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2019年4月18日木曜日

アメリカの株高と金利安定は長期化しそうだ  日本は消費増税を取りやめたほうがいい―【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!


東洋経済オンライン / 2019年4月17日 7時40分

NYダウは16日の時点では回復している


アメリカ株の回復が続いている。ニューヨークダウ平均などは最高値圏まであと一歩のところまで上昇している。

筆者が2月に執筆したコラム「アメリカ株は『もう上がらない』と言い切れるか」(2月12日配信)では、早期バランスシート縮小停止などFRB(連邦準備制度理事会)による緩和政策が、新興国を含めた世界経済の安定をもたらし、一部で高値警戒感がささやかれていたアメリカ株を中心に、リスク資産の上昇をもたらす、との見通しを示した。

■「FRBの豹変」は2016年と似ている

その後実際に、FRBは「政策スタンスのハト派化」を強めた。3月半ばのFOMC(連邦公開市場委員会)において、多くのメンバーが政策金利を当面据え置くことを示し、そしてバランスシート縮小を9月早々に停止するとした。

FRBの政策判断の背景には、成長率、インフレが下振れるリスクが高まっていることがある。しかし、2018年後半のアメリカを震源地とした株式市場の大幅な下落は、FRBの判断ミスに対する懸念が主たる要因だった。FRBの政策については、従来からドナルド・トランプ大統領がたびたび批判するなど、混乱している状況をどうみるか、考え方はさまざまだろう。

実際には、インフレ率が2%前後で安定しているにもかかわらず、FRBが政策金利を3%台へ利上げすることへの懸念は、トランプ大統領だけではなく多くの投資家に共有されていた。昨年末から年初早々にジェローム・パウエル議長などが利上げ見送りのメッセージを早々に示し大きく方針転換を行い、金融市場が発するリスクシグナルに柔軟に配慮した、アグレッシブな政策変更は妥当と筆者はみている。

このFRBの豹変は、金融市場が動揺した後に路線変更を行った2016年初と似ている。当時も、2016年初に1年間に4回の利上げを想定していたFRBは、あっさりと利上げを見送り、その後の景気回復と株高をもたらした。2016年と2019年の共通点を指摘する声は増えているが、年初から筆者自身はこの点を強く意識していた。

依然、欧州などの経済指標は停滞している。だが、下落していたグローバル製造業景況感指数は、3月に下げ止まりの兆しがみられる。金融市場で悲観論が強まった2016年初に世界経済が下げ止まったが、この点でも2019年と2016年は似てきている。年初から株高のピッチが速いため多少のスピード調整はありうるが、筆者は「2019年は金利安定とリスク資産上昇が併存し続ける可能性が高い」とみている。

日本の経済メディアでは、筆者からすれば根拠が曖昧にしか思えない「金融緩和の弊害」が強調され、また金融政策の役割や効果を軽視する論調が目立つ。実際には、一足早く成長率が高まり、中央銀行が利上げを始めたアメリカでも、金融緩和的な状況を保つことが重要である構図は、2019年になっても変わっていない。

主要な先進国、さらには多くの新興国で経済成長率が2000年代よりも高まらない中で、中銀が経済を浮上させる景気刺激的な総需要安定化政策を継続することが必要ということである。

また、労働市場において、アメリカや日本などで大幅な失業率の低下がみられている。失業率低下が、賃金やサービスインフレの上昇につながっていないことには、さまざまな議論があるが、筆者は依然として日米ともに失業率には低下余地があると考えている。

もはや10年以上も経過するが、2008年の世界的な金融危機による経済ショックが極めて大きかったが故に、表面的な失業率の改善などが示すよりも経済全体にはなおスラック(余剰)が残っており、それが低インフレの長期化をもたらしているとみている。

