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2019年10月25日金曜日

「中国は人々の自由と権利を抑圧…結局は軍事だ」ペンス米副大統領、対中強硬過熱  識者「中国の解体をも見据えている」―【私の論評】NBA問題で理解できる! 米中冷戦が、「文明の衝突」の次元にまで高まった理由(゚д゚)!


演説するペンス副大統領

 マイク・ペンス米副大統領は24日、ワシントンで、ドナルド・トランプ政権の「包括的な対中国政策」について演説した。共産党独裁国家・中国への強硬路線を打ち出し、経済だけでなく、外交や防衛、人権問題など幅広い分野にわたり、中国と対峙(たいじ)していく覚悟を示した。米中新冷戦が激化するのは必至だ。


 「中国は人々の自由と権利を抑圧している。香港の人々の権利を尊重した平和的な解決方法があるはずだ。抗議デモに暴力を使うなら、貿易で合意するのはより難しくなる」

 ペンス氏は、政策研究機関「ウィルソン・センター」での演説で、中国・香港両政府への抗議活動が続く香港情勢をめぐり、まず警告した。

 さらに、ウイグル族への弾圧や、南シナ海での軍事拠点化、沖縄県・尖閣諸島周辺に連日公船を侵入させるなど、中国の人権問題や軍事拡大政策に非難の言葉も並べた。

 そのうえで、「米国の指導者は、もはや経済的な関与だけで、中国共産党独裁国家を、自由で開かれた社会に変えられるとの望みをもはや持っていない」と述べ、経済発展により中国の民主化を促そうとした歴代米政権の対中政策を否定した。

 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」についても、「中国は世界各地で拠点の港湾を設けており、表面上の目的は経済だが、結局は軍事だ」と警戒感をあらわにした。

 トランプ大統領と、中国の習近平国家主席は、11月にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて会談し、米中貿易協議での部分合意を目指している。

 これに先立ち、ペンス氏は中国の覇権主義を厳しく批判することで、牽制(けんせい)した形だ。今回の演説をどうみるか。

 ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「トランプ政権の『対中強硬路線』がはっきり固まった。11月には米中貿易協議も予定されるが、『部分合意が達成されなくとも構わない』との判断があったのだろう。今回、『中国共産党こそが、自由主義社会の脅威であり、諸悪の根源だ』と明確にしたことで、今後、トランプ政権は中国共産党を倒しにかかり、人民解放軍も倒し、その先に『中国の解体』をも見据えているのではないかと感じた」と分析している。

【私の論評】NBA問題で理解できる! 米中冷戦が、「文明の衝突」の次元にまで高まった理由(゚д゚)!

上の記事では、NBAについては何も触れられていないですが、米国内の報道ではNBAに対する批判が中心に報道されています。

その典型的なものを以下に掲載します。

<引用元:ワシントン・エグザミナー 2019.10.24
ペンス=NBAは中国の「完全に所有された子会社のように振る舞っている」
マイク・ペンス副大統領は24日、NBAは香港デモを受けた中国政府の人権侵害に関して圧力に屈したと述べた。ペンスは、中国が米国に「検閲を輸出」しようとしていると述べ、バスケットボールリーグとその企業スポンサーが屈していることを恥ずべきことだとし、「単に間違っているだけでなく、アメリカ的でない」と述べた。 
「NBAの大物プレーヤーとオーナーの中には、いつもこの国を批判するために自由を行使しているのに、中国の人々の自由と権利のことになると声が出なくなる人たちがいる」とペンスは、ワシントンDCのウィルソンセンターでの演説で述べた。 
「中国共産党の味方をして自由な言論を封じることで、NBAはあの独裁政権に完全に所有された子会社のように振る舞っている。故意に人権を無視する進歩的な企業文化は、進歩的ではなく抑圧的だ」とペンスは話した。 
副大統領はNBAの関連企業も非難した。「ナイキは自身を『社会的正義の擁護者』として売り込んでいる。香港に関しては、むしろ社会的良心を入り口で確認するのを好んでいる。中国のナイキの店は実際、ヒューストン・ロケッツの商品を棚から撤去して、中国政府と一緒にロケッツのゼネラルマネージャーの7語のツイートに抗議している。『自由のために戦い、香港を支持しよう』という内容だ」とペンスは話した。 
ペンスは、ホワイトハウスが継続中の貿易交渉を、香港について中国政府を軟化させることに結び付けていることを評価した。「トランプ大統領は、当局が香港のデモに対して暴力に訴えるなら貿易交渉ははるかに難しくなると繰り返し明言してきた。それ以来、香港当局が、そもそもデモの火付け役となった容疑者引き渡し法案を撤回し、中国政府がある程度自制を示したのを見てうれしく思う」
NBA(National Basketball Association)は、アメリカで展開する世界最高峰のプロバスケットボールリーグ。また北米4大プロスポーツリーグの一つです。ちなみに残りの3つは、【NFL(アメリカンフットボール)、MLB(野球)、NHL(アイスホッケー)】です。


参加チームは30チームあり、内29チームがアメリカ、1チームがカナダを本拠地としています。 NBAはチームを東西で2つのリーグ『イーストカンファレンス、ウエストカンファレンス』に分かれています。また1シーズン終了後、上位8チームがプレーオフ進出となり、トーナメント方式の試合となります。(先に4勝で勝利)

各カンファレンス1位を決め、最後にNBAチャンピオンをかけNBAファイナルと呼ばれる決勝戦が行われます。(先に4勝で勝利)

シーズン中とプレーオフでは選手の気合い、本気度が全く違います。シーズン中は言ってしまえば練習試合。そこでチーム力を磨き、プレーオフから試合開始と言った感じです。シーズンを通して見れない人は、プレーオフから見ても十分楽しいと思います。

