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2019年1月19日土曜日

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制


TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相
(中央右)と茂木敏充経済再生担当相(同左)=19日午後、首相官邸

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国が19日、新規加盟の拡大を目指すことで一致したのは、米中による貿易戦争が激化する中で、世界経済の先行きに不透明感が強まっているからだ。広い分野の関税撤廃と高水準のルールを共有する“仲間”を増やすことで、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)する狙いだ。(大柳聡庸)

 現在、新規加盟に最も近いとされるのがタイ。近隣のベトナムに比べ農産品分野などで競争力が低下することに危機感を抱いているからだ。タイの加盟申請は総選挙後になるとみられる。2月末と想定されていた総選挙は延期の公算が大きいが、早ければ今年前半にも新規加盟に向けた交渉が始まる可能性がある。3月に欧州連合(EU)からの脱退を予定する英国も加盟に強い意欲を示す。

 TPPを離脱した米国の産品は関税が下がらず輸出競争力が低下するため、TPPに復帰を促す契機になる可能性がある。閣僚級会合で議長を務めた茂木敏充経済再生担当相は19日の記者会見で、「多くの国・地域の参加を期待している。米国も同様だ」と述べた。

 また、TPPは知的財産権の保護で模倣品などに対する厳格な規律をもうけるなど、高水準のルールを定めており、不公正な貿易慣行を続ける中国に対する抑止効果も期待できる。

 米中の貿易戦争は、中国による知財侵害に対し、米国が追加関税といった保護主義的な動きで対抗したのがきっかけだ。

 安倍晋三首相は会合で「不満が保護主義への誘惑を生み出し、国と国との間に激しい対立を生み出すが、私たちは時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と述べ、米中の貿易戦争を念頭に、自由貿易体制の重要性を訴えた。

【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効後、初めて参加11か国の閣僚らが集まり、本日加盟国の拡大に向け共同声明を発表しました。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては、冒頭の記事にあるインドネシアやタイだけではなく、台湾、コロンビアといった国や地域が新規加盟に関心を示しています。「TPPは世界とアジア太平洋地域の経済・貿易の発展に重要な意義を持つ」(台湾)などと、新規メンバーの早期受け入れを求める声も上がっています。

中でも注目されるのが、3月末に欧州連合(EU)からの離脱を控える英国です。離脱後は、米国などEU以外の国々との貿易関係の強化が急務となりますが、メイ英政権は各国との自由貿易協定(FTA)締結に加え、TPPへの加盟に意欲を見せています。

英国メイ首相

フォックス国際貿易相は先月30日のTPP発効に際し、「(英国が)TPPに参加すれば、カナダや日本のような古くからの友人との強い経済的な結びつきを固めることになるだろう」とする声明を出しました。今月10日の日英首脳会談で安倍晋三首相は、英国がTPPに加盟意欲を示していることを歓迎しています。

加盟希望国に共通しているのは、巨大な経済圏内に入ることによる輸出拡大など経済的な恩恵への期待感です。また、TPPの枠内で新たな国際ルールの整備が進めば、自国が取り残されるという警戒感もあります。

一方、TPP加入の積極論と慎重論がせめぎ合っている国もあります。

「TPP参加で板挟みにある韓国」

韓国の英字紙、コリア・タイムズ(電子版)は今月上旬、同国でTPP参加の可否が割れていると報じました。

TPPに入らないことで加盟国と比べて貿易面で不利な立場に置かれる恐れがある一方、加盟すれば関税の引き下げで自動車など日本製品との激しい競争に国産製品がさらされるとの懸念を指摘。そのため韓国政府は「取引に積極的に参加すべきかどうか迷っている」のが現状だといいます。

TPPの最大の意義は、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)できる可能性が大きいことです。これに関しては、以前のこのブロクにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。 
「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。
昨年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。 
中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。 
米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。 
タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。 
ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。 
この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。 
最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。 
この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。
米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

タイ、インドネシア、韓国、台湾、イギリス、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなるか、参加せず(参加することは中国社会の構造改革をすることを意味する)に米国の制裁を受け続け経済的にかなり弱体化し他国に対する影響力を失うことになります。

農地の視察をする習近平(中央)

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

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2018年7月18日水曜日

衝突も?「米中貿易戦争」拡大で軍事的緊張避けられず 米露首脳会談で中国を牽制 ―【私の論評】米中貿易戦争は、国際秩序の天下分け目の大戦の始まり(゚д゚)!

衝突も?「米中貿易戦争」拡大で軍事的緊張避けられず 米露首脳会談で中国を牽制 

スクープ最前線 加賀孝英

トランプ米大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、ロシアのプーチン大統領と会談
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

ドナルド・トランプ米大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談した。米露関係を改善して、核軍縮や中東問題、テロ対策で協力するとともに、「中国の覇権拡大阻止」という隠れた狙いもありそうだ。過熱する「米中貿易戦争」は今後、南シナ海や東シナ海での、軍事的緊張を高めることは間違いない。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情勢に迫った。

 「トランプ氏は、中国に史上最大の貿易戦争を仕掛けた。中国の習近平国家主席は報復を宣言した。それどころか、習氏がキレて、南・東シナ海での、米国との軍事衝突まで想定した『極秘指令を軍に出した』という情報がある」

 旧知の米軍関係者は緊張した声でそういった。

 ご承知の通り、米国は6日の340億ドル(約3兆7600億円)に続き、10日、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に対し、追加制裁を発表した。中国も同等の報復を宣言。全世界に衝撃が走った。

 外務省関係者は「トランプ政権は、中国が軍事を含む米国のハイテク技術を盗みまくり、『覇権国家を目指している』と激怒している。中国のハイテク産業の息の根を止めるつもりだ。これに対し、習氏は6月下旬、北京で開かれた外交政策の中央外事工作会議で、『中国中心の新たな国際秩序を構築していく』と宣言した。『米国を潰す』と言ったに等しい。このままでは、貿易戦争だけでは終わらない」と解説した。

6月下旬、北京で開かれた中央外事工作会議で、『中国中心の
新たな国際秩序を構築していく』と宣言した習近平

 米中が、軍事的に対峙(たいじ)する最前線は、南シナ海と台湾周辺、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海だ。中でも、最も警戒すべきは南シナ海だ。

 ご承知の通り、中国は国際法を無視して、南シナ海で岩礁を埋め立て、複数の人工島を軍事基地化し、電波妨害装置や対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルなどを配備した。戦略爆撃機の離着陸訓練まで実施している。

 「ふざけるな!」だ。中国は、世界屈指のシーレーンである南シナ海を、自国の内海として支配するつもりだ。

環太平洋合同演習(リムパック、RIMPAC)2018(VOA)

 米国防総省は5月末、世界最大規模の多国間海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック=6月下旬~8月初旬実施、20カ国以上参加)に「中国の招待を取り消す(=排除する)」と発表した。

 中国が周辺国を軍事力で恫喝(どうかつ)し、シーレーンの一方的支配を画策していることへの、米国の強烈な抗議表明だ。米国防総省は、対艦巡航ミサイルなど、軍事施設の即時撤去を求めている。当たり前だ。

 ところが、どうだ。習氏は6月27日、ジェームズ・マティス米国防長官と会談した際、南シナ海の軍事拠点化について、「祖先から受け継いだ領土は一寸たりとも失うことはできない」と一蹴。米国の要求を拒絶した。

 その南シナ海で、中国は仰天行動に出ている。以下、複数の中国人民解放軍、中国政府関係者から入手した情報だ。

 「中国海軍は5月下旬、南シナ海で、56基の無人小型ボートによる『群れ攻撃』の訓練を実施し、映像を公開した。米艦船が『航行の自由』作戦で、人工島周辺に侵入すれば、無人小型ボートに爆薬を積んで『特攻自爆攻撃をする』という米国への警告だ」

 「兵士が漁民に偽装してゲリラ工作をしている。米国が海中に設置したパッシブ・ソナー(=潜水艦の音などを監視する水中聴音機)を撤去し、米軍の監視網を破壊している。2~3人乗りの小型潜水艦で、米艦艇のスクリューを破壊する訓練も行っている」

 中国国内で「反米デモを日常化させ、人民の反米感情を扇動し、対米軍事衝突への世論工作」も検討されているという。

 驚かないでいただきたい。日本にも危機が迫っている。

 日米情報当局関係者は「中国は、台湾への武力侵攻を本気で計画している。その際、日本の尖閣諸島への同時侵攻計画がある。中国は今後、ロシアやシリア、イラン、北朝鮮、韓国などと『反米反日包囲網』を構築するつもりだ。安倍晋三首相潰しの世論工作、日本への恫喝が激しくなる危険がある」と語った。

 トランプ氏が16日、プーチン氏と米露首脳会談を行い、中国を牽制(けんせい)した意味は大きい。

 日本は断じて屈してはならない。あえていう。国難が迫っている。こうしたなか、一部の左派野党は、多数の犠牲者を出した「平成30年7月豪雨」まで、政争の具にして騒いでいる。いい加減にしろ!