■「消費増税」=「緊縮財政政策」への危機感が薄すぎる

FRBも、2019年初からのハト派方向への転換に加えて、6月は大規模な会議を開催する予定だ。そこでは、これまでFOMC等で議論してきた、次の景気後退に備えた政策枠組みなどが話し合われる見込みだ。

国民の経済厚生を高めるための金融政策の在り方などについて、重鎮の経済学者なども参加する予定であり、具体的な、インフレ目標の引き上げなどを含めた金融政策のフレームワークなどもテーマになるという。経済安定、低インフレが長期化する中で、インフレ上振れを許容するアグレッシブな金融政策の妥当性が議論されるのではないか。

アメリカでこうした議論が活発になっていることには、低インフレ、低金利が長期化していることがある。これは、主要国経済の「日本化」ともいえるが、この状況に経済学者やエコノミストが強い危機感を感じていることが、政策議論が活発になっている要因の背景となっている。

本来であれば2%インフレの目標実現に一番遠い位置にある日本において、こうした議論がより真剣に行われる必要があるはずだ。ただ、実際には反対のことが起きている。日本銀行の金融政策運営は、2018年からは、利上げバイアスが強い事務方の影響が増している。根拠が曖昧な「金融緩和の弊害」が強調されるなど、金融政策に関する議論について、日本では2012年以前のように、アメリカなどとの対比でかなり低調になっているようにみえる。

一方、2019年10月予定の消費増税については、景気指標の下振れを受けて見送られる可能性がやや高まっているが、可能性は五分五分だろうか。もし増税が実現すればGDPを0.5%前後押し下げるマイナス効果があり、日本経済は主要先進国の中で最も緊縮的な状況に直面する、とみている。だが、日本の経済学者などは、緊縮財政政策への危機感が薄いままである。

こうした状況では、これまでも連載で繰り返し述べてきたが、「アメリカ株>日本株」、のパフォーマンス格差が続く可能性は依然として高いとみる。こうした構図が変わるには、日本銀行による金融緩和徹底は言うまでもないが、消費増税の取りやめ、あるいは家計部門への負担を相殺する追加的な財政政策の発動が必要だろう。

村上 尚己:エコノミスト

【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!

増税などすべきでない理由は、このブログでも何度か掲載してきました。私としては、ぞ増税しないのがごく当然であり、増税するのは異常であるとしか思えません。

特に、14年4月に増税したあとのことを考えれば、10月に再度増税するということは狂気の沙汰としか思えません。

しかし、財務省の増税キャンペーンに煽られたのか、多くの頭の悪い政治家や、マスコミ、それに追随する識者など、あたかも増税は既定路線であるかのような口ぶりで、増税を語っています。

しかし、そうとばかりはいえないことが言えないような事態も生じています。

10月に実施予定の消費増税について、自民党の萩生田光一幹事長代行は本日、日本銀行が7月に発表する6月の企業短期経済観測調査(短観)などで示される経済情勢次第で延期もあり得るとの認識を示しています。

同党幹部が具体的な判断材料を示して増税延期に言及したのは初めてです。市場は反応薄でしたが、夏の参院選を控え、与党幹部から同様の発言が続けば波乱要因となる可能性もあります。

萩生田氏は18日のインターネット番組「虎ノ門ニュース」のジャーナリスト、有森香氏の番組で、10月の8%から10%への消費税率引き上げに関し、「景気が回復傾向にあったが、ここに来て日銀短観含めて落ちている。6月はよくみないといけない」と指摘しました。

その上で、「本当にこの先、危ないぞというのがみえてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない。そこはまた違う展開があると思う」と語りました。同氏は党総裁特別補佐、官房副長官などを歴任しており、安倍晋三首相の側近として知られます。

萩生田光一氏

夏には参院選も予定されています。萩生田氏は増税を「やめるとなれば、国民の了解を得なければならないから信を問うということになる」としましたが、衆参同日選の可能性については「ダブル選挙というのはなかなか日程的に難しい。G20(20カ国・地域)サミットもある」と否定的な見方を示しました。

