2021年7月24日土曜日

日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も―【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

日米VS中国で応酬! WHOのコロナ起源追加調査巡り…米は賛同、中国「科学に反する」と反発 北京五輪に影響も


 世界全体で414万人以上もの死者を出し、東京五輪の大半を「無観客」開催に追い込んだ新型コロナウイルスの「起源」解明をめぐり、日米と中国の応酬が展開された。世界保健機関(WHO)が中国での追加調査計画を打ち出したところ、日米は賛同し、中国が猛反発しているのだ。このままでは、来年2月開幕の北京冬季五輪にも影響が出かねない。

 「起源解明につながることが重要だ。追加調査を重視している」

 茂木敏充外相は23日、東京五輪開会に合わせて来日したWHOのテドロス・アダノム事務局長と外務省で会談し、追加調査の徹底を要請した。

 「中国ベッタリ」と揶揄( やゆ)されるテドロス氏だが、自由主義諸国の強い怒りを懸念したのか、今月のWHO会合で、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所の監査を含めた追加調査を提案した。

 ところが、中国・国家衛生健康委員会の幹部は22日の記者会見で、「常識を重んじず、科学に反するものだ」と非難し、拒否した。

 これに対し、米国のジェン・サキ大統領報道官は22日、ホワイトハウスでの記者会見で、「深く失望している。彼らの姿勢は無責任で、率直に言って危険なものだ」と述べ、中国政府の対応を強く批判した。


 茂木氏の発言も、米国に歩調を合わせるものだ。

 北京冬季五輪をめぐっては、欧米諸国が中国での人権弾圧などを批判し、「外交的ボイコット」で結束を強めている。マイク・ペンス前米副大統領も今月14日、中国が新型コロナの「起源」を明確にし、人権侵害を停止しない限り、「ジョー・バイデン大統領は五輪の開催地を北京から別の場所に変更するよう主張すべきだ」と主張している。

【私の論評】北京五輪、先進国は経済的・外交的ボイコットではなく、選手団を送り込まない本格的なボイコットをすべき(゚д゚)!

3月30日に米国務省は、国別人権状況に関する年次報告書を発表しました。報告書は、中国共産党政府によるウイグル族の虐待はジェノサイド(集団虐殺)であると断じました。これを受けて、4月2日付のワシントン・ポスト紙は、世界的な大企業は北京オリンピックのスポンサーであることを止めるべきであると主張する社説を掲げています。

米民主党のペロシ下院議長は4月18日、米議会でのオンライン公聴会で、中国国内の人権弾圧を「ジェノサイド(集団殺害)」と非難し、来年2月の北京冬季五輪に各国の国家元首を派遣しない「外交ボイコット」を行うように呼びかけました。

米議会内では、超党派でボイコット論が強まっており、4月に米上院外交委員会で可決された「戦略的競争法案」では、北京冬季五輪への参加を米政府当局者がボイコットすることを求める内容が盛り込まれています。

7月8日、欧州議会は、新疆ウイグル自治区の人権問題が改善されない限り、2022年に北京で開催される冬季オリンピックをボイコットするよう加盟国に求める決議を採択しました。

英下院議会の外交委員会も8日、中国による新疆ウイグル自治区の人権問題に関する報告書を公表しました。中国政府への国際的な圧力を強めるためとして、来年の北京冬季五輪の式典ボイコットや、ウイグル自治区で生産される新疆綿の取引禁止措置などを提言しました。


2022年の北京の冬季オリンピックをボイコットするよう求める声は、今後ますます高まる可能性はありますが、それが具体化するかどうかとなると、おそらく困難であろうとする声もあります。

北米および欧州の諸国にとって、冬季オリンピックは夏のオリンピックよりも遥かに重要です。過去23回の冬季オリンピックを通じて、北半球の10の諸国(米国、カナダ、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、スイス、オランダ及びソ連、ロシア)が1060個の金メダルのうちの748個を獲得したといいます。

従って、北米と欧州が欠けた冬季オリンピックは成り立たちません。それだけにボイコットは北京を痛撃することにりますし、逆に、それ故に、北米と欧州の選手に犠牲を強いるボイコットを実現することは至難と言えるからです。

3月15日付のニューヨーク・タイムズ紙では、ミット・ロムニー上院議員(共和党、ユタ州選出)が、ソルトレーク冬季オリンピック組織委員会の会長としての経験を踏まえて、北京冬季五輪のボイコットの方法を提案している。ロムニー議員は、選手の参加を止めることは間違いだとして、経済的・外交的ボイコットを提案しています。

共和党の重鎮ミット・ロムニー上院議員

即ち、米国民は米国にとどまりオリンピックの観客にならないこと、米国企業は顧客をオリンピックに招待することを止めること、政府高官が参加することは控えること、TV放送権を有する NBCが開会式や閉会式の好戦的愛国主義の場面の放映を控えることなどです。

いずれにせよ、何等かの形のボイコットが具体化することがあるとすれば、それは目下立場を定めていないバイデン政権が方針を固める場合でしょう。もし、行動を起こすのであれば、バイデン政権は予め同盟諸国に協議して来ることが予想されます。