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

【私の論評】米中貿易戦争は、国際秩序の天下分け目の大戦の始まり(゚д゚)!

2018年環太平洋合同演習(RIMPAC、リムパック)が6月下旬から8月初めまで、太平洋の米領ハワイ諸島で行わています。社会主義政権であるベトナムは、このたび演習に初参加しました。専門家は、アジア太平洋地域における中国の軍事プレゼンスが拡大するなか、米国が対抗手段として、アジア太平洋諸国と堅く協調していることを示す狙いがあるとみています。

今年の軍事演習には26カ国から2万5000人の兵力、戦艦や潜水艦など52隻、航空機200機ほどが参加しています。参加国は〇ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、〇イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン、シンガポール、〇スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国、〇ベトナム(〇は初参加国)。

米シンクタンクのCNA海軍解析センターの上級研究員ロジャー・クリフ氏は米政府系VOAの取材で、米軍の目的は「志を共にする」国と訓練を実施し、アジア太平洋地域における中国の影響力を抑制することだと語りました。特に、中国不在のなかで、最も中国に近いベトナムが参加することは意義深いとしました。

ベトナム国防省によると、ベトナムは8人の海軍職員を派遣しました。船舶は参加していません。

米軍紙スター・&・ストライプスもまた、米国はベトナムは潜在的なアジア太平洋地域の均衡をとる力があると見なしていると報じました。

2016年以来、米国とベトナムの関係は強化しています。2016年、米国はベトナムへの殺傷力ある武器の販売禁止を解きました。2018年3月、米国空母は40年ぶりにベトナム港に寄港しました。日本官製の外交専門誌「外交」 によると、ベトナムは日本の提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要なパートナーだといいます。

軍事演習には、災害救援、水陸両用作戦、海賊対策、ミサイル射撃、地雷除去、海上保安、対潜水艦戦、防空作戦などがあります。米軍は専門特殊部隊がリムパックに初めて参加します。

実弾演習では、特殊部隊が海上の船舶を沈める「海軍打撃ミサイル」を発射します。上空では「長距離対艦ミサイル」を発射する予定です。

米紙ポピュラー・マシーナリーによると、ますます軍事力を強化させる中国海軍に対抗して、米空軍B-1B爆撃機は、新しい「長距離対艦ミサイル」を発射する可能性が高いです。同紙は、日本が「島に配備された対艦ミサイルが、日本の排他的経済水域を頻繁に通過する中国艦隊に圧力をかけることができる」ことを証明したいと望んでいる、と報じました。

陸軍の「海軍打撃ミサイル」は、地上の海岸線または島に配備を想定し、数千平方キロメートル離れた洋上の敵艦隊を排除できる能力があります。

中国共産党メディア・環球時報は、中国専門家の話として、リムパックのプログラムのかなりの割合は、中国を対象と想定しているとの分析を報じました。

5月23日、米国防総省は、リムパックに参加するための中国への招待をキャンセルすることを決めました。米国防総省の関係者は、中国の南シナ海における人工島の軍事拠点化に対する予備対応だと語りました。

中国は以前、2014年と2016年のリムパックに参加したことがあります。米国防総省は14日までに、中国のスパイ船がハワイ沖で実施中の環太平洋合同演習(リムパック)を偵察していることを明らかにしました。

米太平洋艦隊のチャールズ・ブラウン報道官は声明で、「ハワイ周辺の米領海外で中国の偵察船が活動しているのを監視中だ」と説明。この船は今後も米領海外にとどまる見通しだとし、リムパックを妨害する動きは取らないものとみていると述べました。

国防総省は5月に中国の招待取り消しを発表した際、南シナ海の係争水域での「軍事化の継続」を理由に挙げ、対艦ミサイルや地対空ミサイルシステム、電子妨害装置の配備などに言及していました。

米軍当局者がCNNに明かしたところによると、スパイ船がハワイ沖の海域に到着したのは今月11日。これまでのところ米国の領海には進入していないといいます。

演習参加国で作る合同部隊の海上部門司令官も、中国船の出没を批判。「非参加国の艦船の出没により演習が妨害される可能性があるというのは非常に残念」と述べました。

私自身は以前からこのブログで述べているように、米中が軍事力で直接対決するのは現実的ではないと考えています。

中国が軍事大国になった背景に、経済的な発展があります。言い換えれば、中国の経済発展をスローダウンさせれば中国軍の力は落ちます。そこで通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようという対中政策を提唱しているのが、『米中もし戦わば』(文芸春秋)の著者で経済学者のピーター・ナバロ氏です。

「ピーター・ナバロ」の画像検索結果
ピーター・ナバロ氏

トランプ大統領は就任当初、米国の通商政策の司令塔として新設した「国家通商会議」のトップに、このナバロ氏を据えました。

ところが、トランプ大統領が当選した直後、北朝鮮による弾道ミサイルと核開発問題が浮上しました。実はオバマ政権の間に軍事費が大幅に削られたため米軍が弱体化してきており、すぐ北朝鮮に対して軍事行動を起こせる状況ではありませんでした。

ゆえに時間稼ぎの必要もあり、トランプ政権は中国の習氏と組んで北朝鮮に圧力を加える方策を採用し、対中強硬策を控えてきたのですが、はかばかしい成果は見られませんでした。

そこでトランプ大統領は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難しました。このトランプ政権の「反中」戦略を真っ向から批判したのが、パンダ・ハガー(対中融和派)たちでした。

しかしその後、中国共産党自らが「長期独裁を目指す」と主張しました。ドラゴン・スレイヤー(対中国強硬派)とすれば、「やはりトランプ政権の反中戦略は正しい」となります。長期独裁を目指す習氏のおかげで米国では、ドラゴン・スレイヤーの力がますます増していくことでしょう。

そうして、7月6日、米中貿易戦争が開戦しました。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使いました。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識です。

この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、どちらかが音を上げるまで長引くであろう、というのが多くのアナリストたちの予測です。

やはり、これは、ピーター・ナバロ氏の通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようとする戦略の最初の発動と捉えるべきです。この戦争は、中国がある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するか、現体制のまま経済的に相当弱体化するまで継続されることになるでしょう。

こういう事態を招いた、責任の一端は習近平の対米戦略を見誤ったことにあるといえます。オバマ政権の初期が中国に対して非常に融和的であったことから、習近平政権が米国をみくびった結果、鄧小平が続けてきた「韜光養晦(とうこうようかい:「才能を隠して、内に力を蓄える)」という中国の外交・安保の方針)」戦略を捨て、今世紀半ばには一流の軍隊を持つ中国の特色ある現代社会主義強国として米国と並び立ち、しのぐ国家になるとの野望を隠さなくなりました。

「韜光養晦」という中国の外交・安保の方針を提唱した鄧小平

このことが米国の対中警戒感を一気に上昇させ、トランプ政権の対中強硬路線を勢いづけることになりました。

今、北戴河会議(8月、避暑地の北戴河で行われる共産党中央幹部・長老らによる非公式会議)を前に、米中貿易戦争の責任を王滬寧が取らされて失脚するといった説や長老らによる政治局拡大会議招集要求(習近平路線の誤りを修正させ、集団指導体制に戻すため)が出ているといった噂が出ているのは、その噂の真偽はともかく、党内でも習近平路線の過ちを追及し、修正を求める声が潜在的に少なくない、政権の足元は習近平の独裁化まい進とは裏腹に揺らいでいるようです。

この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。

これは、間違いなく国際秩序の天下分け目の大戦なのです。我が国としては経済の悪影響を懸念したり漁夫の利を期待するだけでは足りないです。別の視点で補いながら、その行方と対処法を探る必要があります。

トランプ政権の対中国貿易戦争を単に自由貿易体制への脅威とみなす人もいるようですが、そのような見方は物事の裏表のうちの、片面しか見ていないと思います。

米中のこの大戦においては、北朝鮮の問題は、大戦を有利に戦うための、駒のようなものです。北朝鮮だけみていては、その真の姿はみえてきません。私は、トランプ政権は金正恩が米国の対中戦略駒として動き、役に立つというのなら、北の存続を許容するでしょうが、そうでなければ、見限ると思います。

場合によっては、中国への見せしめのため、軍事攻撃をするかもしれません。それは、中国も同じことです。米中のどちらにつくかによって、金正恩の未来は大きく変わることでしょう。