以下に萩生田氏の上記発言の部分を含む動画を掲載します。下の動画は、消費税の話題から始まるように設定しています。




消費増税を巡り、政府は世界的な経済危機や大震災などリーマンショック級の出来事がない限り、予定通り実施する方針を示しています。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、政府の考え方は「全く変わらない」と語りました。

日銀が4月1日に発表した3月調査の短観では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス12と、昨年12月の前回調査から7ポイント悪化しました。悪化は2四半期ぶりで、悪化幅は2012年12月調査(9ポイント悪化)以来の大きさでした。6月調査は月末に開かれるG20サミット終了後の7月1日に発表の予定です。

消費増税を巡っては、同党の西田昌司参院議員も18日のインタビューで、完全にデフレ脱却という状況ではなく、景気回復が実感できないとの声も多いため、現在の経済状況を「事実として受け止めれば消費増税という選択肢はあり得ない」と指摘しました。

増税延期論者は実際は党内にも「それなりにいると思う」と付け加えました。10月からの幼児教育の無償化は消費増税分が財源だが、延期の場合は「国債発行する以外にはない」と述べました。ただし、以前も指摘したように、日本政府の借金など、負債だけではなく資産も加味すれば、ゼロであり、米英よりもはるかに財務は良い状況にあります。

さらに、日銀が金融緩和で、市場から国債を買い取ってきたため、市場では国債が少ない状況にあるうえ、国債の金利もご存知のようにあがっていません。この状況では、国債をある程度刷り増ししたところで、何の支障もありません。というより、国債を発行することがすべて悪であるかのような考えは全くの間違いです。

西田昌司参院議員

このような主張がでてきたということは、無論自民党内でそのような意見の人が一定以上存在することを示していると考えられます。

ただし、安倍総理も現状では、予定通り増税するとしていることから表だってはっきりとはいえない雰囲気があるものと考えられます。安倍総理やその側近たちは、財務省や増税賛成の他の大勢の自民党の議員の議員らの手前、本当は増税などやりたくないにもかかわらず、はっきり言える状況ではなく、その機会を伺っているのではないかと思います。

このブログでは、最近は経済が停滞する傾向がみられつつあると掲載したことがあります。ただし5月には元号が変わり、平成から令和と変わり、祝賀ムードがあり、さらには27日から始まるゴールデンウイークの10連休があります。そのため、景気が目立って落ち込むことはないと思います。

ただし、その反動と経済の停滞が、連休後に顕著になり、5月から6月上旬ぐらいにかけて、それが誰の目に見えて明らかになり、首相が『こんな景気の状況じゃ消費増税できません』と言って、通常国会会期末に消費増税凍結を信を問うと言って、衆参同日選挙を7月に実施と宣言する可能性があると思います。

自民党の中には、憲法改正の国民投票を成功させるため、自民党内に増税の先送りを後押しに利用すべきだと主張する人はある一定数以上は存在するでしょう。もし、5月から6月にかけて、経済の停滞が明らかになった場合、10%への引き上げに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施しても、景気の落ち込みは破滅的となり、世論の不興は避けられないでしょう。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期しかないと考えられます。

まさに、萩生田氏はそれを想定しているのではないかと思います。そうして、6月になっても増税を阻止してみせるという財務省に対する牽制でもあるのではないかと思います。そうして、6月になってからでも、増税凍結の判断を実行に移す方法があるということを意味しているのだと思います。


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2019年2月17日日曜日

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず―【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

