日本政策投資銀行総裁
 ※日本経済研究所会長
 ※資生堂

■梅澤節男 (1987年9月24日-1992年9月23日)

 ※みずほコーポレート銀行
 ※旧新日本石油(現・JX日鉱日石エネルギー )

小粥氏が再就職した資生堂は、化粧品業界では言わずと知れたトップ企業です。梅澤氏の天下り先である2社も、それぞれの業界のトップ企業です。たとえばJX日鉱日石エネルギーの売り上げは、業界で第1位です。

つまり、元公取委委員長らは、独禁法を常に意識しなければならない企業に受け入れられているのです。その最も典型的な例のひとつが、根来氏が天下った広告業界の巨塔、評論家から政治家までひれ伏す電通なのです。

しかし、公取委員長を務めた根来泰周氏が電通を退任してから、すでに6年もの月日が流れています。

さらに、最近は、公取委も変わってきています。たとえば、新聞発行本社が販売店に余分な新聞を買わせる「押し紙」をめぐり、今年3月末朝日新聞社は、公正取引委員会から「注意」を受けていました。

これについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
発行部数を「水増し」してきた朝日新聞、激震! 業界「最大のタブー」についに公取のメスが入った―【私の論評】朝日はペット便所紙、引っ越し緩衝材、着火剤に最適!他に使い道なし(゚д゚)!
新聞販売店に山積みになった「押し紙」(偽装部数) 写真はブログ管理人挿入
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、押し紙は、独占禁止法の特殊指定で明確に禁止されているにもかかわらず、新聞業界では長年にわたり行われてきました。大手新聞で、押し紙を廃止したのは産経新聞だけです。

新聞業界「最大のタブー」と言われる押し紙問題に公正取引委員会が踏み込むのは異例のことで、朝日新聞社が今後どのような販売政策を実行していくのか、業界の先例として注目に値します。

この新聞業界「最大のタブー」ともいわれた、領域に踏み込んだ公取委です。電通の寡占状態についても、メスをいれる可能性は十分にあると思います。

電通1社で4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告市場のシェアは5割に及ぶという状況は異常ですし、それに大手企業に限っていえば、ほとんど100%が電通、博報堂が占めています。

平成20年には業界首位の電通がネット広告大手のオプトへの出資比率を引き上げ。さらに平成21年7月、ネット広告大手のサイバー・コミュニケーションズを完全子会社化。平成25年3月には英イージスグループを買収し、海外展開も加速しています。

また、業界2位の博報堂DYホールディングスはアサツーディ・ケイとの合弁で設立したネット広告大手のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムを連結子会社化。さらに同子会社の博報堂は平成21年2月、PRエージェンシーであるケッチャム(米)と業務提携を結びました。

業界首位の電通と2位の博報堂による再編は活発化しており、このままでは、業界における2社の寡占化は今後も進むものとみられます。

本来の公取委の機能からすれば、これを放置しておくわけにはいかないはずです。政府・官邸もこれには危機感を抱いてると思います。

私自身は、今回の厚労省による電通本社・支社に対する強制捜査は、実は公取委による審査の前哨戦ではないかと思っています。

そもそも、電通が市場を寡占して、さらには寡占を強化するためのさまざまな団体と「非公式なつながりを強化する」戦略を前提に人員採用の方針が採用されていなければ、過労死などの問題など起こらなかったはずです。

寡占により、仕事は無尽蔵といつても良いほどあり、同じ社員でも「非公式なつながりを強化する」ための人材はあまり仕事をせず、そうではない人材にしわ寄せが行くことが過労死の原因だからです。

この構造を壊さなければ、問題は根本的に解決されません。私は、電通をいくつかに分割するのが一番良い方策だと思います。それによって、電通の寡占状況がなくなり、それによって労務環境が改善されるとともに、マスコミの偏向も是正されると思います。

どう考えても、電通の寡占状態は良いことではありません。やはり、早急に公取委が審査すべきものと思います。

そうして、官邸、安倍総理は当然のことながら、このようなことを視野に入れていると思います。

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2016年2月25日木曜日

【緊迫・南シナ海】米原潜、ステルス艦「ズムワルト」展開も 中国を抑止 太平洋軍司令官が証言―【私の論評】南シナ海の米中の武力衝突の前に、尖閣で前哨戦があったとしたら(゚д゚)!

