2023年12月17日日曜日

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一―【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

 日本の解き方

中国「戦争恐れない」 尖閣めぐる発言に日本は断固たる措置を 高橋洋一

まとめ
  • 中国軍の元副院長が共同通信のインタビューで、戦争は望まないが恐れないと述べ、日本へのメッセージを送った。
  • 日本は感情的ではなく国際法を考慮し、外交において中国に適切なメッセージを送るべきだと指摘されている。
  • 中国の台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性を示唆し、日本の安全保障に影響を与える可能性があると主張されている。
  • 中国の南シナ海での行動と国際法への無視が強調され、日本は中国の力による現状変更に強い姿勢を示すべきだとされている。
  • 日本は中国の核心的利益とされる台湾と尖閣の問題に注意を払い、万一日本有事が発生した場合には断固たる対抗措置を取るべきだと強調されている。

軍事科学院の何雷・元副院長(中将)

 中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)が共同通信のインタビューで、「戦争は望まないが恐れない」と述べ、日本向けのメッセージを送った。

 この発言を感情的に受け止めず、国際法を考慮しつつ、外交において中国に適切なメッセージを送る必要がある。彼らの台湾に対する行動が尖閣諸島を巻き込む可能性があり、中国の動きが日本の安全保障に影響を及ぼす可能性がある。

 さらに、中国の南シナ海での行動とその国際法を無視しており、日本は中国の力による現状変更に対して強い姿勢を示すべきだ。中国は「核心的利益」として台湾と尖閣を掲げており、その行動が極東アジアの安全保障に深刻な影響を与える可能性がある。

 南シナ海での中国とフィリピンの対立も注目され、国際仲裁裁判所の判断を無視する中国の姿勢が国際社会における危険性を浮き彫りにしている。

 日本は中国の力による現状変更を望まず、万が一日本有事が発生した場合には、断固たる対抗措置を取るという強い立場を国内外で示すべきだ。

【私の論評】中国の脅威に直面する日本の安全保障:意思の強さと抑止力の重要性

まとめ
  • 中国の対潜水艦戦能力は日米に劣るため、中国の台湾・尖閣への軍事侵攻の可能性は低い。
  • ASWにおけるハード面とソフト面の両方が重要であり、経験とノウハウの積み重ねが必要であり、中国は未だハード・ソフトとも日米に及ばない。
  • よって中国軍のシンクタンク、軍事科学院の何雷・元副院長(中将)の「戦争は望まないが恐れない」情報戦の一環と考えられる。
  • 日本は中国の軍事力に対し強く反論し、防衛を強化し、強い態度で臨まなければならない。
  • 弱腰な姿勢は侵略と不安定を招くだけであり日本の意思と抑止力が安全保障に重要である。
尖閣諸島

 私は、中国は対潜水艦戦(ASW)で日米にかなり劣っているため、現実には中国が尖閣や台湾への軍事侵攻をする可能性は低いと思っています。
 
 ただ、こういうことを言うと、中国のASWも相当進んできているから、そうとは言えないと主張する人が必ずでてきます。
 
 しかし、こういう人たちは大事なことを忘れていると思います。それはASWにはハード面も重要ですが、ソフト面も重要であるということです。
 
 借りに、中国海軍が、日米なみにASWのハード面を整えたとしても、すぐにはASWが日米並にはならないということです。ASWはそれだけでは強化できず、長年の経験とノウハウの積み重ねが必要だからです。ましてや、中国海軍のASW関連のハードは、未だに日米に比較して遅れています。
 
 これは、たとえば脳外科手術において、様々な最新のハードを導入したとしても、長年の経験やノウハウがないと、満足な手術ができないのと同じです。ハード面を整備したからといって、すぐに高度な手術ができるわけではないのです。優れた脳外科医のノウハウや経験必要不可欠なのです。

現代の脳外科手術には様々なハードが利用されるが、ハードが揃ったからといって優れた手術ができるわけではない

これと同じような、発言をする自衛隊幹部の人もいますが、このような発言をするためか、その方は、「おかげで自分は地上波テレビには出られない」と語っておられました。しかし、これが現実なのです。この現実を突きつけられるのを嫌がる人がマスコミには多いようです。
 
 米国では確か昨年台湾有事のシミレーションが行われたと記憶していますが、台湾有事になれば、日米は相当損害を受けるものの、それでも中国は台湾に侵攻できないという結果になっています。

それは、中国のASWが劣っているためと思います。日米海軍と中国海軍が真正面から戦えば、中国海軍は崩壊します。ただ中国側は、当然のことながらミサィルを発射して日米を攻撃することになるでしょう。

だから日米も被害を受けることになるのです。しかし、海戦において日米が負けることはなく、よって台湾侵攻はかなり難しいのです。この事実をふまえると、何雷・元副院長(中将)の発言は情報戦の一環であると思われます。

私は日本は、この将軍の恐喝を真に受けるべきではないと思います。これは、中国を強く見せるためのプロパガンダであり、実際には日米同盟に比べれば、中国の軍事力、特に海軍力ははるかに弱いです。日本は防衛を強化し、米国と緊密に協力し、中国のハッタリや挑発があればいつでもこれに強く反論すべきです。

もし日本が中国の侵略に対して強い態度で臨まなければ、悲惨なことになるでしょう。宥和政策は、中国共産党のような専制政権には決して通用しません。日本が弱さを見せれば、中国はそれを利用するでしょう。

尖閣諸島をめぐる挑発行為をより大胆にし、日本の決意を試すために行動をエスカレートさせるでしょう。毅然とした対応がなければ、中国はますますみずからの軍事的限界を押し広げることになるでしょう。これは最終的に、日本が引き下がると信じて中国が仕掛ける直接的な軍事衝突につながりかねなです。

尖閣諸島沖を航行する中国海警局の鑑定と、海保の艦艇

国内的には、強い態度に出なければ、日本の安全保障と独立性が損なわれることになります。国民は危険を感じ、政府は国民の信頼を失うことになるでしょう。

また、同盟国から日本の自衛の意志を疑われ、海外での日本の立場を損なうことになるでしょう。国際的には、米国のような同盟国との関係を損なう一方で、中国や北朝鮮のような敵対国を増長させることになるでしょう。

地域のパワーバランスに危険な変化をもたらす可能性もあります。日本が自国を守るために立ち上がる姿勢をみせなければ、米国が自国の利益を危険にさらしてまで日本を守らなければならないのだろうかという疑問を生じさせるでしょう。

日本の弱腰と宥和は侵略と不安定を招くだけです。日本は領土、主権、国益を断固として守らなければならないです。それを怠れば、日本とインド太平洋地域の同盟国にとって、より大きな混乱と不安を招く危険性があります。

中国のような覇権主義・権威主義国家は、日本の意思が弱いと思ったり、断固とした行動に消極的だと思えば、その隙につけ込むでしょう。日本の安全保障は、意思の強さと抑止力にかかっているのです。

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2023年12月16日土曜日

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」―【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」

まとめ
  • ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍はNATO加盟国への脅威となる。
  • アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。
  • ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。
  • ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。


 米国の政策研究機関「戦争研究所(ISW)」は、西側諸国がウクライナへの軍事支援を打ち切りロシアが勝利した場合、アメリカは「天文学的」な軍事的・経済的負担を強いられると分析した。

 具体的には、ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍は豊富な戦闘経験を積み、NATO加盟国への脅威となる。アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。また、ステルス戦闘機の多くをヨーロッパに配置すると、台湾有事への対応能力が低下する可能性もある。

 一方、ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。

 戦争研究所は、アメリカなどで支援継続の先行きが不透明になるなか、ウクライナが敗北した場合の軍事的・経済的コストについても真剣な議論を促した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

まとめ
  • 戦争研究所は、ウクライナが勝利するためには、西側諸国の支援が不可欠であると主張している。
  • 米国議会では、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いている。
  • 欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流だが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていない。
  • 米国や欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていないため、日本への支援への圧力が高まる可能性がある。
  • バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しており、日本にも支援の拡大を働きかけているとの見方もある。

ロシアが勝った場合のISWによる想定地図

The Institute for the Study of War(戦争研究所)は、伝統的な米国の価値観を推進する保守系シンクタンクです。彼らは、米国が築き上げられた原則を尊重する観点から、外交政策と国家安全保障問題について貴重な研究と分析を提供しています。米国の民主主義、自由、人権などの価値観を支持しています。

