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2019年9月23日月曜日

ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず―【私の論評】ユネスコはとうに死んでいる、日本も脱退すべき(゚д゚)!

ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず



国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「世界の記憶」(世界記憶遺産)改革で、目標だった「今年内の実現」を断念した。改革案を検討する作業部会で、日本の主張に沿った新制度の大枠が固まる一方、韓国の反対で最終結論に至らなかったため。審査が凍結された慰安婦関連資料をめぐる日韓の対立が背景にある。

 作業部会が今月まとめた報告書は「改革の核心」で答えが出なかったと明記した。問題となったのは、登録申請された後、「内容が史実と異なる」などとして加盟国から異議が出た案件への対応。関係者によると、対話で決着がつかない場合、日本は「審査継続は困難」との立場を示し、多くの国が賛同した。韓国は「審査対象から除外すべきではない」と主張した。

 韓国が登録を支援する慰安婦関連資料は2017年、日本の強い反対を受けて登録判断が見送られており、韓国は新制度の導入で「同資料が審査枠から外されるのを警戒した」(外交筋)とみられている。

 作業部会は昨年、設立された。世界の記憶審査の透明化に向け、加盟国が関与する制度のあり方を検討してきた。これまでの審査は専門家で作る諮問委員会が非公開で行い、加盟国が申請案件に疑義を抱いても発言の場がなかったため、「政治利用につながる」との批判があった。作業部会の報告を基に、ユネスコ運営を担う執行委員会(58カ国で構成)で来月、改革案がまとまる予定だった。 

 改革は15年、「南京大虐殺文書」の登録をきっかけに、日本が強く主張してきた。ユネスコのアズレ事務局長も改革を支持。作業部会の論議には最多で100カ国・地域が参加するほど、関心は高かった。

 作業部会では審査について、(1)申請案件には最長90日間、加盟国の異議申立期間を設ける(2)登録は、執行委員会が最終的に承認する-などと大筋合意した。来月の執行委員会はこの報告を踏まえ、18カ国程度の小グループによる協議を継続し、来年中の改革実現を目指す方針を決める予定。だが、ユネスコ筋は「日韓が対立し続ける限り、協議は結論に至らないだろう。改革実施のめどがつかない」と懸念を強めている。

 慰安婦関連では、日米の非政府組織(NGO)が「慰安婦は性奴隷でなかった」と示す別の文書を登録申請。ユネスコは「双方の対話」の可能性を探っているが、見通しは立っていない。


 【用語解説】世界の記憶 重要な歴史文書や映像フィルムの保存や開示を促すためにユネスコが登録する事業で、1992年に開始。フランスの「人権宣言」、ドイツの「ゲーテの直筆文学作品、日記、手紙等」、日本の「御堂(みどう)関白記」など400件以上が登録されている。

【私の論評】ユネスコはとうに死んでいる、日本も脱退すべき(゚д゚)!

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」改革案を検討する作業部会では、「政治利用の阻止」を掲げる日本を中国やロシアなど多数が支持し、「韓国は孤立する場面が目立った」(外交筋)といいます。ユネスコは改革のため2年間、新規申請を受理しておらず、制度再開の遅れに不満を示す国も出てきました。

世界の記憶改革は冒頭の記事にもあるように、2015年、中国の「南京大虐殺文書」が登録されたのを機に日本が主張してきました。専門家で作る諮問委員会が非公開で行う従来の審査方法では、登録という「お墨付き」で文書内容を正当化しようとする「政治化」が防げないためです。ところが、作業部会で中国は日本に同調し、加盟国の審査参加で、制度を透明化すべきだという方針を支持しました。

なぜ中国が支持したかといえば、やはり「韓国の書院」世界遺産登録を巡って韓国に不満があったからだと考えられます。

国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)が、李氏朝鮮時代に建立された「韓国の書院」を世界文化遺産に登録したことについて、中国から「書院は中国の文化」「また中国の歴史遺産が韓国に奪われた」と反発が出ています。

