2021年11月4日木曜日

米、台湾防衛巡る曖昧さ減らすべき=下院情報委員長―【私の論評】米国は戦略的曖昧さを捨て去り、米軍の卓越した海戦能力を用い中国の台湾侵攻を阻止すると明言すべき(゚д゚)!

米、台湾防衛巡る曖昧さ減らすべき=下院情報委員長

米下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)

米下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は3日、バイデン政権は米国の台湾政策を巡る曖昧さを減らす必要があるとの見方を示した。アスペン・セキュリティ・フォーラムで述べた。

米国は1979年の台湾関係法に基づき、台湾に自衛手段を提供することが義務付けられているが、台湾が攻撃を受けた際に米国が軍事介入するかどうかは明確にしない「戦略的曖昧さ」と呼ばれる政策を取っている。

シフ氏はこれについて「曖昧さは大きいより小さい方がおそらく好ましい」とし、「われわれは台湾防衛義務について、より明確にする必要がある」と述べた。

また、米政府が他国と連携し、「武力で台湾侵攻・併合を試みればどれほどの代償を払うことになるか、中国に極めて明確に示す」必要があると述べた。

ロシアによるウクライナ侵攻とクリミア併合を引き合いに出し、国際的な抑止を強めなければ、「中国とロシアは今世紀に武力で世界地図を塗り替えることが再び容認されると感じるだろう」と指摘。

米国や同盟国が中国に対し、台湾攻撃が招く経済的な結果は受け入れがたいほど大きくなると理解させることが重要とし、「それが最も効果的な抑止になるかもしれない」と述べた。

米国の立場をより明確にすべきとする一方、「台湾を軍事的に支援するかどうかの議論には微妙なラインがある」とし、「台湾への武力行使に関する中国の考え方や時期を加速させるような表明はすべきでない」と述べた。

バイデン米大統領は10月、台湾が中国に攻撃されれば米国は台湾を防衛すると発言。戦略的曖昧さの立場から逸脱したかに見えたが、ホワイトハウスは直ちに、米国の台湾政策に変更はないと説明した。

【私の論評】米国は戦略的曖昧さを捨て去り、米軍の卓越した海戦能力を用い中国の台湾侵攻を阻止すると明言すべき(゚д゚)!

このブログにも過去に何度か掲載してきたように、現在の中国軍と台湾軍の戦力差ならば、軍事侵攻自体は可能でしょうが、米国政府は在日米軍をはじめとする部隊を送り、介入するはずです。

特に攻撃力に優れた攻撃型原潜による潜水艦隊ならびに対潜哨戒機や艦艇などを派遣するのは確実であり、そうなると、中国には全くといって良いほど勝ち目はありません。

米海軍「P-8A Poseidon」対潜哨戒機

特に、海戦、空戦ではボロ負けするでしょう。米軍は対潜戦闘(ASW)では、世界一の対潜哨戒能力を有しているので、いち早く台湾近海に米攻撃型原潜を派遣して中国の潜水艦をことごとく撃沈して、米軍への脅威を取り除くことになるでしょう。

米軍には「見えない空母」とも言われる巡航ミサイルを多数積載した攻撃型原子力潜水艦(SSGN)が4隻あります。1隻でトマホークを154発積むことができます。

600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うでしょう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがないのです。

そうして、米軍は攻撃型原潜で台湾を包囲するでしょう。そうなると、台湾に近づく艦艇はことごとく撃墜、航空機は撃墜されることになります。そうして、中国は米攻撃型原潜の包囲をとくことができず、台湾侵攻はできなくなります。

それでも、多大な犠牲を出してでも台湾に人民解放軍を上陸させたとしても、潜水艦に包囲されていれば、補給ができず、お手上げになるだけです。

仮にそれをさらに、打ち負かしたとしても、その後、民主主義が浸透した人口2300万人の台湾を統治するためには、統治機構を作り直さなければなりません。例えば、警察や軍の組織、選挙制度、教育制度などです。

これら一連の膨大な作業が必要であり、すべてがきちんとできて初めて統治に「成功した」と言えるのです。できなければ、現在のチベット自治区や新疆ウイグル自治区以上の不安定要因を中国は内部に抱えることになります。

しかも、台湾は大陸から離れているので、統治はさらに難しくなることが考えられます。中国は国土と人心が荒廃した台湾ではなく、自国の発展の役に立つ台湾を欲しているのです。それが成就できなければ、それを手にいれるためにほとんど勝ち目のない軍事的な侵攻をするのは無謀で愚かなことです。

それでも、中国が台湾に侵攻する可能性はあります。それは主に二つの要因によるものと推測できます。

まず第一は、中国が勝てると誤解することです。以前から述べているように、現代の海戦の本当の戦力は潜水艦であるといえます。水上に浮かんでいる艦艇は、ミサイルなどの標的に過ぎず、いずれ必ず撃沈されるからです。

