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2020年7月30日木曜日

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく — 【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく 
高橋洋一 日本の解き方

トランプ大統領

 米トランプ政権が、ヒューストンの中国総領事館を閉鎖させた。中国も対抗し、四川省成都の米総領事館を閉鎖させる事態となっている。

 領事館は、大使館と並ぶ在外公館の柱だ。自国民の保護、査証の発行、証明書の発行、他国の情報収集という重要業務を行っている。

 米国内の中国領事館は、ヒューストンのほか、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス、イリノイ州シカゴ、ニューヨークに置かれ、ワシントンには中国大使館がある。

 一方、中国にある米領事館は、四川省成都のほか、香港、広東省広州、上海、遼寧省瀋陽にある。

 領事館ではなく大使館の閉鎖を要求するとしたら、それは宣戦布告にも等しい。大使館ほどではないが、外交特権もある領事館の閉鎖は、大使館の閉鎖に次いで強烈な外交的な意思表示であることに間違いない。

 米政府高官の話として、在米中国領事館は米国の知的財産を窃取する一大拠点だったという。米研究機関にいる中国人のスパイにどんな情報を盗むべきかを具体的に指示したり、捜査から逃れる方法を伝授したりしていたという。米研究機関への米国ビザに関し軍歴を隠蔽して不正取得していた中国人4人が訴追されたという報道もあった。

 米中貿易戦争も、中国による米国の知的財産権の窃取がメインテーマであったが、今回のコロナ危機に際し、それが明白になってきている。知的財産権というが、その中心は軍事に転用可能な新技術である。

ただし、軍事転用のあるなしに関わらず、日本を含む外国企業は、中国に進出すると新技術が盗まれるとこぼす。中国国内で、海外のパクリとおぼしき事案は至るところでみられる。

 中国は、海外でも知的財産権の窃取に一生懸命のようだ。ただし、海外では、中国国内のように振る舞えないので、各地にある領事館が中心的な役割を果たしてきたというのが、米政府の見立てだ。米政府から、これからいろいろな「証拠」が提示されるだろう。

 そして、少なくとも11月の大統領選挙までは、米中の報復措置が繰り返されるだろう。当初中国は湖北省武漢市の米総領事館を閉鎖すると伝えられたが、それでは米国への影響も少ないので、ウイグル・チベットの情報収集を担当する四川省成都の米総領事館の閉鎖に至ったともいわれる。

 米中間では、モノ・ヒト・カネのつながりがある。モノで関税引き上げの応酬があり、決着が付かないでヒトの制限に移ってきた。普通はビザ発給の制限になるが、いきなり領事館閉鎖になった。カネについてはドル取引制限が考えられるが、これは中国の息の根を止めかねない劇薬で、米国の「最終兵器」だ。

 世界経済を巻き込むかしれないので、慎重に対応されるべきだが、また一歩、近づいたのは間違いないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

中国の企業は、場合に世では米国金融機関との取引ができなくなり,ドル決済が停止されることすらあり得るのです。米国財務省は敵対国に対する制裁対象としてSDN(Special Designated Nationals)リストというブラックリストを設けていますが、その制裁項目の中には米国・国際金融機関との取引停止、ドル送金など外為取引の禁止、米国内資産凍結などの劇薬も含まれています。

貿易に代表される国際取引の多くは米国の通貨であるドルを介して行われています。国際取引の多くは米国政府やFRB(連邦準備制度)の監視を免れない。そして米国政府やFRBは、「ドル利用禁止」等の経済制裁を通じて「望ましくない取引」を止めることができる。以下、現行の国際決済システムを概観し、米国政府やFRBの国際取引における影響力を確認します。



図表1は貿易など国際決済の様子を簡略化した概念図です。ごく一般的な国際決済の例を挙げます。例えばロシアのケチャップ会社がトルコの農業企業からトマトを輸入するとします。ロシアのケチャップ会社からトルコの農業企業への支払いがドルで決済される場合、代金はルーブルからドルに交換された後、ロシアのケチャップ会社の取引金融機関からトルコの農業企業の取引金融機関へと支払わレます(その後、トルコの農業企業がドルをリラに交換して受け取る場合もあります)。

その際、国際資金決済には「カバー」と言われる仕組みがあり、決済を行なう金融機関どうしが通常は決済通貨の母国(ドルの場合、米国)にある金融機関に有する口座を介して決済資金の付け替えが行われています。すなわちドル決済の場合、「ロシアのケチャップ会社の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」から「トルコの農業企業の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」に支払われることになります。トルコ・ロシア間の取引でありながら、決済は在米金融機関の間で行われているのです。