そして、ドラゴン・スレイヤーが期待しているのが、日本です。彼らは、「インド太平洋戦略」と称して東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などと経済、安全保障、外交の3つの分野で関係を強化しようとしている安倍政権を高く評価しています。

期待が高いだけに実際に軍事紛争が勃発した際、日本が軍事的に貢献できなければ、日米同盟は致命的な傷を負いかねないです。何よりもさらに独裁体制を強化した習政権はますます日本に対して牙をむくことになるでしょう。特に尖閣諸島は極めて危険な状態です。

この危機に対応するためには、日本自身の防衛体制の強化、つまり防衛大綱の全面見直しと防衛費の増額、そして憲法改正を進めるべきです。そうして、日本も通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制する日本独自の方法を模索し実行すべきです。

特に金融に関しては、我が国は物価目標2%を達成するまで、量的緩和を実行し続けるべきです。実は、これが中国に対してかなりの圧力になることを忘れるべきではありません。中途半端でやめてしまえば、我が国の経済の回復が中途半端になるばかりか、中国を利することになることを忘れるべきではありません。

そうして、日本が金融緩和をやりきることが、中国の現体制の崩壊にむけて最大の貢献になるかもしれません。このあたりは、掲載すると長くなってしまうので、いずれまた改めて掲載しようと思います。

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2018年6月27日水曜日

中国で元軍人デモが拡大 数千人集結、強制排除でけが人―【私の論評】退役軍人への権利や尊厳が守れない状況では、強軍化の夢どころか体制の根底を揺るがしかねない(゚д゚)!


中国江蘇省鎮江市で目撃者が撮影した、集会の最中に座り込む退役軍人ら(月22日撮影、25日公開)

 中国各地で元軍人らが待遇改善を求めるデモが拡大している。江蘇省鎮江市では数千人規模のデモが発生し、治安当局による強制排除でけが人が出たもようだ。人民解放軍が介入の準備を進めているとの報道もある。

江蘇省(地図の赤い部分) 図表写真はブログ管理に挿入 以下同じ

 鎮江でのデモは今月19日に市政府周辺で始まった。中国南部在住で、デモを支援する元軍関係者の男性(60)は産経新聞の取材に対し、現地に集まった元軍人の数を「4千人程度」と推測。22日から23日にかけて行われたとみられる強制排除でデモ参加者にけが人が出たことも認めた。排除にあたったのが人民武装警察部隊(武警)か、現地の警察部隊かは不明という。

 強制排除を受けて全国各地の元軍人が鎮江へ応援に向かったが、24日以降は当局が元軍人らの移動を厳しく取り締まっている。四川省を出発した数百人が河南省・鄭州の鉄道駅で拘束されたほか、鎮江周辺の高速道路では検問が行われ、元軍人らの市内への移動を阻止しているという。


 インターネット上では鎮江で起きたデモ関連の書き込みや画像などが次々と削除されている。ただ、元軍人らが国旗や共産党旗などを掲げて警察官らに抵抗しながら行進したり、地元住民が水や食料を差し入れる様子を映した動画も拡散している。

香港紙・星島日報は、デモ参加者が近くの校舎に30時間近く拘束されたり、入院先の病院で2日間食事が与えられなかったケースがあったと報道した。また軍が介入する可能性も伝えている。

 米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が現地住民の話として伝えたところでは、市政府の周辺道路と、強制排除で負傷した元軍人を収容している病院には警察や私服警官が多数配置されているという。

 中国では6月上旬、河南省●(=さんずいに累)河市でも元軍人による数千人規模のデモが発生。中旬にも四川省中江県で、中越戦争で障害を負った元軍人が自宅で警察官に暴行され、それに抗議する数百人規模のデモが行われた。

 中国の退役軍人の数は約5700万人に達するとされ、その待遇をめぐって不満の声が高まっている。中国社会の不安定化につながりかねない問題であり、習近平指導部は退役軍人への保障強化を掲げて4月、国務院(政府)に「退役軍人事務部」を発足させた。

 ただ元軍人らへの保障の多くは財政が逼迫する地方政府に任されており、問題解決の糸口は見えていない状態だ。

【私の論評】退役軍人への権利や尊厳が守れない状況では、強軍化どころか体制の根底を揺るがしかねない(゚д゚)!

中国では、ついこの間、全国のあちこちでトラック運転手の大規模ストライキが起きたばかりです。これについては、このブログでもお伝えしました。

今度は、元軍人たちのデモが起きました。29年前の学生運動とは違って、労働者や元軍人たちが連帯的な反抗活動を始めたことは、「天下大乱の兆し」と見ることができるでしょう。

この軍人の大規模デモは、何も最近ふってわいたわけではなく、2016年にもありました。これについては、このブログにも掲載して解説しています。当時は、あのような大規模なデモは初めてだったので、習近平の権力掌握がうまくいっていないのではと、囁かれました。

さらに、ごく最近でも今年の2月の時点ですでに発生していました。大紀元は、この出来事のついて以下のように伝えています。
中国退役軍人が待遇改善で再抗議、「両会まで続く」=元軍人
 中国の20以上の省から上京した退役軍人は2月22日から24日まで、当局に対して待遇改善政策の実施を訴え大規模なデモを行った。一人の退役軍人は大紀元に対して、3月の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議(両会)が開催されるまで、各地の元軍人は今後数回分けて、主要政府機関前でデモを続けていくと話した。 
 米自由アジアオ放送(RFA)によると、現地時間22日に約1万人の退役軍人は、北京市の中国共産党中央紀律検査委員会(中紀委)ビル前で集まり迷彩服を着用し整列しながら、当局が約束した待遇改善政策を着実に実施するようと陳情した。23日早朝に北京警察当局に鎮圧された。その後、退役軍人らが交流サイト(SNS)を通じて、全国各地の元軍人に応援を呼び掛け、24日に各地から駆け付けた一部の元軍人は天安門広場で再びデモを行ったが、また鎮圧された。
今年2月の北京での元軍人によるデモ
 湖北省襄陽市出身の退役軍人の王さんは大紀元に対して、「今回3日間は2万人以上の退役軍人が陳情に参加した。彼たちは2つのグループに分けて北京に入った。両会が開催するまで、第3グループ、第4グループ、第5グループと次々と北京に入るだろう」と話した。 
 中国当局は、退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしているため、各地の警察当局は地元の退役軍人に対して監視などを強化している。 
 このため、王さんの地元の襄陽市では約50人の退役軍人が24日の応援のために北京に入ろうとしたが、北京に向かう途中で地元の警察当局に阻まれて、北京に入られたのは10人だけだったという。王さん自身も途中で、王さんを尾行した4人の私服警察らに止められた。 
 それでも、王さんは「必ず北京に行く。第3グループに間に合わなかったら、第4グループに参加する。われわれの待遇が改善されない限り、北京でデモを続けていく」と述べた。 
 RFAの報道によると、22日から24日のデモに参加した退役軍人の大多数はすでに地元に強制送還された。また一部は北京市にある地方からの陳情者を拘留する施設に送られた。当局が鎮圧する際、元軍人らを殴打し暴行を加えた。また、当局は北京火車駅で、地方から上京した迷彩服を着る人に対して身分証検査を強化した。
ブログ冒頭の記事にもあった、退役軍人事務部の設置は習近平の肝入りであり、一般の傾向としては、こうした退役軍人問題の責任は習近平の手中にある、という形で、今回の事件の矛先は習近平政権批判に向かいつつあります。


1989年の天安門事件で失脚し、2005年に死去趙紫陽の元秘書、鮑彤は「警察力によって、(退役軍人の)正当な権利を粉砕すれば、(習近平)新時代の社会矛盾が消滅したり緩和したりするとでもいうのか? これが(習近平のスローガンである)治国理政の新理念新方向なのか?」と習近平政権批判につなげています。

鮑彤氏

さて、この事件の背景はまだ謎です。ですが、香港の民主化雑誌「北京の春」の編集長・陳維健がやはりツイッターで興味深いコメントをしていました。
"今回のデモの現場の鎮江は江沢民の故郷の揚州のすぐ隣の地方都市だ。デモと江沢民が関係あるかはわからないが、鎮江政府は(軍による鎮圧という)軽率な対応をしてはならなかった。…退役軍人問題は習近平自身の手中にあり、官僚たちは自分に責任の火の粉がかかるのを恐れて、行動したがらない。この問題を解決するには必要予算があまりにも大きく、鎮圧するにはリスクが高すぎる"
これはには、習近平の宿敵ともいえる江沢民が何らかの形でかかわっているのかもしれません。

