2021年4月7日水曜日

北京冬季五輪、不参加 「ジェノサイド」言及の米が同盟国と「共同ボイコット」検討 英やカナダも追随か 中国に「悪夢の到来」―【私の論評】北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するのが、民主主義国のベストシナリオ(゚д゚)!

北京冬季五輪、不参加 「ジェノサイド」言及の米が同盟国と「共同ボイコット」検討 英やカナダも追随か 中国に「悪夢の到来」


 来年2月に開幕する北京冬季五輪だが、そこに自由主義陣営の姿はないかもしれない。米国務省のネッド・プライス報道官は6日、中国の人権侵害や新疆ウイグル自治区での「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を批判したうえで、同盟・友好国との「共同ボイコット」も選択肢という認識を示したのだ。北京五輪への懸念は他の自由主義国でも浮上しており、米国が決断すれば大きな流れになりそうだ。

 「北京五輪は私たちが協議し続ける分野だ」「協調した取り組みが、米国の利益だけでなく、同盟・友好国の利益にもなる」

 プライス氏は、記者会見で共同ボイコットの可能性を問われ、こう語り、同盟・友好国と協議する方針を明らかにした。

 ただ、「(北京五輪は)まだしばらく先だ」と述べ、米政府として決定はしていないと説明した。

 北京五輪ボイコットについては、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官が2月25日、「最終決定していない」と語っていたが、やや進展した印象を受ける。共和党議員からも同時期、ボイコットや開催地変更を求める声が上がっていると、ロイターが報じている。

 ジョー・バイデン大統領は3月25日に行った就任後初の公式記者会見で、今後の世界情勢を「民主主義勢力と専制主義勢力の戦い」といい、中国による人権侵害の責任を追及していくと強調していた。 米国務省が同月30日に発表した国別人権報告書では、ウイグルで「市民100万人以上が恣意(しい)的な収監や、その他の手段で身体的な自由が奪われている」などと非難し、証拠も十分にあると指摘していた。

 他の自由主義国も厳しい姿勢を示している。

 英国のドミニク・ラーブ外相は昨年10月、北京五輪をボイコットする可能性を議会で示唆した。カナダ下院は2月22日、中国の人権侵害を非難する決議を圧倒的多数で採択した。決議には、カナダ政府が開催地の変更を国際オリンピック委員会(IOC)に働き掛けるべきとの要求も盛り込まれた。

 評論家の石平氏は「米国は、ウイグルの実態を調べ上げており、ジェノサイドとの認識は変わらない。米国が、北京五輪ボイコットを決断すれば、他の自由主義諸国も追随する可能性は高い。中国にとって『悪夢の到来』といえる。習近平政権は威信をかけて五輪を成功に導こうとしている最中であり、対抗するカードは持っていない」と指摘した。

【私の論評】北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するのが、民主主義国のベストシナリオ(゚д゚)!

ブリンケン米国務長官が中国政府による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族の弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定したことに続き、カナダ下院も2月22日、中国新疆ウイグル自治区で行われているイスラム教徒のウイグル族らへの人権侵害は「ジェノサイドだ」と非難する決議を採択した。

東京オリンピックより、北京オリンピックの方が開催できないか、開催しても無意味な大会になる可能性が非常に高くなってきました。ジェノサイドは、平和の祭典であるオリンピックとは真逆です。これでは本当に厳しいです。


米国は、政府がジェノサイド認定をして、カナダは、議会がジェノサイド認定をしました。この動きは当然のことながら、ヨーロッパに広がります。

すでにヨーロッパでは、100以上の団体が、「ボイコットすべき」と主張しています。ヨーロッパと北米が参加しなかったら、冬季オリンピックは成り立ちません。

参加国はロシアと中国と韓国と日本くらいしかいなくなってしまうでしょう。そうなれば、オリンピックではなく、アジア大会だと言われてしまうことになります。

この人権問題はかなり重要なことです。これに対して、日本政府がどのように対応するのかというところは興味深いです。外務省の人が意味不明な発言をしています。 「ジェノサイド条約に日本は加盟していない」と語っていました。 