その彼らが、以上のようなレポートを出しているわけですから、ウクライナ戦争においてウクライナ側が負けるようなことがないように、西側諸国は支援を継続すべきなのでしょう。

米国議会においては、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。欧州議会においては、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていません。

米国議会においては、2023年11月に、ウクライナへの118億ドルの支援を盛り込んだ歳出補正法案が提出されました。しかし、共和党議員の中には、この金額が過剰だと主張する声があり、法案は可決に至りませんでした。

2023年12月現在、米国議会では、ウクライナへの追加支援を盛り込んだ歳出補正法案の再提出が検討されています。しかし、共和党議員の反対をどう乗り越えるかが課題となっています。

欧州議会においては、2023年10月に、ウクライナへの500億ユーロ(約780億ドル)の支援を盛り込んだ財政支援パッケージが採択されました。しかし、このパッケージは、あくまでも4年間にわたる計画であり、毎年125億ユーロ(約180億ドル)の支援を継続するかどうかについては、まだ合意に至っていません。

欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、ロシアとの経済関係を維持したいという意見もあり、具体的な金額や内容については、まだ議論が続いています。

このように、米国議会においても、欧州議会においても、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。今後の戦況や、米国と欧州の経済状況などによって、支援の継続や規模が決まっていくと考えられます。

米国や、欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていない現状では、日本への支援への圧力が高まる可能性もあります。

バイデン政権は、日本の巨額のウクライナ支援を肩代わりさせるため、岸田首相にかわる、米国が御しやすい総理大臣を擁立させたいのではないかと、現在の岸田総理の支持率低下や、検察の不自然な動きなどに結びつけて語る識者もいますが、それに関しては現状では肯定も否定もできません。いずれ、何かの情報がでてくれば、このブログにも掲載することとします。

林官房長官は記者会見で、米国 が ウクライナ 支援を削減した場合、日本政府がこれを肩代わりするのかについて、質問に答えなかった。

実際、バイデン政権による日本にウクライナ支援を肩代わりさせるような具体的な発言、行動は、現時点では確認されていません。

しかし、バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しています。また、日本は、アメリカの同盟国であり、民主主義や人権の価値観を共有する国であり、ウクライナ支援に積極的に貢献することが期待されています。

こうした背景から、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけているとの見方もあります。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。
  • 2023年11月、バイデン大統領は、日米首脳会談において、岸田首相に対し、ウクライナへの支援を強化するよう要請しました。
  • 2023年12月、アメリカ国務省は、日本を含むG7諸国に対し、ウクライナへの追加支援を呼びかけました。
日本政府は、2023年11月15日、ウクライナへの人道支援として、10億ドルの追加支援を決定しました。また、2023年12月20日には、ウクライナへの防衛支援として、1億ドルの追加支援を決定しました。

日本国内では、ウクライナ支援を巡って、自民党と野党の間で意見の相違が生じています。自民党は、ウクライナ支援を拡大すべきだと主張していますが、野党からは、財政負担や経済への影響を懸念する声が上がっています。

こうした状況を踏まえると、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけていることは、十分に考えられます。しかし、日本がそれに応じるかどうかは、国内の政治状況や、今後の戦況などによっても左右されると考えられます。

北朝鮮のICBM

ただ、日本は中国や北朝鮮との間で独自の課題に直面しており、資源は限られています。より良いアプローチは、米国が模範を示して支援をリードすることです。米国自身がウクライナに強力な援助を提供し、同盟国にもできる限りの支援を行うよう促すべきです。

ISWの報告書は、同盟国にウクライナ支援を押し付けるのではなく、同盟国に情報を与え、支援を説得するものであるべきと思います。

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2023年12月15日金曜日

政権浮揚狙った首相に翻弄された自民税調、問われる存在感―【私の論評】 自民税調の衰退と政局の混乱の果にみえるもの

 政権浮揚狙った首相に翻弄された自民税調、問われる存在感

まとめ

  • 所得税と住民税の定額減税は、岸田政権の経済対策で打ち出され、金額などの重要事項は既に決まっていた。与党税調の議論は、所得制限を設けるかなど細部の調整に限られた。
  • ガソリン税の一部軽減については、首相の指示で自公と国民民主党の政調会長での議論が中心となり、自民税調は実質的に〝蚊帳の外〟だった。
  • 防衛費増額のための増税は、開始時期の議論が迷走。自民の宮沢洋一税調会長は「今年の年末に決めるべきだ」と強調していたが、自民のパーティー券問題が浮上し、開始時期の明示は見送られた。
  • かつての自民税調は絶大な影響力を持っていた。しかし、第2次安倍晋三政権以降は官邸と自民税調の力関係が逆転し、重要事項が税調の頭越しに決まるようになっていた。
 令和6年度税制改正大綱は、物価高対策や防衛費増額などの観点から、所得税と住民税の定額減税、トリガー条項の凍結解除、防衛増税などを盛り込んだ。

 その過程では、所得税減税やトリガー条項の凍結解除は、岸田政権の浮揚を狙う首相官邸の主導で決まり、自民、公明両党の税制調査会は調整に追われた。

 防衛増税の開始時期については、自民税調会長の宮沢洋一氏が今年の年末に決めるべきと強調していたが、自民党のパーティー券を巡る問題が浮上するなど、政権への増税批判なども重なり、開始時期の明示は見送られた。

宮沢税調会長 こちらが本当の増税メガネ?

 かつての自民税調は、時の首相でも踏み込めない別格の組織だったが、第2次安倍晋三政権以降は官邸と自民税調の力関係が逆転。重要事項が税調の頭越しに決まるようになっていた。

 岸田政権は支持率が低く、政権基盤も脆弱だが、そのことがかえって、政権浮揚を視野に入れた官邸主導の税財政政策につながったようだ。

 宮沢氏は「税調の役員になりたい人は多い」とアピールするが、ある自民税調の幹部は官邸中心で6年度の税制改正の方針が次々と決められた状況に「税調が軽んじられてはいないか」と危機感を吐露した。

 内閣支持率の低迷が続くなど、官邸側が期待した政権浮揚効果はこれまでのところ得られていない。政権への求心力が弱まる中、来年以降、自民税調がいかに税制改正の議論をリードしてかつてのような威信を取り戻せるかが注目される。

【私の論評】 自民税調の衰退と政局の混乱の果にみえるもの

まとめ
  • 自民税調は、かつて与党税制の議論を独占していたが、第2次安倍政権以降、官邸との力関係が逆転し、影響力が低下している。
  • 岸田政権は、所得税と住民税の定額減税を打ち出したが、この決定は、自民税調の意向を反映したものではなく、官邸主導で行われた。
  • 高橋洋一氏は、岸田首相の減税方針は、財務省の思惑とは相反するものであり、財務省は倒閣運動を始めた可能性かある。
  • 現在の政局は、財務省の倒閣運動によるものであり、特に安倍派に対するパーティー券問題にの背後に、その可能性が高い。
  • 今後、減税などの政策は、官邸主導で行われるようになる可能性がある。現在自民党税調が機能しないのは、その予兆であると思われる

まず、はっきりさせたいのは自民税調がかつのような威信を取り戻す必要性など全くないことです。私自身は、実体経済におかまいなしに、増税ばかりを提言してきた自民税調など、解体すべきと思います。

これについては、以前このブログに掲載した記事をご覧いただければご理解いただけるものと思います。その記事のURLを以下に掲載します。
民間企業なら絶対許されない…政治家が繰り返す「減税の法改正は時間がかかる」の大嘘「本当は能力がないだけ」―【私の論評】国民を苦しめる与党税調の独占!自民党は国民の声を反映した迅速な減税を!