対ロ交渉、長期化色濃く=北方領土の溝埋まらず



【ミュンヘン時事】河野太郎外相は16日(日本時間17日)、ロシアのラブロフ外相と、平和条約交渉の責任者に就いてから2度目となる会談に臨んだ。

【図解】日本の北方における領土の変遷


だが、焦点の北方領土問題で双方の溝は埋まらず、長期化の気配が濃厚。日本政府が描いてきた「6月大筋合意」のシナリオは崩れている。

「双方が受け入れ可能な解決に向け、かなり突っ込んだやりとりをした」。河野氏は会談後、記者団にこう説明した。今回は、前回1月14日の外相会談や同22日の首脳会談を踏まえ、相手方の主張に対する反証を述べ合ったもよう。日本側の同席者は北方四島に対する主権をめぐり「激しいやりとりになる場面はあった」と明かした。

河野氏は会談で、ロシア側の期待が大きい医療やエネルギー、極東開発など8項目の協力プランに触れ「(日ロの)貿易額が伸びている」と強調し、ロシアからの訪日客増加にも言及。4島での共同経済活動も取り上げ、経済分野の関係強化をてこに交渉の前進を図る姿勢をにじませた。

会談する河野太郎外相(左手前から2人目)とロシアのラブロフ外相
(右手前から2人目)=16日、ドイツ南部ミュンヘンのロシア総領事館

ただ、ラブロフ氏は会談後、北方領土の主権はロシアにあるとの立場を改めて強調した。交渉スケジュールについても、プーチン大統領が1月の首脳会談の際に「辛抱強さを要する作業が待っている」と長期化を示唆したのに続き、期限を切らない立場を鮮明にした。

「不法占拠」「固有の領土」といった表現を控える日本政府の配慮にもかかわらず、ロシア側が軟化する兆しはない。安倍晋三首相は12日、国会答弁で「期限を切るつもりはない」と表明。政府内には「6月まで数カ月でまとめるのは無理だ」(高官)と悲観論が広がった。

「70年間続いている問題だから、そう簡単に一足飛びに前へというわけにはいかない」。打開のめどが立たない現状を踏まえ、河野氏は16日、記者団にこうも語った。 

【私の論評】北方領土は今は、返ってこなくても良い(゚д゚)!

北方領土に関しては、現実的に考えれば「二島どころか一島でも返してもらうのが現実主義」とうそぶく現“状”主義者の言っていることも、「四島どころか千島全部返せ!」とできもしない空論を叫ぶ空想主義者の言っていることも正しくはありません。

「北方領土は今は返っ来なくて良い」というのが一番現実的な考えだと思います。なぜなら、十九世紀的帝国主義者的ロシア、プーチンのことを考えれば、基本的に国境不可侵の原則など外交の道具としか思っていないだろうし、一方日本の現状主義者も空想主義者など全く現実的ではないからです。

現状の予想外に好転するかに見えた状況を見据えつつも、現実だけを見るべきであって、空想など顧みるべきではありません。

その上で、昨年9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの壇上で突如、同席した安倍晋三首相に「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」と提案した、プーチン大統領の思惑は、どこにあるのでしょうか。これをどう捉えるべきなのでしょうか。

そもそも、ウラジミール・プーチンとは何者なのでしょうか。プーチンは国内を秘密警察により掌握し、事実上の独裁体制をしいています。暗殺した人間は数知れません。「人を殺してはならない」という価値観が通じない相手です。

対外政策では、欧州では強気ですが、中国にはいっさい逆らったことがありません。この前の「ハチミツ」騒動(下の動画参照,プーチンが習近平にロシアの蜂蜜をお土産に持たせた件)程度のシャレで済む意趣返しレベルはしても、基本的にはシナの従属国と言っても良いくらいの現状です。


せいぜい、中国共産党の権力闘争のバランスで立ち位置を変えるが、江沢民や習近平個人にはともかく、プーチンがロシアの独裁者である以上、ロシアが中国に逆らうことは無いでしょう。

この状況は現在の北朝鮮問題をよく見れば、わかるはずです。北朝鮮は元々はロシア(当時のソ連)が建国させた国であるにもかかわらず、現在の北朝鮮問題は米中で話あわれることはあっても、ロシアは蚊帳の外です。

