2023年3月11日土曜日

「復興増税」という歴史的な〝愚策〟 震災対応で反面教師にしたい 日本学術会議のレベルも露呈した―【私の論評】過去に巨額の戦費を賄ったように、復興、防衛でも日銀政府連合軍で経費を賄える(゚д゚)!

日本の解き方


 2011年3月11日、東日本大震災があった。本来やるべき対応は大規模財政支出と金融緩和の同時発動だったが、当時の民主党政権は何を間違ったのか、復興増税という歴史に残る愚策を行った。

 民主党政権下で復興増税が決まるのは素早い対応だった。震災直後に、当時の菅直人首相は、谷垣禎一自民党総裁と会談し、復興増税の方針が定められた。当然、この行動の裏には財務省官僚がいた。4月14日に第1回の東日本大震災復興構想会議(議長は五百籏頭真・元防衛大学校長)があり、冒頭の議長あいさつ時に、復興増税が言及された。この会議を仕切っていたのは財務官僚であり、そのシナリオ通りに復興増税が盛り込まれたのだ。

五百籏頭真・元防衛大学校長

 このストーリーは、日本のほとんどの経済学者から支持された。ちなみに、ネット上で復興増税の賛成者リストを見つけることができるが、多くの著名な日本の経済学者が名を連ねている。

 また、11年4月に日本学術会議から出された「東日本大震災への第三次緊急提言」でも復興増税を勧めた。この提言は民主党政権で実行され、多くの人が今でも苦しんでいる。学術会議会員の推薦要件として「優れた研究・業績」があるが、こうした提言から、その学者のレベルが分かるというものだ。

 その当時、筆者は野党の政治家だった安倍晋三氏らとこうした動きを激しく批判した。東日本大震災による経済ショックは「需要ショック」だと予想し、国債発行で復興対策を賄うものの、それらは日銀が購入すれば事実上財政負担がなくなる。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)元議長が提言した「財政・金融同時出動」だ。

 仮に日銀が購入しないとしても、東日本大震災のように数百年の一度の経済ショックに対しては、超長期国債で財源作りをすれば、その償還も超長期であるので、当面の増税措置は不要である。こうした考え方は、従来の財政学においても、課税平準化理論として学部や大学院でも教えられていたレベルのものだ。

 いずれにしても、復興増税は不要であった。自然災害の後に増税が行われたのは古今東西をみても例がなく、復興増税が愚策であることは誰にでもわかるだろう。

 しかし、当時の民主党政権は、財務省の強力な後押しで復興増税を選び、実行した。その結果、日本経済は、1度目は東日本大震災、2度目は復興増税で往復ビンタされたようなものだった。この意味で、民主党、財務省、主流派経済学者、マスコミのレベルは低かったといえるだろう。

 幸いにも、安倍・菅義偉政権のコロナ対策では、大震災時になかった大規模財政出動と金融緩和の同時発動が行われた。結果として日本経済のパフォーマンスは他国より良かったのみならず、財政負担もない。東日本大震災を反面教師とし、コロナ対策を教訓としよう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】過去に巨額の戦費を賄ったように、復興、防衛でも日銀政府連合軍で経費を賄える(゚д゚)!

上の記事にもあるとおり、安倍・菅両政権においては、コロナ渦の期間に計100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実行しました。この期間は、他国の失業率がかなりあがったにもかかわらず、日本においては雇用調整助成金という制度も用いて、雇用対策を行ったため、この期間も通常と変わりなく2%台で失業率は推移しました。


マクロ経済対策において最も優先すべきは雇用であり、雇用が良ければ他の指標が良くなくても合格といわれています。菅政権末期には、「コロナ対策」が失敗したようにマスコミが盛んに印象操作をしたため、失敗したかのように思い込んでいる人もいるようですが、そんなことはありません。

菅政権は、コロナ病床の確保には、医療ムラ(厚生ムラともいう)の反対にあって、失敗しましたが、破竹のワクチン接種のスピードで、あっという間に、日本はワクチン接種率の低さを挽回し、世界のトップクラスの摂取率に躍り出ました。

ちなみに、コロナを感染症分類の2類から5類に分類し直すことも安倍政権においても検討はされたものの、結局安倍・菅政権においてはできませんでしたが、これも簡単に言えば、医療ムラの反対があったからです。

また、ワクチン接種率の低さには事情がありました。それは、日本ではコロナ肺炎の罹患率が、桁違いに低かったという事実です。疫病対策の常識として、感染率の高い地域や国からワクチン接種をすすめるのが常道です。

その意味では、日本のワクチン接種が遅れたのは、決して安倍・菅政権の失敗とはいえません。もし、日本がコロナ渦の最初の時期に、世界中からワクチンを集め日本国内で接種を大々的に進めたとしたら、日本より桁違いに感染率が高かった、世界中の国々から非難を受けた可能性があります。