増税メガネをかけると誰もが増税したくなるらしい AI生成画像

詳細は、この記事もしくは、この記事の元記事をご覧いただくものとして、この元記事のさらに要約したものを以下に掲載します。 

岸田政権は経済対策の一環として所得税と住民税の定額減税を提案し、金額などの大まかな内容は決定された。与党税調は細部の調整に留まり、所得制限などの議論は限られた。 
ガソリン税の一部軽減については、自公と国民民主党の政調会長が中心となり、自民税調は実質的に排除された。防衛費増額のための増税については開始時期についての意見が分かれ、宮沢洋一税調会長は年末までの決定を主張したが、自民のパーティー券問題が浮上し、具体的な開始時期は見送られた。 
かつて影響力を持っていた自民税調は、第2次安倍政権以降官邸との力関係が逆転し、重要な決定事項は税調の意向を無視して決められるようになっていた。

 この記事の【私の論評】の要約したものを以下に掲載します。

税制改正は与党税調で要望が審議され、その結果を基に翌年の通常国会で法案が提出される。しかし、法的には通常国会や臨時国会でしか法案を提出できないという制約はない。 
多くの先進国では、複数回の機会があり、米国や英国では大統領や財務大臣が法案を提出できる。このようなルールが民間企業にあった場合、経営効率の低下が懸念される。 
日本では与党税調に権力が集中しており、渡瀬氏はこの点を批判している。税制改正のための法案を国会で迅速に成立させられるようにすることは、国民の声を反映し、政治の透明性と効率性向上につながるとして、自民党はこのプロセス改革を実施すべきだと提言している。
高橋洋一氏は、岸田首相が2023年10月に所得税の減税を打ち出したことを「岸田首相が自我に目覚めた」と評しました。これは、岸田首相がこれまでは財務省の意見に従って財政再建を優先し、減税に消極的だったことを踏まえた指摘です。


高橋氏は、岸田首相の減税方針は、財務省の思惑とは相反するものであり、財務省は減税をしない総理を擁立するために倒閣運動を始めた可能性を指摘しています。

具体的には、高橋氏は以下の点を指摘しています。
  • 財務省は、財政再建のためには増税が必要だと主張しており、減税は財政を悪化させると考えている。
  • 岸田首相の減税方針は、財務省の権威を失墜させる可能性がある。
  • 財務省は、自民党内の増税派と結びつき、倒閣運動を進めている可能性がある。
高橋氏の指摘は、財務省が岸田首相の減税方針に不満を持っていることを示唆するものであり、注目を集めました。

現在の政局は、財務省の倒閣運動によるものであることを示唆しており、特に安倍派に対するパーティー券問題にの背後は、その可能性が高いと指摘しています。

その理由として、高橋氏は以下の点を挙げています。

  • パーティー券問題は、安倍派の資金集めに関わる問題であり、財務省は安倍派と対立関係にある。
  • パーティー券問題は、岸田首相の支持率を低下させる材料として利用することができる。
  • 財務省は、安倍派の弱体化を図ることで、岸田首相を倒しやすくなる。
高橋氏の指摘は、財務省が財政政策を巡って対立する安倍派を弱体化させることで、岸田首相の退陣を狙っている可能性を示唆するものであり、注目を集めました。

いずれにしても、パーティー券問題は、岸田政権の支持率を低下させるとともに、政局の不安定化を招く可能性があり、今後の政局に大きな影響を与える可能性があります。

具体的には、以下のようなシナリオが考えられます。
  • 安倍派の弱体化が進み、岸田首相の支持率がさらに低下した場合、自民党内で総裁選挙が行われる可能性が高まります。
  • 総裁選挙で岸田首相が敗北した場合、財務省が支持する候補が総裁に就任し、財務省主導の政治が復活する可能性があります。
ただし、これらのシナリオはあくまでも可能性であり、今後の政局の展開を予測することは困難です。

岸田首相が、安倍派からの提言でもあった減税を言い出さなければ、財務省は倒閣運動に走らず、政権支持率もある程度維持できたでしょう。

そうして、検察も岸田政権の支持率の低下で「パーティー疑惑」に目をつけはじめたといえます。これは、安倍派の狙い撃ちになっているので、岸田派にとってはダメージはほとんどなく。野党が脆弱であり、自民党内力学で政局が動いており、岸田派、麻生派、茂木派も、実質的にはダメージはあまりありません。

財務省としても、安倍・菅政権で増税せずに100兆円の補正予算を組むなど、財務省の意向に逆らい続ける等ことをされ続けたので、検察の安倍派叩きは好ましいものでしょう。

ただ、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでありません。麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合です。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っているでしょう。これが、官僚機構の背景にある「自民党内派閥力学」です。

安倍派6人の幹部

岸田文雄首相は14日、政治資金問題で疑惑が浮上した自民党安倍派(清和政策研究会)所属の閣僚4人を入れ替え、政権の要である官房長官に林芳正前外務相を任命した。4ポストとも安倍派以外の閣僚経験者を後任に据えることで、党と内閣への信頼回復を目指す。

ただ、岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないでしょう。

安倍派もこのまま排除されるだけではないでしょう、激しい抵抗が水面下で行われるのは必至です。

しかし、現状だけをみると、岸田首相の自民税調無視の行動と連日の裏金疑惑により税調は機能せず、改革が行われしまったかのような状況になっています。これは、財務省にとっては、良い動きとはいえません。

さらに安倍派の抵抗が、財務省の予期せぬ結果招く可能性もあるかもしれません。そうして、いわゆる裏金疑惑は、減税のきっかけを生み出すかもしれません。その1つは「ガソリン税」です。

ちなみに、現状は補助金政策を行っていますが、これは裏金作りを助長し、しかも約6兆円の財政負担がかかっています。一方で直接ガソリン税を値下げすれば、国民にとってありがたいだけでなく、財政負担も約1.5兆円にまで抑えられ可能性があります。ガソリン税だけではなく、そもそも補助金政策は裏金作りを助長するものです。減税はその対象者に直接及ぶものであり、他者が介在しません。だから、裏金作りなどを助長することはありません。

もう1つの減税チャンスは、「消費税」です。消費税が下がれば、政府に対する国民の信頼は少なからず回復します、このブログでも指摘してきたように数年間減税したとしても、財源には全く問題がありません。

今後このような改革が行われる可能性は否定できません。なぜなら、自民党自体は、岸田政権がもたなくなることは許容するかもしれませんが、自民党政権が存立の危機に直面すれば、存立を危うくする財務省の意向を聴いている余裕などなくなるからです。

現在の自民党税調が機能していない状況は、私にはその予兆ともみてとれます。

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2023年12月14日木曜日

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点―【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

米国の中国への優位性と日本が持つべき視点

まとめ
  • フィナンシャル・タイムズ記事では、ジョセフ・ナイ氏の主張が取り上げられ、米中関係の複雑さを強調しつつも、競争的共存を目指すべきだという立場が示されている。
  • ナイ氏は、米国の地政学的優位性やエネルギー自給能力、労働力の増加などの利点を強調し、中国との関係を緊張や冷戦を回避しつつ、協力して管理すべきだと述べている。
  • ナイ氏の主張は中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。
  • ナイ氏は米国が国内の開放性を維持し、民主的価値観を守ることも重要だと強調しており、米国のソフトパワーの重要性を示唆しています。
  • しかし、中国に近接した国々の視点や安全保障上の懸念についてはナイ氏の議論は、十分に答えているとはいえない。

習近平とバイデン

 11月17日のフィナンシャル・タイムズの記事は、米中関係の複雑さとその解決策についてジョセフ・ナイ氏の論説America should aim for competitive coexistence with Chinaを紹介している。それによれば、ナイ氏は米国と中国の関係は困難であるが、競争的共存を目指すべきだと主張している。ナイ氏は、バイデンと習近平のカリフォルニアでの会談で合意された米中軍組織の対話再開にも触れながら、両国関係は依然として険しいと指摘している。

 その上で、ナイ氏は米国には地政学的優位性やエネルギーの自給能力、労働力の増加といった利点があると強調している。そして、米国は競争的共存のためには中国の外交姿勢を牽制しつつ、緊張や冷戦を回避し、協力する方策を模索すべきだと述べている。彼は、米国が国内の開放性を保ち、民主的価値観を守ることも重要だと指摘している。また、米国のソフトパワーが中国の支配を望まない国々から支持されている点も強調している。

 しかし、ナイ氏の主張が、中国に近接した国々の安全保障上の懸念に十分に答えていない。さらに、オバマ時代のアジア政策に似た点が見られ。過去の米国の対応が寛容すぎた。ナイ氏の議論が米国以外のインド太平洋諸国にとって、中国の振る舞いが安全保障上の脅威になっている現状にどのように対応するか、議論が不十分である。

 ナイ氏の主張は米中関係の複雑性を示しつつも、競争的共存を模索すべきだという立場を取っているが、特に日本を含めた中国に近接した国々の視点に焦点を当てることができていない。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国との競争的共存は希望論、抑止力こそが厳しい現実に対処する術