7日、出航した米海軍最大級の新型駆逐艦ズムワルト=東部メーン州

 ハリス米太平洋軍司令官は24日、下院軍事委員会の公聴会で証言し、中国による南シナ海の軍事拠点化を抑止するための方策として、西太平洋に米空母2隻を常時、配備することは当面、難しいとの認識を示す一方、最新鋭のズムワルト級ステルス駆逐艦や、攻撃型原子力潜水艦の前方展開を検討していることを明らかにした。

 空母2隻体制についてハリス氏は「2隻目が欲しい。早いほど喜ばしい」としつつも、「2隻目を(常時)配備するには予算や外交、政治上の克服すべきハードルがある」と述べた。

 そのうえで「攻撃型原子力潜水艦や駆逐艦の追加的な駆逐艦、恐らくDDG1000(ズムワルト級)の前方展開が考えられる」と指摘。「空母の不足を補うために、できることは多い。(ズムワルト級などの前方展開は)、スプラトリー(中国名・南沙)諸島におけるさらなる軍事化を抑止するための、大きな部分だ」と語った。

 米国防総省はリバランス(再均衡)戦略に基づき、アジア太平洋地域に米軍艦船全体の6割を配備し、国防予算の厳しい削減下における量的な制約を、最新鋭艦船を配備することにより質的に補おうとしている。

 ハリス氏がレーダーに捕捉されにくいズムワルト級に言及したことは、リバランス戦略の一環であることに加え、中国による急速な軍事拠点化に対する強い危機感の表れだとみられる。

 ズムワルト級は当初、30隻以上の建造が計画されたが、高額のため3隻に削減された。1番艦は昨年に進水し、航行試験を経て年内に海軍に引き渡される。

 国防総省は2017会計年度(16年10月~17年9月)の国防予算案に、米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)での運用を想定し、桟橋の改修工事費を盛り込んでいる。ただ、工事期間は17年5月から18年10月までで、米カリフォルニア州サンディエゴを母港とする予定の1番艦を前方展開するにしても、得意な形状の船体をもつズムワルト級の寄港地を、早急に確保することが先決となる。

【私の論評】南シナ海の米中の武力衝突の前に、尖閣で前哨戦があったとしたら(゚д゚)!

ハリス米太平洋軍司令官
ハリス太平洋司令官は、2つ空母戦闘群の常駐と、原潜の派遣、ズムワルトの派遣を検討しています。

ハリス米太平洋司令官が、公聴会でこのような証言をすることは、十分予想がつきました。それに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【緊迫・南シナ海】米中、軍事衝突秒読み 米空母が東アジアで2隻展開も―【私の論評】南シナ海の武力衝突の趨勢は米潜水艦により決まり、中国軍はなすすべがない(゚д゚)!
米海軍のCVN-73ジョージ・ワシントンとCVN-74ジョン・C・ステニス空母戦闘群
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では南シナ海の武力衝突の趨勢は米潜水艦により決まり、対潜哨戒能力の弱い中国軍はなすすべながないことを掲載しました。その部分のみを以下にコピペします。

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空母2隻の戦闘群が、表の顔とすれば、潜水艦は裏の顔です。空母は航行すればその姿ははっきりと中国側に捉えられ、空母群が最初に攻撃を加えるということになれば、中国側もそれをすぐに察知して、それに「紅旗(HQ)9」を用いて反撃を加えることができます。さらに、航空機を用いて、反撃することもできるでしょう。

しかし、潜水艦にはそのような対処は一切できません。突如とて米潜水艦からミサイルが発射され、それを防ぐ手立てはありません。また、米潜水艦は、当然のことながら、南シナ海の中国の軍事基地に対する弾薬、燃料、水、食料などの補給を絶つこともできます。