そんなNBAですが、実は国際バスケットボール連盟FIBAとは全く別の団体で、バスケットのルールなども異なります。

NBA自体について、詳細を知りたい方は以下のリンクからどうぞ。日本語で解説している記事に飛びます。

https://dailychips.xyz/nba-terms-commentary/

さて、このNBAとはどのようなものなのでしょうか。特に米国人にとってはどのような存在なのでしょうか。

多くの米国人は社会的成功の模範となるストーリーが大好きです。世界中から注目を浴び、プロリーグを普及させたNBAは、メリトクラシー[個人の実力主義]という米国人の夢をかき立てます。

NBAは、多くの若者が憧れ、夢をかきたてる世界です。そのような世界最高峰のリーグに、日本人で初めて挑戦した森下雄一郎氏のエピソードから、先の命題について解き明かしていきたいと思います。

地方創生について熱く語る森下雄一郎氏

以下は、森下氏に米国で生活の場所を提供してくれた恩師の二人とのエピソードです。

森下さんが「NBA」を目指していた頃、米国人のファッションなどを真似をして、それが格好が良いと思っていたため、ある意味、「日本人らしさ」というものをなくしていました。

そんな米国かぶれしている頃、恩師の二人からこう言われたそうです。

「お前は何人だ?」

「日本人だ」

と答えると、こう返されたそうです。

「それであれば、お前が育った国や地域の『誇り』を俺たちに語ってみろ。」

当時、20歳前後の彼は、 全く、母国日本を「誇り」に感じたこともなく、勿論、勉強も、必要性も感じたこともなく、自分の国のことを、胸を張って語ることなど できませんでした。

その時2人の親父は、こう言いました。

「お前が自分のルーツを勉強し、俺たちに胸を張って、『誇り』を語れた時、初めて俺たちは家族と呼びあおう」と。

そうして、

「人種や文化、宗教、全てが違う人と人が出逢い、分かりあえるのは、互いが『誇る』違いを認め合うことからが、全てのスタートだ」とも言われたのです。

彼は、本気で悩み、考え、初めて自分のルーツについて、そして、母国について、本気で勉強をしました。

​世界に誇れる、日本の「誇り」 それは、探すまでもなく、そこに関心を持ち、振り返ると、先人の方々が、私達にたくさん残してくれていることに彼は気づきました。

全ては気づきから始まります。

​その後、森下氏と2人の親父とは、 街ぐるみで、仲間や家族が増え、いつまでも消えない、人と人としての関係を結ぶまでになりました。

NBAデビュー 開幕戦に先発し14得点10リバウンドした八村塁

NBAには以前から様々な問題があったのも事実ですが、それにしてもNBAの根底にはこのような精神が宿っているはずなのです。現在の、森下 雄一郎氏は、日本の社会活動家です。「SENDto2050 PROJECT」の創設者であり、日本の地方創生活動「地方崛起」の発起人です。NBAの精神性は今でも、森下氏に受け継がれているようです。

このような、NBAのもともとの精神性の高さは、単なるスポーツを超えて米国人の誇りであり、威信なのでしょう。米国には、特に難解な学問等ではなく、バスケット・ボールという、誰にも理解されやすいスポーツによって、物事の考え方、理屈、正義、平等、公平等の考え方、価値観を等を啓蒙してきたという歴史があるのです。

こうした米国人の理想を体現してきたNBAが、香港デモを受けた中国政府の人権侵害に関して中国にやすやす圧力に屈したことに、ベンス副大統領は忸怩たる思いがしたのでしょう。

このペンス大統領の発言からもわかるように、米国の中国に対する冷戦は、貿易や軍事的牽制や覇権争いの次元から、精神性の問題、価値観・理念の問題への次元、いいかえると「文明の衝突」にまで高まったとみるべきです。NBAの件はまさにそれを象徴するものです。このNBAの件を理解しないと、ペンス副大統領の発言の真意はなかなか理解できないかも知れません。

NBAの件は、単なるスポーツリーグへの中国の圧力ではなく、米国人が大事にしてきた、精神性、価値観、理念、誇りに対する中国の挑戦であると、ペンス副大統領はみているのです。もはや、ウィグルの問題や、中国国内での人権侵害の問題は、アジアでの中国の暴虐は、対岸の出来事ではなく、米国にも悪い影響を与え始めていると、ペンス大統領はみているのです。

上の記事では、今後、トランプ政権は中国共産党を倒しにかかり、人民解放軍も倒し、その先に『中国の解体』をも見据えているのではないかと感じたとしていますが、私もそう思います。この対立は10年以上は続くでしょう。その後に中国は旧ソ連と同じような運命をたどるでしょう。その引き金をトランプ政権が引いたのです。

【関連記事】

NBAの中国擁護が米国団体にとって今に始まったことではない理由―【私の論評】いずれ中国は、世界市場から完璧に弾き出るよりしかたなくなる(゚д゚)!


2018年12月24日月曜日

【政界徒然草】いまさら「辺野古反対」で政府批判する不実な人たち―【私の論評】結局民主党政権時代の負の遺産に振り回されているだけ(゚д゚)!

