コロナ前を超えていないGDP、インフレ目標達成にもほど遠く…経済成長へ真水で30兆円の景気対策が必要だ
グラフはブログ管理人挿入 |
しかし、21年1~3月期は1・4%減、4~6月期が1・8%増、7~9月期が2・1%減、10~12月期が4・0%増、22年1~3月期が0・1%増と一進一退だった。
実額をみると、20年1~3月期が544兆円、4~6月期が500兆円、7~9月期が528兆円、10~12月期が536兆円だった。21年1~3月期が534兆円、4~6月期が537兆円、7~9月期が534兆円、10~12月期が539兆円。22年に入ると1~3月期が539兆円、4~6月期が542兆円となっている。
4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。
年度ベースの実質GDPの水準をみても、18年度が555兆円、19年度が550兆円、20年度が525兆円、21年度が537兆円なので、こちらもコロナ前の水準を回復していない。
今期の内訳は民間消費が4・6%増、住宅投資が7・3%減、設備投資が5・8%増、政府消費が2・2%増、公共投資が3・8%増、輸出が3・7%増、輸入が2・7%増だった。
民間消費は、新型コロナウイルス対策の蔓延(まんえん)防止等重点措置の解除で伸びた。設備投資もまずまずだ。しかし、住宅投資はいまいちだ。
公共投資はかろうじて6期連続マイナスという汚名を返上できた。しかし、予算は確保しているのに執行がうまくできていない状況に変わりはない。事実上の公共事業採択基準になっているコストベネフィット(費用便益)分析における社会的割引率が4%と高すぎることを含め、執行の弊害を全て洗い直す必要がある。公的部門の投資で民間活動を引き出すべきで、民間部門の動きを待ってから政府が動くというのは本末転倒だ。
いずれにしてもコロナ前を十分に回復していない。相当額のGDPギャップ(総需要と総供給の差)が存在しており、エネルギー・原材料価格が上昇しても、価格全般が上昇する「物価上昇」につながりにくい。
8月19日公表の7月消費者物価は、総合2・6%の上昇、生鮮食品を除く総合2・4%の上昇だが、物価の基調を示す生鮮食品・エネルギーを除く総合は1・2%の上昇とインフレ目標の2%には程遠い。
今後の経済成長のためには、秋の臨時国会の補正予算で、「真水で30兆円程度」のしっかりした景気対策が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】今秋の補正予算の組具合で、いつか来た道「失われた三十年」を繰り返すか否かの分かれ道が見えてくる(゚д゚)!
上の記事で、高橋洋一氏は、以下のように語っています。
4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。これは冒頭のグラフや以下のグラフをご覧いただければ、すぐに理解できます。下のグラフのほうが目盛りが細かいのと、19年平均と19年10-12月期を示していますのでより理解しやすいです。
これを見ると、2019年10~12月期の実質GDPは、前期比年率で11.3%ポイントも下がっています。日本のメディアによる経済報道においては「コロナ前水準」の比較対象として2019年10~12月期を用いる事が多いようですが、これはとても適正であるとは考えられません。
19年10~12月期といえば、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により前期比年率マイナス11.3%もの落ち込みとなっており、通常よりも水準が大幅に低い時期でした。このように極端に落ち込んだ特殊な時期を「コロナ前」の比較に用いることは誤解を招きやすいです。
実際、22年4~6月期の実質GDPの水準は、コロナ前ピークである19年4~6月期対比でマイナス2.7%、19年(暦年)平均対比でマイナス1.9%ポイントも下回っています。「コロナ前」としての比較対象としては、こちらのほうが適していると考えられます。
結局のところ、『22年4~6月期にコロナ前水準を回復』という言葉は適当ではなく、実際には経済活動の正常化には未だ距離がある状況という認識のほうが妥当です。
正確な比較対象として、「コロナ前」の水準を2019年4~6月期とすれば、今回発表した実質GDPは「コロナ前」に比べてマイナス2.7%であり、決して景気回復したとはいえません。
さらに、以下にコロナ禍が始まって以降の、名目GDPの四半期・年率換算のグラフを掲載します。
