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2020年2月22日土曜日

中国人が世界知的所有権機関のトップに?―【私の論評】日米とその同盟国は、火事場泥棒に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!


岡崎研究所

 2020年3月5日~6日、スイスのジュネーブでは、世界知的所有権機関(WIPO)のトップである事務局長を決定する選挙が行われる。


 WIPOは、国連の専門機関の1つで、192か国が加盟する。知的財産権に関する国際的ルールの策定や国際特許の運用・管理、さらに知的財産保護に関する新興国・途上国の支援等を行う国際機関である。任期6年のWIPO事務局長の選出は、加盟国のうち83か国で構成されるWIPO調整委員会における投票で決定される。今回3月に行われるWIPO事務局長の選挙で、日本政府は、WIPO特許協力条約(PCT)法務・国際局上級部長である夏目健一郎氏を次期事務局長候補として擁立したが、中国も候補を擁立していて、それが米国で波紋を呼んでいる。

 米中間では、1月15日、米中貿易戦争の休戦協定ともいえる「第一段階の米中貿易合意」が署名された。この米中間の貿易合意が達成されるまでの交渉では、様々な課題が論議されたが、その中の1つが、知的財産権の保護の問題だった。中国側の産業スパイ、サイバー攻撃等による米国企業の秘密情報の窃取、中国に資本進出する米国企業に対する強制的技術移転等、中国のやり方に米国側は抗議し、中国共産党政府がより強力に米国の知的財産権を保護するよう協力を要請した。報道によると、中国は、知的財産権のより強力な保護を約束し、「第一段階の米中貿易合意」がとりあえず達成されたという。

 このような中、世界の知的財産権を取り扱う国際機関WIPOのトップに中国人が就任するのは如何なものかと疑問を呈する声が米国内では起きている。1月31日付で、米ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるロウギンは、WIPO事務局長に中国人が就任することは、銀行強盗が頭取になるようなもので、知的財産権の保護に害をもたらすと論じた。

 また、2019年12月14日付のトランプ大統領宛の書簡で、超党派上下両院4名の議員(アーカーソン州選出のトム・コットン共和党上院議員、ニューヨーク州選出のチャック・シューマー民主党上院議員、カリフォルニア州選出ジミー・パネッタ民主党下院議員及びウィスコンシン州選出マイク・ギャラガー共和党下院議員)が連名で、中国が指導するWIPOは米国の経済安全保障を危険に晒し、知的財産権や世界的標準ルールへの脅威になりかねないと警告した。

 ロウギンは論説の中で、もし中国がWIPOを支配するようになれば、知的財産に関するすべての基本的情報が直接、中国政府の手に行くことになり、国際的特許システムへの基本的な信頼を切り崩すことになる、と警告する。ロウギンによれば、中国は国際機関を世界のためではなく、自国の利益ないし中国の世界制覇のために利用する。過去の具体例を幾つか見れば明らかだとするが、ここでは一つのみ挙げておく。

 例えば、2015年、中国は国際電気通信連合(ITU)のトップの座を射止めた。その後、ITU は中国の「一帯一路」構想を推進し、中国の電気通信の巨人ファーウェイを守るなど、北京との協力を急激に増やした。また、国連の経済社会局の局長は中国の高官だが、この局は「一帯一路」構想を推進して、中国政府と連携して中国内に「ビッグデータ研究所」を作っている。

 中国が国際機関の事務局長を多く取ろうとしていること、そして取った後、そのポストを中国の利益のために利用していることを、日本は理解しなければならない。

 通常、国際公務員は、その所属する国際機関の利益のために働く存在であり、出身国の利益拡大のために努めることは差し控えることが求められる。そういう中立性が必要である。

 中国も自国民で国際公務員になる人にはそう求めるべきであり、自国の利益の増進をするように求めることはやめるべきであろう。中国にそういうことを明確に要求してもよいのではないかと思われる。

 この問題は、米国、欧州諸国、日本が問題を認識し、対応ぶりを協議する良い材料のように思われる。とりあえずは、WIPOについて日米欧が協力を強化し、中国に対抗するのが良いと思われる。日本は夏目氏を擁立しているが、ワシントン・ポスト紙の報道では、米国はシンガポールの候補を推しているようである。日米両国で協力し、どこかで折り合いをなし、上手く中国候補のWIPO事務局長就任を阻止できれば良いのだが。

【私の論評】日米とその同盟国は、中国に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!