まとめ
  • 日本の保守派の視点では、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチには信頼性を感じられない。
  • 中国の権威主義は、米国や日本の民主的同盟国の利益を脅かす存在であり、日本は慎重に対処すべきだ。
  • 日本は米国との軍事同盟を強化し、中国の侵略に対抗する必要がある。
  • 軍事的、経済的、外交的な力による抑止政策をとることで、日本は中国の圧力に立ち向かい、安全保障を確保するべきだ。
  • 日本は民主主義の価値観を強化し、中国の圧力に対抗するための連帯を形成する必要がある。
保守派の視点から見ると、ジョセフ・ナイ氏の穏健なアプローチは信頼できないと感じます。競争的共存は、リベラルな理想にすぎないと思えます。

ジョセフ・ナイ

中国は米国や日本などの民主的同盟国の利益を脅かす権威主義国家です。日本は慎重に中国との接し方を検討すべきです。米国との軍事同盟を強化し、東シナ海や南シナ海での中国の侵略に対処する必要があります。

日本は中国の経済的圧力に屈してはなりません。民主主義の価値と国家の安全保障のために立ち上がる必要があります。過去のオバマ政権の政策は失敗でした。バイデン政権も同じ過ちを繰り返そうとしているように見えます。

日本やアジアの他の同盟国は、ソフトパワーや協力だけではなく、ハードパワーや強さを誇示する必要があります。中国は力しか理解できない国です。

日米をはじめ、先進国は、すでに中国に対して国交を回復したり、WTOに加盟させたりなどして、競争的共存の機会を十分に提供しました。にもかかわらず、中国はそれを無視しました。そのような国が今後、競争的共存をする見込みなどありません。

日本や米国のような同盟国は、軍事費を増やし、合同軍事演習を実施し、中国の不公正な貿易慣行や人権侵害に対抗するために関税や制裁措置を積極的に用いる必要があります。

中国共産党大会

中国共産党が支配している限り、競争的共存は夢のまた夢です。彼らの目標は世界支配であり、協力ではありません。日本と欧米諸国は、現実を直視する必要があります。今こそ、中国の野心を抑止し、希望ではなく力で対処する時です。

中国に対抗するために日本がすべきことは、東シナ海や南シナ海での中国の野心に直接対抗するために、海軍力や空軍力を増強することです。戦闘機、空母、潜水艦、沿岸ミサイル防衛の強化が不可欠です。

日米同盟を強化する必要があります。日本は米国との軍事協力を深めるべきであり、米国の「核の傘」は中国を抑止する鍵となります。安倍元総理が主張していた核シェアリングも検討すべきです。

インド、オーストラリア、ヨーロッパとの安全保障パートナーシップを築く必要があります。日本は同じ民主主義国家と協力し、中国の圧力に対抗する統一戦線を構築すべきです。情報共有や武器取引、海軍の共同パトロールは、抑止力を高めることができます。

外交的、経済的な反撃が必要です。日本は中国の行動に正式に抗議すべきであり、関税をかけたり技術輸出を制限したりすることもできます。中国の圧力に立ち向かうべきです。

中国の軍事活動を監視する必要があります。日本は中国の海軍増強や極超音速ミサイル実験、台湾への潜在的な侵略計画を注視する必要があります。警戒が不可欠です。監視衛星やサイバー・プログラムは欠かせません。


国内での民主主義の価値観を強化すべきです。日本は民主主義、人権、法の支配へのコミットメントを再確認すべきです。民主主義の連帯は、中国の野心に対抗するための、道徳的な権威を持つことになります。

日本は軍事的、経済的、外交的に、力による抑止政策を取る必要があります。中国の圧力に立ち向かうことによってのみ、安全保障を確保できます。競争的共存は希望論であって、抑止力こそが厳しい現実に対処する唯一の術です。保守派の視点から見ると、これが日本が中国の野心に対処する最も適切な方法です。

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2023年12月13日水曜日

安倍元首相は激怒、会計責任者に「ただちに直せ」自民パー券疑惑、岩田明子氏が緊急取材「裏金」は細田派時代の悪習だった―【私の論評】安倍晋三氏のガバナンス:派閥問題と政治資金の大局的アプローチ

安倍元首相は激怒、会計責任者に「ただちに直せ」自民パー券疑惑、岩田明子氏が緊急取材「裏金」は細田派時代の悪習だった

まとめ
  • 自民党の安倍派議員が最近5年間で1000万円以上のキックバックを受け、裏金化していた疑惑が浮上。東京地検特捜部が議員らの聴取に乗り出す方針。
  • 安倍派の政治資金問題で、安倍元首相が派閥領袖になる前からの問題であり、彼は問題解決の対応を指示していたと報じられる。
  • 安倍派の議員らがパーティー券の売り上げ超過分をキックバックとして受け取った疑い。安倍氏は問題に気づき、改善を指示するも亡くなった後には実行されず。
  • 自民党は過去の「政治とカネ」問題を経験し、信頼を失った教訓がありながら、今回の問題で同じ轍を踏みかねない状況。
  • 岸田首相は安倍派疑惑に対しての認識が薄く、問題解決の姿勢が不十分とされ、彼の政策熱意の欠如や次期首相候補の不在が指摘される。


 自民党の安倍派に関する政治資金疑惑が浮上した。この疑惑では、安倍派の複数の議員が過去5年間で1000万円以上のキックバックを受け、これを裏金化していた可能性が指摘されている。東京地検特捜部は国会閉会後に議員らを聴取する方針だ。他の派閥でも政治資金報告書に問題があり、「裏金」や「記載漏れ」などが国民の信頼を損なっている。

 安倍派では安倍氏が領袖になる前からこの悪習があったとされ、安倍元首相が21年11月に初めて派閥会長となった後、翌年2月にその状況を知り、「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、2カ月後に改めて事務総長らにクギを刺したという。 
22年5月のパーティーではその方針が反映されたものの、2カ月後、安倍氏は凶弾に倒れ、改善されないまま現在に至ったようだ。この問題は岸田内閣の要である松野博一官房長官らも巻き込まれ、安倍派の「政務三役」の更迭が避けられない状況になっている。自民党はかつて「政治とカネ」で失敗し、今回の問題でその教訓を忘れていることが示されている

 特に深刻なのは最大派閥である安倍派の問題で、幹部らがパーティー券の売り上げ超過分をキックバックとして受け取っていたと報じられている。安倍氏は問題に気づき、対応を指示したが改善されないままだったようです。この問題で派閥内からは疑問の声が上がっていたが、明確な指示は示されなかった。

 この疑惑が報じられたのは昨年だったが、政府内の対応は遅々として進まず、岸田首相も問題についての認識が乏しい。彼の発言は自民党内の派閥に忠実なもので、問題を根本から解決しようとする姿勢に欠けている。

 この問題は一部からは内閣総辞職レベルの問題とされているが、岸田首相自身は留任の意向を示している。彼の政策に対する熱意が乏しいことや、次期首相候補が不在なことが、日本の政治に低迷をもたらす原因になっている。岸田首相は政治の信頼を回復するために行動を起こさなければならず、言葉だけではなく現実の行動が求められる。

■岩田明子

【私の論評】安倍晋三氏のガバナンス:派閥問題と政治資金の大局的アプローチ

まとめ
  • 安倍晋三氏は派閥の領袖から離れ、大局的な視点で政策を展開。
  • アベノミクスを含む経済政策や安全保障政策、外交政策など、国家全体の視点を重視。
  • 安倍氏は政治の大義を重んじ、政治資金問題も単なる法令違反ではなく、政府の統治に対する国民の信頼の問題の観点から捉えていた。
  • 裏金問題は派閥の統治や政府の統治における透明性や説明責任の不足を浮き彫りにした。
  • 政治資金規正法の見直しや透明性の向上など、ガバナンスの改善が必要であり、対処には大局的な視点が必要。
安倍晋三氏は、首相になった場合は、派閥の領袖から離れるという慣習に従っており、しかも首相を辞任した後でもすぐには領袖に復帰しなかったため安倍氏が派閥の領袖だったのは約8ヶ月ほどでした。この期間に安倍氏はこの問題に対処していたのです。しかし、その受け止め方は、安倍晋三氏と派閥の幹部との間に大きな開きがあったようです。