また、一部SNS上では、国家安全部二局(国際情報局)がこの事件の背景を調査するために現地入りしたというまことしやかな噂も流れています。中国当局は海外の情報機関の工作を疑っているのでしょうか。

いままでのところ、中国政府からこの事件に対する詳報はなく、多くのがネット上のSNS発情報を引用したものであり、何が事実で、何がデマなのかはまだわからない状況です。

しかし、退役軍人デモが頻発していることは事実です。日本では2016年10月に北京で行われた数千人規模の退役軍人デモのみが大きく報道されましたが、それ以前もありましたし、それ以降も増え続けているのです。2017年も相当規模のものが少なくとも4件はありました。

習近平政権としては退役軍人デモには、他のデモとは違う「話し合い姿勢」を見せており、今回のような武力鎮圧事件に発展したことは意外感があります。習近平の判断というよりは、偶発的な事件をきっかけにした鎮江市の対応の誤りが引き起こした騒動といえそうですが、今後の中央の対応次第では、本当に1989年の六四天安門事件再来の可能性も否定できないと思います。

トランプ米大統領は3月28日、自身のツイッターで退役軍人省のシュルキン長官を解任することを発表し後任には大統領の主治医ロニー・ジャクソン氏を指名しました。退役軍人省は事務手続きが煩雑であることや期間が長すぎということで、退役軍人にはかなり評判が悪い官庁でした。

これを、トランプ大統領は根本的に変えようとしました。はやい話が仕事をしなけば、役人をすぐクビにできるようにしたのです。さらに、効率を良くするために民営化することも検討しているといいます。

とにかく軍人に対して、手厚い支援を積極的にしようという姿勢が見られます。なぜそうなのかといえば、やはり大統領選挙のときに米軍票がかなり大きな役割を果たしたからです。とくに、軍のある程度上のランクの軍人はヒラリー・クリントンを蛇蝎如く嫌っており、軍人誌には、「ヒラリー・クリントンは中国のスパイである」という記事が掲載されたくらいです。

だからこそ、トランプ大統領は、軍人に対する手厚い支援を心がけるのです。これに対して、習近平はどうなのかといえば、元軍人がここ数年は、毎年大規模なデモをするというのですから、トランプ大統領ほどには軍人を大事にはしていないのでしょう。

さらには、中国ならではの特殊事情もあります。そもそも、上記では元軍人という言葉を掲載しましたが、中国には米国のような軍隊は存在しません。

確かに、人民解放軍は核武装までしている軍事組織であることには違いないです。しかし、これは国民を守るための軍隊ではありません。憲法上の定めも、そうはなっていません。あくまで、共産党の下に配置されています。はやい話が、人民解放軍の中国の軍隊ではなく、中国共産党の私兵といっても良い存在なのです。

人民解放軍の使命は、まず第一に共産党を守ることです。そうして、他国に侵略したり、他の公安警察(日本の警察にあたる)などの公権力では力不足で対処できない人民の暴動などを鎮圧・弾圧することです。

さらに、驚くことにこの組織は、大規模な武装をしていながら、独自で様々な事業を営んでいるという不思議な組織です。日本でたとえると、商社のように様々な事業を営んでいます。

人民解放軍の実体は、軍隊ではなく、共産党の私兵であり商社でもある

日本でいえば、商社が武装したような組織が、人民解放軍なのです。そうして、この武装商社は、様々な事業を営んでおり、人民解放軍の幹部は様々な利権を我が物にし、部下もその利権によって様々な面倒をみていました。面倒をみてもらった軍人は、幹部に忠誠を誓っていたのです。

さらには、軍隊内でもさまざまな汚職や、おかしな慣行がはびこっていました。たとえば、ある程度上まで昇進・昇格するには、幹部に対する賄賂が欠かせないという信じがたい慣行もあったりしました。

しかし、習近平は、軍隊のこのような腐敗を撲滅しようとして、かなり多くの幹部らを粛清しました。たしかに、腐敗を撲滅するというのは良いことのようですが、先にも掲載したように、腐れきった組織を是正するには、それなりの準備をして、ある程度の時間をかける必要があったのですが、米国の退役軍人賞にあたる、退役軍人事務部の設置は今年の3月です。

本来なら、もっと早く設置して、具体的に退役軍人に対してどのような支援をしていくのか、明確にすべきでだったでしょう。しかし、民主化も、政治と経済の分離も、法治国家もされていない中国では、このように後手後手にまわってしまったのです。

習近平政権は今世紀半ばまでに、戦争に勝利でき党に従う一流の近代軍隊を作るという強軍化の夢を掲げて軍制改革に踏み出しました。しかし、退役軍人への権利や尊厳が守れない状況で、誰が命をかけて党に忠誠を尽くそうというのでしょうか。このままでは、強軍化の夢どころか、体制の根底を揺るがしかねないです。

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2017年12月25日月曜日

<元日休業>じわり拡大 外食、コンビニ、携帯ショップなど―【私の論評】雇用に頭を使わなければならない時代が始まる(゚д゚)!

<元日休業>じわり拡大 外食、コンビニ、携帯ショップなど

 深刻化する人手不足を背景に、外食産業を中心に元日を休業とする動きが広がっている。人件費高騰で元日に営業しても費用に見合った売り上げを見込みにくいほか、従業員の心身のリフレッシュを促し、働き方改革につなげる狙いもある。【今村茜】

 ◇従業員リフレッシュに人件費高騰対策も

 ロイヤルホールディングス(HD)は、傘下のファミリーレストラン「ロイヤルホスト」で、2018年から全国の9割超の店舗で元日休業する。元日は週末並みの売り上げが見込めるが、「従業員に正月はリフレッシュしてもらう方が、結果的にサービスの質が向上し会社の利益になる」(同社)との判断だという。傘下の天丼チェーン「てんや」では17年から元日休業を始め、18年は対象を全国の8割に拡大する。

 外食大手の大戸屋HDも、元日に休業する店舗を17年から2倍に増やし、18年は全直営店の約半数が休む見込み。対象店舗は今年の大みそかも休業する。同社も「従業員のワーク・ライフ・バランスを優先したい」と話す。

 北海道や北関東でコンビニ「セイコーマート」を運営するセコマ(札幌市)も、元日休業の店を17年から拡大し、過半数の店舗で休業に踏み切る。

 外食やコンビニ業界は人手不足でアルバイト店員を確保しにくく、人件費も高騰している。年末年始はさらに割増賃金を支払う必要もあり、高い費用をかけて営業するより、休業で労働環境改善や従業員の意欲向上につなげる方がよいとの判断だ。

 元日休業の波は他業種にも広がる。通信大手のソフトバンクは携帯電話販売店「ソフトバンクショップ」「ワイモバイルショップ」を18年から原則として元日休業とし、全国の約8割の店が休む見込みだ。休業による各店の売り上げ減などを補うため、休む店舗には会社が支援金を支払う。同社は「売り上げを気にせず心おきなく休んでほしい」としており、労働環境を整え従業員の離職を防ぐ狙いだ。

 正月営業が恒例だった住宅展示場も休業となる。大和ハウス工業は正月三が日に全国の住宅展示場や営業所などを休業とする。同社は「正月は日本人にとって大事な行事。家族と過ごすことで本人の意欲向上につながり、休み明けの生産性も高まる」と話す。

 元日休業の流れについて、三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉理事・チーフエコノミストは「元日営業で支払う人件費を上回る売り上げが見込めず、各社は費用対効果から休業を選択するのだろう」と分析。「日本人は正月で元気になる。新年に気分を一新し労働意欲を高め消費を喚起するためにも、元日休みは非常に有効」と指摘する。

【私の論評】雇用に頭を使わなければならない時代が始まる(゚д゚)!