米国も、北朝鮮というと、中国とは話をしても、ロシアと話をすることはほとんどありません。これは米国も現状のロシアは中国のいいなりであることを理解しているからでしょう。北朝鮮で米中が何らかの取り決めを行ったにしても、ロシアがそれを反対することはないからです。

そんなプーチンの「すべてを棚上げして日本と平和条約を結ぼう」という先の台詞を翻訳します。
「クリル(北方領土)なんか一島も返す気は無い。さっさと平和条約結んで業績らしきものにしてやるから、少しは金寄越せ」
そもそも1956年の日ソ共同宣言以来、二島返還は無条件で平和条約を結び、もう二島はその後の交渉だったのが、プーチンにひっくり返されています。これで二島どころか一島でも返ってくると考えたらよほどの愚か者かプーチンの回し者だとしか言いようがないです。ここまで読めば、タイトルの「北方領土は今は返ってこなくても良い」の意味がわかるでしょう。

今は、中国に従属するプーチン政権の間は、ということです。むしろ現状ではプーチンと交渉すること自体が、禍根を残すことになりかねません。現に、交渉するたびにプーチンは過去の日露合意を反故にしています。

北方領土を取り返したいなら、中露対決が再び高まった時まで待つべきなのです。現在ロシアのGDPは韓国なみです、ということは東京都のGDPとほぼ同じです。人口はあの広大な領土に一千四百万人しかありません。これは、日本より若干多い程度です。中国は13億人です。これでは、ロシアは本当はそうしたくなくても、中国に従属するしかありません。

今でもシベリアには中国人が大量入植しています。これを国境溶解と呼ぶ人もいるくらいです。プーチンは欧州方面でNATOと張り合わなければならないですから、極東では強気に出れないのです。だから中国にやられたい放題になっているのです。

ロシア人女性が中露国境の街で、長い冬に向けた生活必需品の買い出しに熱を入れている。写真は
黒河市の露店市場。国境のロシア人にとっては中国の物資はなくてはならないものになっている。

結局、戦争で取られた領土は軍事力で取り返すしかない以上、今は日本は、防衛力増強に努めるしかないのです。そしてロシアが本当に弱った時には四島どころか千島に樺太まで取り返しに行って良いのです。領土交渉ではそれ位の時間軸で考えるべきなのです。

北方領土、何島返還論が正しいのかという議論がしばしば聞かれますが、現在は「一島もいらん」で構わないのです。いかなる正論も、時宜にかなっていなければ、愚論よりもたちが悪いのです。

ただし、今は「一島もいらない」のですが、これを取り返せる時が従来よりは近づいているのは間違いありません。なぜなら、現在では米国の対中国冷戦が勃発しているからです。

これは単なる貿易戦争ではありません。ハイテク覇権や安全保障が絡んだ米中のガチンコ対決だ。中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の事件は、そんな対決の本質を如実に示しています。

このブログでは、米国は中国が体制を変えるか、体制を変えるつもりがないなら、経済的に相当弱体化するまで、制裁を続けると主張してきました。これには、短くて10年、長ければ20年の年月がかかることでしょう。

中国が体制を変えて、共産党1党独裁をやめ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などすすめて構造改革を行うことにした場合には、政治的には激変しますが、経済的にはさらに発展する可能性があります。この場合、ロシアは中国に対して強気にでることはできません。おそらく、北方領土が返還されることはないでしょう。

しかし、中国が米国の圧力に屈することなく、現状の体制を貫き通したとしたら、米国の制裁は継続され、それこそかつてのソ連が疲弊したように、中国も疲弊することでしょう。

そうなった場合、中露対決が再度深まることになります。そうなると、ロシアも疲弊することになります。その時こそが、まさに日本がロシアに対する北方領土交渉の好機が訪れるのです。

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2017年4月12日水曜日

アベノミクス景気長期化でも回復の恩恵乏しいという論調 雇用重視するなら実感可能だ―【私の論評】景気が良くなれば給料二倍的感覚はただの情弱(゚д゚)!