潜水艦による戦いということになれば、上でも述べたように圧倒的に米軍が強いです。それについては、現場の軍人は熟知しているでしょうが、中共の幹部は知らない可能性があります。

世界の軍事力などを比較するジェーン年鑑などで、中国の海軍力などが報告され、それには艦艇の数などが掲載されていて、軍事的な知識がないと、中国海軍は世界一と思い込むときがくるかもしれません。

しかし、中国は先進国の軍隊とまともに戦った経験がありません。大東亜戦争中に日本と戦ったのは、現在台湾に存在する国民党の軍隊でした。中国はベトナムと戦った惨敗した経験があるのですが、その当時とは根本的に状況が違うと考えたり、中国海軍はまともに海戦を戦ったことが一度もないにもかかわらず中国海軍は世界最強で米軍と戦っても勝つとの幻想をいだく中共幹部もいるかもしれません。

1979年の中越戦争では中国は惨敗

そうなると、台湾に侵攻する可能性あります。ただ、そうなれば、きついボロ負けになるだけですが、それでも米軍は無論ですが、日本も被害を受ける可能性があります。

もう一つの可能性としては、クライブ・ハミルトン氏の著書『目に見えぬ侵略』に描かれた、オーストラリア社会に中共がありとあらゆる手段を講じて浸透したように、台湾に浸透した場合です。

たとえば、台湾政府、軍隊その他ありとあらゆる組織に深く浸透し、あとひと押しで台湾が中国にひれ伏す可能性が出てきた場合です。この場合、中国は台湾に侵攻するかもしれません。

中国共産党は7月1日午前(日本時間同)、北京中心部の天安門広場で創立100年を記念する式典を開催しました。習近平党総書記(国家主席)は「台湾問題の解決と祖国の完全統一実現は党の歴史的任務だ」と演説し、台湾統一の実現に強い意欲を表明しました。


独裁者になろうとする習近平には、残念ながら、建国の父である毛沢東や、経済発展を実現させた鄧小平のような手柄がありません。その手柄を得るために、台湾に侵攻する可能性は否定できません。

この場合も、上に示したように、米軍が台湾を攻撃型原潜で包囲してしまえば、中国は台湾に侵攻することはできません。ただ、この場合も米軍や日本も被害を受ける可能性はあります。

一番良いのは、中国が自国の軍事力を過信しようが、台湾社会にかなり浸透したにしても、中国が台湾に侵攻すれば、ボロ負けするだけであることを周知徹底し、最初から中国が台湾侵攻する意図を挫くことです。

台湾が攻撃を受けた際に米国が軍事介入するかどうかは明確にしない「戦略的曖昧さ」と呼ばれる政策は捨て去り、「台湾が中国に攻撃されれば米国は台湾を防衛すると」名言するとともに、軍事機密にもかかわることなので、詳しいことは言わなくて良いですから、「米軍の中国軍に比較して卓越した海戦能力を用いて中国の台湾侵攻を阻止」するくらいのことは言っても良いと思います。

その意味するところは、まともな軍事アナリストには伝わり、中共幹部にも伝わり、何よりも台湾の人々を勇気づけることになるでしょう。

これは今では言うまでもないことなのですが、米軍が空母打撃群や海兵隊を用いるような時代遅れの作戦を想定することは、人民解放軍に格好の標的を与えるだけで、もはや愚劣であり、中共をぬか喜びさせるだけです。

ただ、いまでも米海軍の中には頑迷固陋な空母打撃群信奉者が存在するのは事実のようで、空母打撃群を中心に作戦を組んだ場合、米軍も出す必要のない多大な犠牲者を出すことになるでしょう。ただ、この場合でも最終的には米軍が勝利することになるでしょう。

このような馬鹿真似は普通はしないでしょうが、それにしても最近の米軍のアフガン撤退をみていれば、馬鹿真似をしないとは言い切れないかもしれません。

一番愚かな選択は、空母打撃群が攻撃を受けて壊滅的な打撃を受けたからといって、台湾防衛をあきらめることです。これも、決してありえないシナリオとは言い切れません。特に、バイデン政権や米軍に中国が深く浸透していれば、ありえるシナリオです。

このようなシナリオも想定して、日本は独自の日本の潜水艦隊による台湾防衛の方式を予め策定しておくべきです。中国よりも対潜戦闘能力に格段に優れた日本は、中国よりもはるかに海戦能力に優れているので、単独でも台湾を防衛できます。しかも、潜水艦隊中心の作戦であれば、あまり犠牲を出さずともできます。

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