世界遺産をめぐる中韓の対立はこれが初めてではありません。「文化とナショナリズム」の問題は、日本も無関係とはいえないテーマです。

「韓国の書院」は16世紀に建てられた白雲洞書院など9か所で構成されます。儒教が盛んだった当時の朝鮮で、官製の学校と異なり、地域社会が設立した私設学校です。



一般的に、教育機関としての書院は7世紀の中国・唐の時代に始まり、16世紀に朝鮮半島へ伝わったといわれています。先代の賢人を祭る祠堂(しどう)と、儒学を学ぶ書斎を兼ね備えるのが基本的構造で、朝鮮半島の書院もこれにならっています。

中国書院学会副会長の鄭洪波(Zheng Hongbo)氏は「李氏朝鮮の書院は、中国の書院制度を受け入れたことで発展を遂げており、その影響は実に大きい」と指摘。「朝鮮独自の部分もあるので世界遺産登録に反対はしないが、韓国の書院がアジア全体の書院文化を体現することはできない」とくぎを刺しました。

インターネット上の意見は、もっと激しいです。

2005年に韓国が申請した「江陵端午祭」が無形文化遺産に登録された際、中国メディアやネット上で「中国発祥の文化・端午節が韓国に奪われた」と批判が起きました。それだけにネットでは「今度は書院文化まで乗っ取られた」「本家である中国の書院はまだ世界遺産になっていないのに」という意見が相次ぎました。

中国の書院については、白鹿洞書院を含んだ廬山国立公園や、嵩陽書院を含んだ鄭州の歴史建築群が世界遺産に指定されています。ところが、「中国の書院」という形では登録されていません。

世界遺産は1か国につき一度に2件しか申請できず、2件を申請する場合も1件は自然遺産の申請が求められています。文化遺産の候補は、申請段階で「順番待ち」を余儀なくされるのです。

韓国からの反論もあります。「文化の起源論争をすれば、きりがない。仏教関係の遺産はインド以外、申請できなくなるではないか」

その理屈でいえば、中国で仏教彫刻の石窟として名高い「龍門洞窟」や、チベット仏教の聖地・ラサのポタラ宮の歴史的遺跡群などが世界遺産に登録されたことはどうなのか、と議論することも不可能ではありません。そして中国人の多くは「外来文化を独自に発展させたのだ」と反論するでしょう。

日本の政治家や文化人が中国を訪れ、日中友好イベントに参加すると、「日本と中国はともに漢字を使っている民族。同じ文化を共有する間柄として仲良くしていきましょう」とあいさつすることをよく見かけます。

こういう時、中国人は内心、「同じ漢字って…。中国人が発明した漢字を日本人が使っているんでしょう?」と思っており、親しい日本人に実際にそう打ち明けます。

日本の幕末から明治期において、福沢諭吉や西周(にしあまね)ら日本の知識人が西洋の政治制度や文化を吸収・翻訳し、「自由」「哲学」「主観、客観」などの言葉を考案し、東アジアに広まっていきました。

現在中国で用いられている、政治・学術や産業の専門用語は、このときに日本から移入されたものです。共産主義ということばもその時に移入されたものです。

優れた文化は各地に広がり、そして発展を遂げて帰ってくるものです。文化をナショナリズムの道具とみなすか、国境や民族を超えて、手を結びあえるインターナショナルなツールとするべきなのか、それは一人一人の考えに委ねられています。

国際組織の多くは、問題を抱えていますが、ユネスコも例外ではありません。国際的な枠組みからの離脱を相次いで表明している米トランプ政権は昨年12月31日付で国連教育科学文化機関(ユネスコ)からも脱退しました。

ユネスコの姿勢が反イスラエル的だとして2017年10月に脱退を通知しており、18年末が脱退時期でした。その後はオブザーバーとして参加していますが、ユネスコ内で中国などの影響力が増すとの懸念は広がっていました。