そのような米軍の攻撃に対して、中国側は全く打つ手がなく、大パニックに陥ることでしょう。

USSバージニアの魚雷発射管室内の制御装置
実際に武力衝突が始まるとすれば、米国側は最初は潜水艦による攻撃で口火を切るでしょぅ。先ほども述べたように、米側は、中国の艦船、潜水艦の動向をすべてつかむことができますから、まずは潜水艦によって、これらを無力化できます。これらは、初戦ですべて海の藻屑と消えます。

その後に、米潜水艦は、中国のミサイルや、その他の軍事的脅威を標的に攻撃をしかけ、これらも無力化することでしょぅ。

その後に、空母戦闘群が攻撃を加え、中国の軍事基地を無力化し、その後で海兵隊が上陸し、島嶼の基地を破壊し、戦闘員を殺害するか、捕獲して、比較的短時間に米軍の勝利に終わります。
米軍の攻撃型バージニア級原子力潜水艦
万に一つも、中国側に勝つ見込みはありません。中国軍は、最初から最後まで、苦しい戦いを余儀なくされるでしょう。

このように、南シナ海では日本の海上自衛隊の対潜哨戒による中国軍の監視と、米側の潜水艦による戦いにより、またたくまに趨勢が決まり中国側は、なすすべがなくなることでしょう。

そうして、当然のことながら、すでに米国の潜水艦は、南シナ海に派遣されており、いつでも攻撃ができる体制を整えていることでしょう。空母やイージス艦などは、これらを米国が南シナ海に派遣すれば、それは中国側にも、南シナ海の近隣諸国にもすぐに知られてしまうので、米側もこの海域に派遣することなどすぐに発表します。

しかし、潜水艦は違います。潜水艦はあくまで隠密行動で、米側も何も発表しません。しかし、まず間違いなく、派遣していることでしょう。
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南シナ海で軍事衝突があったにしても、中国側の対潜哨戒能力が極度に劣っていることから、中国側は米国の潜水艦には太刀打ちができません。これに、さらに日本の自衛隊により対潜哨戒が実行されることとなると、日本の哨戒能力は世界一であるため、中国の艦船や潜水艦の行動を逐一把握できるにもかかわらず、中国側は米国の潜水艦や、ズムワルトの行動は把握することはできません。

しかしながら、特にズムワルトは最新鋭のステルス型駆逐艦であるため、日本での報道はこれに対する扱いが大きいですが、実際の戦闘ではやはり、潜水艦が趨勢を決めてしまうでしょう。

なぜなら、ズムワルトはステルス型ですが、それにしても、航空機や艦船などから視認することはできます。中国側が哨戒活動を強化すれば、たとえレーダーで捉えられないにしても、その動向はかなり把握できる可能性はあります。やはり潜水艦の隠密性には、今でも及ばないということです。

それと、ズムワルトはまだ一隻しか建造されていません。さらに、今後の予定でも、3隻ということで、これでは大きな戦闘力とはなりえません。補助的な役割を担うことになると思います。

米軍の戦略型オハイオ型原子力潜水艦
それに比較すると、潜水艦は昨年の米側の広報によれば、71隻です。そうして、先ほども述べたように、中国側の対潜哨戒能力はかなり劣るので、米国の潜水艦は全く察知されずに、南シナ海の領域に入り、中国側拠点に近づき攻撃を加えることができます。

やはり、南シナ海の武力衝突の趨勢は米潜水艦により決まり、中国軍はなすすべがないというのが実態であり、ハリス米太平洋軍司令官の脳裏にもそれがあり、ブログ冒頭の記事のような発言になったものと思います。

潜水艦発射弾道ミサイル・ハッチ
さて、このような動き、日本としても今後もこうした南シナ海の動きに、注視していかなければならないです。かといって、原油の運搬ルートでもある、シーレーンがどうのこうのという話はあまりにも当たり前のど真ん中なので、ここでは改めて説明はしません。