【政界徒然草】いまさら「辺野古反対」で政府批判する不実な人たち

沖縄県名護市辺野古の沿岸部に投入される埋め立て用の土地

 政府は14日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾=ぎのわん=市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立てに着手した。移設反対を掲げる玉城デニー知事(59)は計画への賛否を問う県民投票などを通じ、政府に抗戦を続ける構えをみせている。国政でも主要野党の議員が政府を批判するが、驚くのは旧民主党政権下で辺野古移設を容認した面々も平然と沖縄県に歩調を合わせていることだ。

「辺野古回帰」の過去忘れ

 「長い目で見れば日米安保にも悪い影響を与えかねない状況だと強く危惧している。沖縄の民意を意図的に逆なでしているとしか思えない。到底容認されるものではない」

 立憲民主党の枝野幸男代表(54)は15日の記者会見で、埋め立て開始をこう批判した。福山哲郎幹事長(56)も14日、「安倍晋三政権には沖縄への情もなく、法の支配や直近の民意に対する謙虚さのかけらもなく、民主国家にはほど遠い状況だ」と断じた。

立憲民主党 福山(左)   枝野(右)

 立憲民主党は「辺野古反対」を政策の重要な柱と位置づけているようだ。旧民主党出身の衆院議員らを立民会派に受け入れる際にも、辺野古反対への賛同を条件としている。

 基本政策の一致を求めるのは当然だ。ただし、問題は旧民主党政権の中枢を担った有力議員が、いまさら移設計画への反対を堂々と主張する資格があるのかということだ。

 普天間の移設先について「最低でも県外。できれば国外」といった無責任な約束で沖縄県民の感情を振り回した鳩山由紀夫政権で、枝野氏は閣僚を務めた。福山氏は外務副大臣。本人らも一応認めているが、責任の一端は免れない。

鳩山内閣が辺野古移転を閣議決定したことを伝える朝日新聞の紙面

 続く菅直人政権で枝野氏は官房長官・沖縄北方担当相として途中入閣し、福山氏は官房副長官だった。まさに政府中枢にあって、両氏は「内閣としての(辺野古移設の)方針はしっかり進める」と記者会見などで繰り返し表明していた。

 民主党が下野した後、平成26年11月の沖縄県知事選では仲井真弘多知事(当時)による辺野古埋め立て承認への評価が争点となった。この際、民主党県連代表だった喜納昌吉氏が承認撤回を掲げて出馬したが、これを「県民を混乱させ、党の信用を失墜させた」などとして除名処分の手続きを取り仕切ったのは当時の枝野幹事長だった。

具体策ないまま変節?

 そんな枝野氏らが「辺野古反対」に豹変(ひょうへん)したのは今年8月29日、党沖縄県連の設立時だ。枝野氏は那覇市で会見し「このまま基地建設を続行する状況ではないという判断に至った」と明言し、過去との整合性は「立憲民主党は新しい政党だ」と開き直った。

 会見で枝野氏は「安倍政権になってから沖縄の理解を得る努力も進んでいない」とも主張したが、事実はどうか。

 旧民主党政権は辺野古移設へ回帰した後も沖縄の信頼を取り戻すことはできず、普天間移設や、それと事実上セットになった他の米軍基地・施設の返還はまったく進まなかった。

 沖縄との関係を修復し、慎重に手順を踏んで仲井真氏による埋め立て承認を導いたのは現政権だ。移設計画の前進に伴い、米海兵隊北部訓練場(東村、国頭村)の半分以上にあたる約4千ヘクタールの返還など沖縄の基地負担軽減も進んだ。政権担当時の自分たちの無策を棚に上げて政権批判ができるのは、どういう神経だろう。

 枝野氏は官房長官時代の23年2月14日の記者会見で、沖縄の米海兵隊の抑止力に関して「高い機動性や即応性を持った海兵隊が沖縄にいることが抑止力につながっている」との認識を示していた。

 ところが現在では「海兵隊の役割がこの5年で大きく変化した」とし、米国との交渉次第で辺野古の工事を止めつつ普天間返還が可能になると説く。変化したのは海兵隊の抑止力ではなく、枝野氏ではないだろうか。いずれにせよ、具体案がなければ鳩山氏と同等以下の無責任だ。

国民民主党の玉木雄一郎代表

 立憲民主党だけではない。国民民主党の玉木雄一郎代表(49)は、辺野古埋め立ての着手を「民意を踏みにじるもので、強い憤りを感じる」と述べた。旧民主党政権の失政に一定の責任を負う人たちの不実な言動に、強い憤りを感じる国民も多いだろう。

【私の論評】結局民主党政権時代の負の遺産に振り回されているだけ(゚д゚)!

タレントのローラさんやりゅうちぇるあたりの年代だと、上記のような経緯を全く知らない人もいるのではないかと思います。このあたりしっかりと振り返っておく必要があると思います。

米軍のキャンプ・シュワブ基地(辺野古)の敷地内に滑走路を建設して「世界一危険な基地」と呼ばれる普天間基地から飛行場を移転する「辺野古移転」は、米軍の制約条件の下で普天間基地周辺の安全を確保できる唯一の方策であり、沖縄県・日本政府・米国の長年にわたる議論によってギリギリ構築されたコンセンサスであると言えます。

この方策に反対することは、移転を更に遅らせ、普天間基地周辺におけるハザード発生のリスクを高めることになります。また、返還されることになっている普天間基地の土地を運用できなくなり、経済活動における機会損失が発生することになります。
根強い反対がありながらも、2006年には名護市が移設案に合意しました。しかし、2009年の政権交代選挙で、民主党・鳩山氏が「県外移設」を訴えます。ところが鳩山政権は代替案を見つけることができず、辺野古案に戻りました。そんな迷走の中で沖縄の「民意」は再び反対へと転じ、問題が長期化しています。
1997年12月に行われた名護市の住民投票では、代替施設の受け入れ反対票が過半数をしめましたが、比嘉市長(当時)は辞任と引き換えに基地の受け入れを表明しました。

その後、名護市長選挙、沖縄県知事選挙では、条件をつけながらも受け入れを容認するスタンスの候補が当選し、辺野古への移設計画は少しずつ前進していきました。

建設場所について合意形成に時間を要しましたが、2006年、当初案を修正した「V字滑走路案」で名護市も合意。5月には、日米両政府は米軍再編ロードマップを発表し、2014年を目標に、普天間基地を名護市辺野古に移設することで正式に合意しました。