特にG7の国々も、感染率が高かったので、轟々たる非難の声が巻き起こった可能性があります。そのため、日本政府は当初は、ワクチン接種を医療従事者等に優先して行うなどのことをしたのです。極めてまともな措置でした。

そうして、菅政権末期においては、結果として大規模医療崩壊を起こすこともなく、コロナ渦は収束しました。これは、失敗ではなく、さすがに菅政権当時に「ゼロコロナ」にしてコロナ終息させるのは無理筋であり、菅政権の対策は成功としても良いはずなのですが、マスコミの印象操作等で「失敗」と見なしている人も今でも多いです。

このあたりは正しく認識すべきです。現在では、コロナ対策も含めて、菅政権の功績を見直す動きもあります。

一方、東日本大震災では復興税を導入してしまったため、経済は落ち込み、デフレが進行しました。復興税は、税という性格から、軽減、免税措置はあったものの、被災地の住人にまで、課税し現在でも未だに徴税されつづけており非常に過酷なものです。

震災からの復興では、様々なインフラに投資がなされ、それは将来世代も利用するものであり、国債などでは、それを将来世代も負担することになります。一方税金で復興を賄うことになれば、現世代にのみ負担がのしかかることになります。

東日本震災での津波の様子(出典:岩手県久慈市)

これは、国債で賄うべきものでした。上の高橋洋一の記事にも、課税平準化理論のことに触れられていますが、これについて簡単に解説します。

課税平準化理論とは、租税均等論とも呼ばれ、所得や富の不平等を解消するために税制を設計する際に用いられる原則です。この理論では、個人の所得や富の差に基づき、より公平な税率を適用することを提案しています。

具体的には、所得や財産の多い人には高い税率を、少ない人には低い税率を適用することが推奨されています。これにより、富の再分配が促進され、社会の不平等を解消できます。

さらに、租税均等論は、税制の透明性と公平性の重要性を強調しています。税制が複雑で理解しにくい場合、透明性に欠け、不公平感を与えることになりかねません。

課税平準化理論は、政府が公平で効果的な税制を設計するための基本原則であるとして広く受け入れられています。しかし、具体的な税制の設計は、その実施に影響を与える様々な政治的・経済的要因のために困難な場合があります。

国債の利用に関しては、租税均等論は特定の状況においてその利用を推奨することがあります。例えば、税収が予想より少ない場合や、政府が緊急に資金を必要とする場合、一時的な赤字を補うために国債を発行することができます。

さらに、政府が長期的なインフラ、教育、医療プロジェクトに投資する必要がある場合、必要な資金を調達するために国債を発行することができます。

さらに、国債を発行することで、高所得者から多くの税収を集め、低所得者に再分配することで、税負担の平準化を図ることができます。ただし、国債の発行には財務リスクが伴うため、国債発行に過度に依存しないよう、政府の財政状況を慎重に判断する必要があります。

東日本大震災の復興では、政府が緊急に資金を必要とする場合にあたり、これは国債を発行して賄うべきでした。国債発行の財務リスクとしては、特にインフレが懸念されますが、東日本大震災の時の日本は、デフレ状況でしたから、たとえ大量に国債を発行したとしても、財政赤字になること考えられませんでした。

それは、安倍・菅両政権における、補正予算のための国債発行でも証明されました。両政府が大量の国債を発行して、それを日銀が買い取っても、日本はインフレにはなりませんでした。

最近でも、1月の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は2020年と基準として102.2、前年同月比は3.2%の上昇です。これは、諸外国と比較すれば、高い数値とはいえません。ちなみに、米国では同5.6%上昇です。前月の5.7%から鈍化したものの、これも民間予想の5.5%を上回りました。

現状の物価の上昇は、海外から輸入しているエネルギー・資源価格に由来するものであり、それが他も波及したものです。日本は、インフレ傾向にあるとはいえません。むしろ未だデフレから抜けきっていない状況です。

この状況で、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、参考にすべきは、安倍・菅政権であり、民主党の菅(かん)政権の経済対策ではありません。

岸田政権も、安倍・菅政権を参考にして、防衛増税などすべきではありません。防衛増税などしてしまえば、課税平準化理論からみれば、現世代にだけ負担が大きくなってしまいます。

負担が大きくなるだけでも大変なのに、軍事的脅威はさらに大きくなるかもしれません。それは、日露戦争の事例でもわかります。

日本が日露戦争の負債を完済したのは82年後の昭和61年(1986年)です。 その借金の大部分は、当時覇権国家だった英国のロンドンのシティ(米国ウォール街に相当する金融街)において外債(日本国債)を発行することで調達されました。これは、外国からの国債購入ということで、日本の金融期間などからの購入ではないので、借金と呼べると思います。

