2021年3月25日木曜日

バイデン政権、北朝鮮政策「最終段階」 ミサイル発射で再検討も―【私の論評】バイデン政権が取り組むべきは、中朝国境と38度線を1ミリたりとも動かさないこと(゚д゚)!

バイデン政権、北朝鮮政策「最終段階」 ミサイル発射で再検討も

北朝鮮の国旗

 政府は25日、北朝鮮が午前7時4分と23分に、東部咸鏡南道(ハムギョンナムド)宣徳(ソンドク)付近から弾道ミサイル2発を発射したと発表した。東方向の日本海に向けいずれも約450キロ飛行し、日本の領海と周辺の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下した。韓国軍合同参謀本部は高度約60キロと発表した。日本は北京の大使館ルートを通じて、北朝鮮に対し厳重に抗議した。

 米国のバイデン政権は現在、対北朝鮮政策の見直しを進めており、来週末にもとりまとめ、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が日本と韓国のカウンターパートと詰めの協議に入る予定だ。

 北朝鮮による挑発行為が続いたり、さらにエスカレートしたりすれば、現在「最終段階」(米政府高官)にあるという政策の見直しが根本から覆る可能性がある。また北朝鮮の非核化に向けた本格的な交渉再開への道が遠のく恐れもあり、北朝鮮の動向を注意深く探っている。

 バイデン政権は北朝鮮との「対話」を試みており、ここまで、北朝鮮をむやみに刺激しない姿勢が目立っている。北朝鮮が21日に巡航ミサイルを発射した際には「通常の軍事活動」と判断して、非難するメッセージを極力避けた。米政府高官は23日の電話記者会見で発射の時期や内容を詳しく語らず「短距離のシステム」とだけ説明。バイデン大統領も記者団から「挑発行為と考えるか」と問われ、「国防総省によると、いつものことだ。新しいものではない」と問題視しない姿勢を強調した。巡航ミサイルの発射が国連安全保障理事会の決議違反に該当しないことや、米国に直接的な脅威となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないことも、背景にあるとみられる。

 だが、今回の弾道ミサイル発射は、明白な国連安保理の決議違反に該当し、米国の対応次第では、日本や韓国との危機感の差が浮き彫りになる可能性がある。トランプ前政権は短距離であれば問題視しない姿勢を続け、日本などとの対応の違いが露呈した経緯がある。

 バイデン政権はこれまで「日本と韓国と緊密に連携して北朝鮮問題に対応する」と繰り返し説明しているが、北朝鮮との「対話」の道を模索しながら、日韓と歩調を合わせる難しい「さじ加減」を迫られることになる。

【私の論評】バイデン政権が取り組むべきは、中朝国境と38度線を1ミリたりとも動かさないこと(゚д゚)!

北朝鮮は、米国のバイデン大統領の就任式直後の1月22日にも巡航ミサイルを発射していました。さらに、北朝鮮は今月21日に巡航ミサイル2発を発射し、およそ410キロ飛行したとされています。本日は、25日朝7時4分ごろと23分ごろ、北朝鮮の東岸のソンドク付近から1発ずつ、合わせて2発の弾道ミサイルを東方向に発射し、いずれも、およそ450キロ飛しょうしたと推定されるということです。

本日の弾道ミサイル発射では、Jアラートが鳴らなかったそうですが、その理由に関しては、佐藤正久議員が以下のようにツイートしています。


これは、北朝鮮は日本などに対してことさら、刺激をしたくないという意図もあったのかもしれません。それについては、以下で明らかにしていこうと思います。

北朝鮮国内では新型コロナウイルスが感染拡大しているとの見方もあり、内部の引き締めを図ると共にミサイル技術の向上を目指す狙いがありそうです。

米国の分析によると、北朝鮮は30日ほど軍の活動が停止されたということも言われています。北朝鮮国内でも、軍にまでコロナウイルスの影響が及んでいるのではないか、非常に深刻なのではないかという分析もあります。

そのようななか、金正恩委員長がマスクをせずに公に姿を現しています。「北朝鮮はこんなに新しい武器を持って、それを金正恩委員長が主導して来たのだ。やって来たことは間違っていないのだ」ということを見せるのと同時に、軍に対しても引き締めを図るためだったのだと思われます。

もう1つは、国際的にアピールをせざるを得なかったという面もありそうです。コロナウイルスのパンデミックと米中対立の激化激化等により、北朝鮮問題の影がどんどん薄くなってきていました。北朝鮮としてはそれは、避けなければいけないのでしょう。コロナウイルスで厳しい状況に置かれているなか、他国からもっと注目してもらいたいので、「北朝鮮はここにいるぞ」とわざわざ示したかったのでしょう。

金正恩は「コロナを共に戦って行こう」という親書を、韓国へも送っていました。一方でトランプ大統領からは、「援助をする」という親書が北朝鮮に送られていたようですが、バイデン政権は北朝鮮にとってはまだ未知数です。

医療体制が整っていない北朝鮮で、新型コロナウイルスが蔓延してとんでもなっているだろうという考えを北朝鮮は払拭したいという目論見もあったものとみられます。

ただ、いくら巡航ミサイルや弾道ミサイルを発射したにしても、北朝鮮の内情は隠し通すことはできないようです。

平壌の街角で交通整理にあたる女性


米拠点の北朝鮮専門サイト「NKニュース」は19日、平壌駐在の世界食糧計画(WFP)職員やチェコスロバキアの外交官ら計二十数人が18日、陸路、中国へ出国したと伝えました。

