2022年7月30日土曜日

中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催―【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

中国共産党中央政治局、当面の経済情勢と経済活動を分析研究する会議を開催



 中国共産党中央政治局は28日に会議を開き、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配しました。この会議は習近平中国共産党中央委員会総書記が主宰しました。

 会議では、「今年に入ってから、複雑で厳しい国際環境と国内の改革・発展・安定の任務に直面し、われわれは感染症対策と経済・社会発展の取り組みを効果的かつ統一的に計画してきた。新型コロナウイルス対策は積極的な成果を収め、経済・社会発展は新たな成果を収めた。同時に、現在の経済運営はいくつかの際立った矛盾と問題に直面している」との認識が示されました。

 会議では、「下半期の経済活動は質の高い発展の推進に力を入れ、新型コロナウイルス感染症を防ぎ、経済を安定させ、発展を安全にするという要求を全面的に実行していく。経済の回復・好転傾向を固め、雇用の安定・物価の安定に力を入れ、経済の動きを合理的な範囲内に保ち、最善の結果の実現を目指す」と強調しました。

 さらに、会議では、「改革開放を経済発展の原動力とする必要がある。国有企業改革3カ年行動案を引き続き実施しなければならず、プラットフォーム経済の規範的で健全な持続的発展を推進していく。輸出を積極的に促進し、輸入を拡大し、技術と外資導入をしっかりと行い、『一帯一路』共同建設の質の高い発展を推進していかなければならない」と指摘しました。

 また、国民生活保障を着実に行うことが強調され、困難を抱える人々の基本的生活の保障に力を入れ、大卒などの重点対象の就職をしっかりと支援する必要があるとしています。

【私の論評】「流動性の罠」と「国際金融のトリレンマ」で構造的に落ち込む中国経済!(゚д゚)!

上の会議、当面の経済情勢を分析・研究し、下半期の経済活動を手配したとしていますが、上記の記事を読んでいる限りでは、具体的な政策は何もありませんでした。

この会議では、成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されませんでした。

それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。秋に異例の3期目続投を目指す習近平国家主席にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうです。中国経済の突然の減速の詳細については、他のメディアをあたってください。

ここでは、中国経済の急減速、に対してなぜ何の対策も打とうとしないのか、その理由について掲載します。

ただ、中国が何もしていないということはなく、現在金融緩和を実施しています。ところが、中国の銀行システムには十分過ぎるほどの流動性があるものの、借り入れ需要が低調なままで、銀行間の翌日物レポ金利は昨年1月以来の水準まで低下しています。

翌日物レポ金利は27日に1%割れ。今月に入り94ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下しており、中国人民銀行(中央銀行)が供給している流動性の多くが市中銀行に滞留していることを示唆しています。

中国当局は景気てこ入れを図るのですが、直面する難しさが浮き彫りとなっています。新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策や住宅危機の拡大で資金需要は低調なままで、潤沢な流動性が需要喚起につながっていないのです。


さらには、低水準の資金調達コストを利用して銀行がレバレッジ増や国債・政策銀行債への投資を進めている兆しもあります。

現在中国ではは過剰な資金が実体経済に行き渡るのではなく、金融システムに積み上がっているようです。金融緩和で需要を押し上げることができない「流動性のわな」のリスクが高まりつつあり、コロナ感染が各地で見つかる中、7月の借り入れ需要は前月から鈍化したもようです。

さらに、中国河南省の省都・鄭州市で10日、不正流用事件のため、預金の引き出しを停止した地元銀行の預金者約3000人が集団抗議を行い、警官隊と衝突しました。日本では考えられないような異常事態です。

日本等の変動為替相場で、資本の移動が自由な国であれば、流動性の罠に陥り、名目金利が限界まで引き下げられなくなっても、マネーの量的拡大によって「いつかはインフレになる」と民間が予想することになります。それを利用して需要を創出することができます。

しかし、現状の中国はなかなかそうはいかないようです。昨日のブログに掲載したとおり、中国は国際金融のトリレンマにより独立した金融政策ができない状況に陥っています。

中国は、2016年頃、景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、すぐに資本規制に乗り出していました。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからもこれを維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。「自由な資本移動」を捨てるとは、中国から海外への投資や、海外からの中国への投資をさせないということです。中国は資本移動のある程度の規制をしてはいますが、それを完璧に捨て去るようなことはとてもできないでしょう。
国際金融のトリレンマ


変動相場制に移行すれば、元はかなり安くなることが予想されます。おそらく、中国はこれかも、過去のようにその都度弥縫策を講じて何とかしようとするでしょう。結局現状維持をするでしょうから、これからも独立した金融政策ができないことになります。

そうなると、上で示した、日本等の変動為替相場で、資本の移動が自由な国であれば、流動性の罠に陥り、名目金利が限界まで引き下げられなくなっても、マネーの量的拡大によって「いつかはインフレになる」と民間が予想することになり、それを利用して需要を創出することができますが、中国にはできないということになります。

「流動性の罠」にはまった現在、これを解消しようとして金融緩和をしても現状では効き目がなく、かといって金融緩和を継続し続けると、「国際金融のトリレンマ」によって、資本の海外逃避や、不況下のインフレ(スタグフレーション)が起こったりで、何らかの不都合が起こるため、それもできません。

今後、何かを根本的に変えないと、中国経済は低迷し続けることになります。少しうがった見方かもしれませんが、中国政府はすでにこのことに気付いているため、それをカモフラージュするため、「ゼロコロナ」政策に固執しているようにみせかけ、経済の落ち込みは主にこれによものとみせかけ、時間稼ぎをしているのかもしれません。

ただ、いくら時間稼ぎをしたとしても、何かを根本的に変えないと、中国経済は今後成長する見込みはなさそうです。

この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面しています。国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、経済は急減速し回復の見込みもなく、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進んでいます。

このような、情勢は第20回党大会で異例の3期目を迎えるであろう習近平総書記に、さまざまな試練を突き付けています。


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