人手不足に関しては、今年の元旦からその動きはありました。そうして、それについてはこのブログでも取り上げました。その記事のリンクを以下に掲載します。
人手不足は金融緩和による雇用改善効果 さらに財政政策と一体発動を―【私の論評】年頭の小さな変化に気づけない大手新聞社は衰退するだけ(゚д゚)!
このような表示をする小売業もちらほら出てきている
この記事は、今年の1月10日火曜日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
 年末年始は人手不足などの事情で宅配便の遅配が生じたという。また、ファミリーレストランでは24時間営業をやめるところも出てきている。 
 筆者は日用品でも宅配便を利用しているが、たしかに筆者のところへの宅配便も遅れた。それほど緊急性のないものだったので別に気にしなかったが、到着予定日より2日ほど遅れたものもあった。 
 百貨店も昔は元日営業が当然だったが、元日は休みで2日から初売りも多くなり、一部では3日から初売りというところも出てきている。さらに三が日は休業し4日からの初売りを検討するところもある。これらの正月休業の動きは従業員に配慮する観点からとされている。 
り、これまでアベノミクスで金融緩和を続けたことの成果だといえる。
来年の年始はさらにこの傾向が強まり、人手不足がより深刻になりそうです。

そうして、この記事では以下のような結論を掲載しました。
今年の年頭の人手不足という一見小さくみえる現象は、将来の大きな変化の前触れだと思います。この変化に気づきそれを利用できる人と、利用できない人との間にはこれから、大きな差異が生まれていくものと思います。 
そうして、日経新聞や朝日新聞などは、当然のことながらこのような小さな変化に気づかないことでしょし、それを利用することもできないでしょう。このようなことに気づかない人は、この小さな変化が大きな変化になってはじめて気づきます。しかし、その時は手遅れです。 
日本の大手小売業の失敗は、POSなどを導入して顕在顧客のことを熟知したものの、潜在顧客を知ることを疎かにしたことです。 
日経新聞や朝日新聞も、購読層が減少し続けています。おそらく、潜在顧客のことなど何も考えていないのでしょう。潜在顧客の情報も集め良く考えれば、おのずと小さな変化にも気づくはずです。しかし、あいかわらず、気づいていないようです。

私たちは、そうはなりたくないものです。
このような記事を見ても、金融政策と雇用が密接につながりがあるということに思いが至らない人がいるようです。今年10月の衆院選では、雇用改善はアベノミクス(金融政策)ではなく○○による、というデタラメが出てきました。枝野氏は、民主党政権時代と安倍政権時代で就業者数で変化があったことを認めず、図が間違っているとTVでいっていました。

その図を以下に掲載します。


このグラフは厚生労働省「労働力調査」から作成したものです。これをみると、明らかに安倍政権に入ってから金融緩和を実行していて、それが雇用状況を改善していることがわかります。

ところで、先程もあげたように、雇用政策は、○○によるものという説を数量的に説明したものはみたことがありません。ただし、このグラフのように推移していない資料を識者が作成しているのは見たことがあります。枝野氏はそのようなものを見て真に受けているのかもしれません。このグラフに関して不信感を持つ方は、厚生労働書の統計数値にあたってみて下さい。このグラフに間違いのないことはすぐに理解できます。

それに、もう今年の年初と、来年の年初でも、人手不足が顕著になっていることから、雇用と金融関係について疑うべきではないことは明らかであると思います。

雇用と金融政策。これが結びつかないのは単なる無知です。これはフィリップス曲線として、経験的に昔から知られている事実です。日本では、物価が数%でも上昇すれば、他に何をしなくても、一夜にして数百万の雇用が生まれます。これは、経済学の常識です。これを疑問に思う方は、それを論文にして、経済学会で発表すべきです。これが、世界に認められれば、ノーベル経済学賞を受賞できるでしょう。

これを理解しない人が日本では自称インテリ層にきわめて多いです。マスコミや政治家では理解している人が稀で、無理解の人が圧倒的です。外国では金融政策と雇用がリンクしていて、そのまま報道されますが、国内ニュースでは雇用と金融政策がリンクされない状態で報道するのでほぼ間違っています。

左翼やいわゆるリベラルの人たちは、金融緩和は、株価を上げた「だけ」とまくしたてます。株価を上げたのは正しいですが、株価と雇用に関係があることを忘れています。株価と半年先の就業者数には深い相関関係あります。もっともこれは見かけ上の相関で、実は金融政策が裏にあって、金融政策は株価にも雇用にも効くというのが事実です。株価のみに言及し雇用をいわないのは全くおかしいです。


左翼・リベラルや識者までが、雇用と金融政策の密接な関係を理解していないので、ブログ冒頭のような内容の報道が日本では散見されます。そうして、そのような内容しか目にしない多くの人々を幻惑させています。

結局、金融政策と雇用に関係があることがわからないので、企業経営者や企業の人事担当者も、雇用状況を短期でしか予測できません。

企業経営者や人事担当者は、雇用を雇用統計だけでみているようです。そうなると、雇用情勢をせいぜい数ヶ月単位でしか予測できないことになります。

金融政策と、雇用統計、それと自らが属する産業や、自社特有の雇用情勢にかかわることを見比べ、5年、10年と追跡していくと、自社の雇用情勢が手に取るように把握することができます。

特に、過去の金融政策などが頭に入っていれば、雇用状況の変化を数年にわたって予測することができます。とは言っても、これはいつも正しく予測できるわけではありません。それでも、予測が失敗すれば、失敗したなりにその原因を突き止めてけば、かなり予測は正確になります。そうして、その段階で予測が外れたときにフィードバックも含めて、人事関係者に引き継げは、その人もできるようになります。

こうして、企業に金融政策と、雇用の関係の考え方が広く行き渡れば、日本でも金融政策と、雇用が多くの人に認知されるようになると思います。

特に商売には関係なく、言論活動などをしているだけの、左翼やリベラルの人たちたちは別にして、企業経営者や企業の人事担当者は、雇用に関しては年初は小さな変化だったのですが、来年からは大きな変化になることを認識すべきです。

日本がデフレ・スパイラルで沈んていた頃は、そもそも従業員の雇用はさほど重要な問題ではありませんでした。何しろ買い手市場なので、向こうから勝手にいわゆる優秀な学生が飛び込んできました。ただし、本当に優秀な学生はあまり必要ではありませんでした。

優秀な学生を入れたにしても、デフレでものが売れないのでほとんど役に立ちません。正直なところ、企業はあまり人を雇いたくなかったのですが、それにしても、特定の年に誰も雇わないということになれば、将来の管理職がやせ細ることにもなりかねため、それを防ぐために、消極的に雇っていたにすぎません。

そんなときに、重要視されるのが、お決まりのコミュニケーション能力です。それも、コミュニケーションの本質に根ざしたものではなく、コミュニケーションの本質とはまったく無関係の「報連相」ができるとか、いわゆるコミュ障ではない人を採用するという程度のことでお茶を濁していました。

経団連『新卒採用(2013年4月入社対象)に関するアンケート調査結果』(https://www.keidanren.or.jp/policy/2014/001.html)をもとに作成
  
しかし、これからは違います。その時々で、優秀な学生は違います。コミュニケーション能力が比較的低くても、特にある分野が優れている学生も雇わなければならないこともあるでしょう。管理職も、個性の強い社員を指導する猛獣使いのような能力が要求されるようになるでしょう。

いままでと違って、いわゆるコミュニケーション能力に優れた、おとなしいだけの社員には、これからの時代を乗り切っていけないかもしれません。

要するに、これからは雇用に頭を使わなければならなくなるということです。そうして、頭を使う部分で欠けてはならないのは、金融政策と雇用が密接に関係しているという事実を理解して、雇用の本質を理解することです。これがなければ、何も始まりません。

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2014年7月26日土曜日

日本が常任理事国拡大を再提案へ、中国で反発の声「日本の野望を阻止しろ」「支持する国とは断交だ!」―【私の論評】もはや戦後体制は崩れた!今や新たな世界秩序を樹立する必要がある。ブラジルは日本の意向をくんで快く動いてくれるだろう(゚д゚)!

日本が常任理事国拡大を再提案へ、中国で反発の声「日本の野望を阻止しろ」「支持する国とは断交だ!」

23日、日本が常任理事国拡大に向けての安保理改革を提案する
方針だと伝えられると、中国版ツイッターにはコメントが相次いだ。

2014年7月23日、安倍首相は8月のブラジル訪問で、同国のルセフ大統領とともに国連安全保障理事会の常任理事国を拡大する安保理改革を提案する方針だ。両国はドイツ、インドを加えた4カ国グループ(G4)主導で、常任理事国を11カ国に拡大する安保理改革案を来年中に国連に提出する。4カ国主導での改革案提出は05年以来となる。

このニュースが中国でも伝えられると、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)にはコメントが相次いだ。

「無理だね」
「日本は米国と肩を並べる夢をまだ見てるの?」
「日本の夢はかなわない」

「ロシアを外して、ドイツを入れれば?」
「ロシアみたいなならず者国家は常任理事国に要らない」
「どんなに頑張っても、敗戦国はダメだね」

「日本を支持する国とは国交断絶すべし!」
「日本の陰謀を阻止せよ!」
「犬は永遠に犬だから」

「日本にはその資格があると思う」
「日本はきっと成功する」

【私の論評】もはや戦後体制は崩れた!今や新たな世界秩序を樹立する必要がある。ブラジルは日本の意向をくんで快く動いてくれるだろう(゚д゚)!