外務省は几帳面で、国内法の整備を理由にしているのでしょうが、ジェノサイドなどいけないに決まっています。必要であれば、国内法を整備すればいいし、国際協定にはいろいろな抜け穴がありますから、それを利用して加盟してしまうという手もあります。

だから、国内法未整備が、ジェノサイド認定をできないことの理由にするのは相当無理があります。現在日本政府はこれをどうするか検討しているところでしょう。 

外務省の課長レベルが、「日本はジェノサイド認定しません」ということを言ってしまったのですが、それは政府の見解とは違います。これからどうすべきか、ヨーロッパの動きを見ながら検討すべきです。日本がもし認定してしまったら、北京オリンピック開催は相当難しくなるでしょう。

ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)では他国に武力介入してでも集団殺害を防止すべきことになっていますが、現行の憲法ではこの行為はできません。また、この条約では実行者だけでなく扇動したものも処罰の対象ですが、これも現国内法ではできないのです。故に批准できないのでしょう。批准するには憲法の改正と刑法に扇動の罪を追加する必要があります。

       緑はジェノサイド条約調印と批准国 黒緑は加盟もしくは継承国

ただ、限定されているとはいいながら、集団的安全保障が法改正でできるようになった仁保です。ジェノサイド条約には、国連加盟国の3分の2以上、152ヵ国が批准しているといます。日本も批准すべきです。これには、様々な条項があり、いまのままでも私はできると思いますが、それでも難しいのであれば、国内法を整備すれば良いと思います。

北京オリンピックボイコットの背景はそれだけではありません。東京オリンピックの開催は正念場を迎えています。そうして、開催したとしても現在の状況だと観戦客等がいない限定された形で行われる可能性が高いです。

これに対して、一党独裁体制下の中国は、中央の意向が末端まで強制的にに届けられます。陽性者の隔離から事業所の操業停止まで、中国共産党が必要と判断すれば強制的に人権など無視した、対処が可能です。

事実中国は早い段階で感染抑制に成功したとしています。打撃を受けた経済も世界に先駆けて立て直したとしています。ただ、これらは両方とも信用できません。かりに感染抑制に成功したとしても、非人道的な方策でそれを成し遂げた可能性が高いです。さらに、昨年の3.2%の経済成長はこのブログでもそのからくりを述べたように、全くのファンタジーです。

ただ、国家プロジェクトの履行という面でみれば、非人権的な強制力を持つ中国の優位は動かない。22年の冬季五輪にも、万全の感染対策を講じて臨むつもりでしょう。

ただし、中国は、先にも述べたように、香港の統制強化、ウイグル族弾圧、南シナ海への強引な進出などで国際社会から厳しい批判を受けています。

国際秩序を揺るがしている中国が、五輪を国威発揚に利用するようなシナリオは避けるべきです。これを考えると、『コロナ克服五輪』を 東京で開く意味は大きいです。

昨年9月25日の国連総会でビデオ放映された菅首相の演説(国連ウェブTVから)

「スポーツと政治は別」という建前はありますが、パンデミック(世界的流行)を経ての最初の五輪開催地が民主主義国なのか、全体主義国中国なのか、は現行の世界秩序維持を目指す側と、これに挑戦する側の、どちらが力を持つのかという問題に直結します。

首相は2月19日の先進7カ国(G7)首脳によるテレビ会議でも、東京五輪への協力を要請、各国の支持を得ました。

五輪の実現は感染防止対策、観客制限、世論の喚起など、山積する課題に日本側が答えを出していくことが前提ですが、民主主義国陣営の後押しも、カギを握っているといえます。

北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するというのが、民主主義国のベストシナリオといえるでしょう。

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