中国の王毅外相が昨年11月、王彬穎氏の擁立を発表すると、「中国は欧米企業から知的財産を盗む国として知られている。その国の出身者がWIPO事務局長に就任するなんて、悪い冗談だろう」という声が聞かれたほどです。もっとはっきり言ってしまえば、中国人をWIPOのトップに据えるということは、火事場泥棒に火消しを依頼するようなものです。

王彬穎氏はWIPOに勤務する前は中国国家工商行政管理総局に勤めていましたから、中国共産党の主要メンバーの一人と見てほぼ間違いないです。

王彬穎氏

国連のシステムの内で、中国の影響力が日増しに増大しています。屈冬玉(Qu Dongyu)が昨年8月、国連食糧農業機関(FAO)の事務局長に就任し、国連専門機関のトップを務める中国人が4人に増えました。

国連の専門機関のトップに就いた最初の中国人は、2007年に世界保健機関(WHO)の指揮を執ったマーガレット・チャンでした。 6年後、李勇(Li Yong )が国連産業開発機構(UNIDO)の局長に就任しました。2015年に赵厚麟(Houlin Zhao)が国際電気通信連合(ITU)の事務局長に就任し、柳芳(Fang Liu)が国際民間航空機関(ICAO)の事務局長に就任しました。現在も在職中である最後の3名の就任は、オバマ大統領の政権下のことでした。

李勇

要するに、トランプが大統領に就任する以前から、国連における中国の影響力は高まっていたのです。前の政権下では注目されなかったことが、なぜ今注目されているのかとは別問題として、注目され対処されるべき問題なのである。

中国の影響力が拡大するにつれ、米国の利益と対立する政策を主張する力や、中国が厄介な問題であると見なす国連の動きを鈍化させる力も大きくなっています。

たとえば、中国が拒否権を行使して国連安全保障理事会の決議をブロックしたのは、国連が中華人民共和国を公式に政府として認めた1971年以来、12回です。さらに、これらの拒否権は、ビルマ、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの抑圧的な政府を、その政策に対する国連の制裁と非難から保護するために投じられたものです。

ブルッキングス研究所の調査によると、中国は2013年以降、国連人権機関で積極性を増し、「国際的な規範とメカニズムの独自の解釈」を推進しています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国の当局者たちが国連の規則に違反して国連スタッフを脅迫し、中国の政策に批判的な非政府組織に嫌がらせをしていると報告しています。

さらに、国際公務員は中立で独立した立場であるはずですが、中国は国際機関で働く中国人に、中国の利益と政策を有利に進めることを期待しています。 2018年10月、中国は国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉(Meng Hongwei)総裁を逮捕し、権力の濫用と「党の決定に従う」ことを拒否したとして彼を告発しました。

中国政府の指示に従わないとどのような事態が待ち受けているかを知っている柳芳(Fang Liu)が、台湾が主要な航空交通ハブであるにもかかわらず、ICAO(国際民間航空機関)のトップの地位を利用して台湾のICAO会議への出席を妨げたのも不思議ではありません。

柳芳

中国が経済的および軍事的に強化されると、国連における中国の影響力や存在感も同様に成長します。政治的および財政的現状から、米国はこの流れを完全に覆すことはできません。ただし、中国の優先事項を考えると、米国や我が国も含めた志を同じくする国々は、この流れの影響を無視することはできないです。

それに、中国には「国防動員法」という恐ろしい法律があります。中国にとって危急存亡のときには、国連組織のトップであろうが、誰であろうが、海外に在留する中国人も含めてすべて中国共産党の指示通りに動かすことができます。中国人は善人・悪人にかかわらず、いざというときは、全員中共の手先として動かすことができるのです。

米国は、中国の影響を合理的に抑え、中国のリーダーシップが米国の利益を直接損なうことのない組織の部分に制限して向けられるようにするための、戦略的措置を講じるべきです。