上の記事の、微博(ウェイボー)のコメントなど、歴史を知らない低級な中国人が書いているのが大部分であり、読む価値もありません。

国連とは、日本人は平和を意図する機関であり、世界平和を目指すものであると考えているようですが、それは全く異なります。国連(United Nation)は、第二次世界大戦の戦勝国のための機関です。これは、もっと多くの人々が知っておくべきことでしょう。



実際、国連憲章には、敵国条項という条項が今だに残っています。以下にその内容をウィキペディアからコピペさせていただきます。

国際連合憲章第2章では主権平等の原則をうたっており、第53条第1項前段では地域安全保障機構の強制行動・武力制裁に対し安保理の許可が必要であるとしている。しかし、第53条第1項後段(安保理の許可の例外規定)は、第二次世界大戦中に「連合国の敵国」だった国が、戦争により確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こしたりした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は安保理の許可がなくとも、当該国に対して軍事的制裁を課すことが容認され、この行為は制止できないとしている。 
第107条(連合国の敵国に対する加盟国の行動の例外規定)は、第106条とともに「過渡的安全保障」を定めた憲章第17章を構成している。第107条は旧敵国の行動に対して責任を負う政府が戦争後の過渡的期間の間に行った各措置(休戦・降伏・占領などの戦後措置)は、憲章によって無効化されないというものである。 
第77条は信託統治に関する条文であるが、その対象として「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」が挙げられている。「旧敵国」に対する扱いの条文ではないが、「敵国」の語が言及されているために「敵国条項」の一部として扱われている。 
第53条第2項では「本項で用いる敵国という語は、第二次世界大戦中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される」としているが、具体的にどの国がこれに該当するかは明記されていない。また107条の「責任を負う政府」についても同様である。しかしこれらはアメリカ合衆国・グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国・フランス共和国・ソビエト社会主義共和国連邦(継承国はロシア連邦)・中華民国(継承国は中華人民共和国)を含む51の原加盟国、すなわち第二次世界大戦における連合国を指すとする説が有力である。第107条の過渡的期間も明示されておらず、過渡的期間が「責任を負う政府」からの申し立てがない限り永久的に続くという解釈も存在する。 
これらの条文は、敵国が敵国でなくなる状態について言及しておらず、その措置についてもなんら制限を定義していない。このため「旧敵国を永久に無法者と宣言する効果」があるとされ、旧敵国との紛争については「平和的に解決する義務すら負わされていない」と指摘されている。 
日本国政府の見解では日本、ドイツ国(現ドイツ連邦共和国)、イタリア王国(現イタリア共和国)、ブルガリア王国(現ブルガリア共和国)、ハンガリー王国(現ハンガリー)、ルーマニア王国(現ルーマニア)、フィンランド共和国がこれに該当すると解釈している。一方でタイ王国は連合国と交戦した国であるが、この対象に含まれていない。またオーストリアは当時ドイツに(アンシュルス)、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国は日本に(朝鮮)それぞれ併合されていたが、旧敵国には含まれないという見方が一般的である。
未だ日本や、ドイツなど第二次大戦の敗戦国は敵国であり、安保理の許可がなくとも、敗戦国に対して軍事的制裁を課すことが容認されていて、この行為は制止できないとしています。

これは、終戦直後ならまだ理解できますが、戦後70年もたって、日本もドイツも当時とは随分変わりましたし、それにドイツなどとは異なり、日本は防衛戦争を行い、アジア諸国を西欧列強から守り、独立させたのですから、敵国条項が未だに適用されているなど、まったくもって理屈にあわないわけです。


それに、近年の中華人民共和国の状況をみていると、この敵国条項をそのまま捨て置くわけにはいなかないことは、はっきりしています。この敵国条項によれば、現中国は、 安保理の許可がなくとも、日本国に対して軍事的制裁を課すことが容認され、この行為は制止できないということになります。

そもそも、現在の中国である中華人民共和国と日本は、正式戦争をしたこともありません。中華民国「現台湾)とは、戦争したということになっていますが、これとて、日本が侵略したわけではありません。あくまで、防衛戦争です。

日本は、アメリカとイギリスとは戦争をしていますが、これらとは、正式に宣戦布告をして戦っているし、アメリカとイギリスもこの布告を受けて、戦争に突入しています。アメリカ側は、日本のパール・ハーバーは、宣戦布告の前に攻撃されており、日本は卑怯だなどとしていますが、それも、おかしな話で、もともと戦争を開始するときに、宣戦布告を前もって出してから戦争を開始するなどというルールはありません。

多くの国々が第二次世界大戦前にも、宣戦布告をせずに戦争を開始したことなどいくどもあります。何も、日本だけが、そうしたわけではありません。

韓国の23年12月10日、"大韓民国臨時政府対日宣戦声明
日本政府に布告文書は通達されておらず、実効性は皆無
そうして、日本は中華民国に対して戦線布告をしたことはなく、中華民国側も日本に対して戦線布告などしていません。だから、日本で中国との戦争を支那事変と呼び、支那戦争とは呼びません。そもそも軍事衝突と、戦争は同義ではありません。このあたりは、軍事衝突があれば、それを全部戦争と思い込む人たちには、なかなか理解できないことかもしれません。

ましてや、中華人民共和国(現中国)とは、戦争をしたことなどないわけですから、そういう国が、安保理の許可がなくとも、敗戦国に対して軍事的制裁を課すことが容認されていて、この行為は制止できないなどということは、全く理屈にあわないわけです。

こんなことは、アメリカが中華人民共和国と国交を樹立したときに、何らかの形で戦後体制そのものを変更して、新たな世界秩序を構築すべきでした。しかし、その当時から弱体化していた、ソ連をそのまま放置しておいたアメリカには、そのようなことは思いもよらないことだったのかもしれません。

そもそも、第二次世界大戦中の戦勝国のうち、ソビエト連邦は崩壊して存在しません。中華民国は、台湾に逃亡して、中国全土を掌握する状況にありません。それに、アメリカをはじめ、イギリス、フランスなど西欧諸国は経済的にも軍事的にも弱体化しています。

フランスなどは、厳密に言えば、戦勝国ですらありません。

日・独・伊 三国同盟祝賀会にて演説する松岡 洋介 氏
考えてみれは、日独伊三国同盟が調印されてから5年後に国際連合憲章がつくられ、国際連合が設置されました。現代史的な観点からすると、国際連合憲章など、本当に随分昔のままです。あの頃から世界は劇的に変化しています。こんなものが、現在の世の中に通用するはずがありません。全面的に現代にあわせて、つくりなおすべものです。

そうして、安部総理がブラジル訪問のときに、ブラジル訪問で、同国のルセフ大統領とともに国連安全保障理事会の常任理事国を拡大する安保理改革を提案するというのはまさに時宜を得ていると思います。このような安部総理の行動が、いずれ国際連合憲章を全面的に改める契機となるかもしれません。

ところでブラジルは、日本は大きな借りがあります。

それに関しては、このブログにも掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
クロマグロ禁輸否決、欧米主導に漁業国反発 EUは採択断念―中国が世界第二の経済大国になれない今、超巨大金満国家日本に期待が高まったか??
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部分のみコピペさせていただきます。
おそらく、世界中の国が、こうした日本を頼りにするとともに、脅威にも感じているかもしれません。たとえば、ブラジルなどは、日本からかなり金を借りていますから、その金を全部日本に返しただけで、国は財政破綻です。そのような国、それに近い国、あるいは、その予備軍など世界にはたくさんあります。そんなことはありえませんが、アメリカだって、日本が貸している金を一度に全部返したら破綻するでしょう。ロシアも日本のお金が欲しくて、欲しくてしょうがありません。中国もそうです。これからしばらく、ロシアや、中国の傍若無人な態度はなくなるかもしれません(管理人注記:日本が経済援助を外交カードとして用いた場合を想定しています)。
それに、脅威だけではなく、大きな期待もあることでしょう。何しろ、日本は国民やマスコミが思ったり報道したりするのとは裏腹に巨大金満国家ですから、今後かなり期待できます。それは、日本の大方のマスコミな政府がなぜか、ひた隠しにして、国民にも外国にも知られないように努力しているようですが(笑)、他国も馬鹿の集まりではなく、それなりに優秀な情報網を持っていますから、もう、すでに知っていることです。日本国民の多くはこれを知らされていません。
ブラジルは、新興国として伸びてはきましたが、脆弱な経済基盤あるには違いありません。しかし、大方のブラジル人は日本から借金をしているなどの感覚はありません。連中は、金を返すということなど眼中にないようです。しかし、ブラジルに対する援助などは、すべて日本国民の税金などから賄われています。

ブラジルの熱いサッカーファン?

