2021年11月27日土曜日

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団の訪台受け―【私の論評】軍事力以外で台湾併合を目指さざるを得ない中国の道のりは、果てしなく遠く険しい(゚д゚)!

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団の訪台受け


米下院議員5人が25日に台湾を訪問したことを受け、中国軍が26日、台湾海峡周辺で「戦闘準備」に向けたパトロールを実施したと発表した。

「台湾海峡の現在の状況に対応するために関連する行動が必要だ。台湾は中国の領土の一部であり、国家主権と領土を守ることはわが軍の神聖な使命である」とした。ただ詳細は明らかにされていない。

台湾国防部(国防省)は同日、核兵器の搭載が可能なH6爆撃機2機を含む中国軍の戦闘機8機が台湾の防空圏を飛行したと発表した。

マーク・タカノ退役軍人委員長

台湾を訪問した米下院議員団を率いるマーク・タカノ退役軍人委員長は26日、蔡英文総統と会談し、台湾は世界において「善に向けた力」だと称賛し、蔡総統の下で米台関係は過去数十年で最も生産的だと述べた。

【私の論評】軍事力以外で台湾併合を目指さざるを得ない中国の道のりは、果てしなく遠く険しい(゚д゚)!

この報道に関して、一部マスコミは中国の台湾侵攻の脅威を煽っていますが、これは昨日と一昨日もこのブログで述べたようにありえないです。もし、中国が台湾に侵攻したとすれば、台湾と単独と戦ったとしても、中国軍は甚大な被害を受けます。

もし米軍が加勢したとすれば、中国海軍はさらに甚大な被害を受け、事実上壊滅します。どうしてそうなるかについては、昨日と一昨日のこのブログの記事を御覧ください。

壊滅すれば、習近平の権威は地に堕ちます。そのようなことを習近平がするはずもありません。

中国は本音では、軍事的圧力などしても、米国への牽制にもならないと思っているでしょう。さらに、自由主義陣営による北京冬季五輪の『外交的ボイコット』も覚悟しているでしょう。

ただし、そのままにしておけば、習近平国家主席の面子が潰れるため、八つ当たりで台湾へ戦闘機などを台湾防空圏内を飛行させたのでしょう。

中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相は26日、バイデン米政権が来月にオンライン形式で開く「民主主義サミット」について、「一つの国の基準に基づいて線引きを行い、分裂と対立を作り出す」と非難した。中国を念頭に置いた新たな連携の枠組みになることを警戒しているようです。


さて、台湾に軍事的に侵攻できない中国はそれでも、台湾を併合しようとしています。

習近平政権は2018年ごろまで、台湾社会にそれなりにうまく浸透していました。例えば「恵台31条」です。景気が悪かった台湾の人々に、中国での雇用を提供するなどの施策を盛り込んだ台湾融和策です。

この取り組みはある程度効果を発揮し、台湾の人々の間で対中感情が向上。蔡英文政権がこの年の地方選で惨敗したことと、中国が進めたこの融和策に台湾の人々が応じたこととの間には関係性があったと考えられます。

しかし、2018年あたりからは、雲行きが危うくなりはじめました。2119年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、中国は2018年8月から中国大陸から台湾への個人旅行を停止しました。中国大陸から台湾には2017年には100万人を超える個人観光客が訪れたのですが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となりました。

しかし、このことが台湾に大いに幸いしました。最近の研究では、中国では2018年12月あたりの時期からコロナの感染があったのではないかとされています。その時期よりずっと前の8月から台湾には中国から個人客はいませんでした。

台湾のコロナ対策は世界でもトップクラスであり、感染者、死者数とも桁違いに少ない状況でしたが、このように中国からの旅行客がいなかったこともプラスに働いたのは間違いありません。

そうして、流れを完璧に変えてしまったのが、2019年1月に発表した習5点でした。中国の対台湾政策をまとめたものです。

習5点の骨子は以下のようなものです。
第一:統一促進と中国の夢
第二:一国二制度と民主協商の呼びかけ
第三:一つの中国原則と台湾独立反対
第四:両岸融合と同等待遇
第五:中華民族アイデンティティ
この中にある「外部の干渉や台湾独立勢力に対して武力行使を放棄することはしない」という文言を、台湾の人々が「台湾への軍事侵攻を妨げない」と理解して猛反発し、それが蔡英文総統への支持拡大にもつながりました。

中国はその後、香港で民主派を弾圧。これが蔡英文政権への支持をさらに拡大させ、同政権を2020年に再選させました。それと同時に、コロナ下でのチャーター機問題などで台湾の人々が抱く反中感情は悪化の一途をたどりました。

この状況を改善すべく、中国は「愛国統一力量」を養成する取り組みを進めています。台湾の若者、社会、企業の中に中国のシンパを増やしていくと、同時に台湾の対岸に位置する福建省と台湾の一体化を進める考えです。ただし、これは容易なことではありません。台湾が抱く対中不信感は非常に強いものがあります。

中国はこれまで台湾の国民党との協力、すなわち「第3次国共合作」を進めて統一に至るシナリオを描いていました。しかし、国民党があまりに弱くなりすぎました。

そのため現在は、国民党への働きかけよりも、台湾の社会全体に訴えることを重視しています。それが愛国統一力量の養成なのです。台湾で「愛国者」を育て、彼らと一緒に統一を目指す。しかしこれは長期になるでしょうし、容易ではありません。


したがって、2024年の次期総統選にも中国は確実に介入するでしょうが、工作対象としての重要度は以前と比較すれば薄れてきたといえるでしょう。

中国に台湾に侵攻できるだけの軍事力があれば、このような回り道などせず、もうとうにチベットやウィグルがそうであったように、台湾も侵攻されて、中国の一つの省か、福建省の一部になっていたことでしょう。

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