2021年7月22日木曜日

被災中に抗日ドラマ 中国の水害、当局対応に批判相次ぐ―【私の論評】中国は全体主義体制をやめない限り、あらゆる矛盾、非合理・非効率なことが多数発生し徐々に衰退する(゚д゚)!

被災中に抗日ドラマ 中国の水害、当局対応に批判相次ぐ



中国河南省鄭州市で21日、排水作業を行う消防隊員=新華社

 中国河南省の豪雨による水害で、省政府は22日、計33人が死亡、8人が行方不明になっていると発表した。被災者は約300万人にのぼるという。中国のネット上では、地元当局やメディアの注意喚起や情報公開の遅れが被害を拡大させたとする批判が出始めている。

  20日夜に浸水した地下鉄で逃げ遅れた12人が死亡した鄭州市。気象台が前日には最高レベルの警報を出していたのにもかかわらず、市政府が出勤停止など具体的な注意喚起をしなかったことに、SNSで疑問の声が出た。

  市内の地下鉄に雨水が流れ込み始めたのは20日午後6時ごろで、被災した乗客には帰宅を急ぐ人びとも。地下鉄の運転停止の判断の遅れを指摘する意見も書き込まれた。さらに、市内のダムが20日午前には放水を始めていたのに、翌日未明になってようやく市がSNSで公表したことにも「情報隠しだ」という声が上がっている。 

 メディアも問われた。被害が出ていた20日夜、省政府系の地元テレビ局は「抗日ドラマ」を放送を続けていた。これに対し、「少しでも人間性があるなら、災害対策情報を放送すべきだ」などと投稿された。

  共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は17日、すでに100人超が犠牲になっていたドイツの洪水について「西側諸国の統治レベルに対する信頼感が揺らぐ」などとSNSに投稿。一方、河南省の水害に対しては「極端な天気で水害は避けようがない」と当局をかばうような発信をした。 

 こうした発言に「憎まれ口をはやめろ」などと批判が殺到。胡氏は21日、「犠牲が避けられるはずだったという疑問は理解できる」とSNSで弁解した。(北京=高田正幸)

【私の論評】中国は全体主義体制をやめない限り、あらゆる矛盾、非合理・非効率に見舞われ徐々に衰退する(゚д゚)!

中国の水害では、他にも奇妙な出来事がありました。それを伝えるツイートを以下に掲載します。


本当に異様な風景です。これは、全体主義の象徴です。なお、この散水車は、普段から評判が悪いです。あまりに水圧が高すぎて、確かに道路の清掃はしやすいのでしょうが、バイクをなぎ倒したりします。これもかなり異様です。



では、全体主義ではどうしてこのような不可思議なことが起こってしまうのでしょうか。

ドラッカー氏は、政府の役割について、以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。「統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い」というのです。

しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知りました。現在の上場企業等は、両者が分離されているのが普通です。たとえば、財務部と経理部は分離されているのが普通です。

企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものではありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。

実行は現場ごとの目的の下にそれぞれの現場に任せ、トップが決定と方向付けに専念できるようにします。この企業で得られた原則を国に適用するなら、実行の任に当たる者は、政府以外の組織でなければならないことになります。

政府の仕事について、これほど簡単な原則はありません。しかし、これは、これまでの政治理論の下に政府が行ってきた仕事とは大いに異なります。

これまでの理論では、政府は唯一無二の絶対の存在でした。しかも、社会の外の存在でした。ところが、この原則の下においては、政府は社会の中の存在とならなければならないのです。ただし、中心的な存在とならなければならないのです。

おまけに今日では、不得手な実行を政府に任せられるほどの財政的な余裕はありません。時間の余裕も人手の余裕もありません。それは、日本も同じことです。
この300年間、政治理論と社会理論は分離されてきた。しかしここで、この半世紀に組織について学んだことを、政府と社会に適用することになれば、この二つの理論が再び合体する。一方において、企業、大学、病院など非政府の組織が、成果を上げるための機関となる。他方において、政府が、社会の諸目的を決定するための機関となる。そして多様な組織の指揮者となる。(『断絶の時代』)
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことなのですから、日本でいえば、最終的には各省庁の仕事は政府の外に置かなければならないのです。

これは、現代の民主国家に対してドラッカー氏が述べていることです。残念ながら、日本をはじめとする多くの先進国がドラッカー氏の主張するような構造にはなっていません。

ただし、欧米諸国では、日本よりは政府の仕事がはるかに政府外に出されています。特に、社会福祉や社会事業に関する実務は、NPOなどが行っている度合いがかなり高いです。

日本では、NPOなどというと、一般の人たちには、今でも奇特な人たちが、手弁当で集まって行う高邁な事業のように認識されていますが、西欧ではそのような考え方はありません。有名大学や有名大学院を卒業した優秀な人が、NPOに就職することも珍しくありません。欧米では、NPOは立派な就職先であり、有力NPOに就職することは名誉なことでもあります。

なぜ、そのようなことになるかといえば、欧米では寄付金制度が充実しているからです。日本は、財務省のいう似非財政民主主義とも呼べるような屁理屈で、寄付金制度が充実していません。このあたりは、このブログを書き始めた10年前ほどには良くこのブロクでもとりあげたのですが、本日はこれを述べると、長くなってしまい本題からずれてしまうので、ここには述べません。

ただ、寄付金制度が進んだ欧米では、NPOは決して奇特な人たちが行う手弁当の事業ではなく、本格的なビジネスになっています。米国では各地の多くのNPOに、銀行や建築業者等も入っていて、大掛かりに貧困者向け住宅の提供だけではなく、貧困者が自立して生活できるようにする包括的ブログラムを実行したりしています。このあたりは、NPOが貧弱な日本でも考えも及ばないかもしれません。

9万ヶ所の公園を生み出す!公園から地域づくりを目指す米国NPO法人『カブーム!』

ただし、寄付金制度が遅れたままで、NPOが未だ貧弱な日本でも、中国と比較すれば、はるかに多くの事業が政府の外に出されています。各省庁にも外郭団体などがあったり、最近では、様々なIT企業などに、関係省庁が仕事を依頼していることは、皆さんもご存知だと思います。さらに、各省庁は正職員だけではなく、臨時のスタッフも多いです。

しかし、現状では、日本をはじめとする先進国の政府が行う事業は、あまり評判が良いとはいえません。政府が直接・間接にでも、現場の仕事に関わると、非効率、非能率が常となるのです。やはり、本来はドラッカーの言う通り、政府がすべきは、統治であり、それ以外は政府の外に出すべきなのです。

先進国でも、このあたりは中途半端なのですが、中国においては中国共産党政府があらゆることに直接関わっています。そのためもあって、中国では民主化はおろか、政治と経済の分離、法治国家化もできていません。中国共産党は、そもそも最初から統治と実行を両立させようしているので、統治の能力が完全に麻痺してしまうのです。

この状態は現在の体制が続く限り改善されることはありません。全体主義体制をやめない限りこれからも、ありとあらゆる矛盾や非合理・非効率なことが多数発生し、徐々に衰退していく以外ないのです。

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