日本のブラジルに対する、経済協力については以下の記事を参照して下さい。

日本の対ブラジル経済協力

この記事自体は古いものですが、昔からこのようなことをやってきたということで掲載しました。

この事実を全く気にしない、ラテン系特有の馬鹿の壁を彼らは築いているわけです。であれば、たまには、このような国にもノータッチの外交カードを切ったり、金をむりやり返させるように圧力をかけることなども有効です。ここしばらく、日本はデフレで、多くの国民が、雇用減・賃金低下で苦しんているわけですから、いずれ、日本国民からブラジルのような国に対しても怨嗟の眼差しが向けられることも十分考えられます。ブラジルは、反日ではないし、どちらかといえば、親日的だと思いますが、それにしても、全く返す気も何もないというのでは、いずれそのようなことにもなりかねません。

ブラジル リオ・カーニバルのダンサー

こういうブラジルでも、日本が常任理事国になれるように努力すれば、借金返済は後回しにしてやっても良いと思います。そうして、ブラジルはそれを期待して、日本の意向に従い、快く動いてくれる可能性が大です。

こういうところに、目をつける安部総理もしくは、総理のブレーンは大したものだと思います。それにしても、日本の外交もだんだんと力をつけてきたと思います。政府・総理主導の外交もしっかりしてきましたが、外務省もまともになってきました。政府がまともなことを言えば、外務省もやりやすくなるということです。

それにしても、反日マスコミは、安部総理のこうした行動も分析せず、するつもりもなく、中国様の意図を反映した記事を掲載し続けるのだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか。

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2013年11月5日火曜日

プア充拡大 280円牛丼、100円DVDなど上質なサービスが背景―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!過去20年間デフレだったことを忘れていないかい!デフレが「プア充」「ウチ充」を生み出していることを!本当はいろいろな「リア充」を自由に選べることが社会の安定と幸福につながることを!!

プア充拡大 280円牛丼、100円DVDなど上質なサービスが背景

デフレの象徴 280円牛丼

高収入を求めず、そこそこ働き自分の生活を充実させていく「プア充」という生き方を宗教学者の島田裕巳氏が提言し、注目を集めている。なぜ「プア充」が支持され、広がるのか。背景には戦後から続いてきた社会の仕組みが大きく変化したことがあるという。関西学院大学社会学部准教授で理論社会学を専攻する鈴木謙介氏(1976年生まれ)が解説する。

* * *
日本型雇用と日本人が共有してきた「成長のイメージ」は密接に関係していた。「正社員として入社し、定年を迎えるまで会社に勤めれば豊かになれる」という人生設計の階段(あるいはレール)が見えやすかった。昇進が決まったサラリーマンは「俺も今度は係長になるし、家を買おう!」といった考えを持てた。

ところが、今の雇用環境を見ると、安定した正規雇用の口が少ないだけでなく、仮に正社員の職を得たとしても「出世の階段」の意味が大きく変わってしまった。かつては出世して中間管理職になれば、ある程度は部下に仕事を任せる「マネージャー」業務が主であった。

ところが、近年は出世をしたとしても求められるのは「プレーイング・マネージャー」の役割だ。自らも成果をあげながら部下を管理する役割を求められるようになった。ビジネス環境の変化に加え、不況で採用人数が減らされてきたため、部下に任せるだけでは業務が回らない。

そもそも正社員になれない若者は言うまでもなく、正社員の若者も「出世は忙しさや辛さに直結するもの」ととらえるようになってきた。これまで幸せだとされてきたライフコースが敬遠されるようになったのだ。

デフレの象徴 100円DVD

これだけでは単なる「プア」にも思えるが、さらに要素として加えられるのが「プアでもそこそこ充実した生活が送れるサービス・環境の拡大」という点であろう。デフレが20年も続き、企業は安くてそこそこ質の良い商品を提供する努力を続け、そうしたサービスの質は格段に高くなった。

昼食に280円の牛丼を食べ、100円払えばTSUTAYAでDVDを借りられる。高級ワインは飲めないけれども、2000円もあればスーパーで売っている格安ワインや第3のビールを友人たちと飲んで楽しむことはできる。高級品・サービスとの差異がどんどん感じにくくなってしまった。

デフレの象徴 1000円以下のボジョレー・ヌー・ボー

各種調査を見ていると「これからは心の豊かさに重きをおきたい」と考える国民の割合は、1970年代からおおむね上昇傾向で推移してきた。だが、結局は1990年代頃までの「心の豊かさ」とは、優雅に高級ワインを飲むといった「お金で買うもの」であった。

それが1990年代以降の長いデフレ期間を経て、「お金」と「心の豊かさ」が本格的に切り離されるようになってきた。「プア充」が拡大することの本質はそこにある。

※SAPIO2013年11月号

【私の論評】ちょっと待ってくれ!!過去20年間デフレだったことを忘れていないかい!デフレが「プア充」「ウチ充」を生み出していることを!本当はいろいろな「リア充」を自由に選べることが社会の安定と幸福につながることを!!

少し前までは、SNS等で「リア充」が幅を利かせていたこともありましたが、最近では「プア充」
「ウチ充」などが話題になることが多くなりました。

ここで、いわゆる「充」モノ言葉について整理をしておきます。

1.リア充(ウィキペディアより)

リア充 新歓女子会?
概念自体は2005年頃[要出典]に2ちゃんねるの大学生活板で成立しリアル充実組と呼ばれていたが、2006年初頭に今のリア充の形として使われ始めた[要出典]。その後2007年夏頃[要出典]からブログやtwitterでも流行した[2]。未来検索ブラジルの主催するユーザ投票企画「ネット流行語大賞2007」では21位となった。2011年には女子中高生ケータイ流行語大賞の金賞に選ばれるまでに成長し、ギャル語として確固たる地位を獲得するに至った。 
当初は、インターネット上のコミュニティに入り浸る者が、現実生活が充実していないことを自虐的に表現するための対語的造語だった。当時は友達が1人でもいればリア充とされた。その後、このニュアンスは、従来のネット文化に(触れずにいた事から)染まっていない、携帯電話を介したネットの利用者たちが流入するにつれ、彼らの恋愛や仕事の充実ぶりに対する妬みへと変化していった。 
日経BPの記事では、アンサイクロペディアの「リア充」の項目に列挙されているリア充の条件から、いずれも携帯電話さえ持っていればパソコンを必要としていないことを指摘し、そこから、ネットとは別にリアルの充実に価値を見いだす、ネットとリアルの住み分けが進んでいるのではないか、と分析している。 
メール転送サービス「CLUB BBQ」を提供する株式会社アイシェアは、2009年3月に同サービス利用者を対象に、「リア充」を含むインターネットスラングに関する意識調査を実施・発表した。「リア充」の意味を分かると答えたのは436人中115人の26.4%、また「趣味・仕事・人間関係など、実生活が充実しているのを『リア充』だとすると」という前提で、自分を「リア充」だと思うかとの質問には、「かなり」「どちらかというと」を含めて436人中233人、53.4%が「リア充」であると答えた。「リア充」であると答えた層の方が、そうでない層よりインターネットを使用する時間が短めで、また睡眠時間が長い傾向にある、とアイシェアは分析している。 
プア充も、ウチ充もこの「リア充」から派生してきた言葉ですが、これらも以下にその定義を掲載しておきます。

2.プア充



プア充は、宗教学者の島田裕巳氏が自著『プア充─高収入は、要らない─』で提言し、話題となっている。これに関しては、詳細を知りたい方は、この著書をごらんいただくものとして、以下にアマゾンの書評からその内容紹介など掲載しておきます。
年収300万円だからこそ、豊かで幸せな毎日が過ごせる! 『葬式は、いらない』の著者が物語形式で描く、現代版少欲知足のすすめ。 
「仕事量に合わない、それなりの収入で不安だらけの毎日」と、「高くはないが、安定した収入で希望あふれる未来」あなたはどちらを選ぶ? 
●誰かと年収を比べて勝っていると、なんとなく安心する人
●「お金は、いくらあっても困ることはない」と思っている人 
●恋人はいるけど、貯金がないから結婚できない人 
●ブラック企業で働いている人 
●仕事のストレスで、肉体的・精神的にきつい人 
●ローンを組んで、家や車を買おうとしている人 
●今の日本、今の働き方、今の生き方に疑問を持っている人
――プア充になって、豊かで幸せな生活を送りませんか?
3.ウチ充