そんなことよりも、日本にとって尖閣諸島の危機がより一層高まることを予期して、それに備えることが日本の当面の緊急課題になるということです。

これに関しては、以前もこのブログに掲載しました。その記事のURLを以下に掲載します。
中国海軍、尖閣接近のウラ 米爆撃機の威嚇に習政権“苦肉の策”か ―【私の論評】日本と戦争になれば、自意識過剰中国海軍は半日で壊滅!東シナ海で傍若無人ぶりを働けば撃沈せよ(゚д゚)!
(昨年11月)中国海軍の艦艇(東調232)が、東シナ海で不審極まる航行をしたことが注目されている。沖縄・尖閣諸島南方の接続水域の外側を、東西に反復航行していたのだ。 
航行が確認されたのは中国海軍のドンディアオ級情報収集艦で、海上自衛隊のP3C哨戒機が発見した。菅氏は「単なる通過ではなく、1日で東西に反復航行したのは特異な航行だ」と指摘し、警戒感を示した。 
中国といえば、南シナ海の岩礁を国際法を無視して軍事基地化したことをめぐって、米国と緊張関係にある。 
米軍は「航行の自由」と「法の支配」を守るため、先月27日、イージス駆逐艦「ラッセン」を派遣したうえ、米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」をマレーシア沖で航行させて中国をけん制した。 
今月8~9日には、グアムから飛び立った、核爆弾搭載可能なB52戦略爆撃機2機が、南シナ海の人工島近くを飛行するなど、圧力を強めている。中国軍は、こうした米軍の攻勢に目立った動きをみせていない。
こうしたなか、少し離れた東シナ海で特異な航行をしたのはなぜなのか。 
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「情報収集艦の航行は、南シナ海での動きと連動しているとみて間違いない」といい、続けた。 
「中国は、米国が艦船だけでなく、戦略爆撃機まで投入するとは思っていなかったはずだ。対抗措置を取らなければ、中国のメンツが立たないうえ、国内世論の反発を食らう。といって、緊迫する南シナ海で下手に動けば、軍事力で歴然の差がある米軍と衝突する事態になりかねない」 
「苦肉の策として導き出したのが、東シナ海への艦艇派遣だったのだろう。『自衛隊が相手ならば、大きな事態にならない』と考えたのではないか。それだけ、米軍の『フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦』で追い詰められているということだ」
そうして、昨年12月には、中国はそれまでには派遣していなかった、機関砲を装備した公船を尖閣付近に派遣しています。さらに、最近では南シナ海にミサイルを配置したりしています。

「海警31239」(上)と「539 安慶」艦(退役)(下)の写真
中国は元フリゲート艦を公船に改造して尖閣諸島に派遣している
いずれにせよ、中国としては今後も米国が南シナ海に圧力をかけるのは目に見えているのですが、それに対して真正面から対峙しても全く勝ち目がないことは明らかです。

なんといっても、中国の貧弱な対潜哨戒能力では、どうみても一方的に惨敗するだけです。だから南シナ海での米軍との武力衝突はなんとしても避けたいのですが、さりとて、それに対する対抗措置を何もしないということになれば、国内での習近平に対する批判は高まります。

それをかわすために、習近平は再び、尖閣諸島に目をつけるかもしれません。日本の海軍力は中国を上回っており真正面から中国が日本に戦いを挑むと、これまた中国には勝ち目は全くありません。特に、先に述べたように、中国は対潜哨戒能力が極度に劣ることと、日本の潜水艦は、攻撃型としては世界一と言って良く、特にステルス性は世界一です。

日本の攻撃型潜水艦である「そうりゅう型潜水艦」
しかし、日本には憲法第9条があり、軍事的攻撃を受けた場合の防御しかできないとい縛りがあります。これは、中国側にも広く知られた事実です。

しかし、憲法解釈には東大を頂点とする日本の主流の憲法学者らの解釈では、「日本は自衛のためであっても、武力を保持したり攻撃することはできない」としていますが、少数派の京都学派の解釈では、「国際紛争を解決する手段として、武力を保持したり攻撃してはならないのであって、自衛のために武力を保持したり攻撃することまでは禁じられているわけではない」としています。