この年の11月に行われた沖縄県知事選挙では、計画を容認する立場の仲井真氏が当選しています。

事態を急変させたのは、2009年の政権交代選挙でした。民主党の鳩山代表(当時)が「最低でも県外」と発言したのです。
当時の民主党マニフェストには盛り込まれていませんでしたが、選挙活動の中で代表が述べたことにより事実上の公約となり、鳩山政権は県外移設を模索します。

そのような中、2010年1月の名護市長選挙では、県外移設を主張する稲嶺進氏が当選。1996年に辺野古が移設先として浮上して以来、市長選挙では3回連続で容認派が当選してきましたが、初めて移設反対派の候補が当選しました。

しかし、5月に発表された日米共同声明では、辺野古移設案に回帰。辺野古以外に「腹案がある」と発言していた鳩山氏でしたが、結局、代替案を見つけることができなかったのです。

沖縄の世論は県外移設への期待が高まっており、当初、辺野古移設を容認していた仲井真知事も、11月の知事選挙では「県外移設」主張に転じ、再選を果たします。

国政レベルでは迷走を経て辺野古移設案に戻りましたが、沖縄県および名護市では、主張の立場が移設反対へと変わってしまったのです。

海上に進入経路がある辺野古に飛行場を移転すれば、基地周辺住民の安全性が確保され、沖縄の全体の基地面積も縮小することになります。この2点が実現することは沖縄県民の強い要望であり、辺野古移転は一定の合理性を持っている方策と言えます。

ところが、マスメディアの世論調査によれば、沖縄では辺野古移転反対の意見が多数認められます。勿論、一定の合理性を持った方策であっても、それ以上の反対理由があれば移転を反対するのは合理的です。それでは、その反対理由とは一体どのようものなのでしょうか?

実はそれが今よくわかっていないのです。

極めて不可解なことに、地元有力紙の沖縄タイムス・琉球新報、全国紙の朝日新聞・毎日新聞、テレビ放送のテレビ朝日・TBSといった移転反対の論調を持つメディアは、沖縄県に反対者が多いことについては頻繁に報じますが、反対の具体的理由については思わせぶりだけでけっして明示しません。

また、世論調査においても、なぜか反対者に移転反対の具体的理由を聞きません。さらに、[辺野古基金][沖縄平和運動センター]といった反対運動を行っている団体も反対の具体的理由を明示していません。彼らが掲げている唯一の反対理由らしきものは「みんなが反対しているから民主主義のために反対している」ということだけなのです。

辺野古移転の反対派が反対理由を述べない理由として考えられるのが、その理由を述べると、いとも簡単に論破されてしまうことです。例えば、玉木デニー沖縄県知事は反対の具体的理由を明示している数少ない一人ですが、その内容は次の通りです。

玉木デニー沖縄県知事候補(現・同知事)
基地反対について、私が一番訴えたいことは辺野古の新しい基地の建設、そしてそのための埋め立て工事は断念するべきだ、ということです。この6~7割の県民の思いは揺るぎません。このように訴えている理由は、戦後73年経ってもいまだに、日本の0.6%の面積しかない沖縄県に日本の70%あまりの米軍基地が集中させられているためです[記事]

この主張は明らかに不合理です。既存の基地であるキャンプシュワブへの移転によって基地の面積は減少するからです。また、キャンプシュワブ内に建設される辺野古の滑走路は新基地ではなく、新たに接収される土地もありません。さらに「日本の70%あまりの米軍基地」という統計値は正確でなく「日本の70%あまりの米軍専用基地」です。

ちなみに、自衛隊が一部供用する「米軍一時使用施設」を含めた「米軍施設」という観点では、沖縄のシェアは20%程度であり、自衛隊の専用基地も含めた「米軍+自衛隊施設」という観点では、沖縄のシェアは15%程度ということになります[記事]。「日本の70%あまりの米軍基地」というのは、いわゆる (半分真実 half-truth)と呼ばれるレトリックに過ぎません。

一方最近、芸能人のローラ氏が環境破壊を根拠して辺野古移転に反対する[署名]を集めました。
美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから、ホワイトハウスにこの声を届けよう。芸能以外のことが、すっごくやりたくて。[記事]

ローラのインスタより

合理です。ローラ氏のいう「美しい沖縄」ではこれまでも多くの地点で埋め立て工事が行われてきましたし、今後も10か所以上の地点で大規模な新規埋め立ての計画があります。

環境を問題視して埋め立てに反対するのであれば、むしろジュゴンの出現頻度が高い沖縄本島西岸に位置する現在進行中の那覇空港の増設工事に反対した方が効果的です。

「芸能以外のことをやりたい」という自己実現目的で目立つネタにとびつくというのはどうかと思います。ちなみに、辺野古の滑走路の場合には、建設予定地が当初案から移動したため、ジュゴンの餌場とされる辺野古周辺の豊かな海草藻場がそのまま保存されることになりました。

具体的理由がないのにも拘わらず、沖縄の大衆が自らの要望と矛盾しない辺野古移転に反対する理由として唯一考えられるのが、繰り返されるマスメディアの扇情報道の結果として大衆の内面に生じていると推察される【ルサンチマン ressentiment】の影響です。

ルサンチマンとは、元々ニーチェのキリスト教批判における中心概念で、「恨み」や「妬み」を意味します。『道徳の系譜』(1887年)において、ニーチェは、キリスト教の起源をユダヤ人のローマ人に対するルサンチマンに求め、キリスト教の本質はルサンチマンから生まれたゆがんだ価値評価にあるとしました。