米国脱退は、ユネスコが17年7月に、パレスチナ自治区のヘブロン旧市街を世界遺産に登録したことがきっかけとなり、イスラエルも続いて脱退を表明。ただ、ユネスコがパレスチナ自治政府の正式加盟を認めた11年以降、米国は分担金の支払いを停止しています。

深刻な資金難に加え、ユネスコをめぐっては、中国が世界記憶遺産に申請していた「南京大虐殺文書」の登録を決めるなど政治的な偏向が問題視されています。アズレ氏は「政治化阻止」の組織改革に取り組んでいますが、米国が脱退し中国の勢いが増す中、実現性は不安視されています。

ユネスコの創設趣旨は、人の心の中に平和のとりでを作ることです。当然公正でなければならない筈なのに、日本の反対を押し切って、中国が主張する歴史問題にお墨付きを与えてしまったのはとうてい日本としては許容できるものではありません。これでは国や人々の対立を深めるだけで、まさにユネスコは死んだ、としか私には思えません。



南京事件については、様々な意見に分かれています。日本国内の学者間でも意見の相違は大きいです。今後もしっかりした検証が求められますが、そういう状況の中で中国だけの言い分に沿って「記録遺産」に登録させることは断じて許すべきではありません。

韓国も今政府の支援で元慰安婦の支援団体が登録を目指しています。ここで放置すれば同じことが繰り返されることは必定です。

重ねて政府の断固たる姿勢を促したいです。日米が抜ければ、ユネスコは形骸化して骨抜きになります。

「南京大虐殺文書」の登録当時、日本政府はユネスコへの拠出金の停止や減額を検討

そんなところに莫大な負担金など払うべきでないです。日本政府は駆け引きではなく、本気で直ちに分担金停止を通告すべきです。

ユネスコなど潰して、新たな国際組織をつくるべきです。

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2018年10月29日月曜日

メルケル独首相、与党党首再選を断念 首相は継続…後継選び議論加速―【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!


ドイツのメルケル首相=29日、ベルリン

ドイツのメルケル首相は29日、自身が率いる保守系政党、キリスト教民主同盟(CDU)の党首再選を断念する意向を固めた。首相職は続ける考え。独メディアが一斉に報じた。2005年以降、首相として13年間にわたってドイツのかじを取り、欧州政治に大きな影響を与えてきたメルケル氏の後継者選びをめぐる議論が加速する。

 CDUは12月上旬に党大会を開き、2年に1度の党首選挙を行う予定で、メルケル氏の態度が注目されていた。DPA通信などによると、メルケル氏は29日の党内の会合で党首選には出馬せず、後継に道を譲る用意があると伝えた。

 メルケル氏は00年以降、18年間、党首を務めてきた。首相任期は21年秋まで。独メディアはこれまで今期が最後になるとの見方を伝えてきた。

 ドイツでは28日、西部ヘッセン州の州議会選挙が行われ、CDUは第1党の座を維持したが、得票率は27%で13年の前回選挙から約11ポイント減り、過去約半世紀で最低水準に低迷した。メルケル氏はこれを受け、党首選不出馬の決断を下したもようだ。

 4期目のメルケル氏は昨秋の総選挙後、半年間の難交渉の末に中道左派の社会民主党との連立政権樹立にこぎつけたが、政権内は移民・難民政策などをめぐる内輪もめが絶えず、今月14日の南部バイエルン州の州議会選でも連立与党2党が大敗。メルケル氏の求心力低下が鮮明になっていた。

【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!

このブログでは最近ドイツのことはを「ぶったるみドイツ」として批判してきました。その記事のリンクを掲載します。
なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い―【私の論評】国防を蔑ろにする「ぶったるみドイツ」に活を入れているトランプ大統領(゚д゚)!
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
中国との対決に備え、米国が空軍も大増強へ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」ほど酷くはないが日本の防衛予算にも問題あり(゚д゚)!