これには、中国の利益と戦術の詳細な評価に基づく広範かつ包括的で長期的な戦略が求められます。米国および主要な国際機関で志を同じくするリーダーシップを促進し、国際機関で米国人等の雇用を促進して、米国の圧力を意図的かつ慎重に行うことが必要です。

米国は昨年の米中貿易交渉で、このブログでも解説したように、7項目の合意に至りました。知的財産権の保護などは、当然のことながら含まれていますが、最後の項目は、はやい話が米国が合意項目六項目を事実上監査するというものです。米国は、中国が知的財産保護から逸脱し続けるなら、ためらうことなく、中国に新たな制裁を課すことなるでしょう。

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2016年4月3日日曜日

文藝春秋も日テレも間違えた! 意図的かつ無知な安保法制の誤報 田村重信(自民党政務調査会審議役)―【私の論評】憲法九条の解釈は一つしかない、集団的自衛権は、戦後一環して否定されてきたという認識は大嘘(゚д゚)!

文藝春秋も日テレも間違えた! 意図的かつ無知な安保法制の誤報 田村重信(自民党政務調査会審議役)

北朝鮮のミサイル発射に備えてPAC3が配備された防衛省=2013年4月9日、
東京・市ケ谷 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
一昨年(2014年)7月1日、政府は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定した。

私はそれ以来、100箇所ほど講演を、北は北海道から南は九州・沖縄まで行った。テレビも『朝まで生テレビ』や『チャンネル桜』で反対派との討論会に出演した。 (総合オピニオンサイト iRONNA

そこでよく分かったことは、平和安全法制は、きちんと正しく説明すればみなさんによく理解してもらえるということ。今、本屋に行くと反対本や間違った本がたくさん並ぶ。そこで、私は閣議決定後に『安倍政権と安保法制』(内外出版)を、今回法律が国会で成立してから『平和安全法制の真実』(内外出版)を急ぎ出版した。真実を伝える必要があると思ったからだ。

かつて有事法制についても、『急げ!有事法制』(朝雲新聞社)という当たり前の本を出し、勉強したいという方や国会議員のみなさんに参考にしてもらった。

また、『WiLL』7月号の「一問一答」では、テレビ局、学者、評論家の方々に対し名指しでのQ&Aを作ったが、どなたからも批判はなかった。つまりこれは全て正しいということ。もし間違っていれば批判される。WiLLの編集には「これはおかしい」といった話は皆無。「非常によく分かって勉強になった」という話はたくさんあったとのこと。

一昨年、鹿児島県の地方紙『南日本新聞』の記事で、私の講演が大きく取り上げられた。7月の政府の限定的な集団的自衛権容認の閣議決定に対して、鹿児島県出水市議会が「立憲主義の根本を破壊する暴挙」とする意見書を可決した。その後、私が鹿児島市で講演をしたところ議員たちの理解が進み、9月には行使容認を支持する意見書が可決された。

南日本新聞が取材してわかったことは、私の講演がきっかけで「戦争抑止と国際平和貢献のため、憲法解釈の閣議決定は必要と判断した」と変わったということだ。

反対の人たちは相変わらず「戦争できる国になる」とか言っているが、賛成の人たちは、「抑止力を高める必要がある」、そして「7月当時は勉強不足だった」という話だ。

つまり勉強すれば分かるということ。パワーポイントで話を聞いて分かったつもりでも、その後、他の人に説明できない。そこで私は全国で講演する際には、資料を配布して話を聞いてもらうようにしている。私の作成した資料を持って、他の人に説明できる。今回は、そうした地道な努力の成果である。

■マスコミの意図的かつ無知な誤報

意図的及び無知な誤報は非常にたくさんあり、それをきちんと正し、指摘することが極めて重要だ。

例えば、柳澤協二氏は『週刊現代』で「一般の国民に比べて自衛官の自殺は1.5倍」「イラク派遣から帰国した人は10倍自殺する」と言っていた。

週刊現代の誤った内容が掲載された記事
これはおかしいと思い調べたら、男と女で自殺率が全然違うということだ。女性が100人自殺すれば男性は200人以上自殺する。つまり男性の方が自殺率は高いということ。自衛官は95%男性、一般男性の自殺率と自衛官の自殺率を比較すると、自衛官の方が自殺率は低いということになる。