被支配階級であるユダヤ人は、支配階級であるローマ人の力強さ、能動的に生を楽しむこと、自己肯定的であることに対して恨みや妬みを抱き、このルサンチマンから、強い者は「悪い」、強くない私は「善い」、という屈折した価値評価を作り出しました。

この価値の転換はさらに屈折の度合いを深め、「貧しき者こそ幸いなり」ということばに代表されるような、弱いこと、欲望を否定すること、現実の生を楽しまないことこそ「善い」とする価値評価が生まれ、最終的にキリスト教の原罪の考え方、禁欲主義、現世否定主義につながっていった、とニーチェは考えました。

ルサンチマンを利用したマスメディアによる扇動の極みが、2018年12月15日の朝日新聞社説です。
朝日新聞社説「辺野古に土砂投入 民意も海に埋めるのか」 
安倍政権が沖縄・辺野古の海への土砂投入を始めた。(中略)「辺野古ノー」の民意がはっきり示された県知事選から2カ月余。沖縄の過重な基地負担を減らす名目の下、新規に基地を建設するという理不尽を、政権は力ずくで推進している。「いつまで沖縄なんですか。どれだけ沖縄なんですか」先月の安倍首相との会談で玉城デニー知事が発した叫びが、あらためて胸に響く。
■まやかしの法の支配
政府の振る舞いはこの1年を見るだけでも異様だった。(中略)政権は聞く耳をもたなかった。中国や北朝鮮を念頭に、日ごろ「民主主義」や「法の支配」の重要性を説く安倍首相だが、国内でやっていることとのギャップは目を覆うばかりだ。
■思考停止の果てに
その首相をはじめ政権幹部が繰り返し口にするのが「沖縄の皆さんの心に寄り添う」と「辺野古が唯一の解決策」だ。本当にそうなのか。辺野古への移設方針は99年に閣議決定された。しかし基地の固定化を防ぐために県側が求めた「15年の使用期限」などの条件は、その後ほごにされた。そしていま、戦後間もなく米軍が行った「銃剣とブルドーザー」による基地建設とみまごう光景が繰り広げられる。(中略)既成事実を積み重ねて、県民に「抵抗してもむだ」とあきらめを植えつけ、全国の有権者にも「辺野古問題は終わった」と思わせたい。そんな政権の思惑が、土砂の向こうに透けて見える。
■「わがこと」と考える
何より憂うべきは、自らに異を唱える人たちには徹底して冷たく当たり、力で抑え込む一方で、意に沿う人々には経済振興の予算を大盤振る舞いするなどして、ムチとアメの使い分けを躊躇しない手法である。その結果、沖縄には深い分断が刻み込まれてしまった。国がこうと決めたら、地方に有無を言わせない。8月に亡くなった翁長雄志前知事は、こうした政権の姿勢に強い危機感を抱いていた。沖縄のアイデンティティーを前面に押し出すだけでなく、「日本の民主主義と地方自治が問われている」と繰り返し語り、辺野古問題は全国の問題なのだと訴えた。(中略)そんな国であっていいのか。苦難の歴史を背負う沖縄から、いま日本に住む一人ひとりに突きつけられている問いである。

この社説では、辺野古移転の反対理由という問題の論点を一切語らずに、まるで共産主義国の[プロパガンダ映画]のようにひたすら政府を悪魔化してルサンチマンを煽りに煽っています。文章を読む限り、日本政府は日本を支配しようとする悪の結社であるかのようです。

この朝日新聞の造ったストーリーにおける最も大きな論理破綻は、政府が「自分たちのため」に何としてでも辺野古移転を行いたいと考えているかのような思い込みです。日本政府も米国も、沖縄県民が普天間基地を残してもよいと考えるのであれば、辺野古移転を実施する必要はありません。

また、普天間基地を残すのもダメで辺野古移転を実施するのもダメというのであれば日米安保条約を解消するしか解決方法はありません。この場合、防衛費は現在の5兆円から20兆円に膨れ上がり、日本は重税に苦しむ軍事大国となるはずです。

勿論、この場合には日本国民が安保条約解消を許容するわけはなく、憲法改正してでも辺野古移転を進めるものと考えられます。この程度の自明なバックワード・インダクションもできずに、誰のためにもならない無責任な扇動社説を書いているプロパガンダ新聞社は淘汰された方がよいと考えます。

マスメディアが政権チェックというミッションを遥かに超えて、束となって政治運動を先導している現状は、1930年代から朝日新聞と東京日日新聞(毎日新聞の前身)が国民を扇動して日本を無謀な戦争に巻き込んだ事例とよく類似しています。マスメディアに対する監視は、沖縄県民を含めて、いま日本に住む一人ひとりに突きつけられている問いに他なりません。

不良グループに挑発されて無意味なチキンレースに興じることで損するのは自分であると同時に周辺の人をも不幸にすることを大衆はよく認識すべきであると考えます。「理由なき反抗」はムダの極みです。結局民主党政権時代の負の遺産に沖縄の人々も、政府も振り回されているだけです。

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2018年8月19日日曜日

米国で日本叩き運動を先導、中国のスパイだった 米国に工作員を投入する中国―【私の論評】結局頓挫した中国による米国内での「日本悪魔化計画」(゚д゚)!