ウチ充に関しては、このブログでも紹介したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
イマドキカップルは「ウチ族」「ウチ充」? 定番化しているウチデートの実態―【私の論評】ちょっと待ってくれ、過去20年間デフレだったことを忘れていないかい!デフレは、本来の「ウチ充」の最大の敵であることを!(◎_◎;)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の内容は、「ウチ族」とは家のなかで恋愛や消費を楽しんでいる人たちで、自宅の生活環境を充実させて、豊かにポジティブに過ごしているのが「ウチ充」なんだそうですが、実際に現状の「ウチ充」を検証してみると、テレビやインターネットをして過ごしていることがおおく、これなら別にウチでなければできないことでもないわけで、新たなトレンドというよりは、数年前に言われた巣篭もり消費とあまり変わりないというものです。

上の記事では、「1990年代以降の長いデフレ期間を経て、「お金」と「心の豊かさ」が本格的に切り離されるようになってきた。「プア充」が拡大することの本質はそこにある」と結んでいます。

まさに、その通りであると思います。デフレとは経済の癌とも呼ばれる病です。正常な状態ではありません。正常な状態でないからこそ、他人の「リア充」が妬ましく思われたり、「ウチ族」「ウチ充」が脚光を浴びるのではないでしょうか。

私は、デフレという異常状態を普通と考えて、物事を語ってはいけないと思います。異常な事態には、異常な事象がつきものです。実は、「リア充」を妬むとか、中途半端な「ウチ充」がもてはやされること自体も本当は異常事態なのかもしれないと思っています。

これらは、デフレが終息すれば、雲散霧消する現象なのかもしれないのだと思います。このプア充については、極端な意見を述べる人います。その例として典型的な大前健一氏のプア充についての考えを以下に掲載します。大前健一氏は、金なくとも幸せな「プア充」時代は続かないとしています。
 日本の現状を見ると、バブル崩壊後の「失われた20年」の停滞によって、いくら努力しても昇進・昇給はなく、よしんば昇進したところで忙しくなるだけという状況になった。だから、個人的なライフスタイルとしてプア充を選択する人を否定はできない。 
 すでに日本はこの10年あまりで手取り年収がどの所得階層も約100万円減った。それでもデモや暴動は起きていないのだから、みんな多かれ少なかれ「プア充時代」に納得しているのかもしれない。 
 しかし、多くの人が「プア充でいい」と考える社会は活力を失う。なぜなら、プア充が増えれば、当然のことながら付加価値を生み出す人が少なくなるからである。しかも、プア充は税金をあまり納めてくれない人々なので、社会的には負担となるばかりだ。国家に蓄えがあるうちは彼らもなんとか生きていけるかもしれないが、蓄えがなくなったらプア充だらけの国家は立ち行かなくなるだろう。 
 もし今のレベルの行政サービスを守ろうとして、税を負担できる大企業や富裕層の税率を上げれば、スウェーデンのように海外に逃避してしまうからである。つまり、プア充が幸せに暮らせるのは、ほんの一時期なのだ。 
 したがって、日本の「プア充時代」も長くは続かないだろう。おそらくスウェーデンやデンマーク、イギリスよりも短く、せいぜい数年間で終わると思う。社会を維持するコストを負担するのは勤労者だけなのに、負担する気のない“ぶら下がり”の国民が増えていくという現象が長続きするわけはないのである。 
 では、これから日本はどうなっていくのか。スウェーデンのように大胆な改革ができるのか? はたまたイギリスのサッチャーのように強力なリーダーシップで変わることができるのか?  残念ながら今の日本には、両方とも期待できない。
この大前健一氏の論考には、明らかにいくつかの間違いがあります。特に、日本の経済をマクロで捕らえていないという重大で根本的なミスを犯しています。

大前健一氏

プア充が、もてはやされたり、そのような人々が出てきたのは、日本人が突然「怠け者」になったから出てきたのではなく、過去の日本がデフレであったことが原因です。そうして、鈴木謙介氏が言うことにも間違いがあります。

鈴木謙介氏

そもそも、デフレは異常現象であり、それに普通であれば、このよに長引くデフレはありません。これは本当に異常なことです。鈴木氏も大前健一氏らも、この観点がありません。それにしても、鈴木氏は大前氏と比較すれば、まだ若くて、その意味では生まれてこのかたデフレで、景気の良い時代など経験したことがないのだと思います。

それに、諸外国から比較すると、日本では昔から平等意識が強くて、いわゆるプア充的な商品・サービスは昔からありました。お菓子や食べ物などでは、本当に低価格でおいしいものがありました。着るものにしてしも、とくに1970年代以降は、様々なものがだされており、プア充向きもありました。それよりも、何よりも、日本ではいわゆる富豪という人向けの商品や、サービスが少なく、いわゆる富豪といわれる人たちは外国の商品・やサービスを活用することが多く、日本ではあまりありませんでした。たとえば、オリエント急行のようなものはありませんでしたが、最近ようやっと日本でも、JR九州の「ななつ星」でようやっと日本でも実現されるようになりました。日本では、欧米に比較すると本当に富裕層向けサービスは少ないです。

であれば、これからもずっとデフレであることを前提でものを語ることは、ある意味仕方ないのかもしれません。しかし、大前健一氏は、ご高齢であることから、デフレでない頃の日本も良く知っているはずです。デフレが日本の長い歴史からみれば、異常な状況゛であることを頭でも、ご自分の実体験からも重々承知しておられるはずです。

日本は、経済的に本抜きん出た存在なので、人口が数百万しかないような、スウェーデンのような大胆な改革をする必要はありません。 はたまたイギリスのサッチャーのように強力なリーダーシップで変わらなくても、十分にやっていける余地があります。どちらの道も選ばなくても、余裕をもって十分に独自の路線を歩むことができます。ただし、それには前提条件があります。それは、無論、古今東西に稀な、このデフレを終焉させることです。そうして、これは不可能なことではありません。

大前氏も、鈴木氏も、まずはこの観点からの論評がなければ、バランスを欠いているとしかいいようがありません。現在の日本の社会・経済を考えれば、何をさておいても一番はデフレから脱却を語るべきです。

これが、実現さえすれば、日本はもともと豊かな国ですから、様々な形の「リア充」を個々人が追及できる時代がやってきます。

無論、「ウチ充」、「プア充」もありです。デフレが終息すれば、多くの人が、会社であまり給料が高くなくても、地位が高くなくても、それなりの幸福を見出したいという「ブア充」は無論のこと、現状の「ウチ充」も、さらに自宅を充実させる本来の「ウチ充」、それどころかもともとの意味での「リア充」を比較的自由に選べる時代がやってきます。

多くの人が自分の価値観に応じた「リア充」を追及できる社会をめざすべき


そもそも、「ウチ充」や「プア充」だって、「リア充」の変種だと考えると、多くの人が個々人の価値観を反映した「リア充」を比較的自由に選べる時代になります。

昔は、財産を何も持たず、知識もない人が最初はリヤカーを引いて雑品回収をしていたものが、20年から30年粉骨砕身して、財をなそうと努力して、一大財産を築いたなどという話はいくつもありました。しかし、最近は、そのような話は耐えて久しく聞きません。やはり、デフレであるということが影響しているのだと思います。

多くの人々は、完璧にデフレを前提としてものごとを考えていますが、穏やかなインフレであれば、このブログでも以前紹介したように、たとえば、「プア充」を目指した人が、20年間同じ職場で同じ職種、職位で過ごしたとすればどうなるかといえば、インフレ分を差し引かなければ、給料が2倍、差し引いたとしても1.5倍なるのが普通です。それが、過去20年間デフレであった国と、ソウではなかった国の違いです。

かつての日本はそれが当たり前だったのに、20年前にデフレ基調になり、1998年からは誰もが否定できないような、デフレとなり、そこから今日まで継続しているせいでしょうか、多くの人がゆで蛙のように、なりこの事実を理解できなくなりました。大前健一氏などその典型でしょう。

デフレで、多くの人々が「プア充」や「ウチ充」しか選べない社会と、個々人に応じて、楽に、場合によってはそれなりの努力すれば、様々な「リア充」を選べる社会とどちらが良いかという異なれば、無論後者に決まっています。

これだけ、デフレが続いた日本、そろそろデフレから脱却して、すべての人々が楽に、あるいはそれなりの努力をすれば、個々人に応じた「リア充」を得られる社会を実現すべき時に来ていると思います。こう考えると、来年の4月からの増税は、本当に無意味です。経済対策を実施しようが、何をしようが、デフレからの脱却は増税すれば、遅れます。本当に困ったものです。今後は、何が何でもデフレからの脱却を遅らさないように、15年度の10%増税など何が何でも絶対に見送るべきです。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

【私の論評】

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【関連図書】

プア充―高収入は、要らない―
早川書房 (2013-09-30)
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つながり進化論―ネット世代はなぜリア充を求めるのか (中公新書)
小川 克彦
中央公論新社
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〈リア充〉幻想―真実があるということの思い込み
仲正 昌樹
明月堂書店
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