現下の情勢は、北京オリンピックを間近に控えて、中国は台湾や東シナ海あるいは南シナ海で侵略的行動に出づらい状況だと思われますが、北京オリンピック後は危険性がさらに大きくなるかもしれません。

ボイコットが及ぼす中国へのインパクトについては、中国が過剰な報復に出る可能性も含めて、同盟諸国間で慎重に計算する必要があるかもしれません。

ただし、これは米国内の一部の見方です。バイデン政権はまだ結論を出していません。いずれにしても、このような事柄に関しては、議会の承認が必要であり、議会がどのような結論を出すのか注目されるところです。

私としては、以上のような米国内の見方は、理解できなくもないのですが、こういう見方をする人たちは、一つ忘れています。

そうです。過去において、日本も含めた先進国の多くが、中国がもっと豊かになれば、民主化するであろうと考え様々な面で譲歩してきました。しかし、これは何回も裏切られてきました。もうこのような考え方をする人はいません。

コロナ起源がどころであろうと、中国が初期の段階で隠蔽していなければ、世界全体で414万人以上もの死者を出すことはなかったと思わまれます。この隠蔽に対しても、まともに対応しようとしない中国です。

この中国が、今回のボイコットを本当のボイコットでなく、上に述べているような間接的なボイコットだけで態度を変えたり、ジェノサイドの問題に本気で取り組むようになるとはとても考えられません。

実際、中国は欧米のこのような動きに対して、かなり反発していますし、それどころか報復をちらつかせたりしています。

にもかかわらず、ここで欧米が譲歩して、間接的なボイコットしかしなかった場合、中国共産党に誤ったメッセージを与えてしまうことになるでしょう。そうです。先進国の圧力など、おそるるに足りないと考え、さらに高圧的になることが考えられます。

そうして、台湾や尖閣に対して、冒険的な行動にでるかもしれません。無論、そうなったとしても、このブログに述べているように、中国には台湾、尖閣を奪取する能力はありませんが、それにしても無用な脅威は最初から取り除くべきです。

それには、やはりまともなボイコットをして、中国に先進国の本気度を示す必要があります。米国はそれをすでに実行しています。

米国の外交代表部の役割をする米国在台湾協会(AIT)関連の航空機が相次いで台湾に到着し、中国側が強く反発しています。

AIT関連の米国の航空機が台湾に降り立ったのは、今月に入ってすでに2回目だ。15日にも沖縄の嘉手納空軍基地を離陸した米軍C-146ウルフハウンド輸送機が午前9時32分頃、台北の松山空港に到着しました。

台湾空港に着陸したC-130輸送機

中国国防部報道官は15日、ウルフハウンド輸送機の台湾着陸と関連して声明を発表し、「台湾は中国の一部であり、中国領土に着陸する外国軍用機は必ず中国政府の許可を受けなければならない」としたうえで、「米国が火遊びを止めなければ、厳しい結果を招く」と警告しました。中国陸海軍は翌日の16日、台湾海峡と接する東部福建省で大規模な合同上陸作戦演習を行いました。

米軍は、中国に台湾を軍事的に奪取する力はないと見透かして、このような行動をしていると思われます。その背景には、中国海軍の対潜哨戒能力が日米と比較すると格段に劣るということがあります。

これは、たとえると目の見える人(日米)と、目が見えない人(中国)とが戦うようなものであって、中国が海戦においては、日米に比較して圧倒的に不利であることを示しており、海戦になれば、中国海軍は日米に太刀打ちできません。

それに、昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったのですが、今年は航空機を大量に台湾に派遣したり、上陸作戦演習などでお茶を濁しており、以前から指摘されているように中国軍には現代的な兵站が欠如していることが示されていましたが、その通りのようであることがわかります。

このような軍事的な裏付けもあるので、米軍は航空機を派遣するどころか、一時的に軍を台湾に進駐させていることが判明しても、中国側には目立った動きはありません。

このようなことを考えると、北京五輪の中途半端なボイコットは、中国に対して誤ったメッセージを与えかねません。やはり、ボイコットするのなら、中途半端ではなく、選手を派遣しないというのが筋だと思います。

無論本格的ボイコットをすれば、北米と欧州の選手に犠牲を強いることになるのも事実です。ただ、モスクワ五輪のボイコットのときには、モスクワ五輪に対抗した競技大会を準備し、リバティ・ベル・クラシックという名前で1980年7月にフィラデルフィアで開催しました。これは、陸上競技だけでした。

北京五輪でも、欧米はこのような北京五輪に対抗する大会を盛大に開催すると良いと思います。そうして、五輪のほとんどの種目を実施すべきです。

ジェノサイドをしているのに、それを認めないような国で、五輪など開催すべきではありません。それは五輪の精神に反します。

ちなみに、モスクワ五輪を開催した約10年後に、ソ連は崩壊しました。ナチスドイツが開催した、ベルリン五輪のほぼ10年後にナチスドイツの第4帝国は瓦解しています。

中国が10年後に瓦解するかどうかは、わかりませんが、中国にとっては、痛撃になることは確かであり、それは中国の国内外で周知されることになり、国内でもただごとではないことが、周知されることになるでしょう。習近平は痛撃どころか、震撼することになるでしょう。

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