米国で日本叩き運動を先導、中国のスパイだった


米国に工作員を投入する中国当局、その実態が明らかに


 日本の慰安婦問題がまた国際的な関心を集めるようになった。韓国の文在寅大統領が公式の場で改めて提起したことなどがきっかけである。

 ちょうどこの時期、米国で慰安婦問題に関して注目すべき出来事があった。司法当局から中国政府のスパイだと断じられた中国系米国人が、米国における慰安婦問題追及の枢要な役割を果たしてきたことが判明したのだ。

この人物は長年米国上院議員の補佐官を務め、現在は慰安婦問題で日本を糾弾する在米民間組織の中心的人物となっている。慰安婦問題への中国政府の陰の関与を示す動きとして注目される。

中国のスパイがベテラン女性議員の補佐官に

 8月5日、連邦議会上院のダイアン・ファインスタイン議員(民主党・カリフォルニア州選出)が突然次のような声明を発表した。

ダイアン・ファインスタイン議員

「5年前、FBI(連邦捜査局)から私の補佐官の1人が中国諜報機関にひそかに情報を提供し、中国の対米秘密工作に協力していると通告を受けた。独自調査も行った結果、すぐに解雇した。機密漏れの実害はなかった」

 ファインスタイン議員といえば、全米で最も知名度の高い女性政治家の1人である。サンフランシスコ市長を務め、連邦議会上院議員の経歴は25年になる。この間、上院では情報委員会の委員長のほか外交委員会の枢要メンバーなども務めてきた。民主党リベラル派としてトランプ政権とは対決姿勢をとり、とくにトランプ陣営とロシア政府機関とのつながりをめぐる「ロシア疑惑」でも活発な大統領批判を展開している。

 そんな有力議員がなぜ今になって5年前の不祥事を認めたのか。

 その直接的な契機は、7月下旬の米国のネット政治新聞「ポリティコ」による報道だった。ポリティコは、「上院で情報委員会委員長として国家機密を扱ってきたファインスタイン議員に20年も仕えた補佐官が、実は中国の対外諜報機関の国家安全部に協力する工作員だった」と報じた。FBIによる通告はそれを裏付ける形となった。

 ロシアの大統領選介入疑惑が問題になっている米国では、外国政府機関による米国内政への干渉には、官民ともにきわめて敏感である。また、中国諜報機関の対米工作の激化も、大きな問題となってきている。そんな状況のなかで明らかになった、ファインスタイン議員の側近に20年もの間、中国のスパイがいたという事実は全米に強い衝撃を与えた。

 トランプ大統領はこの報道を受けて、8月4日の遊説でファインスタイン議員の名を挙げながら「自分が中国のスパイを雇っておきながら、ロシア疑惑を糾弾するのは偽善だ」と語った。同議員はこの大統領の批判に応える形で前記の声明を発表し、非を認めたのである。

スパイはラッセル・ロウという人物

 さらに8月6日、ワシントンを拠点とするネット政治雑誌「デイリー・コーラー」が、「ファインスタイン議員の補佐官でスパイを行っていたのは、中国系米国人のラッセル・ロウという人物だ」と断定する報道を流した。ロウ氏は長年、ファインスタイン議員のカリフォルニア事務所の所長を務めていたという。

ラッセル・ロウ

 デイリー・コーラー誌は、ロウ氏が中国政府の国家安全部にいつどのように徴募されたかを報じた。ロウ氏は、サンフランシスコの中国総領事館を通じて、長年にわたって同安全部に情報を流していたという。

 ファインスタイン事務所もFBIもこの報道を否定せず、一般のメディアも「ロウ氏こそが中国諜報部の協力者、あるいはスパイだ」と一斉に報じた。主要新聞なども司法当局の確認をとりながら、ロウ氏のスパイ活動を詳しく報道した。

 ただしロウ氏は逮捕も起訴もされていない。その理由は「中国への協力が政治情報の提供だけだと訴追が難しい」からだと説明されている。

中国のスパイが日本糾弾活動を展開

 米国の各メディアの報道を総合すると、ロウ氏はファインスタイン議員事務所で、地元カリフォルニアのアジア系、とくに中国系有権者との連携を任され、中国当局との秘密の連絡を定期的に保ってきた。

 米国内での慰安婦問題を調査してきた米国人ジャーナリストのマイケル・ヨン氏によると、ロウ氏は、歴史問題で日本糾弾を続ける中国系反日組織「世界抗日戦争史実維護連合会」や韓国系政治団体「韓国系米人フォーラム」と議会を結びつける役割も果たしてきた。また、2007年に米国下院で慰安婦問題で日本を非難する決議を推進したマイク・ホンダ議員(民主党・カリフォルニア州選出=2016年の選挙で落選)とも長年緊密な協力関係を保ち、米国議会での慰安婦問題糾弾のキャンペーンを続けてきたという。



 ファインスタイン議員事務所を解雇されたロウ氏は、現在はサンフランシスコに本部を置く「社会正義教育財団」の事務局長として活動していることが米国メディアにより伝えられている。

 数年前に設立された同財団は「学校教育の改善」という標語を掲げている。だが、実際には慰安婦問題に関する日本糾弾が活動の主目標であることがウェブサイトにも明記されている。同サイトは「日本は軍の命令でアジア各国の女性約20万人を組織的に強制連行し、性奴隷とした」という事実無根の主張も掲げている。

 ロウ氏は2017年10月に社会正義教育財団を代表してマイク・ホンダ前下院議員とともに韓国を訪問した。ソウルでの記者会見などでは、「日本は慰安婦問題に関して反省も謝罪もせず、安倍政権はウソをついている」という日本非難の言明を繰り返した。

米国に工作員を投入する中国当局

 今回、米国において慰安婦問題で日本を糾弾する人物が、実は中国のスパイだったことが明らかになった。つまり、中国当局が米国に工作員を投入して政治操作を続けている実態があるということだ。

 前述のヨン記者は「米国内で慰安婦問題を糾弾する反日活動は、一見すると韓国系勢力が主体のようにみえ、そのように認識する人は多い。だが、主役はあくまで中国共産党なのだ。長年、米国議会の意向を反映するような形で慰安婦問題を追及してきたロウ氏が実は中国政府のスパイだったという事実は、この中国の役割を証明したといえる」と解説していた。

【私の論評】結局頓挫した中国による米国内での「日本悪魔化計画」(゚д゚)!