このブログでも述べたように、安倍晋三氏は、チマチマしたことが大嫌いで、大きなくくりで物事を考えることが好きだったと、指摘する人がいます。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」―【私の論評】政治家はなぜ卑小みえるのか?民間企業にはみられるガバナンスの欠如がその真の原因

どなたかは、忘れてしまったのですが、安倍晋三氏は細かいチマチマしたことが大嫌いで、大きく物事を考えることを好んだという人がいます。私は、これは本当だと思います。
安倍晋三氏は、政治家としてのキャリアを通じて、大きなビジョンや国家戦略を重視する姿勢を示してきました。彼がリーダーシップを取った際に焦点を当てたのは、経済政策の改革や安全保障政策の強化、外交戦略の構築など、国家全体を俯瞰した大きな枠組みでした。

例えば、安倍氏は「アベノミクス」として知られる経済政策を推進しました。これは、日本の経済を活性化するための包括的な政策であり、金融緩和、財政出動、構造改革などを含んでいました。彼の焦点は国家全体の経済の活性化であり、それによって国際競争力を高め、日本経済を持続可能なものにすることにありました。

また、安全保障政策においても、日本の国家安全保障の強化に力を注ぎました。中国や北朝鮮などの地域情勢を鑑みつつ、アメリカとの同盟関係強化や安全保障法制の整備など、大きな視点から国家の安全を図る政策を進めました。

さらに、外交政策においても、アジア太平洋地域や国際社会での日本の役割強化に重点を置きました。経済外交や国際貢献、他国との協力関係構築など、大局的な視点で日本の地位向上を目指す政策を展開していました。

これらの事実は、安倍氏が大きな枠組みや国家全体の視点で政策を展開し、細かい点よりも大局的な視野を重視していたことを裏付けるものです。

このように物事を大きな枠で考える安倍晋三氏は、派閥の領袖としても無論大きな枠組みで物事を考えていたと思います。

このブログでは、安倍晋三氏がそういう考えたをするので、安倍政権は他の政権よりは、ガバナンスに注力できたため、他政権に比較すると多くのことを成し遂げることができのだと論じました。

そうして、ガバナンスの定義については、ドラッカー氏のいうそれをあげました。この言葉は、コミュニケーションという言葉と並んで日本ではあまりにも曖昧に用いられているので、それを以下に再掲します。

"政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』) "

 この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないとしました。

"統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。 "

 

マネジメントの大家 ドラッカー氏

いわゆる裏金問題に関しても、安倍晋三氏は、 単に政治資金規正法に反するとか、政治家のモラルに反する程度のチマチマした考えではなく、もっと大きな枠組みでこの問題を捕らえていたのだと思います。

特に、自派閥や自民党がどうのこうのという観点などだけではなく、政府の統治に対する国民の信頼を損なう可能性を視野に入れていたのでしょう。

自民党の安倍派の裏金問題は、派閥の統治と政府の統治の両面からガバナンスの問題を引き起こしています。

派閥の統治の観点からは、派閥の統治が不透明で、透明性・説明責任に欠けていることが問題となります。また、派閥の幹部が私利私欲のために権力を濫用している可能性も指摘されています。

政府の統治の観点からは、政府の統治に対する国民の信頼を損なう可能性があることが問題となります。また、政治とカネの問題が繰り返されることで、政治の腐敗を助長する可能性もあります。


自民党と政府は、今回の問題を契機に、政治資金規正を徹底し、ガバナンスの向上に取り組む必要があります。そのためには、ザル法ともいわれる政治資金規正法の見直しを行うべきでしょう。それに、選挙運動にかなりの費用と労力がかかるという問題も解消すべきです。

具体的には、政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載の取り締まりの強化や、政治資金の透明性の向上が求められています。

これらの問題もこの具体策にだけ注目していては、また同じことが繰り返されることになるでしょう。政府は、卑近な観点からだけではなく、ガバナンスの観点からこの問題を真正面からら向き合い、対処すべきです。そうしなければ、何も解決しません。

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2023年12月12日火曜日

イエメンから発射の巡航ミサイルが商用タンカー直撃=米当局者―【私の論評】イエメン内戦、日本経済への影響必至か!日本はこの地域の自衛隊を増強すべき

イエメンから発射の巡航ミサイルが商用タンカー直撃=米当局者

米海軍駆逐艦メイソン

 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が支配する地域から発射された巡航ミサイルが商用タンカーを直撃し、火災が発生したと米国防当局者が11日、ロイターに明らかにした。被害が出たものの、死者はいないという。

 当局者によると、タンカーへの攻撃はバベルマンデブ海峡から約60カイリ北で起き、米海軍駆逐艦メイソンが現場で支援を行っている。

【私の論評】イエメン内戦、日本経済への影響必至か!日本は中東の自衛隊を増強すべき

まとめ
  • イエメンのフーシ派が支配する地域から、ノルウェー船籍の大型原油タンカー「STRINDA」号に向けて2発の巡航ミサイルが発射され被弾。
  • フーシ派は、2015年3月の内戦勃発以降、サウジアラビアやその同盟国を標的としたミサイル攻撃を繰り返し行ってきた。
  • 日本は、原油の輸入量の約9割を中東に依存している。
  • イエメン内戦の長期化は、日本経済にも大きな影響を及ぼす可能性がある。日本はこの地域の自衛隊の増強のため、護衛艦や哨戒機を増派すべきである。
上の記事以外の記事などを参照し現時点で知り得た追加情報を以下に掲載します。
  • 攻撃されたタンカーは、ノルウェー船籍の「STRINDA」号で、全長約295m、積載量約65万トンの大型原油タンカーです。
  • 攻撃は、イエメン北部フーシ派支配地域から発射された2発の巡航ミサイルによって行われました。
  • 1発目のミサイルは、タンカーの船体に命中し、火災が発生しました。2発目のミサイルは、タンカーの近くに落下しましたが、命中は免れました。
  • 火災は、約2時間後に消火されましたが、タンカーは損傷を受け、航行不能となりました。
  • 乗組員は、全員無事だったということです。
また、フーシ派は、この攻撃について、サウジアラビアとその同盟国に対する報復だと述べています。サウジアラビアは、イエメン内戦でフーシ派と対立する政府側を支援しており、フーシ派は、サウジアラビアやその同盟国の船舶を繰り返し攻撃しています。


この攻撃は、イエメン内戦の長期化が、周辺地域の安全保障に与える影響の大きさを示すものとされています。

イエメンのフーシー派がミサイルを発射した事例については、以下のような報道があります。
  • 2022年1月30日、アラブ首長国連邦(UAE)の国防省は、フーシ派が発射した弾道ミサイルを迎撃し、破壊したと発表しました。このミサイルが首都アブダビや商業都市ドバイを標的としていたかどうかは明らかにされていません。
  • 2023年10月19日、フーシ派はイスラエルに向けて巡航ミサイルとドローンを発射しました。米国防総省は、これらのミサイルなどは紅海で米駆逐艦によって迎撃されたとしていました。関係者によると、ミサイルのうち1発はサウジ空軍に撃ち落とされ、同国領内に落下したといいます。
  • 2023年11月26日、イエメン沖のアデン湾で民間の貨物船「セントラルパーク」が何者かの襲撃を受け、SOSを発信しました。アメリカ海軍の駆逐艦「メイソン」などが現場に急行し、襲撃した5人のイエメン人を拘束しました。その後、イエメンのフーシ派支配地域から「メイソン」と襲撃された貨物船に向けて弾道ミサイル2発が発射されました。ミサイルは「メイソン」からおよそ18キロ離れた海域に着弾し、被害はありませんでした。
なお、最後の事例に関しては、このブログにも掲載しました。

イエメン内戦は、2015年3月から続く、イエメンにおける内戦です。サウジアラビアが支援する政府側と、イランが支援するフーシ派による対立が主な原因とされています。

内戦のきっかけとなったのは、2011年のアラブの春です。サウジアラビアと対立していたサレハ大統領が退陣に追い込まれた後、イエメンでは政治的混乱が続きました。

アラブの春とは、2010年から2012年にかけてアラブ世界で発生した民主化運動の総称です。チュニジアで発生した「ジャスミン革命」がきっかけで、アラブ世界に波及しました。

ジャスミン革命

アラブの春では、次のような主な事件が発生しました。
  • 2011年1月、エジプトのムバーラク長期政権が崩壊
  • 2011年2月、リビアで反政府デモが起こり内戦に発展
イエメン、サウジアラビア、ヨルダン、シリアなど多数の国々で反政府デモや抗議活動が連鎖的、断続的に発生しました。

