2021年4月17日土曜日

中国V字回復に影落とす新冷戦 米の禁輸措置で半導体不足深刻―【私の論評】今まさに「脱中国依存」への日本の覚悟が問われている(゚д゚)!

中国V字回復に影落とす新冷戦 米の禁輸措置で半導体不足深刻

北京のファーウェイ販売店で展示されていた最新機種「Mate X2」

 中国の今年1~3月期のGDPは、新型コロナウイルス禍で昨年、初のマイナス成長に落ち込んだ反動で過去最高の伸びとなった。中国の経済規模が米国を追い抜く日がさらに近づいたとの見方もある。ただ、米国による対中禁輸措置で半導体不足が深刻化。国家発展戦略の柱であるハイテク産業だけでなく、V字回復に貢献してきた自動車産業も打撃を受けるなど「新冷戦」とも呼ばれる米中対立が中国経済に影を落とす。 (北京・坂本信博)

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 北京市中心部にある中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の販売店。一番目立つ場所に、2月下旬に発売されたスマートフォンの最新機種「Mate X2」が展示されていた。上位機種は約1万9千元(32万円)と高額だが、人気を集めている。

 高機能が詰まった折りたたみ式で、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム対応。店員は誇らしげに説明してくれたものの「残念ながら在庫切れで、入荷時期は未定です」と申し訳なさそうに言った。

 トランプ米前政権はハイテク分野で対中輸出規制をかけ、バイデン政権も方針を継続。その影響で、同社や半導体受託生産最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、高性能半導体や製造機の調達が困難になっている。新商品も近く発売予定だが、ファーウェイ社員は「最新鋭スマホ用の高性能半導体は在庫が尽きかけている」と明かす。

 あらゆる分野の製品に欠かせない半導体について、業界関係者は「コロナ禍で世界的に半導体の生産体制が逼迫(ひっぱく)していることに加え、米国の禁輸措置で需給バランスがますます崩れている」と指摘する。

 中国メディアによると、新興電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車は先月、半導体不足などを理由に5日間の生産停止を余儀なくされた。中国自動車工業協会によると、今年2月の自動車生産台数は前月比で4割近く減ったという。

 習近平指導部は自国の科学技術向上を掲げ、2025年には半導体の自給率を7割とするための支援策を強化。昨年だけでも約1万社が新規参入した。ただ、半導体製造装置メーカーの世界トップ10社は欧米や日本が占めており、技術力不足も深刻だ。業界関係者は「半導体製造装置を確保できなければ、メード・イン・チャイナは二級品どまりになる」と指摘する。

 米中対立の先が見えない中、米国は日本などと半導体などの確保を巡り連携を深める。北京の外交筋は「中国にとって、半導体や工作機械の製造技術を持つ日本は重要な存在。習指導部は日米首脳会談の行方を注視している」と話した。

【私の論評】今まさに「脱中国依存」への日本の覚悟が問われている(゚д゚)!

バイデン政権は、トランプ政権に引き続き、ハイテク規制をさらに強めていくようです。ハイテク規制とは、米中対立の激化に伴い、トランプ前米政権が導入した通信機器など高度技術を扱う中国企業に対する規制のことです。

機密情報の漏洩防止や、不公正な貿易慣行に対抗する狙いがあります。超党派で対中強硬論が広がるなか、2020年8月から連邦政府と取引する米国企業に対し規制対象の中国企業の製品を使うことを禁止しました。


トランプ前政権で対象となったのは通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など5社でした。18年に禁輸措置を課されたZTEは経営が行き詰まり、習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ前大統領に制裁解除を訴える事態にも発展しました。

バイデン政権下でもハイテク規制の緩和は見込めないとの見方が強いです。米産業界では過度な規制で中国企業と取引する米半導体産業も打撃を受けるとの懸念があがっています。サプライチェーン(供給網)の米中デカップリング(切り離し)で日本企業にも悪影響が広がる可能性もあります。

上の表にもあるように、バイデン米政権は米国内の民間企業に対し、中国製IT(情報技術)機器やサービスの利用を規制します。5月中旬にも、政府の許可を事前に取るよう求める制度を導入し、政府の判断で利用を禁じます。企業を通じて中国政府に機密情報が漏洩するのを防ぎます。日本企業の米国法人も対象で、企業は難しい対応を迫られることになります。

アップルは昨年7月にある重大な発表を行なったものの、世間の注目度は比較的低いものでした。その発表とは、iPhoneで当時の最新モデルだった「11」の製造拠点を中国からインド・チェンナイへ移行するというものでした。

その数週間後、サムスン電子やフォックスコン、ペガトロン、ウィストロンといったアップルのサプライヤー、インド製造企業のマイクロマックスとラバ、そしてさらに18社の企業が、インド政府が電子機器製造の大規模生産を推奨するために立ち上げた「生産連動型インセンティブ(PLI)」スキームの申請を行いました。同スキームへの参加により、これら企業は製造拠点の多くをインドへ移すことになります。

インドのiPhone製造工場

同スキームに参加することで、インドへ輸出する電子製品に対する20%の課税を回避できます。量的にみれば世界で最も重要な市場の一つであるインドは最近、保護的な貿易政策を強化してきました。またこの動きは、中国における製造コストの上昇と製造の機械化、それに伴う労働力依存の低下に関連した、より深いマクロ経済的な問題を反映しています。

同時に、米国のバイデン政権はトランプ政権に引き続き中国に対し、国内市場を世界に向けて開いて競争を受け入れ、自国民の人権を尊重するよう圧力をかけ続け、同盟国にも同調するよう働きかけつつあります。アップルが製造拠点の一部を中国の隣国であるベトナムへ移転した際には、同国の地方部に経済効果が生まれました。

このような傾向がみられるのに、日本では未だに中国に拠点を置き続けたり、関係を強化す企業が多いです。さらに、日本は経済安保に絡んだ法整備も遅れています。3月に公表された中国IT大手の騰訊(テンセント)子会社による楽天への出資では、外為法の不備が露呈しました。

楽天三木谷社長

テンセントはトランプ前政権時に「安保の脅威」とみなされていた企業です。バイデン政権は日本に対して「米欧並みに厳しい法整備」(米国家安全保障会議)を望んでいます。これを考えると、まさに楽天三木谷社長の意思決定は周回遅れと言われても仕方ないと思います。

中国政策は日米が足並みをそろえて共同戦線を張ることが重要です。いくら米国がハイテク規制を強めても、日本から日米の技術を使用したハイテク製品や、技術が入れば、無意味となるからです。

米議会には、日本の対中輸出制裁を米国と同水準まで厳格化するよう求める声が根強いです。まさに「脱中国依存」への日本の覚悟が問われているのです。

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