アベノミクス景気長期化でも回復の恩恵乏しいという論調 雇用重視するなら実感可能だ


アベノミクスによる景気回復が52カ月と戦後3番目の長さになったと報じられた。一方で景気回復の実感が乏しい理由として、「潜在成長率の低下」が挙げられているが、こうした分析は妥当だろうか。

景気の動向については、内閣府が作成する景気動向指数の一致系列指数が改善しているのか悪化しているのかにより、回復期か後退期かを判定することができる。

景気動向指数の一致系列は、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(輸送機械を除く)、商業販売額(小売業、前年同月比)、商業販売額(卸売業、前年同月比)、営業利益(全産業)、有効求人倍率(新規学卒者を除く)である。

これをみてもわかるように、幅広い経済部門から経済指標が選ばれているが、特に一致系列では、生産面に重点が置かれている。

筆者が経済状況を見るとき、「1に雇用、2に所得」である。つまり、雇用が確保されていれば、経済政策は及第点といえ、その上で所得が高ければさらに上出来で、満点に近くなる。

それ以外の、たとえば輸出や個別の産業がどうかという話や、所得の不平等のように各人の価値判断が入る分野は、評価の対象外にしている。

このように経済をシンプルに考えているので、必須な経済指標としては、失業率(または有効求人倍率、就業者数)と国内総生産(GDP)統計で、だいたいの用は足りる。

筆者の立場から見ると、景気動向指数の一致系列は、生産面の指標が重複し、雇用統計が足りないと思えてしまう。逆にいえば、このような雇用を重視しない指標を見ていれば、雇用政策たる金融政策への言及が少なくなってしまうのは仕方ないだろう。

雇用を経済政策のミニマムラインとする筆者から見れば、アベノミクス景気は実感できる。筆者の勤務する大学はいわゆる一流校というわけではなく、ときどきの「景気」によって就職率が大きく変化する。

4、5年前には就職率が芳しくなく、学生を就職させるのに四苦八苦だった。ところが、今や卒業者の就職で苦労することはかなり少なくなった。この間、必ずしも学生の質が向上したとはいえないにも関わらずだ。これは、アベノミクスの金融緩和によって失業率が低下したことの恩恵である。

「潜在成長率の低下」という説明も怪しい。本コラムの読者であれば、「構造失業率」が通説より低かったことを知っているだろう。この「構造失業率」は「潜在成長率」と表裏一体の関係にあり、構造失業率が低いなら、潜在成長率は高くなる。つまり、報道は、構造失業率は高いままという誤ったことを主張しているに等しい。こうした報道を読むときは、よく注意したほうがいい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】景気が良くなれば給料二倍的感覚はただの情弱(゚д゚)!

上の記事で、高橋洋一氏が主張しているように、「景気動向指数の一致系列は、生産面の指標が重複し、雇用統計が足りないと思えてしまう。逆にいえば、このような雇用を重視しない指標を見ていれば、雇用政策たる金融政策への言及が少なくなってしまうのは仕方ないだろう」というのは事実だと思います。

企業で働く人のうちでも、人事に関係ある分野で働いている人や経営層ならば、現状の人材獲得は非常に困難を極めはじめていることから、景気が良くなっていることは十分実感できると思います。

一般サラリーマンでも、人事に直接かかわる仕事をしていれば、これは強烈に感じます。特に、日本がデフレスパイラルのどん底に沈んでいたときにのリーマン・ショックの前後など、人の採用にかかわった人は、二度とあの時代のようなことを繰り返すべきではないということを実感したと思います。

あの頃には、人を採用するのはかなりやりやすかったと思います。そうして、このブログにも当時のことを書いていますが、実際に雇用した若者たちの話を聴くと本当に悲惨というか、夢も希望もない若者たちの実体が手に取るようにわかりました。