イラクに行って帰ってきた人はどうかと言うと、もっと少ない。アメリカの場合と異なる。日本の場合は戦争が終わってから人道復興支援へ行ったわけで全然違う。これが事実だ。

この事実をきちんとPRすると、国会で自殺問題が取り上げられ大変だったのが、一切自殺の話がなくなった。

ところが今年に入って青森県で講演した際、「自殺は多い」と頭にこびりついている人が結構いることがわかった。だから、正しい情報を伝えていく必要がある。

自衛官の自殺について、『東京新聞』も訂正記事を載せたが、それは28面。間違った記事は1面で、3年前の記事だった。

防衛省に対しては「間違ったことはその時きちんと指摘しなければだめだ」と注意した。自殺の問題、私が提起しなければ嘘がそのまま通り、国会審議においても「自衛官の自殺は多い」というデマが流布されたままだった。

■『文藝春秋』も間違う

『文藝春秋』は11月号に「保守は『SEALDs』に完敗です」という対談を載せた。メンバーの奥田さんの発言中、「現状、自衛隊は軍隊ではありませんから、自衛官は、万が一拘束された時に国際法上の捕虜にもなれません」と。これは間違い。

編集長に電話してもピンと来ない。防衛省にも注意した。すると11月、防衛省広報課長が文書を持って編集長のところに直接出向いて申し入れを行った。

『文藝春秋』には、「自衛隊は通常の概念で考えられる軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として取り扱われており、我が国が紛争当事国となり、万が一、自衛隊員が捕えられるような事態が発生した場合、国際人道法上の「捕虜」として取り扱われることになります」と。
ツイートはブログ管理人が挿入 以下同じ。


憲法と自衛隊の関係についての基本を大学等で習っておらず、基本中の基本がみんなわかっていない。

憲法9条の建前から言えば戦力は持てない。戦力=軍隊だから、日本には軍隊がないということになる。では日本の独立はどうやって守るのだ。自衛隊である。自衛隊は軍隊までいかない必要最小限度の実力組織だから良いとなる。

では外国に行けばどうなるか? 国際法上は軍隊として扱われる。それはすなわち捕虜としても扱われるということ。ただし、外国に行ったら軍隊だから外国の軍隊と同じようにPKOの活動を行い武器の使用ができるかというと、これはまた違う。「武力行使と一体化しない」というようにする等、国内法の制約の中で法律を作っていくから非常に厄介な仕組みになっている。そんな法律の仕組みは憲法との関係で日本しかない。

国会で問題となったのは、外務大臣による「自衛隊が海外に行くと捕虜として扱われません」との発言で、それだけがクローズアップされた。それはどういうことか? 重要影響事態法及び国際平和支援法によって自衛隊が他国軍隊に対して後方支援を行う場合、我が国がそのこと自体によって紛争当事国になることはないことから、そのような場合に自衛隊員が国際人道法上の捕虜となることはない、ただしその場合であっても、国際法上適正な活動を行っている自衛隊員の身柄が少なくとも普遍的に認められている人権に関する基準及び国際人道法上の原則及び精神に則って取り扱われるべきことは当然である、というわけである。

防衛省の文書にも「前述の奥田氏の発言は、明らかに誤りであり、適切ではない」と表現されており、『文藝春秋』に対しても「貴社は、報道機関として、その使命は重く、社会的影響力が大きいと考えており、正確を期した記事の掲載をされますことを切に要望いたします」とある。

■日本テレビも間違う

次は、日本テレビの世論調査です。調査項目が、「同盟国などが攻撃を受けた場合、日本が攻撃されたことと見なして、反撃することができる集団的自衛権の行使など、自衛隊の活動を広げる安全保障関連法が、3月末までに施行されます。あなたは、この法律を支持しますか、支持しませんか?」となっていた。

そう聞かれると、支持する33%に対して支持しないが53%と多くなる。これについても問題ということで、防衛省広報課長が日本テレビの政治部長宛てに文書を送付した。今回の法律は「あくまで『限定的な集団的自衛権』の行使を認めたものであり、他国防衛それ自体を目的とするいわゆる集団的自衛権一般の行使を認めたものではありません」「このような設問は、…誤解を国民に与えるものであり、極めて遺憾であります」「今後慎重かつ適切な報道を強く要望致します」と。