詳細は、これらの記事をご覧いただくものとして、ドイツの緊縮ぶり等に触れている部分をこれらの記事から引用します。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したが、その有効性は疑問視されるばかりです。 
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。 
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。 
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と
最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。 
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。 
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。 
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですかが再配備に公試数か月が必要だとされています。
そうして、このような緊縮をしているドイツが、中国と自由貿易を促進しようと企てていました。
ドイツのメルケル首相と同国を訪問した中国の李克強首相が9日(7月)、会談を開き、200億ユーロ(235億1000万ドル)規模の取引で合意しました。両首脳は米国との貿易戦争が本格化する中、多国間の貿易秩序に関与していく姿勢を強調しました。 
これは、11日のブリュッセルでのNATO首脳会談の直前のことです。米国が、対中国貿易戦争をはじめたばかりのこの時期に、ドイツがこのようなことをしたわけですから、トランプ大統領としては、ドイツに対して恨み節の一つも言いたくなるのは、当然といえば当然です。 
メルケルと李克強

現在のドイツ軍は創設以来最悪の状況なのではないかと思います。 そうして、EUでも中国に対する警戒心が高まっている最中にこの有様です。

そのEUが現在おかれている課題を簡単に以下にまとめておきます。
ユーロ圏は全体として、少なくとも趨勢的停滞の初期の段階にあります。ユーロ圏の現状のインフレ率は、低すぎでありECB目標の半分しかなく、これに対処するには財政刺激策が必要です。 
欧州内での相対的な物価・賃金が適正ではありません。以下に2015年 EU諸国の手取り平均月収の表をあげておきます。
平均賃金表
2015年 EU諸国の手取り平均月収(米ドル、ユーロ)

南欧ではさらに引き下げが必要ですが、そうするよりは、ドイツが好景気になりインフレが高進する方が実現しやすいでしょう。そうして、銀行システムは公的資金注入が必要です。
こうした欧州の状況に、ドイツの緊縮はどう作用するのでしょうか。これも下に簡単にまとめておきます。

ドイツの緊縮が欧州全体の需要を弱め、低金利にもかかわらず、他国にも緊縮を押し付けてしまうことになっています。ドイツが好景気・高インフレになれば、それが南欧での高インフレにもなるのですが、ドイツが緊縮してしまうので、それも起こらないのです。ドイツが銀行救済でベイル・インを求めており、問題が長期化しかねない状況です。
このような状況です。ドイツの緊縮は国内では、安全保障に大きなしわ寄せをもたらすだけではなく、他国にも悪影響を及ぼしているのです。

ドイツの緊縮は異常です。他国とはまるで違った世界にでも住んでいるようです。この状況を改善するには、メルケルが首相のままでは駄目だという声が大きくなり、与党CDUは最近の選挙で過去約半世紀で最低水準に低迷したのでしょう。

この他にも、メルケルには移民問題での不手際もありましたが、やはり緊縮財政に対する批判が最も大きく根の深いものでした。

この「ぶったるみドイツ」問題は、日本とも無縁ではありません。なぜなら、来年の10月から日本が予定通り10%増税をしてしまえば、ドイツと同じように緊縮財政に大きく一歩踏み出すことになるからです。

緊縮財政とは、政府支出の削減や増税といった手段で政府の財政を均衡させる試みのことです。

緊縮財政においては公的支出が縮小され、具体的には公務員の人員削減や給与カット、インフラストラクチャー投資への予算削減などが行われます。消費税などの間接税や法人税も増税される可能性があります。富裕層に対する富裕税も検討されます。

研究や教育への政府支出の削減の結果として、研究プロジェクトの規模縮小や学費の値上げが起こる可能性もありますが、教育費には配慮して値上げされない場合もあります。

実体経済に与える影響が大きいため、不況下ではなく緊縮財政の施行は世論の反発を受けるでしょうが好景気下でするのが理想です。しかし数年後の経済成長率を悪化させ逆効果となる可能性もあります。

緊縮財政政策の推進者らは政府の負債を家計のクレジットカードの請求書に喩えたがります。彼らの意図は、政府の財政拡張が利払いの増加を促すために国が破綻するのだとするシナリオを人々に植えつけることです。