もし、中国が南シナ海での対応に手詰まり、中国国内で、習近平に対する批判が高まれば、習近平は人民解放軍による尖閣上陸を決断するかもしれません。日本が尖閣の実効支配を失えば、軍事基地の建設が進む南シナ海と同じ事態になることは、目に見えてはっきりしています。

元米海兵隊政務外交部次長のロバート・D・エルドリッヂ氏は「中国は尖閣に、簡単に基地を造ることができるだろう。オスプレイのような技術を盗み、機材を開発できるようになれば、大きな飛行場は要らない。ジェット機も尖閣に着陸できるようになる」と警鐘を鳴らしています。

中国は尖閣を奪取した場合、南シナ海の環礁のように
付近を埋め立て、軍事基地化することは十分予想される

尖閣は現在の南シナ海と同じく尖閣周辺を埋め立て「日本に最も近い中国軍基地」と化してしまう恐れが十分にあります。いよいよ、中国が尖閣に上陸というということにでもなれば、日本としては、憲法改正がそのときになってもできなかったとすれば、京都学派の憲法解釈に従い、人民解放軍に対峙すべきものと思います。

ただし、実際に尖閣諸島で本当に戦争になり、日本の自衛隊がこれに対して何の縛りもなく真正面から対峙することができれば、中国の人民解放軍には全く勝ち目がなく、中国側の艦船はことごとく海の藻屑と消え、戦争は短期間で終了することでしょう。

そうして、国際感覚からいえば、日本がこのようなことをしても、これに対して批判をするのは中国だけで、他国は全く批判などしないし、できないでしょう。自分の国の領海や領空を侵犯されたり、あるいは領土に上陸され場合、それに反撃するのは当然のことであり、それを真っ向から批判しては、世界秩序を保つことはできません。

これは、自然権(独立国として当然の)権利であり、国連憲章にも定められた、独立国の権利であり、これを否定することは本来中国を含めていずれの国も否定できません。そうして、多くの国々では、国の自衛権はあまりに当然の権利であり、憲法典にはわざわざ記載されていません。こんなことからも、京都学派による憲法解釈は国際感覚からすれば、当たり前の解釈といえます。
そうして、習近平が一番恐れているのは、安倍政権が尖閣諸島に自衛隊を派遣して、尖閣付近から中国の勢力根こそぎ奪ってしまうことです。

習近平にとって、一番良いのは、中国の軍事力を日本の国民が過度に脅威に感じて、戦争を防ぐために、尖閣諸島を中国に譲ることです。

日本としては、とるべき道は当然のことながら、中国が尖閣に上陸する場合は、それを全力で防ぐことです。米国のオバマは及び腰で、南シナ海や尖閣問題を現状のように、複雑なものにしてしまいました。


南シナ海では、今日のような行動を5年くらい前に発動すべきでした。それでも、中国が南シナ海での傍若無人ぶりをやめないというのなら、軍事的行動をとるべきでした。尖閣問題にしても、オバマは早めに、尖閣諸島は日本固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しないと宣言すべきでした。

オバマが煮え切らない態度をとり続けたことが、中国の増長を招き、今日のような複雑な事態を招くこととなりました。しかし、そのオバマ大統領ですら、米国内での突き上げもあって、やっと重い腰をあげて中国に対峙しようとしています。オバマですらそうなのですから、次の大統領になれば、中国への圧力はますます強まるでしょう。

米国の圧力によって窮地に立たされている習近平(写真左)
安倍総理そうして、日本は、アメリカの二の轍を踏むべきではありません。中国が尖閣上陸をしそうになったら、日本の領海、領空、尖閣諸島上の中国人民解放軍を武力で殲滅すべきです。

以上のように、南シナ海での米中の本格的な浮力衝突の前に、中国による尖閣奪取というシナリオは十分に考えられます。それに対する、日本の自衛隊の備えは現在の中国人民解放軍の能力からすれば十分です。ただし、そのときの日本の国民の覚悟がその後の日本のあり方を決めてしまうことは間違いないようです。

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