アラブの春では、チュニジアやエジプト、リビアでは政権が交代し、その他の国でも民主化運動で要求されたことを政府が受け入れる結果になりました。しかし、民主化後のアラブ各国では課題が多く、中長期的に見ればアラブ諸国に混乱をもたらしたと言わざるを得ません。

この混乱に乗じて、イエメンでは2014年9月、フーシ派は首都サヌアを掌握し、暫定政府を追放しました。サウジアラビアは、フーシ派の台頭を阻止するため、翌年3月に軍事介入を開始しました。

内戦は、サウジアラビアとイランの代理戦争の様相を呈しています。サウジアラビアは、フーシ派をイランの傀儡とみなしており、フーシ派を排除することで、イエメンにおけるイランの勢力拡大を阻止しようとしています。

内戦は、イエメンの経済や社会に大きな打撃を与えています。国連によると、2022年時点で、イエメンの人口の約6割が食料援助を必要としています。また、内戦による死者は、10万人を超えると推定されています。

内戦の終結に向けた動きは、これまでのところ進展していません。サウジアラビアとフーシ派は、2021年12月に和平交渉を開始しましたが、合意には至らず、交渉は中断しています。

内戦の長期化は、イエメンだけでなく、周辺地域の安全保障にも大きな影響を及ぼしています。

中東に派遣されている海自の護衛艦「あけぼの」

エネルギーの大きな部分を中東に頼る日本としては、この事態は捨て置けません。自衛隊の潜水艦を含む艦船の増派や、P3CもしくはP1などの哨戒機など増派も実施すべきです。

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2023年12月11日月曜日

特攻隊、戦果と意義の客観的見直しを 軍事作戦の邪道ではあるが…3倍の敵と刺し違え、戦後の〝抑止力〟にも―【私の論評】特攻隊の犠牲とインド・太平洋地域の秩序:伊藤健太郎氏のコメントを踏まえて考える

井上和彦 歪められた真実

まとめ

  • 戦後の日本では、特攻隊は悲劇の象徴として扱われてきた。
  • 特攻隊は大きな戦果を挙げ、米軍将兵の心胆を寒からしめていた。
  • 特攻隊員は至純の愛国心を胸に戦い、命を祖国のために捧げた。
  • 特攻隊は、世界の人々の日本人観に多大な影響を与え、戦後も日本を守ってきた。

楢本神社・神風特攻記念館には、関大尉(中央、没後中佐に)など「敷島隊」の遺影などが展示されている

 戦後の日本社会では、特攻隊は悲劇の象徴として扱われてきた。しかし、事実として、特攻隊は大きな戦果を挙げ、米軍将兵の心胆を寒からしめていた。

 1944年から終戦までの約10か月間で、海軍2,367機、陸軍1,129機の特攻機が敵艦隊に突入して、約3,910人が散華した。米海軍だけでも、戦死者約1万2,300人、重傷者約3万6,000人を出し、戦闘神経症患者も続出した。

 特攻隊の戦果は、日米両軍の戦死傷者の数だけを比較しても、3倍の敵と刺し違えていたことになる。米海軍ベイツ中佐は、特攻隊について「日本の奴らに、神風特攻隊がこのように多くの人々を殺し、多くの艦艇を撃破していることを寸時も考えさせてはならない」と語った。

 戦後の日本では、特攻隊員は強制的に志願させられたかわいそうな若者とされることが多かった。しかし、特攻隊員の肉声を聴くと、彼らは至純の愛国心を胸に戦い、命を祖国のために捧げたことがわかる。

 もちろん、特攻は軍事作戦の邪道である。しかし、その戦果と意義を客観的に見直し、まずは散華された特攻隊員を顕彰すべきである。

 特攻隊は、世界の人々の日本人観に多大な影響を与え、戦後も「日本に手を出すと痛い目に遭う」と思わせる抑止力となって日本を守ってきた。かつての特攻隊の武勇は、戦後日本の抑止力ともなってきたことを忘れてはならない。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】特攻隊の犠牲とインド・太平洋地域の秩序:伊藤健太郎氏のコメントを踏まえて考える

まとめ
  • 伊藤健太郎氏は、特攻隊の犠牲によって現在の日本の平和が成り立っていると述べた。
  • 特攻隊の戦没者は4千名程度と言われているが、米国の戦没者も少なくない。
  • 米国のB29搭乗員の日本爆撃での戦没者は3千人、米潜水艦搭乗員の戦没者は6,310名にのぼる。
  • 米国も戦争で多くの犠牲者を出し、多くの人々に大きな傷を残した。特攻隊や米国の軍人らの犠牲によって、戦後の新たなインド・太平洋地域の秩序が作られた。
  • 中 露北は、この秩序を破壊し、自分たちの都合のよい新たな秩序を作り出そうとしている。日米の協力関係は、戦争で失われた多くの命や特攻隊などの犠牲も反映されており、その大切さを忘れてはならない

昨日たまたま、Xで以下のようなポストをしたので、リポストをしました。そうして、本日サイトを見ていたら、上記のような記事をみたので、本日はこれを話題にしようと思います。

このポストに対して、私は以下のようにリポストしました。

日本側も犠牲者が多く、特攻隊の戦没者は4千名程度と言われています。しかし、米国の戦没者も多いです。 無敵と思われていた、米国のB29の搭乗員の日本爆撃での戦没者は3千人にも及びまず。太平洋戦争における米潜水艦搭乗員の戦没者は、6,310名でした。 米国も相当な被害を受けていたのです。2001年の米映画「マジッエスティク」に出てくる“ローソン”という田舎町では、戦争で多くの若者を失い、残った人々の心に大きな傷を残していました。 これを見たとき、自分が高校生時代を過ごした旭川のことを思い起こしてしまいました。沖縄戦で多くの人がなくなり、さらに他の戦役でも、多くの人がなくなり、終戦直後には農家などの後継がいなくなり、しばらく暗い影を落としていたそうです。 特攻隊の人々は日本を守りなくなりました。米国の軍人らも、祖国の大義ために命を落としました。 良い悪いは、別にして日米軍人の犠牲は、戦後の新たなインド・太平洋地域の秩序を作り出したのです。 その秩序を破壊し、自分たちの都合のよい新たな秩序を作り出そうとしているのが、中国・ロシア・北朝鮮です。 私達は、そのことを忘れるべきではありません。
無論、戦争中にはインド・太平洋地域という言葉はありませんでしたが、日米の激突によって、この地域の秩序が作られたのは間違いありません。当時の中国やロシア、朝鮮などは、これには多少は関与した部分があったかもしれませんが、あったにしても趨勢を変えることなどできず、ほぼ無関係であったと言って良いです。

中露北は今日この秩序を自分たちに都合の良いように、作り替えようとしています。これは、日米からすれば、とても許容できるものではありません。そもそも、中露北とは価値観が違います。

そうして、この秩序は、紛れなく日米の将兵らの犠牲の上に成り立ってきたのです。

そうして、この秩序形成には、戦中に特攻隊をはじめ、多くの将兵たちの勇猛果敢な戦いぶりも大きく影響したのは間違い無いと思います。

インド太平洋地域 濃い青色の部分

第二次世界大戦の歴史を振り返って、日本はある意味幸運だった、もし当時のソ連に日本が占領されていれば、とんでもないことになったと語る人たちがいます。

私は、これは正しいと思います。ソ連に占領されていたら、ソ連の占領政策はかなり懲罰的な苛烈な政策となっていたでしょう。おそらく、公用語はロシア語となり、今頃多くの日本人が、ウクライナ戦争の最前線に立ち多くの犠牲者を出していたかもしれませせん。

あるいは、ウクライナと同じような運命をたどり、独立したものの、今頃ロシアに再度侵略されていたかもしれません。

実際、ウクライナ戦争において、ロシア軍には多くの少数民族も含むロシア連邦の多くの共和国の人たちが最前線に送られているという報告もあります。また、真偽はあきらかではありませんが、少数民族が優先的に激戦地へ投入されているとの不満が出ているとの報道もあります。

無論、米国の占領政策にも、懲罰的なものもありました。今日まで、それが続き、様々な問題をひきおこしています。

ただ、米国は当時から民主主義国家としての体裁を整えた国であったため、占領政策はソ連によるものよりは、苛烈でなかったは確かだと思います。

連合国軍最高司令官総司令部が入った第一生命館(1950年頃撮影)

そうして、私は米国の占領政策が苛烈ではなかったもう一つの背景は、特攻隊を始めとする、日本の将兵の戦いぶりもあったと思います。米国人の中には、これを恐れ憎む人も大勢いましたが、畏敬の念を示す人々も多かったのも事実です。日本人を不当に扱ったり、天皇制を壊したりすれば、大変なことになると当時の指導者は考えていたと思います。そのため、当時の米国は苛烈な占領政策を控えた面は否めないと思います。

そうして、先に述べたように、日米は故安倍晋三氏が提唱した、インド太平洋戦略をともに推進する協力関係を構築しています。こうした関係は、日米が太平洋戦争で出したおびただしい数の犠牲の上に成り立っているのです。その中には、特攻隊でなくなった若者たちの犠牲も含まれているのです。そのことを私達は、忘れるべきではありません。

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2023年12月10日日曜日

高木、西村、萩生田氏も更迭へ パー券収入裏金疑惑で首相―【私の論評】裏金疑惑が思わぬ方向に?高市自民総裁が誕生する可能性高まる!

