2021年6月15日火曜日

【日本の解き方】「骨太方針2021」の読み方 去年より強い財政健全化色、補正予算の規模が正念場に―【私の論評】GDPギャップ埋める新たな補正予算を組めば、菅政権は選挙で大勝利のシナリオが描ける(゚д゚)!

【日本の解き方】「骨太方針2021」の読み方 去年より強い財政健全化色、補正予算の規模が正念場に


 9日の経済財政諮問会議で「骨太方針2021」の原案が示された。菅義偉政権の経済運営の方針や、今後の実体経済にどんな影響が出てくると考えられるだろうか。

 骨太方針の焦点は、財政再建をどこまで盛り込むかについてで、これまでの諮問会議でも、いろいろな意見があった。

 もっとも、基本は決まっている。財政政策と金融政策その他さまざまな施策を総動員して経済を回復基調に乗せていくことが優先で、そのことが何より財政健全化にもつながる。これは「経済あっての財政」、あるいは「経済再生なくして財政健全化なし」という言い方をされてきた。

 4月26日の諮問会議では、ある民間委員から、「ノーベル経済学賞を取ったポール・クルーグマン教授が『コロナとの戦争が今続いている、勝つまで安易に財政のことを考えるべきではない』という趣旨の発言をしている」との紹介があった。一方、別の民間委員からは「中長期的には財政健全化の旗を下ろすべきではないという意見があった」と西村康稔経済財政担当相は記者団に説明した。

 ただ、全体説明では、後者の財政健全化の意見だけを紹介し、クルーグマン氏の見解を1回、財政健全化が必要ということを2回説明するなど、財政健全化のニュアンスが出ている。

 ちなみに、昨年の骨太2020では「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、「経済・財政一体改革を推進する」とされた。財政健全化という言葉はこれだけだ。骨太2019までは、財政健全化という言葉は数多く使われていた。

 今年の骨太2021原案では、「『経済あっての財政』との考え方の下、デフレ脱却・経済再生に取り組むとともに、財政健全化に向けしっかりと取り組む」とされている。財政健全化という言葉も骨太2019までと同じように頻出している。しかも「骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(25年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す)を堅持する」と、目標年度も再び明記された。

 昨年の骨太と比べると、今年の骨太2021原案の方がやはり財政健全化に踏み出している。

 自民党の今月10日の政調全体会議では、今年の骨太原案について、25年度の黒字化目標が明記されたことが議論になった。賛否両意見が出たが、対応は下村博文政調会長に一任された。

 9月に東京五輪・パラリンピックが終わった後、臨時国会が開かれ、補正予算の審議が行われるだろう。これは、直後に解散総選挙を控えたものとなるはずだ。観念的でさしたる意味のない財政再建目標に縛られて、十分な補正予算を作れないと、自民党は選挙で苦しくなる。しっかりした補正を打てるかどうか、自民党の正念場だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】GDPギャップ埋める新たな補正予算を組めば、菅政権は選挙で大勝利のシナリオが描ける(゚д゚)!

現状需要不足があるのは間違いありません。これをGDPギャップといいますが、わかりやすくいうと、製造する能力が30兆〜40兆あるのですが、現状では国内で需要がないので、その分GDPが凹んでいるという状況です。だから、政府はそれに近い有効需要策を打ち出すべきです。 この凹みをそのまま放置していると、将来的に失業が増えることになります。半年後にどのくらい失業が増えるか、正確に推計できます。 これもざっくり言えば、つくっても売れないとなればその設備も人もいらないということになり失業が増えるということです。 これを放置しておくのは好ましくないです。このような状況のときには、マクロ経済的には普通はGDPギャップをなるべく縮めるような財政政策、金融政策を実施するのが普通です。
これは、欧米では、当然のことですし、財政出動として、減税や財政出動、インフラを整備するなど、様々な方法を駆使しています。 国によって有効需要の創造のやりかたは様々ですが、財政出動によりGDPギャップの分の枠だけは財政支出するのは当然です。そうして、財政支出のために国債を発行しても、それを中央銀行が買いますから、財政負担がほとんどないというのは、日本も含めいずれの国も同じです。

このブログでも度々言及しているように、マクロ政策・フリップス曲線に従い、財政・金融政策を実行すれば良いのです。現状では、失業率下限(2.5%)、インフレ目標(2%)に達するまで、積極財政、金融緩和を継続すれば良いのです。


日銀買取国債は、将来世代に負担になるという意見の人もいますが、これは嘘です。日銀買取国債について利払費は納付金で政府に戻り元金でも日銀引受できるので元利償還負担はありません。それに現状では、国債金利はゼロに近いため、当面かなり発行してもインフレになる心配はないどころか、GDPギャップがあるので、これを放置しておけば、またデフレに戻るので、それを防止するためにもどんどん発行すべきなのです。

マスコミ等はこの制度を知らないまま発言するから、将来世代の負担になるなどの発言で恥をかくだけです。こういう嘘がまことしやかにでてくるのを見越して、このブログにも掲載したように、昨年政府日銀連合軍を作ったのです。

自民党有志による「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」昨年11月11日、衆院議員会館で設立総会を開き、安倍晋三前首相が会長に就任しました。安倍氏は「『政府・日銀連合軍』で(コロナ禍に)対応していく必要がある」と強調。引き続き強力な財政・金融政策が重要だとの認識を示すとともに、「菅政権をしっかり支え、経済危機を乗り越えたい」と表明しました。

「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会長に就任し、あいさつする安倍前首相

にもかかわらず「財政再建のために財政出動すべきでない」と言うのはロジックとして間違いです。有効需要の創造は必ず実行しなければ、後で失業が増えて、それに対して対策をしなければならくなります。そうなってしまえば、経済の立て直しはかなり難しいです。そのようになる以前に、有効需要を先回りして創造すべきなのです。 コロナ禍で有効需要を創造しようとすとる、「経済を回せば感染がまん延する」と危機を煽る人もいますが、現在かなりの勢いでワクチン接種が進んでいます。ワクチンを接種していれば、行動制限の必要もありません。

ワクチンは全員接種しないと、感染が防げないということではありません。他の先進国でも、一定割合以上を打つと、感染がかなり抑制されることが確認されています。日本のワクチン接種はその域に急速に近づきつつあります。

このような条件が整いつつあるのですから、9月に東京五輪・パラリンピックが終わった後、菅政権は、臨時国会が開催し、補正予算の審議をして30〜40兆円のGDPギャップを埋める規模の財政支出を決めれば良いのです。

オリンピック、パラリンピック9月にさしたる混乱もなく終わり、その頃にはワクチン接種がかなり進み、コロナ感染は「さざ波」どころか「なぎ」になり、誰の目から見ても、コロナ収束の道筋が見えるようになります。そこで適正な補正予算を組めば、その後は総選挙で、大勝利というシナリオが描けるでしょう。

本日は、予定通りに内閣不信任案が否決されましたが、この不信任案否決は結局、上で述べた日程を揺るぎないものにしただけのようです。最早この趨勢を変えることは不可能です。野党の皆様方ご苦労様でした。

菅総理は、パンケーキでお祝いできるかもしれません。そうなると、このブログでも以前述べたようにマスコミはお通夜状態になることでしょう。


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