2021年7月21日水曜日

中国共産党百周年祝賀行事で見せた中国の危険性―【私の論評】中国に迫る危機が透けて見えた習近平の演説(゚д゚)!

中国共産党百周年祝賀行事で見せた中国の危険性

岡崎研究所

 7月1日に天安門広場で中国共産党百周年の祝賀行事が行われ、習近平が演説した。その内容は既に多くの報道で取り上げられている通り、対外的に極めて強硬なことを言っている。


 習は、「中国人民は外国の勢力が我々をいじめ、抑圧、奴隷化することを決して許さない、その妄想を持つものは誰であれ、14億人の中国人の肉と血でできた鋼鉄の万里の長城でその頭を割り、血を流すだろう」と述べた他、Covid-19への対応、貧困問題、香港での反対派の弾圧についての外国からの問題提起に対し「我々はこれらの”教師”の傲慢な説教を決して受け入れない」と述べた。また、台湾問題につき「中国は平和的統一を望む。しかしその忍耐心は試みられてはならない。誰も中国人民の国家主権と領土一体性を守る決意、強固な意志、力強い能力を過小評価してはならない」と述べた。

 対外的に強硬な姿勢を打ち出した演説であり、中国と米国とその同盟国との対決の気運を強めるものであって、その緩和には役立たないだろう。しかし、そもそもこういう演説にそれを求めるのが無理であろう。7月1日付けのニューヨーク・タイムズ紙の解説記事は、「これは遊説演説のようなもので、少なくとも習があと10年は最高指導者、司令官で居残るべきであると主張したものだ」とするWo-Lap Lam(香港中文大学中国研究センター非常勤教授)の言葉を紹介している。その通りであろう。

 今回の演説の主眼が国内向けであるとしても、今後、共産党の学習会で繰り返し学習されることになり、その対外強硬姿勢が党員の頭に刷り込まれ、方針転換がしづらくなるというデメリットがある。

 中国共産党は1921年にコミンテルンの中国支部として上海のフランス租界で生まれた。習近平は今回の演説で「偉大で、栄光があり、正しい中国共産党 万歳」と叫んだが、かなり多くの過ちを犯した党である。1958年-62年の大躍進政策、1966年-76年の文化大革命では1000万人以上が死亡したと言われている。

 中国の経済発展が共産党によって遅らされたことは明らかである。鄧小平が改革開放を打ち出した以降、中国経済は急激に成長したが、それは西側諸国との協調があってこそのことではなかったかと思われる。日本は多額のODAを提供し、直接投資もしたし、中国製品を大量に輸入した。米国も同じようなことをした。西側は、中国が豊かになれば民主化につながり、世界はよりよくなると考えた。今から思えば幻想であったと言わざるを得ない。習近平は鄧小平の業績を引き継いだが、思想的な面は引き継いでおらず、対西側対決姿勢を打ち出している。それが中国経済に与える影響は今後よく見ていく必要があると思われる。

 中国の今後の政治については、習近平は、鄧小平が定めた最高指導者は2期10年とする制限を撤廃し、長期独裁政権を築こうとしているように見える。集団指導の原則もないがしろにする勢いである。鄧小平が行った政治改革を逆転させており、その結果がどうなるか、注意が必要だと思われる。独裁政権は安定しているようで、不安定であり、崩れる時には急に崩れるし、政策上の間違いも犯しがちである。

 中国は強大で、かつ危険な国になっていると思われる。「説教は拒否する」というのではなく、批判にも度量をもって、耳を傾け、民主主義国の意見との懸隔をできるだけ少なくする努力が中国に望まれる。他方、こちら側にも意見の懸隔を少なくする知恵がいる。

 日本としては、中国の危険性を認識し、経済関係の在り方をより制限的にすることや一層の防衛努力をすることなどが課題になるだろう。

【私の論評】中国に迫る危機が透けて見えた習近平の演説(゚д゚)!

現在「中華思想」丸出しの習近平政権ですが、ではその実力はといえば、核兵器、サイバー攻撃力のどちらにおいても米国の足元に及びません。 

2020年1月時点での各国の核戦力を比較してみます。世界の核兵器保有数は13,400ですが、そのうち、米国が5800、ロシアが6375で90%以上を占めます。 

中国は320で、フランスの290、英国の215と同程度です。また、インドが150、パキスタンが160保有しています。 


さらに、英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が公表した15ヵ国のサイバー能力を分析した報告書で「第1級」のトップクラスとされたのは米国のみです。 

共産主義中国はオーストラリア、フランス、ロシア、英国などとともに「第2級」に分類され、米国との差は圧倒的です。

ちなみに、よくサイバー攻撃で話題になる北朝鮮は、日本、インド、インドネシア、イランなどと同じ「第3級」です。日本の現状は悲しい限りですが、中国や北朝鮮が実力以上の脅威ととらえられるのは、これらの国々の攻撃で先進国(企業)が被害にあった場合は情報がオープンにされメディアで報道されるからです。 

逆に、北朝鮮や中国がサイバー攻撃を受けても、何事も無かったように「だんまり」を決め込むから実態が知られないだけなのです。 

さらに、米国最大の石油パイプライン「コロニアル・パイプライン」がハッカー攻撃を受けて支払った身代金の大半が回収されました。FBIなどが作戦に関与したとされますが、米国の実力の一端を垣間見せる出来事です。 