高木、西村、萩生田氏も更迭へ パー券収入裏金疑惑で首相


 岸田文雄首相は、自民党の清和政策研究会(安倍派)が政治資金パーティーの収入の一部を裏金化していた疑惑を巡り、松野博一官房長官に加え、高木毅・党国対委員長、西村康稔経済産業相、萩生田光一・党政調会長ら新たに3人を交代させる方針を固めた。事実上の更迭となる。

 安倍派では松野、高木、西村、萩生田の各氏のほか世耕弘成・党参院幹事長、同派座長の塩谷立元文部科学相らにも同様の疑惑が浮上。こちらも進退が問われる可能性がある。

 関係者によると、清和研ではノルマ超過分を議員側に還流することが長年行われ、2018~22年に1億円超の収入と議員側への還流が政治資金収支報告書に記載されず、裏金化した疑いが持たれている。

【私の論評】裏金疑惑が思わぬ方向に?高市自民総裁が誕生する可能性高まる!

まとめ
  • 裏金疑惑が複数派閥に及んでおり、捜査が行われている。
  • 派閥交代と政治資金規制法の問題が注目され、派閥政治改革の動きが出ており、それは次期の総裁選にも影響を及ぼしそうだ
  • 総裁選候補として、無派閥の菅、小泉、高市氏が注目されているが、高市氏は派閥改革を掲げ、女性初の総裁候補として注目されている。
  • 派閥政治の腐敗や疑惑により、自民党内で党のイメージと派閥政治の議論が高まっている。
  • 現状の派閥政治に対する不満や変化への期待が、総裁選や党内改革に影響を与えている。

裏金疑惑で、清和政策研究会の松野官房長官の事実状の更迭に続き、高木毅・党国対委員長、西村康稔経済産業相、萩生田光一・党政調会長の交代というのですから、これは完璧に派閥潰しが始まったといえます。

今回の裏金疑惑に関しては、最大で一千万円超であり、しかも直近5年間のものですから、一年に換算すると、200万程度であり、政策担当秘書も雇えないような金額です。

昨日も述べたように、政治資金規制法は、ザル法ですから、政治資金報告書を書き直せば、東京地検特捜本部は、この件で誰かを逮捕するのは難しいでしょう。今後、矛盾なく書き換えができるか、できないかが焦点となりそうです。

ただし、はっきりとした矛盾があったとして、それが悪質でかつ違法なものであることが確かめられれば、起訴される可能性はあります。

東京地検特捜部が他の地域の応援も借りた上で、捜査をしているのには賄賂がある可能性も視野に入れてのことでしょう。このあたりはどうなるかは、地検の捜査次第と見て良いでしょう。今のところ、これに関する情報はありません。 賄賂があれば、これは大きな問題となる可能性はあります。

東京地検

朝日新聞などのマスコミは清和政策研究会に焦点を当てていますが、捜査対象となっている派閥は、このほかに、麻生派、茂木派、二階派、岸田派の5派閥です。これらの派閥は、2018年から2021年までの5年間で、合計約4000万円のパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかったとする告発を受けて、捜査対象となりました。

捜査の対象となっている派閥の幹部や役員らから事情聴取が行われており、地検は、裏金疑惑の全容解明に向けて、捜査を進めていくとみられています。

ただ、この問題の本質は、昨日も述べたように、裏金の有無ではなく、その使用目的と課税の有無です。それと、忘れてはならない本筋は、政治資金規正法がザル法であることです。

現状の野党の不甲斐なさをみると、本質や本筋をつくようなことはできないと思われますので、野党が政権交代に結びつけるなどのことはありえず、これは結局のところ、自民党内の派閥力学の均衡の再編成に終わる可能性が高いです。これによって、自民党内では、最大派閥の清和政策研究会の地位が相対的にかなり下がることになり、麻生、竹下、二階、岸田派等は相対にかなり有利な状況となります。

ただし、今回の裏金疑惑により、 派閥政治自体が批判を浴びているのも事実です。今後自民党内で、岸田おろしが始まることが予想されます。しかし、総裁選は毎回、派閥間の激しい駆け引きが繰り広げられるのですが、今回の疑惑を受け、国民は「政治とカネ」の問題とともに、「派閥政治」にも厳しい視線を向ける状況になっています。

派閥政治は、自民党の党内政治において、議員の集団を形成し、政策や人事などを巡って影響力を行使する政治活動です。派閥は、議員の政治活動を支援する資金や人材を提供する役割を担っています。

宏池会のパーティー

今回の裏金疑惑は、派閥が政治資金を私的に流用していたのではないかという疑惑であり、派閥政治の腐敗を象徴するものとして、世間から批判を浴びています。

これらの批判を受け、自民党は、派閥政治の改革を検討する動きをみせています。しかし、派閥政治は、自民党の党内政治において長年根付いた制度であり、簡単に改革できるものではありません。

今後、今回の裏金疑惑の捜査結果や、自民党の派閥政治改革の取り組み次第で、派閥政治に対する世間の評価はさらに変化していくと考えられます。いまのところは、厳しくなっていく可能性が高いです。

そうなると、次の自民党の総裁選では、派閥に所属している政治家より、無派閥の政治家が総裁候補注目を浴びる可能性が高まってきたといえます。

自民党内の無派閥の議員で次の総裁選候補になる可能性のある人物は、以下のとおりです。

  • 菅義偉前首相
  • 高市早苗経済安全保障担当相
  • 小泉進次郎衆議院議員

ただ、菅前首相は、前回の総裁選においては、出馬できなかったという経緯もあります。そうした経緯から、菅氏自身は、自ら総裁選に出るというよりは、誰かを総裁候補として担ぐという可能性が高いとみられます。

小泉進次郎議員に関しては、残念ながらかなり能力が低いということがいわれてます。

例えば、2020年の衆議院予算委員会で、経済政策に関する質問に対して、的外れな答弁をしたことが話題となりました。

さらに、小泉氏は、政治経験が浅いだけでなく、社会経験も不足しているとの評価もあります。例えば、2021年の衆議院議員選挙で、選挙区の有権者に挨拶をする際に、誤った地名を言ってしまったことが話題となりました。

これは、小泉氏の能力の低さを示すほんの一例に過ぎません。そうなると、総裁選に出たとしても、総裁になれる可能性は低いとみられます。今は研鑽を積んで、次の機会をうかがうべきと多くの自民党議員が考えるでしょう。

そうなると、高市早苗氏が総裁になる可能性が高まったといえます。


高市早苗氏が次期自民党総裁になった場合、自民党にとってのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

高市氏は、派閥政治の改革を公約に掲げており、自民党総裁になった場合、派閥政治の透明性を高め、政治の民主主義を守るための改革を推進すると考えられます。

具体的には、政治資金パーティーの収支報告書の提出を義務付ける、派閥の政治資金を公開する、派閥の活動を規制するなどの取り組みを進めていく可能性があります。

こうした改革は、国民の信頼回復につながり、自民党政権の支持率の向上につながる可能性があります。

高市氏は、保守的な政策を主張する議員として知られており、保守層からの支持が厚いです。高市氏が次期自民党総裁になった場合、岸田政権によって失われた自民党の保守岩盤層の支持を取り戻すことになり、次の選挙で自民党の勝利につながる可能性があります。