たとえば、国立大学を卒業し、その後私と同じ国立大学の大学院を卒業した女子学生が自分の会社に入社したのですが、入社後に話をしてみると、なかなか就職先がなくて本当に困った話や、卒業と同時に数百万円の奨学金による借金をかかえてしまった話などを聞き本当に当時は若者にとっては、生活すること自体が大変であることを実感しました。

また、ある男子学生は、札幌で4年間を過ごしたのに、何とすすき野に一度も行ったことがないとか、飲むとすれば、ほとんど家飲みしかしたことがないとか、車などそもそも買うつもりにもなれなかったなどとか、バイトをしてもさほど稼げないことなどを聞きました。

そうして、実はその学生が特に厳しいというわけでもなく、良く話を聴くと、結構裕福な家庭の出身であることを聴いて、驚いてしまいました。ちょうどその頃、統計などをみると日本の若者の自殺率は世界で突出して高いことなどを知り、さらに憤りを感じたものです。

自分たちの学生の時と比較して、何と今の若者は悲惨な境遇に置かれているのかと思い、忸怩たる思いがしました。

そうして、数年たったときに、あのリーマン・ショックなるものは、英語ではなく単なる和製英語であることを知りました。日本以外の国では、景気が落ち込んだときに、中央銀行が大規模な金融緩和をはじめたにもかかわらず、日銀は実行しなかったために、震源地である米国や、英国などがいち早く不景気から抜け出したにもかかわらず、日本だけが一人負けの状態となり、超円高とさらなるデフレスパイラルのどん底に沈み込んでしまいました。

この状態が長く続いたので、日本ではこの時期の不況をリーマン・ショックと呼んだのです。そのため、このブログではリーマン・ショックではなく、「日銀ショック」と呼称したほどです。

それについては、以下のグラフをご覧いただければ、よくおわかりになると思います。

このグラフは2008年を100として、各国の中央銀行がどの程度金融緩和をしたのかを示すものです。米国が最大で300を超えるほどの大規模な金融緩和を行ったにもかかわらず、日銀は150にも満たないほどの緩和しかしませんでした。

これが、日本では不景気が長引き、リーマン・ショックなる和製英語ができた所以でもあります。

日本でいうリーマン・ショック時の若者の状況や経済の状況を考えれば、現在はかなり景気が回復しているのは間違いないです。この状況を絶対に後戻りさせるわけにはいきません。

それにしても、現状は、過去のデフレの悪影響は未だ残ってはいるものの、上で述べたようにそもそも、学生を雇用するのが大変になりましたし、最近の若者は、さすがにリーマン・ショックの時のようなひどい状況と比較すれば、随分良くなりました。この状況を理解できず、景気の回復を実感できないという人たちは、かなり情報感度が低いのではないかと思います。

これに関して、経済学者の田中秀臣氏が以下のようなツイートをしていました。
数年で給料二倍でないと、景気がよくなったという実感がないという平気で言う人は、情弱のそしりを免れないと思います。

年率数%の緩やかなインフレが続いた場合、給料などどうなるのかというか、感覚的にどのような感じになるか、私は長年米国で暮らしているご婦人から、それに関して聴いたことがありますので、その話の内容を以下に掲載します。

米国では、その時々で凸凹はあるものの、長期的にみれば3%くらいのゆるやかなインフレが続いてきました。その中で実際に暮らすと、以下のような感じだそうです。
「1、2年だと、給料が上がったにしても、誤差くらいにしか感じられないのですが、20年経つといつの間にか給料が倍になっているという感じです」
感覚としてはこのようなものなのでしょう。実際、働き始めてから20年〜30年たつと、給料が徐々にあがるし、経済成長しているわけですから、それなりに仕事に慣れたり、地位が向上した分も含めると2倍になったという感覚なのでしょう。