ラッセル・ロウ氏や、マイク・ホンダ氏が中国スパイであろうことは前から知られていたことでした。今回は、それがかなりはっきりとわかったということです。

実体のない慰安婦問題や、日本は核武装を画策しているというようなデマで米国内で日本を貶める中国の画策は前から知られていました。これは、米国の識者の間では以前から「日本悪魔化計画」と呼ばれていました。これについては、以前このブログに掲載したことがあります。

「日本は核武装を狙っている」 中国が進める日本悪魔化計画―【私の論評】米国の中国対応の鈍さ!本当は20年以上前にこのようなことを言わなければならなかった(゚д゚)!
悪魔といってもいろいろあるが、中国の日本悪魔化計画の悪魔はどんなものか?

この記事は、2015年12月25日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に引用します。

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  「アメリカを超える大国」を目指す中国は、その大目標の邪魔になる日本を貶める動きを加速させている。その試みは欧米の識者から日本の「悪魔化」と呼ばれ、警戒されている。

 さてこの中国の「日本悪魔化」戦略はアメリカでも中国軍事研究の最高権威によって指摘されていた。1970年代のニクソン政権時代から一貫して国防総省の高官として中国の軍事動向を研究してきたマイケル・ピルズベリー氏の指摘であり、警告だった。

 同氏は2015年2月刊行の著書『100年のマラソン=アメリカに替わりグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略』(日本語版の書名は『China2049』)で日本悪魔化戦略を明らかにした。
マイケル・ピルズベリー氏
 ピルズベリー氏は中国語に堪能で共産党や人民解放軍の軍事戦略関連文書を読みこなす一方、中国軍首脳との親密な交流を保ってきた。同氏はこの新著でアメリカ歴代政権の対中政策は間違っていたとして「中国を豊かにすれば、やがて国際社会の健全な一員となるという米側の期待に反し、中国は当初から建国の1949年からの100年の長期努力でアメリカを圧することを狙ってきた」と述べた。その世界覇権への長期の闘争を中国自身が「100年のマラソン」と呼ぶのだという。

 同氏は中国のこのアメリカ凌駕の長期戦略の重要部分が「現在の日本は戦前の軍国主義の復活を真剣に意図する危険な存在だ」とする「日本悪魔化」工作なのだと明言している。日本の悪魔イメージを国際的さらには日本国内にも投射して日本を衰退させ、日米同盟やアメリカ自体までの骨抜きにつなげる一方、「軍国主義の日本との闘争」を中国共産党の一党独裁永遠統治の正当性ともする狙いだという。

 逆にいえば、習氏にとって日本がいま平和、民主のままで国際的な影響力を強めれば、共産党統治の正当性を失いかねない。さらには中国の最大脅威であるアメリカのパワーをアジアで支えるのはやはり日本そして日米同盟であり、その両者が強くなることは中国の対外戦略全体を圧することにもなる。だから習氏はいまの日本をいかにも恐れるような異様な工作を進めるのだろう。ピルズベリー氏はその日本悪魔化工作の例証として以下の諸点を列記している。

 ◆習近平氏が愛読する書『中国の夢』(劉明福・人民解放軍大佐著)は「日本は常に中国を敵視するから中国が軍事的に日本と戦い、屈服させることが対米闘争でもきわめて有効だ」と強調している。

 ◆清華大学の劉江永教授は最近の論文で「日本の首相の靖国神社参拝は中国への再度の軍事侵略への精神的国家総動員のためだ」と断言した。

 ◆李鵬・元首相に近い学者の何新・社会科学院研究員は一連の論文で「日本は中国の植民地化を一貫した国策とし、今後もそのために中国を分割し、孤立させようとする」と警告している。

 ◆多数の中国の軍人たちが「日本は中国攻撃のための軍事能力を整備しており、日本の宇宙ロケット打ち上げはすべて弾道ミサイル開発のため、プルトニウム保有は核兵器製造のためだ」と主張している。
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この日本悪魔化計画の一環として、中国当局は随分前から、米国に工作員を投入していたことが今回明らかになったということです。

ファインスタイン氏は中国との架け橋役となることで、自身の政治的利益を享受してきました。1979年1月、サンフランシスコ市長に就任すると、上海を訪れて、姉妹都市契約を結びました。 次に、米国と中国を結ぶ航空便の再確立を目指し、1981年1月には、中国人乗客130人以上を乗せたボーイング747が上海ーサンフランシスコ間を飛びました。

それからファインスタイン市長は公式に数回上海を訪問し、のちに国家主席となる江沢民・上海市長と交友を深めました。

2003年10月、サンフランシスコ市で面会するダイアン・ファインスタイン
上院議員と江沢民国家元主席。間に立つのは同市長ウィリー・ブラウン氏

ファインスタイン氏は90年代の訪中で、江沢民氏をはじめとする上級共産党幹部との関係を築きました。夫と共に毛沢東の旧宅訪問に招待され、外国人で初めて、毛沢東が息を引き取ったという寝室を見学したといいます。彼女は、「非常に歴史的な瞬間だった」と、その感激を当時、ロサンゼルス(LA)タイムズに語っていました。

毛沢東は中国を共産主義国家へと導いた張本人であり、大躍進や文化大革命などの政策で数千万人の中国人が餓死、病死、虐殺、迫害などで非業の死を遂げました。

ダイアン・ファインスタイン議員(左)とのその夫リチャード・ブラム氏

90年代のファインスタイン氏と中国共産党との緊密な関係は、彼女だけでなく、夫で投資家のリチャード・ブラム氏も受益した。 1997年のLAタイムズの報道によると、ブラム氏は中国では著名な投資家になっていたといいます。