安保法案世論調査について報道した日テレの画面

同じテレビでも、例えばFNNの調査だと、「集団的自衛権を限定的に容認し、自衛隊の役割を増やした安全保障関連法を評価しますか」という質問となっており、この聞き方だと評価する方が割合は高くなった。こうした誤りは、基本的にはこの法律のことを知らない、無知から来ることが多い。知らないことによって間違える。知っていても意図的にわざとデマを飛ばすといったこともあるかもしれないが。

俳優の石田純一氏も間違った。『日刊ゲンダイ』の記事に「中国が攻めてきても、今まで周辺事態法というものがあり」と書いていたが、その場合、周辺事態法ではなく、武力攻撃事態法である。国が外部から攻められているから。そういう基本中の基本も分からないタレントが多い。今後も間違いを正す努力が必要だ。

週刊現代に掲載された石田純一の記事
今回の平和安全法制の議論でも、憲法と防衛政策・自衛隊の関係が正しく理解されていないことから、感情的な誤った主張が幅をきかせる結果となっている。

例えば、戦争は国際法上違法とされていることから戦争法という名前の法律を作れば憲法違反や国際法違反となる。平和安全法制を、戦争法だと批判する人の方が立憲主義の破壊者と言える。

また、徴兵制は憲法上できない。集団的自衛権の解釈を変更しても新たな法律を作ってもできない。さらに他国では、ドイツやスウェーデンなどは、徴兵制から志願制に移行しているのが現状だ。

国会でデモをしていた連中が参議院で法案が通ればこのデモはもっと大変なことになる、と言っていたが、最近はめっきり見かけなくなった。彼らは嘘を言っていた。 (総合オピニオンサイト iRONNA

【私の論評】憲法九条の解釈は一つしかない、集団的自衛権は、戦後一環して否定されてきたという認識は大嘘(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事のようなことは、何も今に始まったことではありません。最近では、8%増税に関しても同じようなものでした。新聞、テレビ、識者、政治家などが8%増税による日本経済への影響は軽微として、財務省主導の一大キャンペーンを繰り返し、安倍総理もそのあまりにも大きな声に屈して、増税を実施したところ、実際にはそれは全くの間違いで、日本経済はかなり深刻なダメージを受けてしまいました。

このままの状況だと、夏あたりには、せっかく金融緩和政策で良くなっていた、雇用状況も悪化に転じる恐れすらあります。それだけ、増税のダメージは大きかったのです。

そうして、安保法制に関しても、PKO法案のときにも誤った報道が幅を効かせていました。このときもPKO法案を「戦争法案」とレッテル貼りをして、マスコミや、左翼や、社会党が大騒ぎしました。しかし、皆さんご存知のように今にいたるまで戦争にはなっていません。そうして、社会党はPKO法案成立後の選挙で大敗し、現在でその存在すら消えてしまいました。

PKO法案について報道した朝日新聞の紙面

その前の70年安保、60年安保の時にも同じようなことが繰り返されました。しかし、この時に通った安保法制により、日本が戦争に突入などということはありませんでした。そうしてこれは、今でも似たようなものですが、60年安保のときの安保反対派のリーダーだった学生は、安保法案の条文など読んでおらずに、反対運動を繰り広げていたことを後に告白していました。

以上の出来事のその時々で、「増税しても日本経済への影響は軽微」とか「安保法制は戦争法案」などと本気で考えた人は、真摯に反省していただきたいものです。自分がいかに扇動されやすい性質を持っているのか、自分のことを省みていただき、今後そのような間違いをおかすことがないようにしていただきたいものです。

そうして、ブログ冒頭の記事では、意図的かつ無知な安保法制の誤報について、いくつか報道されていましたが、実はこれ以外にも日本における安全保障について誤解されていることがあります。それは、大きく言って二点あります。