もちろん、空母など通常兵器でも米国が圧倒的に優位に立っています。最近では、空母は実戦ではあまり役立たないどころか、ミサイルや魚雷の格好の目標となるとされていますが、それは中国も同じことです。

現代の海戦は潜水艦によって決まるといわれていますが、その潜水艦でも隻数では、中国が米国を上回るとはいえ、攻撃力では米国が圧倒的です。さらに、中国にとって悪いことに、米軍の対艦哨戒能力は世界一であるのに対して、中国のそれはかなり低いです。これが、海戦では米国を圧倒的に有利にしています。

さらに、日本の潜水艦の静寂性(ステルス性)は、世界トップ水準で、中国にはこれを発見できません。さらに、日本も対潜哨戒能力で中国をはるかに凌駕しており、現状では米国についで世界第二位といわれています。

これでは、中国は海戦で日米に勝てる見込みは全くありません。実際に海戦になれば、中国の艦艇のほとんどは戦う前に海の藻屑となるでしょう。

台湾に中国軍が上陸しようとしたとしても、日米の潜水艦隊に囲まれてしまえば、中国の航空機も、艦船も台湾に近づくことができません。近づけは、日本の潜水艦隊は、静寂性を活用して、中国側に発見されることなく、台湾海峡、東シナ海、黄海などを自由に潜航して、情報収集にあたるとともに、許されれば中国の艦艇に魚雷攻撃を加えることになるでしょう。

米国の攻撃型原潜は、水中に潜み、日本の潜水艦の情報を活用し、中国の航空機、艦船、中国国内の基地などを攻撃するでしょう。中国の空母は、軍港を出た途端に撃沈されることになるでしょう。

そうりゅう型潜水艦11番艦のSS511おうりゅう

この状況で「中華思想」に基づく外交を行うことは、国家の破滅さえ導きかねないです。「毛沢東2世」どころの話ではないのです。

共産主義中国建国から長年にわたって毛沢東が支配できたのは、それ以前の悲惨というか壊滅的な状況を国民が記憶していたからです。どれほどひどい政治であろうと外国による支配や戦乱よりはましというわけでした。 

しかし、習近平氏が統治しているのは「天国のようなバブル時代」と「わずかながらの自由」を経験した人民です。毛沢東流の統治が成功する見込みはありません。 

それに、過去の中国は鄧小平の開放政策により、急速に経済が発展しましたが、現在の中国は国民一人当たりの所得が100万円に近づきつつあり、以前のこのブログで述べたように、今後民主化、政治と経済、法治国家化を進めなければ、中所得国の罠(国民一人あたりの所得が100前んをなかなか超えない現象、發展途上国に一般的にみられる現象)にはまりこむのは必定とみられます。

過去においては、中国が経済発展をし、鄧小平が語った「富めるものから富め」といわるように、多くの富裕層を排出することができましたが、今後は中所得の罠にはまって、新たな富裕層が生まれることはなくなります。

既存の富裕層が利権を独占して、固定化することになります。経済が今以上に発展しないのですから、富裕層の中にも脱落するものも増えるでしょう。そうなると、中国の富裕層も共産党を支持しなくなる可能性がでてきます。

習近平が演説で繰り返し「人民」に触れざるを得なかったのは、人民の共産党離れを懸念したからでしょう。中国は高度成長が終わり、債務問題を抱えています。共産党は経済成長を統治の正統性に据えることができなくなったのです。

共産党の統治の正当性は、もはや軍事力しか無くなったと言っても過言ではありません。

また、毛沢東は8000万人もの人々を死に追いやったのですが、文革の時は富裕層や知識人であり、大躍進の際には特権階級を除く全国民が犠牲の対象でした。ウイグルなどもともとは外国であった地域のジェノサイドでは、海外からの風当たりが違うということもあります。 

そうして、毛沢東時代の共産主義中国はソ連という悪の帝国の陰に隠れていましたが、ソ連が崩壊した後のロシアは、軍事力な軍事技術が進んでおり侮れないとはいいつつ、現在のGDPは韓国なみの水準となり、大国とは程遠い状況にあります。


現在のロシアは、米国を除いた、NATOと戦っても勝利することはできません。軍事技術などがすぐれているので、初戦には勝つかもしれませんが、その後は、貧弱な兵站能力しかなく、補給などができず、戦線を維持できず、後退を余儀なくされることでしょう。

この兵站の貧弱さは、中国も同じです。昨年4海域で軍事訓練を行いないましたが、今年なりを潜めています。実施できるのは、台湾に航空機を派遣することぐらいのようです。航空機の派遣であれば、短時間で引き返して来るので、兵站のことをあまり考慮せずに派遣できます。

そうして、現代の中国は「悪の帝国の本尊」です。 結局、国際レベルでの政治的駆け引きが無い、ウイグルや武漢ウイルス研究所の問題における一本調子の対応(稚拙な外交)は自滅を招くのみです。これが、本当の中国の危機です。

それが、何ら具体的な戦略や政策などがみられない、今回の習近平の中国共産党百周年祝賀行事での演説に助けて見えたと思います。


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