無論、地位が向上しないで、そのまま同じ地位で同じところに勤めていたにしても、経済成長をしているわけですから、インフレ分を差し引いても給料は20年前の1.5倍くらいにはなっているのでしょう。

いくら緩やかなインフレであったにしても、終戦直後の日本のような場合は、別にして、給料が倍というのは20年くらいはかかるものとみて間違いないです。

以下に、このご婦人と似たような境遇にいて、米国で長い間居住された方の、2012年時点での、米国のインフレと、日本のデフレを比較した記事のリンクを掲載しておきます。
インフレのある暮らし – 15年ぶりの1ドル80円時代に思うこと
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの方の物価に関する米国に在住していての感覚などを掲載しておきます。
さて、アメリカの方のインフレも年間3%くらいでしかないのだが、それでも15年たつとモノの値段が5割高になる。これはつまり、去年と今年の値段の差は誤差の範囲だが、10年、20年たつと目に見えて高くなる、というレベル。
やはり、物価のほうからみても、10年、20年たって目に見えて高くなるという感覚のようです。

このようなことでは、景気回復を実感できないというのは、全くの見当ハズレです。緩やかなインフレでは、物価も給料も去年と今年の差異ということになれば、誤差のようにしか感じられないのですが、10年、20年たつと目に見えて高くなるというレベルです。

これが、常識的な感じかたでしょう。しかし、これでは意味がないとお考えでしょうか。私は、決してそうは思いません。

緩やかなインフレだと、雇用状況も良いですから、まずは就職ということについてあまり心配しなくても良くなります。それに、就職してからでも、誰もが20年たてば、給料は現状の1.5倍から2倍は見込めるとなれば人生に対する考えたかも変わってきます。

これから、給料が下がることはあっても上がることはなかなかないと考えているのと、とにかく20年もたてば倍になると考えられるのでは雲泥の差です。

それに、緩やかなインフレが続いていれば、たとえば会社で正社員と、パートやアルバイトなどの臨時雇用の人とが、全く同じ仕事を同じ時間だけした場合、臨時雇用の人のほうがその仕事に関しては賃金が多くなります。これは、デフレ時代しか経験したことのない人にはなかなか理解できないかもしれません。しかし、これは緩やかなインフレが続いている経済下では当然のことです。過去の日本もそうでした。

結局、雇用情勢が良ければ、人手不足でそうせざるを得ないからそうすることになるだけのことなのです。臨時雇用であっても、賃金が低けれ誰も仕事をしなくなります。しかも臨時の仕事ですから、仕事が終われば即解雇と同じですから、ある程度割が良くなければ、その仕事をす人を集められなくなるのです。

こうして、学生のバイトもデフレの時から比較すれば、緩やかなインフレの時のほうが実入りがよくなります。

それと、若者というと、車という時代もありました。大学生で車を持つ人も結構いましたし、高校卒業したばかりで勤めはじめたばかりの若者が、かなりの高級車を所有するというのも当たり前の時代がありました。

その当時は、若くても将来は給料があがっていくという見込みがあったので、車のディーラーも競って若者に車を売ることができました。それに高級車であれば、再販して、若者にさらに上の車を比較的安く売るということもできました。

人々のインフレ期待は、このように経済を活性化していくのです。これからも、デフレが続くと頑なに思い続けるのは間違いですし、緩やかなインフレになれば、給料がすぐ倍になると考えるのも間違いです。

これから、社会がどう変わっていくのか、これからの社会に必要とされるものは何なのか、それを示す兆候は、現在の社会をみれば、いたるところに見られます。

景気が良くなれば、すぐに給料が倍になるなどと思い込むような人は、そのような目にあうことは滅多にないでしょうが、現在ある小さな変化で、今後大きくなるであろう変化を見極めることができる人にはビジネスチャンスが舞い込んできて、2倍どころか、20年後には、10倍、100倍にもなっているかもしれません。

それが、緩やかなインフレの時代の常識です。

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