2026年2月21日土曜日

安倍は見抜いていた――沖縄議席ゼロで日本の戦後は終わった


 まとめ
  • 本稿は、戦後の終わりを感情ではなく制度で確認する。防衛費2%路線、経済安全保障法制、反撃能力の明記。戦後は崩れかけているのではない。すでに法と予算で書き換えられている。
  • 沖縄議席ゼロは単なる選挙結果ではない。戦後秩序の象徴空間が制度上崩れた瞬間である。明治維新における江戸開城のように、象徴が消えたとき歴史は戻らない。本稿は、その全国的意味を冷徹に解く。
  • さらに、支持の拡大は人物人気ではなく前提の変化である。防衛力強化を支持する多数派世論、世代移行、国際環境の圧力。これらが重なり、戦後前提は再生産できなくなった。その構造を、数字と事実で示す。これは感想ではない。構造の確認である。読めば、なぜ「戻れない」のかが分かる。

1️⃣制度が静かに戦後を終わらせた


日本の戦後は終わった。これは感傷でも願望でもない。制度の確認である。

2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略、防衛戦略、防衛力整備計画により、防衛費はGDP比2%水準への引き上げが明確に打ち出された。2023年度から2027年度までの5年間で約43兆円の防衛力整備が進むことも決まった。反撃能力の保有も明記された。これは議論ではない。予算と法制である。制度は宣言ではなく執行によって確定する。

同じ年、経済安全保障推進法が成立した。半導体や重要物資の供給確保、基幹インフラの事前審査制度が動き始めた。経済は市場任せという戦後的前提から一歩踏み出した。国家が関与する枠組みが制度として整ったのである。

世論もこれを後押ししている。NHKや主要紙の世論調査では、防衛力強化を「必要」「やむを得ない」とする回答が多数派を占める状況が続いている。反撃能力の保有も一定の支持を得ている。数値は多少上下しても、方向は揺れていない。

この転換は国内だけの意思ではない。中国の軍拡、台湾海峡の緊張、ロシアによるウクライナ侵攻。力による現状変更が現実となった。戦後前提を守りたいという意思があっても、環境がそれを許さなくなったのである。戦後を前提とする考えは、もはや主流ではない。

主流とは何か。反対しても制度方向を変えられない状態を指す。防衛費2%路線は撤回されていない。経済安全保障法制は機能している。方向は固定された。これが現実である。

2️⃣沖縄という象徴空間の崩壊

1972年の沖縄本土復帰式典

直近の衆院選で「オール沖縄」は小選挙区で議席を失った。減少ではない。ゼロである。

沖縄は改革の発火点ではない。旧秩序の象徴空間であった。その象徴が制度的に消滅したとき、転換は不可逆となる。

1972年の本土復帰以降、沖縄は基地問題を軸に戦後的安全保障観を政治的に体現してきた。とりわけ2014年以降、「オール沖縄」の枠組みが小選挙区を制する構図が続いた。それは戦後前提の政治的再生産装置であった。

その装置が崩れた。理念は心理として残ることはできる。しかし議席を失った理念は制度を動かせない。象徴が制度上消えたとき、回帰は現実的選択肢ではなくなる。

歴史も同じことを示している。明治維新は周縁から始まった。しかし不可逆になったのは江戸開城であった。徳川体制の象徴である江戸城が新政府の手に渡った瞬間、旧体制の正統性は消えた。戦は終わっていなくても、構造は終わっていた。

沖縄議席ゼロは規模は違えど構造は同じである。戦後秩序の象徴空間が制度上崩れた。それは単なる選挙結果ではない。構造の確定である。

3️⃣世代移行と支持の構造


安倍晋三が示したのは、戦後は永続しないという認識であった。当初それは強い反発を受けた。しかし現在、防衛費増額や経済安全保障法制として制度化されている以上、それは現実である。

高市早苗への支持拡大も、単なる人物人気では説明できない。彼女が主張してきた安全保障強化や技術基盤重視の方向は、防衛力強化を支持する多数派世論と重なる。人物が先ではない。前提が先である。

付け加えるなら、内閣支持率や政党支持率は変動する。しかし安全保障強化への支持は大きくは崩れていない。人物の浮沈とは別に、現実前提への支持が底流として存在しているということだ。

さらに決定的なのは世代である。1990年代以降に成人した世代は、高度成長の記憶を持たない。戦後は守るべき神話ではなく、既存環境にすぎない。台湾有事や経済安全保障は抽象論ではなく、日常ニュースである。戦後を理念として守る人口は確実に減っている。

守旧派は存在する。しかし対抗勢力ではない。財政や金融の制度構造を理解せずに断定し、現実に合わなくなれば言論規制を口にする。思想の違いではない。統治能力の問題である。社会に広がっているのは怒りではなく倦怠であり、その倦怠はやがて軽蔑に変わる。軽蔑は支持を回復させない。

企業は構造変化を見誤れば一夜で崩れる。政治は民主的手続きを経るため動きは緩慢に見える。しかし緩慢であることは可逆であることを意味しない。一度制度が確定し、象徴が崩れ、世代が移行すれば、流れは戻らない。

結論

日本の戦後は終わった。沖縄議席ゼロはその確認である。国際環境、法制、予算、世論、世代構造が同じ方向を示している。

戦後を心理として守ることは可能である。しかし制度を動かせない心理は持続しない。象徴を失い、再生産回路を断たれ、世代が変われば、やがて雲散霧消する。

構造はすでに前に進んでいる。戻る支柱はない。守旧派が目を背けようとしても、現実は動き続ける。それを直視することが、最も賢明な選択である。

【関連記事】

戦後は終わった──ドンロー主義とサナエ・ドクトリンが決める世界の新標準 2026年2月18日
戦後秩序の終焉を国際構造の変化から読み解く一篇。今回の記事の世界観を補強する基礎論。

今回の選挙で語られないもの──金融に続き、エネルギー政策 2026年2月15日
安全保障と直結するエネルギー政策の核心を提示。制度転換の実体を理解できる。

小選挙区制と中国選挙影響工作──保守が油断すれば「最悪の勝利」になる 2026年2月4日
選挙制度と対外影響の構造分析。沖縄議席ゼロの意味を立体化する。

中堅国の仮面を捨てよ──トランプ政権も望む強い日本 2026年2月
「中堅国」幻想を捨て、秩序設計側へ立つ国家像を提示。

中国の歴史戦は“破滅の綱渡り”──サンフランシスコ条約無効論が問う戦後日本の正統性2025年12月6日
戦後体制の法的正統性をめぐる攻防を整理した重要論考。

0 件のコメント:

安倍は見抜いていた――沖縄議席ゼロで日本の戦後は終わった

  まとめ 本稿は、戦後の終わりを感情ではなく制度で確認する。防衛費2%路線、経済安全保障法制、反撃能力の明記。戦後は崩れかけているのではない。すでに法と予算で書き換えられている。 沖縄議席ゼロは単なる選挙結果ではない。戦後秩序の象徴空間が制度上崩れた瞬間である。明治維新における...