北朝鮮は新型コロナウイルス対策で昨年1月末から国境を封鎖し、輸入品を中心に食材や日用品の不足が深刻化。交代要員の入国も認めず外交官らの生活維持が難しくなっているとしています。各国大使館は一時閉鎖したり、規模を縮小したりしています。

NKニュースによると、今回の出国で北朝鮮には国連機関や国際非政府組織(NGO)の外国人スタッフは一人もいなくなり、人道支援活動への影響が懸念されてい。

BBCも以下のような報道をしています。
ロシア外務省は25日、北朝鮮のロシア大使館に勤務するロシア人外交官とその家族が、手押しトロッコという異例の手段でロシアに帰国したと明らかにした。北朝鮮は新型コロナウイルス対策として国境を封鎖している。このため、外交官たちは「ほかに手段がなかった」とロシアは説明している。 
家族を連れたロシアの外交官たちは1キロ以上、手押しトロッコで線路を移動し、北朝鮮を離れた

北朝鮮の厳しい感染対策によって、国内の移動が制限されているほか、生活必需品も不足しがちだという。ウイルスの越境を防ぐため、国境地帯の警備は強化されている。 
この1年間で多くの外交官は北朝鮮を離れ、欧米諸国は大使館をいったん閉鎖した。 
外国からの旅行者の大半は国境を越えて中国に移動した。昨年3月にはウラジオストクへ向かった同じ飛行機で、一度にドイツ、ロシア、フランス、スイス、ポーランド、ルーマニア、モンゴル、エジプトの各国外交官がまとめて出国していた。

多くの国々の 外交官が退避した北朝鮮は、かなり混乱を極めているのは確かなようです。これだけの外交官が退避することが想定できるのは、戦争のような緊急事態以外を除いて考えられません。

新型コロナウイルスの感染者は出ていないと主張する北朝鮮が、世界保健機関(WHO)が支援する分配計画でワクチンの申請を行い、199万回分を受け取る予定であることが、ワクチン普及に取り組む国際組織「Gaviワクチンアライアンス(Gavi, the Vaccine Alliance)」の報告で分かっています。

北朝鮮が国際支援を求めたのが公式に確認されたのはこれが初めてです。同国の医療インフラは、どんな感染症の大流行に対応するにも痛ましいほど不十分とみられています。

実際には、北朝鮮はコロナによってかなり痛めつけられているとみて間違いないと思います。巡航ミサイルや弾道ミサイルの発射は、北朝鮮の断末魔の最後の叫びなのかもしれません。

バイデン政権は、冒頭の記事北朝鮮との「対話」を試みているようですが、それよりも重要なことがあります。それは、中朝国境はもとより、38度線を動かさないということです。(下の地図は、朝鮮戦争当時の国境が動く状態を示しています)


一番危惧されるのは、中国が北朝鮮に浸透することです。現状では、朝鮮半島には北朝鮮と、その核が存在しており、その核は日米のみだけではなく、北京にも照準をあわせおり、結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いできました。さらに、北朝鮮は中国の浸透を嫌ってきたということもあります。金正恩の望みは、金王朝を継続することであり、これが朝鮮半島への中国への浸透を防いできました。

その北朝鮮がコロナにより衰弱し、これに乗じて中国に浸透されてしまえば、現状の文政権の韓国は中国と対峙する意思はなく、すぐに朝鮮半島全体が中国に浸透されてしまうことになります。

それどころか、いずれ朝鮮半島は中国の省になるか、自治区になりかねません。それは、日米にとっても脅威ですし、朝鮮戦争休戦の当事者であるロシアにとっても許しがたいことです。

バイデン政権が取り組むべき課題は、これを防ぐことです。あくまで、38度線を動かさないこと、中国が北朝鮮を併合したり、浸透して、北朝鮮を傀儡国家にすることを防ぐことです。

とにかく中朝国境、38度線を1ミリたりとも中国に動かさないようにすることです。トランプは、中国との対峙を最優先して、北朝鮮など他の事柄は、そのための制約条件とみていました。特にトランプ政権の後期はそうでした。

この点は、バイデンも見習うべきでしょう。ものごとには優先順位をつけるべきであり、そうして現在では中国との対峙が最優先ということになるでしょう。北朝鮮問題が解消したとしても、中国との問題が解決されなければ、あまり大きな意味はありません。

一方、中国問題を解消できれば、北朝鮮問題も一気に解決するでしょう。北朝鮮問題も、中国問題の一環あるいは、そのための制約条件としてとらえるべきなのです。様々な問題を個別に解消しようとしても、何も解決できません。

【関連記事】

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」―【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

バイデン政権の対中政策で「戦略的忍耐」復活か オバマ政権時代の外交失策を象徴 識者「政権の本音が出た可能性」 ―【私の論評】当面外交が定まらないバイデン政権だが、日本政府は最悪の事態に備えよ(゚д゚)!

米国民の約9割「中国は敵か競争相手」 全米調査―【私の論評】既存タイプの政治家バイデンはトランプのように中国との対峙を最優先にすることなく、結局何もできなくなる可能性が高い(゚д゚)!

0 件のコメント:

財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も―【私の論評】災害対策の予算措置は補正予算が最適!予備費では遅れる

高橋洋一「日本の解き方」 財政審「コスト重視」の噴飯 高橋洋一氏が能登復興遅れ激白 補正予算編成せず 過疎地の財政支出「ムダと認識」で邪推も 高橋洋一 能登半島地震の復興が、従来の復興に比較して遅れている。 野口健氏が「東京と現地の温度差」を指摘し、被災者に「見捨てられた」感があ...