高市氏が総裁になれば、女性初の自民党総裁になります。これは、他のどの候補よりも、自民党の刷新を象徴することになります。

女性のリーダーシップを示すことで、自民党の党内外における女性の活躍を促し、女性の支持を獲得することにつながる可能性があります。

現状の派閥政治をそのまま継続すれば、自民党の党勢は衰えていくばかりで、選挙で勝つことはできないと多くの自民党議員や、自民党議員が考えれば、高市氏が総裁になる可能性が高まることになります。

朝日新聞などをはじめとする、安倍派に対する裏金疑惑が思わぬ方向に進む可能性が高まってきました。

私は、松野氏の更迭のみならず、高木、西村、萩生田氏まで更迭の可能性がでてきたことで、安倍派の怒りは頂点に達し、これが安倍派の結束を固め、次の総裁選では、安倍派が高市氏を担ぐ可能性も高まったと思います。かつて安倍氏が高市氏の後ろ盾になっていたことを考えると、不思議なめぐり合わせだと思います。

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2023年12月9日土曜日

安倍派幹部6人に裏金か 塩谷・松野・高木・世耕・萩生田・西村氏―【私の論評】安倍派裏金問題、松野辞任で波紋拡大 政治資金規制法見直し議論が本筋

安倍派幹部6人に裏金か 塩谷・松野・高木・世耕・萩生田・西村氏

まとめ
  • 安倍派は、政治資金パーティーの収入のうち、議員のノルマを超えて集まった分の一部を、議員に還流させていた疑いがある。
  • この還流は、政治資金収支報告書に記載する義務があるが、安倍派はこの義務を果たさなかったとされる。
  • 安倍派の中枢幹部6人のうち、松野博一官房長官のほかの5人にも、直近5年間でそれぞれ1千万円超~約100万円の裏金が派閥から支払われていた疑いがある。
  • この裏金問題は、松野氏に加えて、岸田文雄首相を支える党幹部や重要閣僚に幅広く波及している。
  • 安倍派は「事実関係を確認中」とコメントしている。
 自民党最大派閥の安倍派が、政治資金パーティー収入の一部を裏金化していた疑惑が浮上している

 この問題で、安倍派の中枢幹部6人のうち、松野博一官房長官のほかの5人にも、直近5年間でそれぞれ1千万円超~約100万円の裏金が派閥から支払われていた疑いがあることがわかった。

 この5人は、塩谷立元文部科学相、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相。

安倍派の中堅幹部6人

 この裏金問題は、松野氏に加えて、岸田文雄首相を支える党幹部や重要閣僚に幅広く波及している。

 問題の裏金は、政治資金パーティーの出席者から集めた収入のうち、議員のノルマを超えて集まった分の一部を、派閥が議員に還流させていたとみられている。

 この還流は、政治資金収支報告書に記載する義務があるが、安倍派はこの義務を果たさなかったとされている。

 この問題について、安倍派は「事実関係を確認中」とコメントしている。

 この問題の今後の展開が注目される。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。【元記事は朝日新聞デジタル】

【私の論評】安倍派裏金問題、松野辞任で波紋拡大 政治資金規制法見直し議論が本筋

まとめ

  • 問題の本質は、裏金の有無ではなく、その使用目的と課税の有無である。
  • 裏金の使用目的が私的なものであれば、違法行為である。
  • 裏金が課税対象であるにもかかわらず、課税を免れるために使われていた場合、政治腐敗の温床となる。
  • 表に出せない金の存在を否定することはできないが、その目的や内容を明らかにすることは重要である。
  • 裏金の有無や使用目的、課税の有無を明らかにすることは、悪魔の証明である。マスコミなどは悪魔の証明をせまるのではなく、政治資金規制法の改正論議をするのが本筋

安倍派の政治資金パーティー収入の裏金化疑惑は、日本の政治に大きな衝撃を与え、松野官房長官の辞任劇にまで発展しました。ただ、この問題の本質は、裏金の有無ではなく、その使用目的と課税の有無です。

いわゆる裏金の中には、諜報・防諜工作など、表に出せない金もあるでしょう。それは、残念ながら、いずれの組織にもあるでしょう。裏金のなかにも、倫理の観点から問題になるものあまり問題にならいものがあるでしょう。ただ、裏金が私的な使途であれば、それは違法行為となります。したがって、裏金の有無を調査し、その真相を明らかにすることが、重要であると考えられます。

また、裏金が本来課税対象になるにもかかわらず、課税を免れるために使われていた場合、それは政治腐敗の温床となり、国民の税金が私的な利益のために使われることになる可能性があります。したがって、裏金の有無だけでなく、その使途や課税の有無についても調査し、問題の全容を明らかにすることが重要です。

表と裏の関係は複雑です。表に出せない金には、諜報・防諜工作などの公益目的のものもあれば、政治家や企業による私的な利益のためのものもあります。したがって、表に出せない金の存在を否定することはできませんが、その目的や内容を明らかにすることは、重要であると考えます。

どのような組織にも、そうして無論朝日新聞にも裏の謝礼金や人脈がある可能性はあります。いかなる組織でも、表に出せない金や人脈が存在する可能性はあります。

しかし、朝日新聞が裏の謝礼金や人脈を有していることを証明することは、現時点では不可能でしょう。そのため、朝日新聞に裏の謝礼金や人脈があると断定することはできません。

ただし、朝日新聞は、過去に記者の不祥事や報道の不正確さが問題になったことがあります。また、朝日新聞は、保守派から批判されることが多く、その批判の中には、朝日新聞の報道の公正性に疑問を投げかけるものも含まれています。

これらのことから、朝日新聞に裏の謝礼金や人脈があると疑う声があるのも、理解できます。

朝日新聞が裏の謝礼金や人脈を有していないことを証明するためには、朝日新聞が、その内部調査や公表により、裏の謝礼金や人脈の存在を否定することが必要でしょう。


ただし、朝日新聞が裏の謝礼金や人脈を有していないことを証明することは、悪魔の証明であると言えます。

悪魔の証明とは、ある事象が存在しないことを証明することです。これは、証明することが不可能か非常に困難な事象を悪魔に例えたものです。

朝日新聞が裏の謝礼金や人脈を有していないことを証明するには、朝日新聞が、その内部調査や公表により、裏の謝礼金や人脈の存在を否定する必要があります。しかし、この証明は、非常に困難です。

なぜなら、裏の謝礼金や人脈は、表に出せないものであることが多いため、その存在を立証することは難しいからです。また、仮に裏の謝礼金や人脈の存在を否定できたとしても、それが真実であると断定することはできません。なぜなら、裏の謝礼金や人脈は、隠蔽されている可能性もあるからです。

したがって、朝日新聞が裏の謝礼金や人脈を有していないことを証明することは、悪魔の証明であると言えます。

裏金が私的目的ではない、課税対象ではないことを安倍派の幹部たちが証明することも悪魔の証明といえます。

だからこそ、現在東京地検特捜部が調査を行っているのです。

ただし、安倍派幹部に対する疑惑が真実だと証明されれば、日本国民は完全な調査と説明責任を求めるべきです。しかしそれまでは、政治資金の中には合法的に非公開にする必要があるものもあるため、現時点での決めつけには注意したいものです。

安倍派がどうのこうのという以前に、政治資金規制法はザル法であるとされています。たとえば、政治資金のうち献金は、5万円以上の場合、献金者の名前を明らかにしなければならないのに、パーティー券の場合は、20万円以上の場合のみ明らかにすれば良いなどの問題もあります。

また、寄付は原則として、外国人はできませんが、パーティー券購入は、外国人も制限なく購入できます。

政治資金規正法では、寄付をする企業などの側は、補助金を交付されることが決まったと通知を受けてから1年間は、原則として、国会議員に寄付をするだけで「違法」となります。議員の側も、この規定に違反する寄付と知りながら受け取ると罪を問われます。



すなわち、これが、同法が「ザル法」と批判される典型的な場面ですが、議員は、寄付を受け取った企業などが補助金を受けていたと「知らなかった」場合には、「違法」にはならないのです。

今回の裏金問題が発覚したことを契機として、このような問題にも光をあて、政治資金規正法などの改正に結びつけるべきです。これが、本筋だと私は思います。そうでないと、同じような問題がこれからも起こおこり続けるでしょう。

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