しかし、日本は1960年代には高度成長果たしており、1974年にはオイルショックで一時経済成長率は落ちたものの、その後は1960年代程の成長はしていないものの、それでも1986年は6%台の成長をしています。

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これは、日露戦争時の膨大な戦費も、毎年少しずつ返済したので、さほど日本経済に悪影響を与えていなかった証左だと思います。

一方もし、日本が国債で戦費を賄わず、税金で賄ったとしたら、当時の日本は貧乏でしたから、経済は低迷するどころか、破綻し、日露戦争に負けていたかもしれません。

日露戦争に負けて、その後もロシアとソ連に浸透され続け、日本はウクライナのようにロシアに飲み込まれていたかもしれません。

では、第二次世界大戦は負けたので全く無駄ではなかったのかという議論もあると思います。太平洋戦争の戦費はあまりにも膨大で、そもそも当時の日本では税金を使って調達することは不可能でした。このため、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われました。現在の日本で、国債の大量発行を忌避するのはこのときの記憶があるからかもしれません。

現在の量的緩和策にも通じるところがありますが、超巨大な戦費を国債で賄ったため、発行量もとてつもないものでした。

現在とは異なり、戦争中は価格統制が敷かれていたことからあまり顕在化しなかったものの、それでも戦争が始まると物価水準はどんどん上がっていきました。この財政インフレは終戦後、準ハイパーインフレとして爆発することになりました。ただ、このインフレも終息して、日本は高度成長を迎えることになります。

巨大な戦費も増税ではなく、国債償還で毎年少しずつ行ったため、その後日本経済にダメージを与え続けることはなく、日本は高度成長を果たすことができたのです。

そうして何よりも、当時は日露戦争当時のロシアに変わって、ソ連が台頭しましたが、もし日本が増税で戦費を賄おうとしていれば、すぐに行き詰まり、ひょっとすると米英とは戦争にはならなかったかもしれませんが、ソ連が朝鮮半島を席巻し、現在の朝鮮半島、中国のかなりの部分はソ連の領土になっていたかもしれません。それどころか、日本もソ連の領土になっていた可能性もあります。

幸いなことに、戦争末期でも、現在の北方領土の日本陸軍はある程度の余力を残していたのと、当時のソ連軍の海上輸送力か脆弱だったこともあり占守島の戦いで、ソ連軍を打ち負かし、北海道がソ連軍に占拠されるなどのことはありませんでした。そもそも、増税で戦費を賄うなどのことをすれば、占守島などに防衛部隊を設置することもできなかったかもしれません。

占守島に今も残る日本軍の戦車の残骸

日露戦争、第二次世界時も、日本の経済は脆弱であったため、巨大な戦費を賄うために、増税などということは到底不可能であることを誰もが理解しました。だから、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われたのです。安倍元総理の言葉でいえば、「政府日銀連合軍」によって賄われたのです。

その後日本は、高度成長などにより、富を蓄え、過去の日本よりははるかに豊になりました。そのため、最近では震災から復興や、防衛費の倍増など巨大ブロジェクトの費用を賄う際には、すぐに財源はどうするというかということで、国債ではなく増税ということがいわれるようになりました。

確かに、今の日本は増税でこれらを賄えるようにはなりましたが、巨大プロシェクとなどの財源をすべて増税で賄うというのでは、現世代への負担が大きくなるのは、今も昔も変わりません。

確かに、戦費のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われました。そのため、戦後の日本ではこれを忌避する傾向がありました。しかし、これは巨大ブロジェクトの費用を賄うための、まともな方法です。

それに巨大な戦費も国債で賄ったから何とかなったものの、全部増税で賄っていれば、今頃日本はとっくに破綻して、それどころか、ソ連に占領され、ソ連に組み込まれ、従来のウクライナのようになり、いずれ独立したかもしれませんが、それでも現在のウクライナのようにロシアに侵略されていたかもしれません。

そこまでいかなくても、過度の干渉を受けていたかもしれません。そうして、多くの日本人は今頃ウクライナ戦争の最前線に動員され、多くの犠牲者を出していたかもしれません。歴史の歯車が狂っていたとすれば、そうなっていた可能性は否定できません。

以上を私の思いつきのように捉える人は、朝鮮戦争後マッカーサーは、実際に朝鮮半島で戦った経験を踏まえて、「第二次せか大戦中の日本の大陸での戦争は、防衛戦争だった」と証言した事実を思い出すべきと思います。

過去に巨大な戦費を賄ったという経験則から、これを忌避して、すべてを増税で賄おうとすれば、現世代が疲弊し、それこそ将来世代へ疲弊しきった日本を引き継がせることになります。

そのようなことにならないためにも、私達は、菅(かん)政権の東日本大震災復興政策を反面教師とし、安倍・菅(すが)政権のコロナ対策を教訓とすべきなのです。

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