 政府財政を家計と混同して議論することは無意味です。なぜなら政府は徴税だけでなく、債券の発行、紙幣増刷、さらには経済成長(による増収)によって資金調達できるからです。政府が借金を拡大させて投資をすれば、経済成長が起こりGDPが拡大して公的債務対GDPは減少します。

自国通貨建ての債務で政府が債務不履行になることはありえないです。例えばFRBの議長を務めたアラン・グリーンスパンも述べるように米国政府は通貨発行権限を有し、債務不履行に陥る確率はゼロです。セントルイス連邦準備銀行も同様のことに言及しています。

来年10月から、本当に日本もさらに緊縮財政にのめり込めば、安倍総理にもメルケル首相と同じ運命が待ち受けることになるかもしれません。

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2018年6月23日土曜日

【日本の解き方】インフレ目標は断念すべきか 「2%」設定は雇用に劇的効果、財政問題解消のメリットあり―【私の論評】雇用が確保されつつインフレ率が上がらない状態は問題あり?なし?これで、インフレ目標の理解度がわかる(゚д゚)!

【日本の解き方】インフレ目標は断念すべきか 「2%」設定は雇用に劇的効果、財政問題解消のメリットあり

 ある経済ニュースのサイトで、「インフレ目標2%を0%に引き下げるべきだ」という学者の見解が紹介されている。

 まず、インフレ目標の意味を復習しておこう。これは、日本のマスコミや学者でも正しく理解していない人が多い。大前提として、本コラムで繰り返し指摘しているが、インフレ率と失業率は逆相関になっている。(ブログ管理人注:下グラフ参照)


 日銀はインフレ目標を2%としているが、幅がある国も多い。多くは目標プラスマイナス1%である。インフレ目標国は、このレンジに7割程度収まるのが通例だ。インフレ目標の数値自体は、失業率の下限であるNAIRU(インフレを加速しない失業率:ブログ管理人注:構造的失業率とも言われる。現状では2.5%程度と見積もられている)に対応するものとして設定されている。

 インフレ目標の下限を設定するのはデフレを放置しないためだ。そして上限は金融緩和で失業率を下げたいが、やりすぎて必要以上にインフレ率を高くしないように設定する。

 このようにインフレ目標を理解していれば、失業率が下がって雇用環境が良くなっているのにインフレ率が上がらない、という状況は、それほどまずくないことがわかるだろう。

 こうした事情から、日銀は2%のインフレ目標を引き下げる必要はない。インフレ率が上がらないことの国民経済上の弊害はほぼ皆無のうえ、財政再建ができるというメリットがあるからだ。

 日銀のインフレ目標2%はそれなりに効果もある。白川方明(まさあき)前総裁時代の2008年4月~13年3月までと、黒田東彦(はるひこ)日銀の13年4月~18年3月までを比較してみよう。

 インフレ率2%との差は、白川時代に▲2・3%だったが、黒田時代は▲1・5%だった。(ブログ管理人注:下グラフ参照)


 インフレ率2%からの乖離(かいり)としてインフレ率と2%との残差平方和の平方根(標準偏差の類似概念)をみると、白川時代は「2・5」だったが、黒田時代は「1・6」となっており、黒田時代はインフレ率2%から外すことが少なくなっている。

 ただ、米英では、インフレ率2%との差はほぼゼロ、2%との乖離は「1・0」程度なので、黒田日銀のパフォーマンスは米英からは一歩劣っている。

 それでも、失業率は劇的に改善したので、「2%」の目標を設定した効果はあったと見るべきだ。

 しかも、日銀が市場から国債を買っていて、インフレ率が上がらなければ、さらに買えることを意味する。統合政府のバランスシート(貸借対照表)を見てもわかるが、日銀が購入した国債の利払費は、日銀納付金になるので事実上負担なしになる。この事実を見ても、財政問題が解消することが分かるだろう。

 本当にインフレ率が上がらなければ、市場の国債を中央銀行が買い尽くすことによって、財政問題がなくなると、かつてベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)元議長は筆者に言ったことがある。

 こうしたことからみても、インフレ目標の断念は的外れだといえるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】雇用が確保されつつインフレ率が上がらない状態は問題あり?なし?これで、インフレ目標の理解度がわかる(゚д゚)!