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日本の総需要(名目GDPベース)のピークは、2019年7-9月期(消費税増税前)の562兆円(四半期・年率換算)でした。その後、消費税増税により縮小が始まり、そこにコロナ禍による経済活動の停滞がおこりました。
20年4-6月期(最初の緊急事態宣言が出た四半期)は、511兆円という信じがたい水準に落ち込みます。
その後、「少し戻して横ばい」が続いており、22年4-6月期は545兆円。つまりは、名目実績ベースで見ても、現在の日本は19年増税前と比較し、名目ベースで20兆円近いデフレギャップ(総需要不足)を抱えていることになります。
現在、日本はGDPデフレータベースのインフレ率がマイナス化しています。要するに、デフレが継続しているのです。
デフレータがマイナスの場合、名目GDPが増加しなくても、実質GDPは成長しているように「計算されてしまう」のです(実質GDPは、元々、計算で算出します以下に計算式を示します)。
デフレータがマイナスの場合、名目GDPが増加しなくても、実質GDPは成長しているように「計算されてしまう」のです(実質GDPは、元々、計算で算出します以下に計算式を示します)。
多くの政治家は、GDP統計に関する知識がないため、財務省の公表する内容を、何も吟味せずオウム返しのように、報道する日経新聞をはじめとする報道機関の報道に軽くだまされてしまうのでしょう。
岸田政権は、GDPデフレータがマイナスというデフレ状態であるにも関わらず、「すでにコロナ禍前を回復した。補正予算は不要。通常予算も抑制」と、緊縮財政を推進してくるかもしれません。それどころか、あれこれ理屈をつけて「増税」をしてくるかもしれません。
ただ、自民党内には積極財政派も多いですから、まったく補正予算を組まないということはないかもしれません。
先に、名目ベースでの需給ギャップは約20兆と述べましたが、上の高橋洋一氏の試算では30兆となっています。これは、まずは名目ベースと実質ベースの違いです。
内閣府の試算では、実質ベースで需給ギャップは20兆円です。この違いは、内閣府は需給ギャプが少なめになるように計算しているからです。これについては、以前このブログでも述べたことがありますので、興味のある方は、これを参照していただきたいと思います。
ただ、内閣府が需給ギャップが20兆あると公表しているのですから、岸田政権が最低でもこれに相当する額の補正予算、それも真水の予算を組むべきです。そうでないと矛盾します。
この規模の予算を組んでおけば、あまり景気が落ち込こともなく、失業率もあまりあげることもなく推移し、また来期にでも真水の10兆円規模の補正予算を組めば、需給ギャップは解消すると思います。
しかし、今秋の補正予算を組まないとか、組んだとしても、真水で数兆円の桁違いの予算を組めば、その後岸田政権は緊縮路線を走り、来年の3月の日銀黒田総裁の任期終了にともない、金融引締派の総裁を据え、いつか来た道である「失われた三十年」を繰り返すことになるかもしれません。
最悪なのは、補正予算の財源を消費税増税やコロナ復興税で賄うことを条件に、補正予算を組むことです。こうなると「失わた三十年」は確実になるとみるべきでしょう。岸田政権は、かつての民主党政権のように財務省管理内閣になったとみるべきでしょう。
そうならないように、自民党内の積極財政派は頑張るでしょうが、安倍総理がなくなり、強力な後ろ盾がなくなってしまい、さらに今回の改造人事によって、財務省は政治的な圧力を心配せずに、緊縮的な補正予算と来年度予算編成の態勢ができたみられ、現在どれだけ主張を通せるか非常に心もとない状況にあります。
今後どのようになるかは、先に述べたように今年秋の補正予算の組み具合によってはっきりするでしょう。岸田政権が緊縮路線に走ることがはっきりすれば、次の政局は自民党内では「自民党自体は毀損することなく、いかに岸田政権をなるべく短期政権にするか」という方向で政局が動き出すかもしれません。
この動きにマスコミや、野党も連動してほしいものですが、「統一教ガー」などと叫ぶばかりでは、「もり・かけ・桜」の繰り返しになるだけで、大きな政局の流れからは、また無関係な存在になることでしょう。岸田政権が、崩壊して総選挙になっても、何も変わりなく、党勢や、存在感を増すこともないでしょう。
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