なぜルーブルを(ドルを介さず)直接リラに交換しないのかといえば、ルーブルからリラへの直接交換は、「ルーブル⇒ドル⇒リラ」という間接交換と比較した場合、容易ではないのです。

これは通貨に対する需給の問題です。「ルーブル⇒リラ」という直接交換が成立するためには、その反対取引となる「リラ⇒ルーブル」取引も必要となります。つまり、「ルーブル⇒リラ」あるいは「リラ⇒ルーブル」の取引が成立するためには、双方向の取引が常時相当の規模で行われているような、厚みのある「リラ・ルーブル間の外国為替取引市場」が必要なのです。そしてそのような市場が存在しない場合、図表1で示したように、リラとルーブルはドルを介して決済されることになります。

このようにごく一部の例外を除いて、ほとんどの国際決済は実は「ドルを介して」行われています。そして多くの場合、ドルを介した取引のほうが、マイナー通貨間の直接交換よりも、手数料が少なく済む場合が多いのです。

なぜならドルが絡む外国為替市場では相当額の取引が行われているため、「ドル以外の通貨⇒ドル」「ドル⇒ドル以外の通貨」2つの取引の手数料を合わせても直接交換した際の手数料を下回るからです。このような手数料の安さも「ドルを介した国際決済」の優位性のひとつです。

そうして政治的に重要なのは、この「ドルを介した国際決済」が、図表に示したとおり米国内の決済システムを通じて行われていることです。米国政府やFRBは、米国内の銀行・金融機関の取引を厳しく管理・監督しています。

従って、「ドルを介した国際決済」は米国内の決済システムを通じて全て米国政府やFRBの知るところとなっています。そうして米国政府やFRBが望ましくないと判断した取引は、「ドル利用禁止」といった手段を使って差し止められることになるのです。つまり「ドル利用禁止」とは事実上「貿易禁止」と同じ意味を持つのです。

このように、「ドルを介した国際決済」という制度を通じて、米国政府やFRBは世界全体の取引を監視し、必要に応じて望ましくない取引を止める権力を有しているのです。これは、どの程度の監視なのかといえば、日本のマイナンバーカードなどとは比較にならないものです。金融取引の全部が詳細に監視されているのです。

米国の財務省には金融犯罪を担当する次官(Under Secretary of the Treasury for Terrorism and Financial Intelligence=テロリズム金融犯罪情報分析担当次官)が存在しますが、対ロ制裁でよく名前が挙がるOFAC(米国財務省外国資産管理室)は正にこの次官が管轄しています。


以上、「ドル利用禁止」が持つ意味の大きさを説明しました。一方、最近は中国経済の台頭、米国経済の停滞、米国による経済制裁の多用を受けて、いわゆる「ドル離れ」が進むといった論調が多くみられます。

確かにドル決済の強みである市場の厚みは米国経済の大きさによるもので、米国経済が衰退すればこの相対的優位は長期的には揺らぐかもしれないです。しかし、ドル決済を支えているのは市場の厚みだけでなく、ドルを決済する米国内決済システムの安定性や利便性、透明性による部分も大きいです。このように一定の厚み・安定性・利便性・透明性を併せ持つ市場が、米国以外に新たに出現するとは中期的には考えにくいです。

実際、IMFが1969年に国際準備資産としてSDR(Special Drawing Rights:特別引出権)を創設して50年近く経過しますが、決済手段として使えないSDRの普及は極めて限定的です。米国経済そのものの先行きは別にして、ドル決済の優位性と、そこから得られる情報を通じた米国経済制裁の優位性は、当面揺るぎません。ドルはこれからも基軸通貨であり続けます。
米国が、大々的に中国に「ドル利用禁止」をすれば、それは中国にとって「貿易禁止」と同じ意味になります。無論、貿易ができなくなっても、中国は人口が多いので、内需を喚起することにより、ある程度GDPは拡大できるでしょうが、それにしても、ハイテク関連の部品や、機材など全く輸入できなくなることになるでしょう。

そうなると、いわゆる中国製ハイテク機器等ほとんど作れなくなります。無論このような制裁を今すぐに実施すると、現状では当の米国にまで大きな影響が出ることになるでしょう。

そのため、昨日も述べたようにすぐに、米国が中国に対して、大規模な財務的な制裁措置を実行することはないでしょうが、米国が受ける悪影響とのバランスを図りつつも中共を震撼させるような凄まじい措置が、大統領選挙の前の8月,9月あたりには発動される可能性が高いです。そうなると、中国は経済的にも、技術的にも、社会的にも毛沢東時代に逆戻りすることになります。

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