この記事の冒頭の記事で、ある経済ニュースのサイトで、「インフレ目標2%を0%に引き下げるべきだ」という学者の見解について掲載されていますが、その記事とは、ブルームバーグの記事です。その記事のリンクを以下に掲載します。
物価統計の第一人者も2%を断念、日銀は金融正常化を-目標0%適当
渡辺努東大大学院教授

学者とは渡辺努東大大学院教授のことです。この記事は、6月19日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを引用します。



渡辺教授によると、消費者物価に採用される品目の価格変化率は、米国(約200品目)はプラス2.5%前後が最も多いが、日本(約600品目)は異次元緩和後も含めほぼ5割が0%近傍。理髪店の料金が典型で20年近く変わっていない。最近では価格を変えずに商品サイズを小型化する動きも目立ち、値上げを怖がる企業マインドを是正するには時間がかかるという。 
渡辺教授は、効果のない異次元緩和は手じまいが必要だと指摘する。2%物価目標の旗を降ろして0%にすれば、現在の物価上昇率で達成されるため「さらに緩和が必要という理屈」も生じず、超低金利政策を「続ける理由はない」と語る。
やはり、この主張はおかしいです。そもそも、G7諸国において、日本だけが現在でも、消費税増税も含む緊縮財政を続けています。その結果、個人消費が著しく阻害され、そのため物価上昇にも悪影響が出ているという点は全く無視されています。

さらに、物価目標が達成されないまま、金融緩和をやめてしまえば、失業率が上がって雇用環境が悪くなるという最悪の状況に見舞われることになります。

私は、一国の経済にとってもっとも重要なのは雇用だと思います。個人消費があまり伸びずGDPの伸び率もG7では最低レベルにある日本ですが、それでも雇用状況は良く、失業率が低下し、特に今年の新卒の就職率は過去最高のレベルに達しました。

それに、現状物価が上がらないとして、何か問題があるでしょうか。物価が下落しているデフレであれば、問題でしょうが、すでに不十分ながらもなんとかデフレでない状況にはなっており、物価は安定しています。現在は、「インフレも失業も無い、経済状況」にあります。この状況をわざわざ意図的に崩す必要性など全くありません。

さらに、日銀が国債を市場から購入しているので、財政再建までできています。現在の日本は、政府に日銀まで含めた統合政府ベースではすでに、昨年の段階で財政再建は終了し、現状では黒字状況です。

さらに、インフレ率が上がらないというのなら市場から日銀が国債をすべて購入すれば良いだけの話です。そうなると国債暴落は完全になくなるというか、暴落のしょうがないです。

それでもインフレ率が上がらないというのなら、先日もこのブログで掲載したように、新たなに国債を発行すれば良いのです。特に耐震や震災の復興のために、大量の長期国債を発行するというのなら、立派な大義名分が立ちます。

インフレ目標とは、下限はデフレを放置しないために、上限は失業率を下げたいがあまり金融緩和をやりすぎて必要以上にインフレ率を高くしすぎないようにするための指標です。この理解ができていないと、ブルームバーグのようにとんでもない記事を書くはめになってしまいます。これは、ほとんどのマスコミにいえることです。

雇用が確保されていながらインフレ率が上がらない状態は、全く問題はありません。これが理解できない人は、経済に関する基本ができていないと思います。これはインフレ目標の理解度チェックとして非常に良い設問だと思います。

皆さんも、チェックしてみて下さい。周りの人もチエックしてみて、わからない人がいたら、教えてあげて下さい。そうして、理解のためには、難しいマクロ経済の教科書などを隅から隅まで読む必要などありません。上の記事にもあった、マクロ政策・フィリップス曲線を理解すれば、それで十分です。残念ながら、マスコミや、渡辺努氏はこれを理解していないようです。

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