これに関しては、マスコミや左翼などは当然誤解しているのは、当然ですが、保守系の人ですら誤解している事柄があります。それは、以下の二点です。以下の二点については、実は折にふれてこのブログでは何度も掲載してきたことなのですが、敢えて再度ここに掲載します。
1.憲法九条の解釈は一つしかなく、自衛隊は違憲であるとするものしかない。 
2.集団的自衛権は、戦後一環して否定されてきた。
この二点に関しては、なぜか保守系の人々でも単純に信じ込んでいる人も多く、多くの人々がまるで天地神明の理であるかごとくに頑なに信じ込んでいます。そうして、ブログ冒頭の記事にも全く触れられていません。

しかし、これは真実ではありません。以下に解説します。

1.憲法九条の解釈は一つしかなく、自衛隊は違憲であるとするものしかない。

これに関しては、このブログで何度も、掲載しています。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?
佐々木惣一
このブログを従来から読まれているかたなら、これはすでに周知の事実で、当たり前のことであると認識されていると思います。

詳細は、この記事をご覧いただくものして、佐々木惣一氏ら憲法学の京都学派といわれている人々の解釈によれば、憲法9条は、国際紛争解決の手段として、武力を保持したり、行使したりすることは明確に否定しているが、自衛戦争のためにそれらを保持したり、行使したりすることまで、否定していないというものです。

確かに、憲法九条を隅から隅まで読んでも、自衛戦争をはっきり否定してはいません。さらに、日本以外の国でも、憲法典の条文に平和をうたっているものはありますが、それらの国々でも、自衛戦争のために武力を保持したり、行使するなどとはっきり歌っていないにもかかわらず、軍隊を保持しているといる国がほとんどです。

こういう解釈があるのですから、私自身は、この憲法解釈に従えば、自衛隊を軍隊として、その任務は日本の防衛とすれば、自衛隊は違憲ではないと判断します。

しかし、この憲法解釈は、従来は報道されていたこともあったのですが、最近は全く顧みられなくなりました。保守系の人々は、この事実を拡散すべきものと思います。

2.集団的自衛権は、戦後一環して否定されてきた。

これも真っ赤な嘘なのですが、保守系の人々も政府もなぜか、集団的自衛権は、戦後一環して否定されてきたかのごとく信じ込んでいるようです。

実は、内閣法制局の憲法解釈など、歴代内閣ごとに変わっていました。代表的な例を挙げると、憲法制定時の吉田茂内閣は「自衛も含めて、すべての戦争を放棄します。もちろん軍隊を持ちません」と宣言しました。

ところが、朝鮮戦争が起きると、警察予備隊~保安隊~自衛隊を創設されました。鳩山一郎内閣では「敵のミサイル攻撃を座して待つつもりはない。敵基地攻撃は自衛の範囲だ」と幅を広げました。

岸信介・池田勇人内閣では核武装まで容認し、集団的自衛権の行使など自明でした。そもそも、日米安保条約など、集団的自衛権を行使するための条約であるという理解が当たり前だったからです。

日米安全保障条約そのものがもともと、集団的自衛権を行使するための条約である

朝鮮戦争勃発から池田内閣までの解釈をすべてひっくり返したのは佐藤栄作内閣の高辻正己長官です。このあたり、詳しくは、樋口恒晴『平和という病』ビジネス社を参照していただきたいです。ただし、その後も解釈変更は繰り返されていました。

これに関しては、さらに一つ付け加えることがあります。ドイツには個別自衛権は認められておらず、NATOとの集団的自衛権のみが認められているという事実もあります。

なぜこのようなことをするかといえば、ドイツに個別自衛権を認めてしまえば、ドイツ単独で戦争ができるということになり、周辺諸国に脅威を与えるからです。しかし、NATOとの集団的自衛権ということになれば、ドイツ単独で戦争をすることはできないので、安全だといいう認識に従いこのようなことが実施されているのです。

以上のことが、なぜか保守派の人々でも知らない人が多いです。

これらに関しては、ブログ冒頭の記事に掲載されている事柄よりもはるかに本質的で、重大な事項だと思います。

保守派の方々等、これらの事実、私のブログの内容だけではなく、他の書籍などもご覧いただければ幸いです。そうして、その内容を拡散していただけましたら幸いです。

これらの事実を多くの人々に拡散することができれば、多くの人々の安全保障に関する考え方は根本的に変わるものと思います。

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