ブラム氏は妻の訪中にたびたび同行し、共産党幹部や地方高官と接触する機会を得ました。1994年には1.5億ドルの投資計画があり、1996年には2.3億ドルで鉄鋼業の国有企業に投資しています。 ブラム氏はまた、世界銀行の1部門である国際金融会社(International Finance Corp.)を通じて、中国の豆乳と飴の大手生産業者に1000万ドルを投資しました。

互いに上海とサンフランシスコを往来するファインスタイン氏と江沢民氏との良好な関係は、民主党ビル・クリントン政権(1993~2001)時代に、中国を世界貿易機構(WTO)に加盟させるための大きな助けになっていました。

実際、当時の米国務省エリザベス・ニューマン報道官は「ファインスタイン議員は、この重要な貿易協定の道を開く上で重要な役割を果たした」と述べています。

江沢民政権と蜜月と思われたクリントン政権時代でしたが、1999年5月コソボ紛争末期にセルビアのベオグラードにある中国大使館を米軍爆撃機が誤爆したことで、米中関係は一時悪化しました。

ファインスタイン議員は、江沢民氏との個人的な付き合いから、米中関係の改善に奔走しました。その手腕は、クリントン大統領政権からも一目置かれる存在となりました。 同年8月、米政府はファインスタイン議員を中国に派遣し、大統領の親書を江沢民主席に大連で手渡して、WTO加盟交渉の席につくよう説得しました。

同年11月、マーキュリー紙の取材に答えたファインスタイン議員は、「彼(江沢民)は私の話に耳を傾けてくれたと思う。私たち実質的なテーマを話し合った。私は、中国が(WTOに)関心を再び抱かせることに成功した」「彼は、大統領が親書を書くために時間を割いてくれたことを感謝していた」と語っていました。

同紙の取材のなかでファインシュタイン氏は、新たな中国の貿易状況の期待のために、経済と並行して人権問題を改善するよう中国に求めることは「圧力」であり、米国年次の人権報告書では言及しないよう意見しました。

有力な米上院議員の対中擁護により、中国共産党は深刻な人道犯罪や弾圧に効果的な策を講じることなく、世界市場へのアクセスに最良な貿易環境を得た、ということになります。

江沢民政権では、中国全土で気功修練・法輪功の弾圧が始まり、今日も続いています。中国の人権弁護士は5月、中国最高裁判所や検察庁に宛てた公開書簡のなかで、法輪功への弾圧は「(中国における)第二次世界大戦後の犠牲を上回り、終戦以来最大の人道被害だ」と例えました。

トランプ現政権の経済政策顧問で、対中強硬派で知られる経済学者ピーター・ナバロ氏は、共産党政権の中国が2001年にWTO加盟したことで、世界の製造業が中国により支配的に占有され、知的財産問題など不公平な貿易慣行がまかり通ることになったと分析しています。

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ピーター・ナバロ氏

ナバロ氏は、2017年1月20日、ドナルド・トランプ次期大統領から指名を受け、新設された国家通商会議(現・通商製造業政策局)のトップ(ダイヤモンド社 2017)に就任しました。

ナヴァロは政府主導の中国経済と市場主導の米国経済のモデルは「地球と火星のように離れてる」とし、WTOに加盟してから中国は2015年時点で世界の自動車の3割近く、船舶の4割、テレビの6割強、コンピューターの8割強を生産して世界の製造業を支配するに至ったとして人工知能やロボット工学などでも脅威になりつつある中国の知的財産権問題など不公正な貿易慣行への対処を主張しています。また、軍用無人機でも中国は市場を奪ってるとして米国の輸出規制緩和を推し進めています。

ナバロ氏の主張が全面的に正しいかどうかは別にして、現在の中国は、自由貿易の前提ともいえる、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もなされておらず、特に米国などの先進国が中国と貿易をすれば、著しく不公平なものになるのは事実です。

しかし、このような中国でも、米国のパンダハガー(親中派)らは、中国が経済的に発展すれば、いずれまともな国になるであろうと考えていたのですが、そうはなりませんでした。

そうして、結局のところパンダハガーや、中国工作員らの日本悪魔化計画は失敗したようです。しかし、中国は米国を頂点とする戦後秩序の変更に挑むことをやめないどころか、これに挑戦すると、習近平が公言しています。

米国の現在の主流派は、日本を悪魔とみなすのではなく、中国を悪魔とみなすようになり、先月より、米国トランプ政権は、中国に対して貿易戦争を挑みはじめました。

この貿易戦争は、中国が国内市場を開放したり、人民元を完璧に変動相場制に移行すること、すなわち1980年代の日米摩擦と同程度のことで収束することはありません。

中国が根本的な構造転換を行うこと、すなわち民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめない限り続行されることになるでしょう。

もし、中国がこれを進めないというのなら、米国を頂点とする戦後秩序を変えることに二度と挑戦できなくなるくらいに、貿易戦争、金融制裁で叩きのめされ、経済的にかなり弱体化するまで継続されることになるでしょう。

米国内での慰安婦像設置運動 マイク・ホンダ(マイクを握る人)もみられる

これは、韓国がたとえ、米国内に10万、20万、いや100万の慰安婦増を設置することに成功したとしても、そのようなこととは全く関係なく実施されるでしょう。

結局中国による米国内での「日本悪魔化計画」は頓挫したのです。なぜなら、中国の目的は、決して米国全土に慰安婦像をできるだけ多く設置することではなく、マイケル・ピルズベリー氏が主張するように、日本の悪魔イメージを国際的さらには日本国内にも投射して日本を衰退させ、日米同盟やアメリカ自体までの骨抜きにつなげる一方、「軍国主義の日本との闘争」を中国共産党の一党独裁永遠統治の正当性とすることが目的だったからです。

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